にんじんブログ

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なんて倫理的な #33

 原稿用紙一枚で書く日記。

 

 倫理学にはさまざまな立場があって、それぞれが善というものについて考えておられる。トロッコ問題は有名で、突っ込んでくる車両の先に五人の作業員があって、自分はレバーを引いて路線変更することで救うことができるけれども、その先には一人の作業員がいるという状況である。功利主義的立場に立てば、なるほど五人助けるほうが一人助けるほうがよろしい。一方で他の立場もある。一人の作業員が恋人とか親戚とか、ともかく自分にとって大事な人である場合はそのまま見過ごすほうがよいともいえるだろう。

「このような問題があるんだけど、君はどう考える?」「私は結果を重んじる人間であるから一人よりも五人を救うほうを選ぶ。結果主義は正しい考え方だよ。一人を選ぶとか、どちらも選ばないとか、そういう考え方にはただただ唖然とするね。断然結果が重要だよ」。なんて倫理的な。

 

 

ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab)

ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab)

 

 

【社労士】雇用保険法① 被保険者&適用事業&届出&基本手当

 

雇用保険法とは?

雇用保険法とは、

労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ること

  を目的とした法律です。法律によくあることですが、長ったらしくてわかりにくいですね。要するに失業関係の保険です。

 

 勉強するにあたっては、どの保険法でもそうだと思いますが、

  • 「どんな事業」で、
  • 「誰が」、
  • 「どんな給付」を

 受けるのかを、まずは大枠として捉え、問題を解きながら細かい知識を得ていくのが定石です。

 

 

適用事業

 雇用保険の適用事業は「労働者を雇用される事業」です。

 これは適用事業だろうかと訊かれたら労働者がいるかどうか考えればいいのです。随分お気楽ですが、一部の事業は暫定任意適用事業とされ、雇用保険に加入するかどうかをゆだねられている事業があります。

暫定任意適用事業
  1.  農林水産業
  2.  個人経営
  3.  5人未満

 この3つを満たす事業は「暫定任意適用事業」といって、別に雇用保険に入らなくてもいい事業になります。労働者の半分以上が希望するときに、厚生労働大臣に申請に行くことになります。上の場合だと勝手に適用事業になってたところ、暫定任意適用事業だとどうするかは労働者が選べるんですね。

 ただし、船員が雇用される事業はたとえ水産でも適用事業になるので注意です。

 労働関係では「船員」には要注意で、今後もたびたび顔を見せることでしょう。

過去問で見る問題傾向

 適用事業の問題は、暫定任意適用事業の要件に関わるものが中心になっています。

 たとえば、

平成18年 雇用保険法 問1 肢E

個人経営の小売店で常時2名の労働者のみを雇用する場合、事業主が任意加入の申請をしない限り、それらの者は被保険者となることはできない。

  これなどは典型的です。労働者を雇っているので適用事業になりそうですが、暫定任意適用事業でないかの最終チェックをしておく必要がありますね。要件は「個人経営」「農林水産」「5人以下」でしたが、小売店は農林水産ではありません。

 よって適用事業。答えはバツになります。

 

被保険者

 被保険者とは「雇用保険適用事業に雇用されてる労働者(適用除外を除く)」のことです。

 被保険者の種類は4つあって、

  1.  一般被保険者(65歳未満の人)
  2.  高年齢被保険者(65歳オーバー)
  3.  短期雇用特例被保険者
  4.  日雇労働被保険者

 です。

被保険者の適用除外
  1.  20時間未満/週
  2.  31日以上雇用されることが見込まれない
  3.  季節的に雇用される者で次のいづれか。①4カ月以内②20時間以上30時間未満/週
  4.  学生
  5.  船員で、漁船に乗り組む人
  6.  国、都道府県、市町村に雇われとる人

 

 こういう人たちです。一口に言って、あんま働かん人船乗りお役所です。

 

重要と思われるポイント

 被保険者の種類と、適用除外を見比べることが重要です。私たちは人間をポンと出されたときに、その人がどの種類の被保険者かを確認できなければなりません。そしてこの判定のプロセスを追うことで、被保険者の分野は理解が深まります。

 一般被保険者とは、

 被保険者であって、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇被保険者以外のもの

 のことを言います。つまり、他のどの種類にも当てはまらないものを一般被保険者というわけです。この点は重要で、すなわち一般被保険者になるかどうかは他のものにならないかどうかのチェックが必要になるからです。

 

【Step1:日雇労働被保険者じゃないか?】

 日雇労働被保険者とは、

 日々雇用される者又は30日以内の期間を定めて雇用される一定の者。

  1.  適用区域内の適用事業に雇用される者
  2.  厚生労働大臣が指定した地域の適用事業に雇用される者
  3.  公共職業安定所所長の認可を受けた者

 のことです。

 これに当てはまっているでしょうか?

 YES → 彼は日雇労働被保険者です。

 1~3のいずれでもない→ 適用除外

 NO → Step2へ

 

【Step2:適用除外チェック】

 まず「学生」「船員」「国、都道府県、市町村にやとわれている」かどうかを確認してください。この人たちは基本的には排除してオーケーです。*1

 それから週当たりの労働時間です。20時間未満ではありませんか?

 

 残りはこれ。

  •  季節的に雇用される者で次のいづれか。①4カ月以内②20時間以上30時間未満/週(条件A)

 

 

【Step3:条件Aを満たすか?】

 YES → 適用除外。そもそも被保険者じゃない。

 NO!

 (1)そもそも季節的業務じゃない → Step5へ

 (2)①、②はどっちも満たさない → 短期雇用特例被保険者

 

【Step4:年齢は65歳超えてる?】

 YES → 高年齢被保険者

 NO → 一般被保険者

 

 以上で、どの種類にいるかを判定することができます。

 

【コメント】

 一般、高年齢、短期、日雇の被保険者の区分を頭に入れておいて、判断の順番を、

  1.  日雇?
  2.  適用除外?
  3.  短期?
  4.  高年齢?

 とぼんやり覚えておくとよいでしょう。

 

 被保険者の分類というのは、労災保険のほうにはありませんでした。労災保険は労働者かどうかだけだったことを思い出してください。次の届出についても労災のほうでは勉強しませんでした。労災と雇用はお互いに比較しながら、一緒に勉強していくと効率がよいです。

 

被保険者、適用事業の届け出

【適用事業の届出】

  1.  適用事業所設置届 → 翌日から起算して10日以内
  2.  適用事業所廃止届 → 翌日から起算して10日以内
  3.  事業主事業所各種変更届 → 翌日から起算して10日以内

 提出先はいずれも公共職業安定所長です。

 

 【被保険者の届出】

 被保険者が増えたぜという連絡は事業主のお仕事です。

 ※日雇労働被保険者は除きます。彼らは自分で持って行かないといけません。

 

  1.  資格取得届 → 事実のあった月の翌月10日まで (※日雇:5日以内)
  2.  転勤届 → 事実のあった月の翌月10日まで
  3.  氏名変更届 → すみやかに
  4.  休業開始時賃金証明書 → 育児・介護休業の申請書提出までに。
  5.  休業・所定労働時間短縮開始時賃金証明書 → 翌日から起算して10日以内
  6.  資格喪失届 → 資格喪失日の翌日から起算して10日以内

 

 提出先はいずれも公共職業安定所長です。

 

 

 被保険者の資格を喪失すると、

 → 事業主が雇用保険被保険者離職証明書を作成する。

 → 事業主が資格喪失届とともに離職証明書を添付して提出する。(①)

 → 公共職業安定所長は被保険者でなくなったことを確認すると、

   事業主を通して離職票を交付します。基本手当を受ける際に必要となります。

 

①の手続きを当該労働者が希望しない場合あるいは死んでしまって被保険者でなくなった場合は、しないことができます。(ただし59歳以上の場合は除く)

 

【被保険者資格の確認】

 届出だけでは正式にはまだ被保険者ではありません。

  1.  事業主からの届出
  2.  被保険者又は被保険者であった者の請求
  3.  職権 

  に基づき、被保険者資格の確認を行い、それによって被保険者となったり、被保険者でなくなります。公共職業安定所長は確認したことを事業主に通知します。

給付の種類

  1.  求職者給付
  2.  就職促進給付
  3.  教育訓練給付
  4.  雇用継続給付

 4つが基本で、引き延ばす場合に延長給付が行われます。

 これからひとつひとつ見ていきますが、どんどん細分化されていくので途中で嫌になるのは必至です。一度で済ませるのは無理ですので、何度か戻って勉強しましょう。

 

※受給権の保護

  1.  失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
  2.  租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

※未支給の失業等給付

 支給されないまま失業者が死亡した場合は、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、生計を同じくしていた者は支給を請求することができます。

(死亡した日の翌日から起算して6か月以内)

※不正利得の返還命令等

 偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを命ずることができる。

 またこの返還は給付分の2倍以下の額で納付を命ずることができます。

 

みんなが欲しかった! 社労士の問題集 2019年度 [働き方改革関連法対応] (みんなが欲しかった! シリーズ)

みんなが欲しかった! 社労士の問題集 2019年度 [働き方改革関連法対応] (みんなが欲しかった! シリーズ)

 

求職者給付

 まずは求職者給付からです。

  1.  基本手当
  2.  技能習得手当
  3.  寄宿手当
  4.  傷病手当

 この4つですね。基本手当は雇用保険でもっとも基本となるところです。高年齢の人には「高年齢求職者給付金」、短期雇用特例被保険者の場合は「特例一時金」、日雇い労働被保険者の場合は「日雇労働求職者給付金」の一種類ずつになりますが、ここではそれ以外の一般被保険者について見ていきましょう。

 

【基本手当】

 そもそも基本手当は失業した人が再就職するまでの生活保障です。ですので当然、職を失った人が対象になります。受給資格は次の通りです。:

離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上

 二年間のうちにどれだけ職を変えてようが別にいい、とりあえず12カ月間雇用保険に金さえ払ってればいいという要件です。

 2年のうち12か月と聞くと、まぁ半分ですから楽勝のように見えますが、最初の一年間に働いてなかったら丸々働いてないといけないわけで、けっこう厳しい条件といえます。

 そこで自己都合ではなく会社側から辞めさせられたり、会社がなくなったり、契約更新されなかったり、自分の都合ではあるけれど正当な理由がある場合などは特例として条件が緩和されています。:

離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上

 いや、しかしそれでもつらい。半年以上、事情があっておちんぎんがもらえなかったんやどうすればええんや、というケースもあるでしょう。そういうときのためにさらなる緩和があります。

 疾病、負傷等により引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった被保険者についてはその日数を算定対象期間に加算する。

 たとえば6か月間おちんぎんが発生しなかったら「離職の日1年間」という条件が「離職の日1年6か月間」になるということですね。ちなみに最大で4年まで引き延ばせます。

 

平成23年 雇用保険法 問2 肢A

被保険者が失業したとき、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して14か月ある者は、倒産・解雇等による離職者や特定理由離職者でなくても、基本手当の受給資格を有する。

  答えはマル。14か月も払ってたら十分です。

 

平成26年 雇用保険法 問1 肢C

被保険者であった者が、離職の日まで業務外の事由による傷病のため欠勤し引き続き6か月間賃金を受けていなかった場合、雇用保険法第13条第1項にいう「離職の日以前2年間」は、2年間にその6か月間を加算した期間となる。

  答えはマル。

 

【受給のための手続き】

  1.  職を失ったら、管轄公共職業安定所に出頭します。
  2.  ハロワに行って求職の申し込みをして、その際に持っている離職票を提出します。
  3.  ハロワのボスは受給資格の決定を行い、その際に失業の認定日を定めます。
  4.  最後に雇用保険受給資格者証を交付します。
  5.  基本手当が受けたいとなったら、失業認定日にまたハロワに行って「失業認定申告書」「受給資格者証」を提出します。そこで失業の認定が行われ、基本手当が支給されます。

 

 という感じ。職を失ったらハロワに行けということですが、いくつかチェックポイントがあります。まずは、離職票です。

 

離職票

 職を失ったということは当然働いてないわけで、働いてないやつは労働者じゃありませんので雇用保険にも入っていません。そして雇用保険に入ってないやつが雇用保険を受けられるわけもないため、離職の際には何かしら「雇用保険にいたぜ証明」が必要になりますよね。それが離職票です。

 事業主は雇用保険に入れさせてた労働者をポイするときは、資格喪失届を提出します。その書類には雇用保険被保険者離職証明書が添えてあって、それを見たハロワのボスが離職票を作成し、事業主を通じて労働者に交付します。

 

 <失業の認定>

 失業の認定は、

 求職の申し込みを受けた公共職業安定所において、受給資格者が離職後最初に出頭した日から起算して4週間に1回ずつ直前の28日各日について行うものとする。

 とされています。一読して意味が分かる人はなかなかいないと思います。

 認定日は、出頭した日から起算して4週間後に行われます。4週間を振り返って一日ごとに「この日失業状態やな」「この日もやな」とチェックしていく感じです。

 

 【基本手当の日額】

 さて、苦労して手に入れた基本手当はどれぐらいもらえるのでしょうか。計算方法は「賃金日額」と呼ばれるものに、所定の「給付率」を掛けたものになります。

 

 賃金日額 = 最後の6か月間の賃金総額/180日

 

 これが基本です。最低額は2470円、最高額は年齢によって異なりますが、30歳未満で13420円となっています。さらに日給・時給の場合は別の最低保証があって、過去6か月の賃金総額/6か月の労働日数 の70%です。一日の労働で稼いだお金の7割ということですね。

 

 賃金日額に応じて給付率は変わりますが50~80%の間です。60歳以上65歳未満の場合は45~80%で、少し割合が変わっています。

 

 【基本手当の給付日数】

 被保険者であった期間(算定基礎期間)と、離職した事情によって変わります。

  •  まずは一般の人から。離職した事情が解雇とか倒産とかではない人です。この人たちは算定基礎期間に応じて90~150日の期間が定められています。たとえば被保険者だった期間が10年未満の場合は90日与えられます。
  •  次は解雇された人たち。年齢にもよりますが、90~330日と幅が広くなっています。1年未満の算定基礎期間の場合はどの年齢でも90日。一番長いのは「45歳以上60歳未満 で 20年以上」勤めた人です。これだけ働いてこの年齢になって解雇されるとは、一番長いのも頷けます。

 これが基本なわけですが、基本があれば必ずそれ以外があるのが法律の勉強です。それは「就職困難者」です。障害を負っている場合など、社会的に就職が著しく阻害されている人たちはもっと長く給付されます。その日数は150日~360日! 

 

【受給期間】

 続いて、受給期間です。給付日数が90日となっていても、ずっともらわずに貯金しておくことはできません。この期間中じゃないと給付しませんよという決まりがあります。原則的には1年です。例外がもちろんありますが、とりあえず1年と覚えておきましょう。

平成24年 雇用保険法 問3 肢A

基準日において50歳であり、算定基礎期間が1年の就職困難者である受給資格者については、受給期間は、原則として、基準日の翌日から起算して1年に60日を加えた期間である。

 

 就職困難者です。しかも算定基礎期間が1年あり、50歳なので360日も給付日数があるんですね(45歳以上、1年以上で360日)。もしこの人たちの受給期間が1年だとすると、1年365日でまったく猶予がないことになってしまうので、問題に書いてある通り1年にプラス60日されます。答えはマル。

 

 給付日数なんていちいち覚えてられるかよというぐらい、給付日数は細かく設定されてますが、心配はいりません。原則1年の例外というのはたった二つしかないからです。それは(1)給付日数が360日 (2)給付日数が330日 というパターンです。

 そして300日を超えて給付日数がある奴は相当限られてきます。

(1)45歳以上65歳未満(算定基礎期間が1年以上)の就職困難者

   →1年+60日

(2)45歳以上60歳未満(算定基礎期間が20年以上)の特定受給資格者

   →1年+30日

 

 こいつらだけです。(2)については20年以上勤めあげたのに定年間際で解雇された人だと思えば覚えやすいです。悲しい覚え方ではありますが、試験に受かることが目的なので、致し方ないです。

 平成19年 雇用保険法 問2 肢B

基準日において45歳以上60歳未満であり、算定基礎期間が20年以上ある受給資格者については、基本手当の受給期間は、当該受給資格に係る離職の理由や本人の申出の有無を問わず、基準日の翌日から起算して1年に30日を加えた期間となる。

  答えはバツ。離職の理由が、解雇とか倒産とか悲しい感じじゃないと駄目です。

 

 まぁどれだけ長かろうが、

平成28年 雇用保険法 問4 肢A

受給資格者が、受給期間内に再就職して再び離職した場合に、当該再離職によって新たな受給資格を取得したときは、前の受給資格に係る受給期間内であれば、前の受給資格に基づく基本手当の残日数分を受給することができる。

  再就職したら全部なくなります。答えはバツ

 

新よくわかる雇用保険 改訂3版 (困ったとき読む本シリーズ)

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*1:基本的に、というのは、休学中だったらどうだとか、細かい決まりがあるからです。今はこれを省きましょう

自己は存在しない #34

 原稿用紙一枚で書く日記。#34

 

 この頃はどうにも「自己」というものについて、はっきりと存在するとは言えなくなってきている。オーウェルの『1984年』にダブルシンクという言葉が出てくる。意味は次の通り「相反し合う二つの意見を同時に持ち、それが矛盾し合うのを承知しながら双方ともに信奉すること」。これは自己欺瞞と呼ばれるものとほぼ同じである。

 自己欺瞞を明快に説明してみせるのが精神のモジュール理論である。マーヴィン・ミンスキーの『心の社会』のように、自己とは単一のものでは決してなく、無数の自己が協力したり、逆に協力しなかったりして〈私〉というものを動かしている。いまこれを書いているにんじんは、数あるにんじんの中のひとつであって、役職でいえば政治報道官に近い。つまり自己欺瞞とはある自己とある自己が異なる信念を抱いている、というだけであって、別におかしなところは何もない。つまりこの理論にいえば、””ダブル””シンクどころではない。

 

 

〈行為〉の哲学 モデルのひとつ

〈行為〉の意味を求めて

 「手をあげる」と「手があがる」の違いは何か?

 機械によって無理やりに手を持ち上げられる場合と、いわばフツウに手をあげる場合は一体何が違うのだろう。このように〈行為〉という言葉の意味を明らかにしようという哲学の分野を行為論と呼ぶ。そうして一般には、この違いには〈意志〉という言葉が用いられる。先ほど「フツウに」という言葉を使ったが、これは意志という言葉を避けるためである。こういう妙な言い回しをしないといけないぐらい、意志というのはわれわれにとって当たり前のものである。

 だから〈行為〉の意味を明らかにしようとするとき、〈意志〉を調べることなしには済まない。結局のところ、〈意志〉とはなんなのだろうか。

 

〈意志〉の分析

 われわれが普通、次のような順序を想定する。:

 「手をあげる意志をもつ」→「手をあげる」

 つまり、意志とは行為を生起する原因として取り扱われる。

 

 しかし一方で、意志を持ったからといって行為が起きるとは限らないという奇妙な性質がある。たとえばトップアイドルになろうと思っても普通はなれないし、ペコポンを侵略してやろうと思っても侵略できない。クラスの学級委員になろうとしてもそううまくいくとは限らない。

 このように考えてきたとき、「~しよう」「~したい」という二つの意志の姿を見る。それぞれを意図欲求と呼んだ時、二つはまったく同じことなのだろうか。もちろん違う。矛盾した欲求を持つことはできるが、矛盾した意図を持つことは不可能である。

 たとえば私が、「今日のお昼はカツ丼を食べようと思っているし、それからカレーも食べようと思っている。どちらかしか食べることはできないんだけどね」と言ったとしよう。これを聞いた人は私が何を言っているのか意味が解らないだろう。

それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門

 そしてもちろん、意図をもったからといって、欲求を持ったからといってそれが行為を引き起こすわけではない。自転車に乗ろうという意図を持っても、駐輪場に入ってみたら盗まれている場合もありうる。

 先ほどから特殊な状況が意図を阻んでいるが、逆に言えば、そのような状況だとわかっていれば人はそのような意図を持たないということでもありうる。駐輪場の自転車が盗まれたことを電話連絡された人は自転車に乗りに駐輪場になど行かないだろう。つまり「自転車がある」ことを信じているのでなければ、自転車に乗る意図は持たない。これを信念と呼べば、信念は意図を持つために必要なものである。

 

 意図、欲求、信念の三つによって、意志というものが少し細かく分析されたことになる。

  1.  (手はあげられる)、手をあげたくないが、あげよう
  2.  (手はあげられる)、手をあげたくて、あげよう
  3.  手をあげられるが、あげたくないし、あげない
  4.  手をあげられるし、あげたいが、あげない
  5.  手をあげられないし、あげたいが、あげない

 

 手をあげること と 手があがる ことの違いは〈意志〉の違いであった。そうしてそれはもっと詳しく言えば、〈意図〉といえた。

 

意志の問題点

 行為とは何か。意志が原因になるような出来事のことですね。

 

 しかし〈意志〉の分析を済ませても、結局のところいまだに〈意志〉がなにやらわからない。たとえば「自転車に乗ろう」と意志するとはどういうことなのだろうか。何をすることなのか。また、たとえそれが何をすることであろうとも、意志することを意志する必要が出てくるのではないか?

 そこで、そもそもこのモデル自体が疑われることになる。つまり「〈意志〉を持ち、行為する」というモデルである。行為の原因は、〈意志〉などというなんだかよくわからないわれわれの内側のはたらきなのだろうか。

 

【社労士】労働安全衛生法

労働安全衛生法とは?

 労働安全衛生法は、

 労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的

 とする法律です。

 「事業者」は労働基準法の「使用者」と定義が違うので、その点が出題されることもあります。

平成26年 労働安全衛生法 問8 肢A

労働安全衛生法では、「事業者」は、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と定義されている。

  答えはバツ。安衛法の事業者は単に「事業を行う者で、労働者を使用するもの」です。ただ労働基準法の場合は「使用者」だったので、同じ言葉が違う意味で使われているわけではなく、わかりやすいといえます。違う言葉なので普通に違う意味だということです。

安全衛生管理体制

総括安全衛生管理者

 さて、ここからは労働者の安全を守るために設置された役職を見ていきます。事業規模や事業種によって配置する必要があるかどうかが変わるという部分が、最も鬱陶しい部分です。安衛法は暗記科目だといわれるのももっともです。

 

 で、まず最初に出てくるのがリーダーさんです。総括安全衛生管理者です。事業者から「はい、お前やってね」と選ばれてはじまることになるこの役職ですが、先述したようにすべての事業で用意しなくてはいけないわけではありません。

平成19年 労働安全衛生法 問8 肢E

事業者は、総括安全衛生管理者に、労働安全衛生法第28条の2第1項又は同法第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関することを統括管理させなければならない。

  こちらが総括安全衛生管理者のお仕事です。管理ですね。デスクにでっぷり座っている感じをイメージしていただくとよいと思います。彼らには巡視義務はありません。つまり職場を見て回る必要がないということです。

 

 さて、続いては問題の「ワシの事業もそれ必要なん?」のチェックです。

平成19年 労働安全衛生法 問8 肢A

 製造業に属する事業者は、総括安全衛生管理者を、常時100人以上の労働者を使用する事業場ごとに選任しなければならない。

  安衛法の問題って、一見して「知らねえよ馬鹿ァ(´;ω;`)」というのが多いのですが、まぁ知らないですよね。製造業だったら100人だなぁなんて必然的な結びつきがあるわけでもありませんし、覚えるしかありません。

 

 けど実は、これ覚え方があります。

 

  •  屋外作業→100人
  •  屋内作業&商業→300人
  •  それ以外 →1000人

 

 です。はい、それでは製造業は何人でしょうか → 300人です。というわけで上野問題はバツ

平成20年 労働安全衛生法 問8 肢A

事業者は、常時150人の労働者を使用する清掃業の事業場においては、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

  これはマル。所詮覚え方なので、自分の中で折り合いをつけながら問題を解いてください。

平成20年 労働安全衛生法 問8 肢C

事業者は、常時250人の労働者を使用する自動車整備業の事業場においては、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

  これはバツ。自動車整備業は300人です。

 

 あと、総括安全衛生管理者になるために免許とかはいりません。事業の実施を統括管理していればよいとされています。

 

【選任時期】

 出題されたことはないようですし、テキストにも目立って載ってませんが(発展扱い)、ワンポイントレッスンです。総括安全衛生管理者をいつお役所こと所轄労働基準監督署長にご報告にあがるかですが、

 

「遅滞なく」

 

です。とにかく急げよという意味です。

 また事業規模が増えたりして選任しなさ~いとなった時は

 

「14日以内」

 

 に選任しないといけません。

 

  • 「選任しなさ~い」→14日以内→「報告せんかい」→遅滞なく

 

みんなが欲しかった! 社労士の教科書 2019年度 [働き方改革関連法対応] (みんなが欲しかった! シリーズ)

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安全管理者

 労働者の「安全」にかかわる仕事をすることになっている人です。総括安全衛生管理者よりもアクティブに動きます(巡視義務。但し頻度は規定されていない)。そのため、資格要件も厳しくなってます。

  1.  一定の学歴と実務経験 → 研修
  2.  労働安全コンサルタント
  3.  その他厚生労働大臣がいいよって言った人

 

 安全第一ということで、安全管理者をおく義務は事業規模50人以上! 細かくいうと事業の種類によって安全管理者おかなくてもいい場合もありますが、まぁ50人以上って覚えるのが先決です。50人いりゃ大抵おきます。

 ※詳しくいうと、総括安全衛生管理者をおく事業(但し1000人以上のケース)においては安全管理者を置きません。いわゆる「その他の事業」ですね。

平成20年 労働安全衛生法 問8 肢B

事業者は、常時50人の労働者を使用する旅館業の事業場においては、安全管理者を選任する必要はない。

  はい、バツ。50人いたらとりあえず用意しましょう。

 

平成22年 労働安全衛生法 問9 肢A

常時50人以上の労働者を使用する製造業の事業者は、安全管理者を選任しなければならないが、安全管理者は労働安全コンサルタントのほか、第1種安全管理者免許又は安全工学安全管理者免許を有する者の中から選任しなければならない。

   太字みたいな話はなかったのでバツ

 

 で、安全管理者は先述のように労働安全コンサルタントに頼むことができますが、安全管理者が2人以上いる場合は一人を除いて全員に「ここだけで働いて」と頼んでOKしてもらわないといけません。

 

 そんで、あんまり事業規模がでかくなると専任の安全管理者が必要になります。専任っていうのはそこの事業場だけで働き、しかも勤務時間の大部分をその業務に費やしてる人のことです。逆に言えばさっきまでは片手間でもよかったわけですね。

 

 

入門テキスト 安全学

入門テキスト 安全学

 

 

 

衛生管理者

 総括安全衛生管理者、安全管理者の次は衛生管理者です。事業規模は安全管理者と同じく50人以上からです。人数によっては衛生管理者の数も増やさないといけないんですが、とりあえずは「50人以上」!ということを覚えましょう。

 お仕事は、もちろん衛生面の管理です。安全面は対策を決めたらあとは「気を付けてやれよ」としかいいようがないですが、衛生面は定期的なチェックが不可欠です。そこで毎週一回、作業場を見回ることになってます。安全管理者のほうは頻度は決められていませんでしたね。

平成16年 労働安全衛生法 問9 肢C

衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

  答えはマル。毎週一回、しっかりチェックしましょう。

 

 衛生管理者になるためにはきちんとした資格が必要です。安全管理者になるための資格を覚えているでしょうか。学歴→実務→研修or労働安全コンサルor厚生労働大臣が決める の3つでしたね。でも衛生管理者は違います。

  1.  都道府県労働局長の免許
  2.  医師又は歯科医師
  3.  労働衛生コンサルタント
  4.  その他厚生労働大臣の定める者

 となってます。免許重視、って感じで覚えるといいと思います。1に関してはもうちょっと細かい規定がありますが、そんな細かいことはあとでいいです。

平成22年 労働安全衛生法 問9 肢B

常時50人以上の労働者を使用する労働者派遣業の事業者は、衛生管理者を選任しなければならないが、衛生管理者は労働衛生コンサルタントのほか、大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校(これらと同等と認められた一定の学校等を含む。)において理科系統の正規の学科を修めて卒業し、その後その学歴に応じて定められた一定の年数以上労働衛生の実務に従事した経験を有する者で、衛生に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって、厚生労働大臣が定めるものを修了したものの中から選任しなければならない。

  はいバツ。衛生管理者は免許重視!

 

 さて、安全管理者と同様に2人以上のコンサルに衛生管理を頼む場合はほぼ全員を「うちだけで働け」という風にお願いしておきましょう。

 また、1000人を超えたり、500人でも有害業務をする人が30人以上いる場合は少なくとも一人を専任(衛生面でガッツリ働かせる)にしないといけません。この場合の有害業務はまぁ「うわぁ有害やな」という雰囲気で決めていいと思いますが、何故かここでは深夜業は有害業務になっていません。ここだけの例外です。

平成17年 労働安全衛生法 問10 肢A

常時500人を超える労働者を使用する事業場で、深夜業に常時30人以上の労働者を従事させるものは、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。

  こんな感じ。マルしそうになりますが、深夜業は有害業務ではないのでバツです。

 

 

 

公衆衛生がみえる2018-2019

公衆衛生がみえる2018-2019

 

 

安全衛生推進者 

さて、安全管理者も衛生管理者も50人以上からでした。総括安全衛生管理者の設置も一番少なくて100人でしたから、50人以下の場合は一度もやっていないことになります。50人未満だったら一体どうするのでしょう?

 

 10人以上~50人未満のとき、

 

  •  屋内作業&屋外作業&商業 → 安全衛生推進者
  •  それ以外 → 衛生推進者

 

 を置きます。運送業は安全衛生推進者を置きましょう。屋内屋外については総括安全衛生管理者の記事をご覧ください。まぁ大抵は安全衛生推進者です。

 で、この安全衛生推進者は総括安全衛生管理者みたいなもんで、ズテンと椅子に座っているイメージでいいです。巡視義務とかないです。

平成23年 労働安全衛生法 問8 肢D

常時30人の労働者を使用する旅館業の事業場においては安全衛生推進者を選任しなければならないが、安全衛生推進者は少なくとも毎月1回作業場等を巡視しなければならない。

  バツ。巡視義務とかないです。

平成24年 労働安全衛生法 問9 肢D

常時30人の労働者を使用する運送業の事業場の事業者は、安全衛生推進者を選任する義務があるが、安全衛生推進者養成講習を修了した当該事業場の労働者であれば、他に資格等を有していない場合であっても、その者を安全衛生推進者に選任し、当該事業場の労働災害を防止するため必要な業務を担当させることができる。

  講習受ければまぁ誰でもいいです。マル。

平成20年 労働安全衛生法 問9 肢B

事業者は、安全衛生推進者を選任したときは、その安全衛生推進者の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知しなければならないが、その選任に関する報告書を所轄労働基準監督署長に提出する必要はない。

  マル。報告書とかいりません。ただ、周知はしないといけません

 

産業医

 安全管理者、衛生管理者と来て今度はお医者さんです。こっちも事業規模は50人から。3000人を超えると2人産業医を用意しないといけません。

平成16年 労働安全衛生法 問9 肢D

産業医は、少なくとも毎月1回(産業医が、事業者から、毎月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2月に1回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

  答えはマル。同意を得ていないときは毎月1回は作業場を見て回らないといけません。衛生管理者の場合は週に一回でしたね。産業医はこうやって見て回って、衛生管理者の人に「こうこうしたほうがいいぜ」と助言をすることができます。

 ただし、安全管理者に助言できるとは規定されていません。引っ掛けとしてたまに出ますので、出たときは一度は引っ掛かっておきましょう。それまでは忘れてしまっていいでしょう。

 

 産業医というぐらいですから、そこらへんにいるただのオッサンがやっていても仕方がありません。

平成24年 労働安全衛生法 問9 肢E

常時50人の労働者を使用する自動車整備業の事業場の事業者は、産業医を選任する義務があるが、厚生労働大臣の指定する者が行う労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修を修了した医師であれば、他に資格等を有していない場合であっても、その者を産業医に選任し、当該事業場の労働者の健康管理等を行わせることができる。

  答えはマル。産業医は名前の通り医師でなければなりません。しかも「研修」「労働衛生コンサル」の資格を持っているなど、病院にいる医師とは違い、その職場に合った知識があると認められる医師でないといけません。

平成17年 労働安全衛生法 問10 肢B

深夜業を含む業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場にあっては、その事業場に専属の産業医を選任しなければならない。

  答えはマル。原則として専属は1000人からですが、有害業務を行わせている500人以上の事業場も専属を用意しないといけません。

 

 

嘱託産業医スタートアップマニュアル【ゼロから始める産業医】

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作業主任者

 さて、これまでに「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」といったような「総括安全衛生管理者」という大将に指揮される人々をみてまいりました。基本としてはこれで終わりなのですが、ちょっと特殊な事情で(でもよく見かける)設置しなければならない人のことをみていきましょう。それが作業主任者です。

 作業主任者は危険で有害な作業を行う作業場に置かれます。この人は安全管理者などとは違い、現場で実際に働いている人です。いわゆるリーダーさんみたいな人ですね。

 

  •  作業主任者になるためには単に「慣れてます」では駄目で、免許講習が必要です。
  •  危険で有害な作業ってたとえばなんやねんという話が当然出ます。大抵は普通にあぶねえなと感じるものなのですが、たまに「なんでそれに作業主任者がいらないわけ?」というのも出るので要注意です。

平成29年 労働安全衛生法 問10 肢D

動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場において行う当該機械による作業

  プレス機械! あぶねえなあ。というのでマル。でもなぜか4台だったら作業主任者はいらないそうです。まったく意味がわからないですが、受け入れるしかありません。

平成29年 労働安全衛生法 問10 肢E

屋内において鋼材をアーク溶接する作業

  溶接! あぶねえなあ。 でもこれはバツ。ガスじゃなくて電気の力で溶接するので問題ないそうです。何をいってんのかよくわからないですが、受け入れるしかありません。

 

 

ヘルメット用ステッカー HL-16 作業主任者 10枚1組 233016

ヘルメット用ステッカー HL-16 作業主任者 10枚1組 233016

 

 

 

特定元方事業の場合

 これまではすべての事業に適用される基本についてみてきました。事業規模と事業の種類を見ながら「うちは総括安全衛生管理者が必要だな」とか言うわけです。ここからはそれに加えてさらに、安全衛生管理体制を付け加えなければならない事業について見ていきましょう。

 

 元方事業者というのは「一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの」のことで、要するに仕事の全部を内部で処理してるわけではない事業者のことです。

 特定元方事業者というのは、元方事業者でしかも「建設業」or「造船業」をやっとる人のことです。建設現場で無関係な組織の人たちがそれぞれの仕事をやってるわけですが、そこで労働災害が起きないようにするためには指揮者が必要だと考えられているわけです。

 その指揮者のことを「統括安全衛生責任者」といいます。

  1.  ずい道等の建設
  2.  橋梁の建設
  3.  圧気工法による作業

 の場合は30人以上の規模、それ以外は50人以上の特定元方事業で設置義務があります。ずい道ってのはトンネルのことです。

平成20年 労働安全衛生法 問10 肢A

特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が同一の場所で混在して仕事をすることによって生ずる労働災害を防止するため、労働安全衛生法施行令第7条第2項で定める仕事の区分により、統括安全衛生責任者を選任しなければならないが、この場合、その労働者及び関係請負人の労働者が常時40人のずい道の建設の仕事については、統括安全衛生責任者を選任する必要はない。

  答えはバツ!トンネル工事は30人からです。

 統括安全衛生責任者は実施を管理する人であれば別に資格はいりません。ただしたまに作業場を見て回る必要があります。

 さて、総括安全衛生管理者と似たような名前ですが、特に建設業の場合にはこっちの体制にも「元方安全衛生管理者」というのを用意しなければなりません。資格は学歴→実務です。

 

 

 下請のほう

 ここまでが元方事業者の安全衛生管理体制。でも下請けのほうも人を出さないといけません。それが「安全衛生責任者」です。この人は統括安全衛生責任者と連絡して関係者との調整を行います。

 

 それ以外

 さて、先ほどから30人以上とかいっていますが、それ以下の場合はどうするのでしょうか。こういうときは「店社安全衛生管理者」を選任します。

  1.  トンネル
  2.  橋梁
  3.  圧気工法

 のときは20人以上30人未満です。

 

 

 

建設業・新入社員読本―建設マンを目指す君たちへ

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委員会

 さて、事業者が講ずべき安全体制についてはこれまでに書いてきたとおりです。

 次は労働者側で職場の安全を考える「委員会」について見たいと思います。

 

安全委員会

 安全委員会は、①危険防止対策、②再発防止対策、③その他危険防止の重要事項について調査し、意見を述べる役割があります。その対策でええのんかというところを見るわけですね。

 委員会の委員に選ばれるのは、

  1.  総括安全衛生管理者
  2.  安全管理者
  3.  安全に関する経験を有するものから事業者が指名した者

 です。どれをとっても結局事業主が指名した者というのが印象的です。「これでなにが『労働者側で職場の安全を考える』なんだよ」と言いたくなりますね。しかし1番以外の委員の半数については、労働組合・それがない場合は労働者の過半数に推薦された人を指名しなければならないことになっています。

 

  •  総括安全衛生管理者を指名しなくてもいい事業規模においては、事業の実施を管理している者又はそれに準ずる者。
  •  安全管理者がいない場合はありません。というのも安全委員会の設置規模は50人以上からだからです。大まかにいって屋内&屋外作業の事業は50人、それ以外は100人以上といってよいでしょう。

 

衛生委員会

 50人以上の事業場は衛生委員会を設置しなければなりません。安全委員会の場合と同様に、こちらは事業者の衛生対策について調査審議し、意見を述べる役割があります。

 

 委員は、

  1.  総括安全衛生管理者
  2.  衛生管理者
  3.  産業医
  4.  衛生に関する経験をもったひと

 から構成されます。だいたい安全委員会の場合と似てますが産業医もいることにはちょっと注意ですね。

 

安全衛生委員会

 で、まあ見て来たとおりどっちも似たようなもんなので、どっちも作らないといけない場合は一括した「安全衛生委員会」を設置することができます。

 

 

 

 

平成26年 労働安全衛生法 問9 肢E

事業者が労働安全衛生法第17条の規定により安全委員会を設置しなければならない場合、事業者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときを除き、その委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。

  推薦に基づき指名でマルだ、と言いたいところですが違います。こういう引っ掛け問題作るんだなあと感じです。厳密にいうと「委員の半数」ではなく「1番の総括安全衛生管理者を除いて、委員の半数」です。

平成16年 労働安全衛生法 問9 肢A

事業者は、安全委員会を毎月1回以上開催するようにしなければならない。

  答えはマル。衛生委員会のほうも同様です。

 

 

特定機械等

 これまでに安衛法による「管理体制」を見てきました。でも安衛法はそれだけではありません。管理体制はいわば実際に作業するうえでの対策でしたが、安衛法には作業する前の段階から規制があります。危険な機械(特定機械等)に関するルールです。

 特定機械の種類はこんな感じ。

  1.  ボイラー
  2.  第一種圧力容器
  3.  3トン以上を吊り上げるクレーン
  4.  3トン以上を吊り上げる移動式クレーン
  5.  2トン以上を吊り上げるデリック
  6.  1トン以上を持ち上げるエレベーター
  7.  ガイドレールの高さが18メートル以上の建設用リフト
  8.  ゴンドラ

 ああ、面倒くさい。安衛法が嫌われるのはこういうところだと思います。覚えづらくてしょうがないですが、要するにボイラー&なんか持ち上げるやつです。

 この面倒くさい一派(特定機械等)を製造するには面倒くさい流れがあります。細かいことは省いて大体を見ていきましょう。

 

 まずは都道府県労働局長の許可」です。作ってもいいかいと聞いて、いいぜと言われないといけません。お許しが出たらガコンガコンと製造し、で、完成。すると都道府県労働局長等の検査」が入ります。等、となっているのは厚生労働大臣から登録を受けた検査機関が検査することがあるからです。

 

 (1)移動式特定機械の場合。検査終了後は「検査証の交付」があります。で「性能検査」に入ります。

 

 (2)固定式特定機械等の場合。検査終了後は固定場所にドカンと設置して、今度は「労働基準監督署長の検査」が入ります。で「検査証交付」→「性能検査」ですね。

 

 固定式のほうが一段、検査が多いわけですね。これが原則的な流れ。たとえば建設用リフトはなんちゃら~とか、こっちは都道府県労働局長の検査いらない~とか色々ありますが鬱陶しいので過去問で全部覚えましょう。

 

平成25年 労働安全衛生法 問10 肢A

フォークリフト(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)は、労働安全衛生法第37条第1項の規定に基づき、製造しようとする者が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

  答えはバツ。「えっ、持ち上げるやつなのに」と思われたでしょうが、フォークリフトは特定機械等にあたりません。特定機械等はカタカナの名前ばっかですが全部4,5文字なのでフォークリフトみたいな長い名前はありません。フォークリフトを「リフト」と略して書くことはありえないので大丈夫です。

平成25年 労働安全衛生法 問10 肢B

作業床の高さが2メートルの高所作業車(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)は、労働安全衛生法第37条第1項の規定に基づき、製造しようとする者が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

  持ち上げるっちゃ持ち上げてますが、特定機械等に漢字のものなどありません。ありますけど、第一種圧力容器とかいうわけわからんやつだけです。答えはバツ

平成25年 労働安全衛生法 問10 肢E

つり上げ荷重が5トンの移動式クレーン(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)は、労働安全衛生法第37条第1項の規定に基づき、製造しようとする者が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

  持ち上げ得意なカタカナ先輩なので特定機械等ですね。覚えるべきなのはクレーンは3トン以上ということです。答えはマル!

 

 【定期自主検査】

 お上がやる検査のほかに、事業者は自分で検査をしないといけません。対象は政令で定められており、これにもやはり暗記が必要です。

平成30年 労働安全衛生法 問9 肢A

事業者は、現に使用している動力プレスについては、1年以内ごとに1回、定期に、労働安全衛生規則で定める自主検査を行わなければならないとされているが、加工材料に加える圧力が3トン未満の動力プレスは除かれている。

  答えはバツ動力プレスの定期自主検査は正しいですが、3トン未満がどうとかいう規定はありません。また、フォークリフトも定期自主検査の対象です。もう特定機械等がどうとか関係なく大抵の機械は検査をしないといけない感じですね。

 特に危険なものは「特定自主検査」といって、ちゃんとした資格を持った人がきちんとチェックしないといけません。フォークリフトも実はそのひとつです。

 

 

社労士のためのゼロからわかる労働相談
 

 

 

 就業制限

 きちんとした機械であろうが、きちんとした奴が乗らないとヤバイ機械になります。

 そこで安衛法では、

 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者(登録教習機関)が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他所定の資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない

 としています。要するに免許受けるか講習受けろということです。

 言ってしまえばこれだけなのですが、過去問では実に多様な「知らねえよ」と呟きたくなる問題が溢れています。

平成28年 労働安全衛生法 問10 肢E

作業床の高さが5メートルの高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務は、高所作業車運転技能講習を修了した者でなければその業務に就くことはできない。

  答えはバツ。原則通り考えれば「講習じゃなくても免許があればいいんでしょ」でバツですが、これがバツの理由は5メートルではなくて10メートルだからです。原則通りやれば一応答えにたどり着けるのでありがたいですが、逆パターンで来られたときは恐ろしいですね。

 

 また、「登録教習機関」というのも重要です。

平成21年 労働安全衛生法 問10 肢A

フォークリフト運転技能講習を受講しようとする者は、当該技能講習を実施する所轄労働基準監督署長に技能講習受講申込書を提出しなければならない。

  答えはバツ。労基のボスに言うんじゃなくて登録教習機関に言わないといけません。

 

 

 

 

安全衛生教育

 安全衛生教育には、

 

  1.  雇い入れ時・作業内容変更時の教育
  2.  特別教育
  3.  職長教育 

 があります。安全衛生教育は作業手順や機械の取り扱い方などを教えるものです。もちろん、常時使用する人だけではなく全労働者に行います。

 

【特別教育】 

 特別教育というのは、危険有害な作業をする人にする教育です。教育したよという記録を3年間保存することが定められています。

 職長教育というのは、まあリーダーさんへの教育です。責任者なわけですから、普通の労働者とは受ける教育が違うっていうことで、大体1番と同じです。

 平成22年 労働安全衛生法 問10 肢E

運送業の事業者は、新たに職務に就く職長に対して、作業方法の決定及び労働者の配置に関すること、労働者に対する指導又は監督の方法に関すること等について安全衛生教育を行わなければならない。

  意味がまったくわからないのですが、運送業の場合は職長教育は不要だそうです。答えはバツ。法律はこういうことがあるので、そういう意味でも過去問はやっておいたほうがいいです。

平成26年 労働安全衛生法 問10 肢C

労働安全衛生法第60条に定める職長等の教育に関する規定には、同法第59条に定める雇入れ時の教育(同条第1項)、作業内容変更時の教育(同条第2項)及び特別の教育(同条第3項)に関する規定と同様に、その違反には罰則が付けられている。

  しかも、職長教育は別にやらなくても罰則がありません。何故? 答えはバツ

 

新入社員安全衛生教育マニュアル (New Mate Books)

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健康診断

 さて、「管理体制」「委員会」「機械の準備と、機械を使える人」「教育」と来ました。次は「健康診断」です。

  1.  一般健康診断
  2.  特殊健康診断
  3.  その他の健康診断

 この三種類です。

一般健康診断

 一般健康診断というのは常時使用(週の所定労働時間の3/4)する労働者について雇い入れる時に行うものです。11項目の検査項目がありますが、ごく普通のものばかりです。肝機能検査、血中脂質検査などは少し珍しいでしょうか。他は身長・体重・血圧・尿検査などなど、まあやったことあるやつです。

平成17年 労働安全衛生法 問9 肢D

 一般健康診断の検査項目としては、胸部エックス線検査、血圧測定、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査等の検査項目以外に業務歴の調査も含まれている。

  答えはマル。どんな業務をしてきた労働者かもチェックします。これも検査項目のうちで特殊なものと思います。普通は業務歴の調査が健康診断に含まれるとは思いませんからね。

  •  雇い入れのときにやる一般健康診断を受けたら、次は一年以内ごとに定期的に「定期健康診断」を受けることになります。検査項目は似たようなもんで、一般健康診断とほぼ同じです。
  •  ある種類の業務については6月ごとに定期健康診断しないといけません。これを「特定業務従事者の健康診断」といいます。
  •  半年以上海外に飛ばされる労働者は健康診断を受けないといけません。これを「海外派遣労働者の健康診断」といいます。 
  •  また食堂又は炊事場で働くひとは雇い入れのときに検便による健康診断を行わなければなりません。また、これは定期的にやる必要はありません。これを「給食従業員の健康診断」といいます。

平成17年 労働安全衛生法 問9 肢B

事業者は、強烈な騒音を発する場所における業務に常時従事する労働者に対しては、当該業務への配置替えの際及び6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

  ギャンギャンうるさいところで働くのはヤバいので特定業務です。答えはマル。これが特定業務従事者の健康診断にあたります。なんと深夜業も特定業務に当たります。深夜業は体をいわせますのでなるほどという気がします。

平成27年 労働安全衛生法 問10 肢C

事業者は、高さ10メートル以上の高所での作業に従事する労働者については、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、労働安全衛生規則に定める項目について健康診断を実施しなければならない。

  高所での作業は特定業務にあたりません。答えはバツ

 

 

無敵の社労士 (3) 完全無欠の直前対策 2019年合格目標

無敵の社労士 (3) 完全無欠の直前対策 2019年合格目標

 

 

 

特殊健康診断

 一定の有害業務については、上記の11項目だけではなく医師による特別コースがあります。有害な業務なので健康診断は6か月ごとです。

 有害業務の中でも、歯やその支持組織に影響するような場合は歯科医師による健康診断を受けます。逆に言えばさっきまではずっと歯科医師ではなく、「医師」だったわけですね。

 

平成27年 労働安全衛生法 問9 肢D

派遣就業のために派遣され就業している労働者に対して行う労働安全衛生法に定める医師による健康診断については、同法第66条第1項に規定されているいわゆる一般定期健康診断のほか、例えば屋内作業場において有機溶剤を取り扱う業務等の有害な業務に従事する労働者に対して実施するものなど同条第2項に規定されている健康診断も含めて、その雇用主である派遣元の事業者にその実施義務が課せられている。

  さぁ、長くて面倒くさい、法律の問題らしい問題です。要するに派遣労働者の健康診断は派遣先と派遣元のどっちがやるねんという話です。

 答えは、 一般健康診断→派遣元、特殊健康診断→派遣先 です。

 派遣元は特殊健康診断の結果をコピーして保存し、労働者に通知をする役目です。

 

 

 面接指導

 健康診断のほかに面接指導というチェックもあります。めちゃめちゃ働いてて疲れ切ってる人にやる「長時間労働者への面接指導」であったり、フツーに働いてる労働者についても「ストレスチェック」があったりします。

 

 長時間労働者というのは、

 休憩時間を除き一週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者

 のことです。当たり前みたいに言ってますが、こういう人たちが存在してること前提で法律が定められているところに「すごみ」を感じます。

 ちなみに80時間はもともと100時間でしたが、平成31年の法改正で80時間になりました。

 

forest-sr.com

 その他、法改正の一覧がまとまっているのがこちら。

 

sharosi.j-tatsujin.com

 

平成30年 労働安全衛生法 問10 肢A

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、ストレスチェックを行わなければならない。

  答えはマル。ストレスチェックは年一で行ってください。

 

 

 

安全衛生改善計画

 都道府県労働局長は「この作業場やべえなマヂ…」となったら改善計画を作成するように指示することができます。指示されたら事業者はやれやれといいながら(?)計画を作成します。

 次の場合には「はい、できましたよ」と教えてあげないといけません。

 

  1.  特定機械等などの設置移転変更するとき
  2.  大規模な建設業
  3.  建設業or土石採取業

 

1,2は開始の30日前まで。3は14日前までとちょっと遅くなってます。

大規模建設業は国のトップ・厚生労働大臣おじさんに言わないといけませんが、1と3は労働基準監督署長でいいです。

 

届出があったら審査をして、場合によっては差し止めや計画変更を命令します。

 

 

 

 

 

【社労士】健康保険法 適用事業~賞与

健康保険法とは?

 健康保険法とは、

 労働者又はその被扶養者の業務災害(労働者災害補償保険法第7条第1項第1号に規定する業務災害をいう。)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする

 ものです。労働者が対象であって、労災保険とは異なり業務災害以外を担当します。

 

 

適用事業所

  1.  適用業種である事業の事業所であって、常時5人以上の従業員を使用するもの
  2.  国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの

 このふたつが強制適用の事業で、それ以外は任意適用になります。

 適用業種というのは十六種類規定されていますが、たいてい適用事業だと思っていいです。適用業種でないものはサービス業、特に法務・宗教・旅館・料理店・農林水産業を覚えておきましょう!

 宗教の法務がリッチな旅館で料理を楽しむって覚えると良いです。信者はせっせと農林水産をやってます。

 

【任意適用事業所】

 (入るとき)

 事業所に使用されるものの1/2の同意を得て、厚生労働大臣に申請をします。

 (やめるとき)

 やめたいときは3/4の同意を得て、厚生労働大臣に認可を受けないといけません。

 

※ただし、希望したからといって使用者が保険に加入する義務は生じません

【適用事業所の一括】

 事業主が同一である場合は、厚生労働大臣の承認を受けて一つの適用事業とすることができます。

 

 被保険者

  1.  一般被保険者(=2~4以外の被保険者)
  2.  日雇特例被保険者
  3.  任意継続被保険者
  4.  特例退職被保険者 

 どれに当てはまるか判定しようとして考える順番で見ていきましょう。

 

 就職中 → Aへ

 退職後 → Cへ

 

【 A.日雇特例被保険者】

  •  臨時に使用される者であって、日々雇い入れられる者(ただし、同一の事業所において1月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)。
  •  臨時に使用される者であって、2月以内の期間を定めて使用される者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されることになった者を除く)。
  •  季節的業務に使用される者(当初から4カ月以上引き続き使用される場合を除く)。
  •  臨時的事業に使用される者(継続して6月超えて使用される者を除く)。

 

 この4つのいづれかに当てはまる者が日雇特例被保険者と言われます。ちなみに「~を除く」で除かれた場合は一般被保険者になります。

 

【B.適用除外】

 日雇特例被保険者でないことがわかったら、次は適用除外に当てはまらないかどうか見ましょう。

  •  船員保険後期高齢者医療の被保険者
  •  事業所で所在地が一定しないものに使用される者
  •  国民健康保険組合の事業所に使用される者
  •  厚生労働大臣健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者
  •  短時間労働者(通常の労働者の週当たり3/4未満の日数しか働かず、次のいづれかに当てはまる者。①週当たり20時間未満、②1年以上勤務が見込まれない、③報酬が88000円以下、④学生)

 四番目の「承認を受けた者」というのは、健康保険ではなく国民健康保険に入りたい人です。

 

 

【C.任意継続被保険者】

 次の要件をすべて満たす者は保険者に申し出て、被保険者になることができます。

  •  適用事業に使用されなくなった又は適用除外に該当するに至ったため、一般被保険者の資格を喪失した者
  •  その資格喪失の日の前日まで継続して2カ月間以上一般被保険者であった者
  •  資格喪失日より20日以内に申し出た者
  •  申し出て初めて納付すべき保険料を期日までに納付した者

【D.特例退職被保険者】

 国民健康保険に規定する退職被保険者に該当する者のうち、特定健康保険組合の規約で定める者は当該組合に申し出て被保険者になれます。ほとんどの場合任意継続被保険者と同じ扱いになります。

 

 以上、BCDに当てはまらない者はすべて一般被保険者になります。

 注意点としては、被保険者というのは「適用事業所に使用される者」というのが大前提ですので、たとえば個人事業の事業主はそれにあてはまらないため、被保険者にはなれません。

被扶養者

 国民健康保険と健康保険の違いはなにかといえば、扶養できるかできないかです。健康保険は労働者は自分の家族とまとめて保険の適用を受けられますが、国民健康保険は扶養というものがないので、あくまで保険は一人一人です。

 

 健康保険法における被扶養者とは、

  •  被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持する者
  •  被保険者の3親等内の親族で、上記以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持する者

 のことです。またややこしいですが、大雑把にいえば3親等内の親族であれば「一緒に住んでいて」「生計を維持している」という条件で扶養できるということです。そのなかで直系尊属や配偶者・兄弟姉妹は特別で、別に一緒に住んでなくても扶養できます。

 

平成17年 健康保険法 問9 肢B

被保険者と別世帯にある被保険者の孫であっても、主として被保険者によって生計を維持している者は被扶養者とされる。

 

 もちろん答えはマル。3親等の中でも孫は特別だったので一緒に住んでいる必要はありません。

平成30年 健康保険法 問10 肢B

被保険者の配偶者の63歳の母が、遺族厚生年金を150万円受給しており、それ以外の収入が一切ない場合、被保険者がその額を超える仕送りをしていれば、被保険者と別居していたとしても被保険者の被扶養者に該当する。

  配偶者のオカンは3親等内なので扶養できます。しかし特別ではないので「同居」「生計維持」が必要です。なので別居していたら駄目です。……という原則通り考えれば150万円がどうとかはどうでもよく、バツになります。

 

 以上が原則なのですが、微妙になってくるのが「養父母」「事実婚」といったような親のような、配偶者のような、法律的にどう扱われるのかぱっとはわからない人たちです。養父母のほうは簡単で、この人たちは「父母」と同じ扱いを受けます。

 一方で事実婚のほうは複雑です。事実婚している相手は基本的に配偶者と同じく扱われるのですが、その近辺が微妙です。

平成21年 健康保険法 問7 肢A

被保険者の配偶者で届出はしていないが、事実上の婚姻関係と同様の事情にある者の子であって、同一世帯に属していないが、被保険者により生計を維持している者は被扶養者として認められる。

  事実婚配偶者の子どもです。自分の子どもなのだから「生計維持」だけで良さそうに思われますが、そうではありません。事実婚配偶者との子どもは「同居」していないといけません。

 また、原則的には配偶者の兄弟姉妹は3親等内で扶養できますが、事実婚配偶者の場合は違います。「同居」していて「生計維持」していても扶養できません。

 

生計維持ってなんやのん

 「同居」というのはわかりやすいのですが、「生計維持」というのはどういう状態のことでしょうか。

 

①同居しているケース

 

 認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合

 

  ということです。Aさんと一緒に住んでいるBさんが扶養されるためには、Bさんの稼ぎがAさんの半分以下で、しかも年収130万円以下でなければなりません。それより多いと「Aさんに養われている」とはいえないとされるのです。

 

平成27年 健康保険法 問8 肢B

年収250万円の被保険者と同居している母(58歳であり障害者ではない。)は、年額100万円の遺族厚生年金を受給しながらパート労働しているが健康保険の被保険者にはなっていない。このとき、母のパート労働による給与の年間収入額が120万円であった場合、母は当該被保険者の被扶養者になることができる。

 

 年収250万円のあなたと一緒に住んでいるオカンについて考えましょう。オカンは3親等内でしかも特別なので、原則として扶養されます。

 では「生計維持」要件を満たしているでしょうか?

 オカンは同居しているので、年収130万円以下&あなたの年収の半分以下でないといけません。ですがオカンは220(100+120)万円年収があります。だから生計維持していることにはなりません。よって、扶養されません。答えはバツ

 

②別居しているケース

 

 先ほどは同居しているケース。次は別居しているケースです。

 

認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となる。

 

 130万円は同じですが、年収1/2以下ではありません。いわゆる仕送りより多く稼いでいたらダメという条件になっています。

 

平成26年 健康保険法 問5 肢B

被保険者と同一世帯に属しておらず、年間収入が150万円である被保険者の父(65歳)が、被保険者から援助を受けている場合、原則としてその援助の額にかかわらず被扶養者に該当する。

 

 あなたは独り立ちして、実家にいる親父にお金を送っています。親父は3親等内で特別なので「生計維持」だけでOKです。さて、あなたは親父の生計を維持してやっていることになるでしょうか。

 条件は「130万円以下&援助額以下」でした。

 さて、問題文には150万稼ぎがあると書いてます。この時点で扶養できません。しかも援助の額に関わらず該当すると書いていますのでさらに違います。答えはバツ

 

 

報酬と賞与

 健康保険は保険なので、金払ってれば払ってるほど給付のときのリターンが大きくなります。みなさんが給料日に悲鳴をあげるように、保険料は毎月のカネから企業に差っ引かれて徴収されてるわけで、要するに受け取る報酬の大きさに応じて支払った量も決まって来るということです。毎月100万もらうひとと20万もらうひとで、同じ保険料を支払っているわけありませんよね。

 

  •  報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの。ただし、臨時に受けるもの及び3か月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
  •  賞与とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3か月を超える期間ごとに受けるもの。

報酬のこと

 報酬は毎月変動するものです。算定事務の煩雑さを避けるため、健康保険法では報酬額ごとに50級の枠を作り、それを「標準報酬月額」として共通して算定の基礎とすることにしています。たとえば、毎月50000円もらっている人は第1級に分類され、それに対応して標準報酬月額は58000円になります。

 

平成22年 健康保険法 問8 肢A

標準報酬月額は、被保険者の報酬月額に基づき、50等級区分によって定められるが、最低は第1級の58,000円であり、最高は第50級の1,390,000円である。

 答えはマル。最低と最高ぐらいはなんとなく覚えとけよという社労士会のお達しでしょうか。

 

 これで多少の変動には対応できるようになりましたが、大幅に変わるときには不公平感が出ます。それで、この等級区分は何度も見直しされます。どういうタイミングで再決定され、見直しがされるのか見ていきましょう。

 

【資格取得時決定】

 被保険者になった時点でわれわれの級数は決められます。ただ、まだ金をもらってない状況ですので、大体で決めます。

  • 2か月ごとに60万うけとることになってるばあいは60万を総日数(30+31など)で割って、一日ごとの給料を割り出し、それに30を掛けることで大体の月給を算出します。
  •  時給や日給、出来高、請負などで給料が決まる場合は似たような境遇のやつが受け取るカネを平均したものが報酬月額になります。

 要するに計算が面倒な奴は似たようなやつの平均で決定します

 

 資格取得が1~5月の場合は8月まで、6~12月の場合は翌年の8月までが級数の有効期間です。次の8月まではそのレベルでいられるわけですね。

 

【定時決定】

 標準報酬月額の決定し直しです。

 毎年7月1日に、前3カ月(4,5、6月)の平均月収を計算して見直しをします。

 

 一口に言えばこれだけですが、もちろん細かい規定があります。たとえば三か月欠勤していてお金をもらってない場合とか。働いた日数が著しく少ないとか。そういうのは問題を解きながら覚えていきましょう。まずは原則からです。

 これで決定された標準報酬月額はその年の9月から翌年の8月まで有効です。健康保険の資格取得が6月、7月の人は定時決定が行われないので資格取得決定の期間とはかぶっていないのを確認してください。

 

【等級区分の改定】

 毎年3月31日になりましたら、被保険者全体を見回しまして、等級区分の改定が行われることになります。

 

  •  最高等級に属する人が全体の1.5%を超え、それがずっと続くと見込まれるとき。その年の9月から、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加えることができます。つまり、ちょっとマックスの数が多すぎるのでもっと細かく分けちゃおうということです。

 

 ただし好き勝手に分けていいわけではありません。改定したあとの最高等級の割合が0.5%を下回るように作ってはいけません。

平成16年 健康保険法 問1 肢B

毎年3月31日における標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の被保険者総数に占める割合が100分の5を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、政令で等級区分の改定を行うことができる。

  答えはバツ。改定は1.5%からでしたね。

 

【随時改定】

  資格取得時に決め、次は定時決定で決めてきました。最後に等級区分の改定がないかどうか見て年度がおわるわけです。つまりこれまでのものが決定の基本でした。

 ここで説明する「随時改定」は昇給などで大幅にカネが変動した場合に行われます。

 

 随時改定が行われる要件の基本はこちら。:

 「三か月の平均月給 で 2等級以上の差がでたとき」

 

 1,2,3月とかで受け取った賃金総額を3で割った時に、今の自分のレベル(級数)よりもはるかに高いお金をもらってたらレベル見直しが行われるのです!

 

 1~6月に随時改定があった場合は8月まで、

 7~12月に随時改定があった場合は翌年の8月までが有効期限になります。

 

平成18年 健康保険法 問2 肢C

 第49級の標準報酬月額にある者の報酬月額が昇級し、その算定月額が1,415,000円以上になった場合、2等級以上の差が生じたものとみなして随時改定が行われる。

  マックス50級なので49級の人は2等級の差を生じさせることはできませんね。もしできたら51級になってしまいますが、そんなもんないので。

 でも答えはマルです。49級の人も「2等級相当」の差ができれば随時改定されます

 

 ※ちなみにずっと昇給の話ばかりしてきましたが、賃金が下がってももちろん随時改定が行われます。また給料が下がる原因は減給だけではなくて休業した場合も含まれますよね。その場合は「休業手当」を給料として改定するかしないかを計算します。

 

育児休業等終了時改定&産前産後休業終了時改定】

 育児休業をして復帰したら報酬が低下していた、みたいな場合は申し出をすると改定が行われます。たとえば3月に職場復帰したら、3,4,5月の分を計算して改定です。

平成19年 健康保険法 問2 肢D

育児休業が終了した際、終了日の翌日が属する月以後3か月間(育児休業等終了日の翌日において使用される事業所で継続して使用された期間に限るものとし、かつ、報酬支払いの基礎となった日数が17日未満である月があるときは、その月を除く。)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額が標準報酬月額等級において2等級以上変動しない場合であっても、被保険者の申し出によって標準報酬月額の改定が行われる。

  2等級変動してないのに改定ができます。答えはマル。1等級でも改定ができるということですね。

 

【特例】

 以上、「資格取得」「定時」「随時」「育児」「産前産後」の5つの方法によって報酬月額が決定されることを見てきました。最後に、計算できねえわといったような例外について見ていきましょう。

平成21年 健康保険法 問4 肢D

標準報酬月額は、毎年7月1日現在での定時決定、被保険者資格を取得した際の決定、随時改定、育児休業終了時の改定及び産前産後休業終了時の改定の5つの方法によって定められるが、これらの方法によっては被保険者の報酬月額の算定が困難であるとき(随時改定の場合を除く。)、又は算定されたものが著しく不当であると認めるときは、保険者が算定した額を当該被保険者の報酬月額とする

  答えはマル。算定が困難なときは保険者に身を委ねます。

 

 賞与のこと

 標準報酬を決めたのと同じように、標準賞与も決めます。

 

 たとえばA月に300万500円の賞与を受け取ったときは300万が標準賞与です。1000円未満は切り捨てになります。

 続くB月に200万、C月に100万もらうと、標準賞与は200万、100万になるわけです。

 でも一年の標準賞与の限界は573万なのでC月は73万円が標準賞与になります!