本日のテーマは「脳の機能」。
脳を最適化するという本を読んだのでそれをもとに脳機能を一旦まとめてしまおうという記事です。全体像を把握して、地図を作っておこうというわけです。
「脳の機能」の地図
よく言われるワーキングメモリであるとかは「実行機能」として知られます。実行機能は二重過程理論でいうシステム2の主機能です。
脳の機能を支えるのは神経細胞(ニューロン)です。神経細胞同士はシナプスという回路を通じて情報をやりとりしています。神経細胞のつながりは不変ではなく、使わない部分は切れたり、結合を組み替えたりします。これを神経可塑性といいます。神経可塑性という脳の性質は生涯を通じてつづきます。この柔軟さが人間の能力を高めていくわけです。
単純糖質と複合糖質
糖には単純糖質と複合糖質があり、単純糖質はいわゆる「THE・糖」といった食品のこと(ケーキであるとか、いわゆる甘い食べ物)。複合糖質はフルーツなどによく含まれています。
- 単純糖質 → 即座に分解される。
- 複合糖質 → ゆっくりと分解される。
ニューロンは糖を貯蔵することができないため、単純糖質によるパワーアップは長続きしない。また、糖尿病になる(糖をうまく処理できなくなる)と認知能力が低下してしまう。フルーツをよく採るようにおすすめされるのはそういう事情があるからのようです。
carrot-lanthanum0812.hatenablog.com
認知症の原因とその予防
認知症と物忘れは違います。
年齢を重ねると思い出しづらくなる「物忘れ」は、これまで生きてきた年数だけたくさんの記憶の中から思い出したいものを取り出すのに時間がかかっているのだといえます。
一方、認知症は脳そのものに問題が生じます。腹痛がいろいろな原因で起こるのと同様に、認知症もいろいろな原因で起こります。数が多く、最も警戒しなければならないのは次の三つです。
さまざまな認知症(総論・原因など) | 認知症を知り、認知症と生きるe-65.net
アルツハイマー病は、脳の記憶にかかわる部分に「アミロイド」というタンパクが溜まったり、神経細胞が細く縮んでしまいます。これによって認知症が起きるわけです。症状の進行を止めることはできますが、有効な治療法は見つかっていません。また、決定的な予防もわかっていません。このタイプが認知症の中でもっとも多いそうです。
レビー小体型認知症は、アルツハイマー病と同じく、脳にタンパクが溜まって起こります。こちらも有効な治療法はなく、症状を遅らせることしかできません。75歳~85歳といった高齢になってから起こるようです。
レビー小体型認知症 | 認知症の基礎知識|相談e-65.net
血管性認知症は、脳の血管が問題で起こります。脳の血管が詰まるとその先にある神経細胞が死んでしまうため、壊れた部分が記憶に関係していれば認知症となります。一定年齢以上になると小さい脳梗塞が誰にでもできてくるのですが、それが積もり積もって認知症となってしまうこともあります。
こちらは血管が詰まらないように予防することができます。ただ、治療法はやはりないようです。
脳血管障害
脳の血管に起こる障害。
大きく分けて「詰まる」(脳梗塞)と「破れる」(脳出血)。「詰まる」のうち、脳の血管が直接詰まってるのが脳血栓、他のところから塊が流れきて詰まるのが脳塞栓。「破れる」のうち、血管にできた塊が破れるのをクモ膜か出血というそうです。
脳卒中は、がん、心臓病に次いで日本における死因の第3位となっています。
「寝たきりになる原因」の3割近くが脳卒中などの脳血管疾患です。
<これが起きたら救急車>
体が動かなくなったり、うまくしゃべれなくなったり……。
とんでもない症状なので異常が感じられないということはなさそうです。
<予防>
これが肝心なのですが、
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 高血圧
- 糖尿病
- 高コレステロール血症
- 肥満
- 過度のストレス
家庭で知っておきたい脳卒中の救急(脳卒中予報からの脳卒中の予防!これだけは知っておこう):救急小冊子
喫煙、飲酒、肥満あたりは対策がすぐに思いつきますが「高血圧」「糖尿病」「高コレステロール血症」「過度のストレス」なんてどうやって対策しておけばいいのか謎です。
高血圧の予防と改善(1)ー食生活を見直す|高血圧|生活習慣病ガイド|健康コラム・レシピ|オムロン ヘルスケア
糖尿病になりにくい生活(食生活) | 糖尿病がよくわかるDM TOWN
http://www.shionogi.co.jp/wellness/diseases/dyslipidemia.html
ストレスについては「ストレスの捉え方」「回復の仕方」などを知っておくとよいかもしれません。配偶者の死はストレスになりますが、これを予防することなど不可能です。高いストレスがかかったときのコーピングが重要でしょう。
コーピングとは、自分のストレス(ストレッサー、ストレス反応)に対して行う意図的な対処のことをいいます。
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【付録】脳は騙される:元気になる方法
テーマは「気分を良くする方法」です。
学べば学ぶほど人間は動物の一種なんだなと思うのですが、どうも感情というのも案外簡単に作り出せるもののようです。
たとえばやる気。
『やる気がないから何もできない』とよく言いますが、実際のところやる気というのはやっている最中に出てくるもので、逆にやらないと出てきません。
人間は頭で考えて何かをするというよりも、
何かをすることによって頭が反応するのです。
ダニエル・カーネマンは「システム1(感情)が主役でシステム2(理性)は脇役」と言いました。どちらかといえば理性が主役であると信じたいのですが、どうもそうではないらしいということがわかってきました。二つは相互に作用しあっていて、人間にとってどっちがより重要ということもないのです。
要するに外側を変えてやれば内側もそれに対応して変化するわけです。
- よく言われるのがフェイク・スマイル。楽しくないのに、笑みをつくってみると本当に楽しい気分になるというテクニックです。本当に面白いときは歯を見せて笑うと思うのですが、そのときの口の形を練習しておくのも良い手です。
とにかく笑顔になることの良い点はそれが他の人にも伝染すること。自分のストレスも軽減することができ、相手のストレスも軽減することができます。対人関係においても「笑顔」は非常に重視されており、相手を判断するひとつの基準にさえなっています。(ちなみに笑顔の次はアイコンタクトが重要です)
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- 背筋をピンと!
- 背筋をピンとすることで、本当にストレスホルモンが減少します。
- また体が大きく見えることで自分のほかの要素も「大きい」のだと勘違いします。
2番目の性質は昔からよくあるものです。
たとえば、目を良くするために目の良い動物の目玉をすりつぶして薬にしたりしていました。正確な名称ははっきりと思い出せないのですが、にんじんはこれを類似性の原理と呼んでいます。
背の高い人は、他の要素も「高い」と判断されやすいです。だから自信がないときほど姿勢をピンとしているのが良いのです。たとえば面接試験の前であったり、緊張する出番の前は逆に姿勢を正すのが良い成績をおさめることができます。
【付録】集中力のこと
本日のテーマは「集中力」です。
- みなさんは読書が好きでしょうか?
あまり好きではありません。知識を得るのはいいのですが、呼んでいる最中は気が散ってしまいます。そのうちスマホゲームに手を伸ばし、本を放り出します。文字の羅列は極めて退屈で、どうしてももっと他に刺激的なことがしたくなるのです。
- 反対に、プレゼンテーションなど人前で発表するのはどうでしょう。
これも好きではありません。人前に出るのは緊張するし、言葉がうまく出なくなって、ともかくもう必死です。突然教室の前でなにかをやらされたりしたときなどの、あの最悪な気持ちを思い出してみてください。
この二つは「集中している」とはいいがたい状態 : 退屈と緊張です。
そもそも集中しているというのは
理論的にはどういうもので、
そしてそれはどういう状態なのでしょうか。
二重過程理論から
人間の中には「システム1」と「システム2」という二つの異なった人物がいます。
システム1:原始人
歴史的に大変古いもので、そのほとんどが旧石器時代に培われたものです。
草むらをがさがさと動く影に身構え〈敵〉だと認識するより前に素早く反応します。この素早さがシステム1のセールスポイントでもありますが、弱点でもあります。早とちりをし、現実を間違った風に捉えるのです。彼は確率や統計のことなどまったくわかりません。
彼と簡単に出会う方法があります。「2×3」という数式を見た時、私たちは簡単に計算することができますが、「124×234」となると、パッと見ただけではわかりません。このような高度な計算をやってくれるのが、システム2です。
システム2:めんどくさがりの若造
彼はシステム1の監視役です。彼は「理性」とも呼ばれます。
しかし、彼はとにかく行動が遅く、しかも動こうとはしません。十分に注意を働かせていないと、システム1が勝手に正しいと思い込んだことに首を突っ込まず、そのままにしておきます。「冷静に考えればおかしいことがわかる」というとき、彼が働かなかったのです。
集中する(=注意する)とは、めんどくさがりのシステム2を働かせることです。
システム1はあらゆる方向に勝手気ままに動き回るため、集中することは容易ではありませんし、そもそもシステム2自体がめんどくさがりなので、「集中する」というのはかなり努力を要することなのです。
右に揺れ、左に揺れ、右に揺れ、と振り子のように動き回る注意を必死に真ん中に合わせようとする―――これが集中です。
ヤーキーズ・ドットソンの法則
ところで、どれだけ注意を働かせようとしても対象がなければ注意できません。
1903年にヤーキーズ&ドットソンが「刺激」と「集中力」を定式化しました。
これです。汚い図ですが、なんとなく伝わると思います。
刺激がまったくない状態だと集中力もなにもなく、
一方で刺激がありすぎるとどんどん集中力が低下していくのです。
これが冒頭に述べた退屈と緊張に対応します。
一番最適なのが、ちょうど真ん中付近を維持することです。
そして実感としてよくわかるように、容易なことではありません。
離れていく注意を引き戻そう
集中力というテーマでお話する以上は、
間違いなく「マインドフルネス」の話をしなければなりません。
なぜかというと、マインドフルネスは「注意することに注意する」訓練だからです。
基本的なやり方は
- 規則正しく呼吸をする。呼吸に集中する。
- だんだん別のことが思い浮かぶ。
- 思い浮かんだことに気づく。逸れていることに気づく。
- また呼吸に意識を向ける
です。これを自分の決めた時間だけ繰り返します。「メタ注意」の訓練です。これは別の作業にも応用できます。
たとえば本を読んでいるとき、他にやりたいことが浮かんだら「あぁやりたがってるな」「注意が向いてるな」と一拍置いて、また本に戻るのです。
「だから入門書(SIY サーチ・インサイド・ユアセルフ)を読めば解決します」ということなのですが、それで話が終わってしまうので、にんじんがそれ以外にやっている方法をご紹介します。
ながら作業のおすすめ
- 退屈で仕方がないとき
問題になるのは間違いなく、このパターンだと思います。読書は本当に退屈です。素晴らしいことが書いてあることはなんとなくわかるのですが、何回めくっても終わらないのにイライラして、投げ捨ててしまうこともあるでしょう。
そんなときには刺激を与えてやるのが一番です。:
① ボーカルのない曲を流す
② ものを食べながらやる
③ 「本の中身を簡単に教えて」と言われたとき用のメモを取る
→ これが一番よく効きます。
翻訳本なんかは特にそうだと思うのですが、
スティーブがどうしただの、カレンがなんだのといったエピソードトークが数ページわたって続き、話がよくわからなくなることがあります。
しかし大事なことは「本筋」だけです。
「これに関するお話をします。これっていうのは(1)と(2)のことです。まず(1)について。次に(2)について。応用は……」
本の中身を読んだら忘れてしまうといいますが、
それは情報洪水に流されるからです。自分の言葉で「この本はコレについて書いてる本なんだよ」と説明するつもりで読みましょう。スティーブのことはどうでもよろしい。
- 「あれもしたいこれもしなきゃ」のとき。
これについては効果的な方法があります。
やはり紙に書き留めておくことです。
横にメモを置いておいて、洗濯、掃き掃除、散歩……とどんどん書きます。
多分どれもこれも、あとでやらないと思いますが、不思議なことに書いておくだけでやったつもりになります。「本を買っただけで知識を手に入れた気分になる」などと言われることがありますが、それだけ所有しているという言葉に引きずられているのです。