原稿用紙一枚で書く日記。#21
登山をする人は山頂を目指す。「よろしい、ヘリコプターをあげよう」いや、そういうことではないのだ。「でも山頂に登ることが目的なんですよね?」確かにその通り。しかし、それは事実の片面しか捉えていない。重要ななにかが見過ごされている、という感じを、登山者は持つに違いない。たしかに山頂は必要だ、一方で、それほど必要ではない。山頂を目指す登山にとって、山頂は決定的な要素だが所詮その程度のものである。これに類することは、日常生活、さまざまな場面で出会う。
ある種の安らぎのための午後のお茶を飲む人に、まったく同様の安らぎを得られる薬品を投与することを提案してみよう。なるほど合理的であるが、合理的だというだけのことである。合理性は必要だが「大したことではない」という言葉の意味を、これらの例示によって理解してもらうことができるだろうか。