徴収法とは?
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 = 徴収法 とは、
労働保険の事業の効率的な運営を図るため労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続き、労働保険事務組合等に関し必要な事項を定め
たものです。
労災も雇用保険も、普通の保険商品と同じようにお金をみんなで出し合うことによってリスクに備えています。お金をどれぐらい、どういう風に集めるかということを規定しているのが徴収法です。
事業
事業はふたつに分かれます。
- 一元適用事業 = 労災・雇用の適用徴収事務が一元化して行われている
- 二元適用事業 = 労災・雇用は別々に行う
基本的には一元適用事業にして事務を簡便にしたいのですが、次に当てはまるものは二元適用事業となります。:
面倒くさいですが、地方公共団体と農林水産、建設は駄目だってことですね。
平成24年 徴収法(雇用) 問10 肢C
労働保険徴収法第39条第1項に規定する事業以外の事業であっても、雇用保険法の適用を受けない者を使用する事業については、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして一般保険料の額を算定する。
それから、誰かを使用してたとしても労災保険はともかく、雇用保険に入るかどうかはわからないですよね。雇用保険に入ってない場合は別個のままで考えていきます。これはマル。
賃金
会社は保険料をどれぐらい払わなければならないのでしょうか?
保険料といってもいくつか種類がありますが、たとえば「一般保険料」は賃金総額×保険料率となっていて、〈賃金〉が保険料を決めていることがわかります。そこでまず問題になるのは、賃金とはいったいなにかということです。
賃金とは、
賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われる賃金については、その範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定める所による)
をいいます。『賃金=労働の対償』といえるでしょう。
かっこの中はその労働の対償がカネでない場合はどうすんだというのは労基かハロワのボスに聞けということが書いています。
賃金総額というのは労働者たちの賃金をすべて合算した数字のことですね。
平成19年 徴収法(雇用) 問9 肢D
労働保険徴収法における「賃金」は、通貨で支払われるもののみに限られず、食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるものも含むものとされている。
過去問です。これはマルなのかバツなのかはもはや明らかです。マルです。
注意が必要なのはこちら。
平成26年 徴収法(労災) 問8 肢B
慶弔見舞金は、就業規則に支給に関する規定があり、その規定に基づいて支払われたものであっても労働保険料の算定基礎となる賃金総額に含めない。
「就業規則に規定があるんだから賃金だろ」というのは労働基準法のおはなし。徴収法における賃金については、いくら規定があってもこれは賃金にはなりません。
保険関係の成立と消滅
保険関係の成立
適用事業の保険関係は、
事業が開始された日又は適用事業に該当するに至った日に成立
します。これは届出とは全く関係なく当然に成立します。
保険関係が成立した事業は、10日以内に「保険関係成立届」を提出します。
(一元適用のケース)
そうではない → 労働基準監督署長
(二元適用のケース)
雇用 → 公共職業安定所
労災 → 労働基準監督署長
名称、所在地等変更届
変更を生じた日の翌日から10日以内に労基監督又は公共職業安定所長へ提出。
保険関係の消滅
さて、保険関係は始まったばかりですが試しに終わらせてみましょう。
事業が廃止となってしまいました! → 保険関係はその翌日に消滅です。
消滅の場合はやけにあっさりして届出などは不要です。ややこしいのは暫定任意適用事業つまり、頼んで保険に入れてもらってる人です。労災保険の消滅には労働者の過半数、雇用保険は3/4以上の同意が必要です。
暫定任意適用事業のこと
【労災保険】
労災の暫定任意適用事業を覚えているでしょうか。「農林水産」「個人経営」。農水産については5人未満、林業は常時労働者がゼロで年間300人しか雇わないものです。
このとき、暫定任意適用事業は労働者の過半数で加入になります。ですが、事業主がやりたいといえば同意などはいりません。労災は労働者の負担がないからです。
消滅について、過半数の同意が必要。
【雇用保険】
雇用保険の暫定任意適用事業を覚えていますか?「農林水産」「個人経営」「5人未満」です。同意は1/2以上必要となっています。雇用保険は労働者も保険料を負担しますので厳しめに作られていて、加入希望があったのにそれを無視すると罰則があります。
消滅について、3/4以上の同意が必要。
【注意:人数の減少】
平成18年 徴収法(労災) 問8 肢C
労災保険の保険関係が成立している事業がその使用する労働者の数の減少により労災保険暫定任意適用事業に該当するに至ったときは、その翌日に、その事業につき労災保険の加入につき厚生労働大臣の認可があったものとみなされる。
もともと労災にいて、人数が減って暫定任意になってしまったパターン。
答えはマル。そのままスルッと認可がおります。もともと労災だったわけですから自然に移行するわけですね。ただし、翌日というのが注意点です。