にんじんブログ

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過去記事

にんじんと読む「『竹取物語』から「かぐや姫」へ」🥕

『竹取物語』の内容 『竹取物語』には伝承の話型が5つ含まれる。竹取翁伝承・異常出生譚(異常誕生譚 - Wikipedia)・致富長者譚・天人女房譚(⊂異類女房譚)である。竹取物語に見られるのは天人女房譚のうちの羽衣説話である。 羽衣説話は、天女が地上で羽…

にんじんと読む「うつのためのマインドフルネス&アクセプタンスワークブック」🥕 第八章まで

第三章 うつとその人生への影響を一覧表にしよう 第四章 うつの罠を知ろう 「本章では、「社会化(社会環境からもたらされる基本教育)」がいかにうつの罠に対する耐性を低めてしまうかをみていきたい」。うつの罠の本質というのは、「これまでに受けた教育…

にんじんと読む「うつのためのマインドフルネス&アクセプタンスワークブック」🥕 第二章まで

イントロダクション 「人が人生に求めるものはだいたい決まっています。健康、愛情ある人間関係、やりがいを感じられる仕事、建設的な気晴らし、精神的な活動、そしてレジャー活動」だがこれを求めることで「楽しいことが次から次へと起こる」わけではない。…

にんじんと読む「肉食の哲学(ドミニク・レステル)」🥕

倫理的ベジタリアン 過去のベジタリアンたちと動機 「なんで植物は食べていいんだ?」 倒錯した動物「愛」 政治的ベジタリアンへ 倫理的ベジタリアン この本の主要な「敵」は、倫理的ベジタリアンである。ベジタリアンとは植物だけを食べることを好む者のこ…

にんじんと読む「スピノザの方法」🥕 第七章

第七章 スピノザの方法 『エチカ』における定義は、発生的定義(=対象の最近原因を含むことでその対象の発生を描き出す)とは異なり、名目上のものとなっている。たとえば『自己原因とは、その本質が存在を含むもの、あるいはその本性が存在するとしか考え…

にんじんと読む「スピノザの方法」🥕 第六章

第六章 逆説の解決 〈これまでの復習〉 精神は道を進みながら何ごとかを知り、知ったことが次の知ることを手助けする。何ごとかを知っているかどうかを問う必要はなく、ただその道をいかにして見つけいかにして歩めばいいかを問えばよい。だがこのような方法…

にんじんと読む「スピノザの方法」🥕 第二章

第二章 方法の三つの形象Ⅱ 〈前回の復習〉 何ごとかを知っているということの正しさは、まさにその何ごとかを知っているということだけであって、その正しさをチェックする標識は無用である。真理に到達している人は真理に到達していることを知っている。到…

にんじんと読む「スピノザの方法」🥕 第一章

第一章 方法の三つの形象Ⅰ ものを考えるにあたりわれわれは暗闇のなかをひとり手探りで進まなければならないのか。それともその暗闇のなかには道案内がいるのか。また道案内は可能か。 スピノザの方法 この問いに関わって、スピノザが「方法」について論じて…

にんじんと読む「ふわふわする漱石(岩下弘史)」🥕 第五章

第五章 『多元的宇宙』と漱石晩年の思想 『多元的宇宙』はいわゆる「汎心論」(世界の全ての事柄には心的な側面がある)を仮定している。しかし普通の汎心論というのは、世界の絶対者の精神についてのことである。ジェイムズは神の存在を認める者であるが、…

にんじんと読む「ふわふわする漱石(岩下弘史)」🥕 第四章

第四章 「創作家の態度」と「ばらばら」な世界 『創作家の態度』は『文芸の哲学的基礎』のおよそ十か月後に発表された。内容は「創作家」の「態度」、つまり「心の持ち方、物の観方」である。曰く、われわれの心のなかには焦点があって、入れ替わり立ち代わ…

にんじんと読む「ふわふわする漱石(岩下弘史)」🥕 第三章

第三章 「文芸の哲学的基礎」と「真に」存在するもの 漱石は「文芸の哲学的基礎」において、まずこう確認する。 この世界には私と云うものがありまして、あなた方(がた)と云うものがありまして、そうして広い空間の中におりまして、この空間の中で御互に芝…

にんじんと読む「ふわふわする漱石(岩下弘史)」🥕 第二章

第二章 『文学論』における「文芸上の真」 「科学上の真」と対置される「文芸上の真」は、当時盛んに議論されていた。これについての記述は『文学論』第三編からはじまる。彼が定義した「文芸上の真」が成立するのは、「作物が読者の情緒を動かす」時、「描…

にんじんと読む「ふわふわする漱石(岩下弘史)」🥕 第一章

第一章 夏目漱石の『文学論』と、ウィリアム・ジェイムズの心理学とはきわめて深いかかわりをもつ。『文学論』はそもそも「組織だったどっしりした研究」、つまり文学とは何かという根本原理を探ろうとする科学的、実証的な、普遍を志向する探求だった。 凡…

にんじんと読む「がんばること/がんばらないことの社会学 努力主義のゆくえ」🥕 第五章まで

第三章 「頑張り」=努力主義と日本社会 日本には「誰でもやればできる」という能力平等観が根強く存在しており、それゆえにこそ忍耐・努力が重視される。これに対してアメリカ・イギリスでは能力素質説とでもいうべき、不平等観が強い。 また頑張ることにつ…

にんじんと読む「がんばること/がんばらないことの社会学 努力主義のゆくえ」🥕 第二章

第二章 中根千枝「タテ社会」論からみた「頑張り」 中根のタテ社会論は多くの誤解にさらされてきた。それはタテ=上下の関係、ヨコ=平等な関係といったような誤解である。その中でも最も建設的な批判は竹内洋による「同期」の問題である。 彼は日本社会をタ…

にんじんと読む「がんばること/がんばらないことの社会学 努力主義のゆくえ」🥕 第一章 

第一章 「頑張り」=努力主義と平等の日本的文脈 まずは「平等」ということの日本的な位置づけについて確認する。 中根千枝『タテ社会の人間関係 単一社会の理論 (講談社現代新書)』は、《社会構造の分析に関する新しい理論を提出》するものである。 社会構…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第二章② ここまでで中断

誤解がないようにもう一度、はじめよう。第一章で見てきたのは『論理学研究』における現象学であった。しかし『イデーン』においてはより一層、心理学との差別を明確化させている。そこでは現象学はいかなる意味においても、「心理学」ではなくなる。 心理学…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第二章①

第二章 現象学の展開 フッサールは「現象学は記述的心理学である」と書いている。これは第一章で見たように、論理学的認識一般の解明のために意識を研究するのだからこう呼ばれるのであるが、しかしそれはやはり通常の意味での心理学ではない。現象学は心理…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第一章⑦

さて、問題はこうだった。 心理的・実在的な存在者である我々が、いかにして理念的なものと関わりうるのか。 心理的なもの、それゆえ実在的なものと理念的なものとはどうして一種の内的統一を持ちうるのか。 理念的なものがどうして実在的なもののうちに現象…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第一章⑥

直観において対象が与えられること。この「与えられる」という現象的性格をフッサールは「所与性(Gegebenheit)」と名づけた。この概念は充実化の観点から理解されるべきものである。というのも、ある対象が与えられるというのは、ある志向に充実化が実現す…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第一章⑤

「雨が降っている」という文を理解するために、カーテンを開ける必要はなく、想像してみる必要すらない。ゆえに意味作用は知覚や想像といった直観的な表象作用とは区別されなければならない。だが、本質的ではないにせよ、実際に見て確認することはできる。…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第一章④

「雨が降っている」ということで雨が降っていることを意味し、またその文を読むことによって雨が降っていることを理解する。この意味し、理解するという体験もまた、雨が降っているという事態に方向づけられた志向的体験である。 紙の上に垂らされたインク自…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第一章③

さて、命題というものはまず言語表現という媒体を通して与えられる。そこでフッサールが問題としたのは「表現」であった。表現が表現として機能するのは、そこに一種の志向的体験が成り立つからだというのが結論である。 志向性とはなんだろうか。たとえば知…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第一章②

『論研』第二巻の問題意識はフッサールと心理主義の対立において、フッサールの主張が正しいと考えた時に生じてくる。つまりもしフッサールに軍配が上がるとすれば、かたや心理的ー実在的な存在者としての我々があり、かたや理念的な命題とその論理的連関が…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 第一章①

第一章 『論理学研究』における現象学と志向性 現象学にとって、『論理学研究』という著作は「突破口」になったのだと、フッサールは回想している。この著作の第一巻はいわゆる論理学的心理主義の徹底した批判を加える。論理学的心理主義は、思考というもの…

にんじんと読む「フッサールにおける超越論的現象学と世界経験の哲学」🥕 はじめに

はじめに 世界があり、事物があり、我々がいる。我々は世界のうちで行動し、様々なことを経験し、世界について種々の知識を持つ。(p.i) これほど自明なことにも、哲学は疑いのまなざしを向ける運命にある。デカルトが『省察』で行った懐疑論の爆撃は、私た…

にんじんと読む「英語独習法(今井むつみ)」🥕 ②

carrot-lanthanum0812.hatenablog.com ② ある単語を適切に使うためにはいっしょに使われる単語(「共起語」)についての知識が欠かせない。単に身に着けるのでも、上着なのかズボンなのか帽子なのか手袋なのかマフラーなのかで、いろいろの動詞が使われる。…

にんじんと読む「英語独習法(今井むつみ)」🥕 ①

① 認知科学の知見を外国語学習に当てはめ、その合理的な学習法を提案し解説することが本書の目的である。英語学習に関するわかりやすい方法論は数多出ているが、しかしそもそも、ほんとうに楽に英語を習得する方法があるのだろうか。認知心理学的にいえば、…

にんじんと読む「人類史のなかの定住革命(西田正規)」🥕 ②

定住革命 サルや類人猿などの高等霊長類は100頭程度の単位集団を形成し、固有の遊動域を移り住んでいるが、人類もまた出現して以来数百万年を遊動生活者として生きていた。定住生活を始めたのはおよそ一万年前頃のことだが、そこから生じて来た社会の複雑化…

にんじんと読む「人類史のなかの定住革命(西田正規)」🥕 ①

手形動物の頂点に立つ人類 手形動物の頂点に立つ人類 霊長類を形態学的に分類することの困難を指して、「特長がないのが特長」と人々にいわしめたが、今西錦司は『生物的自然における生物には、博物館の標本のように、単にけいたいだけの生物はいない。その…