労働安全衛生法とは?
労働安全衛生法は、
労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的
とする法律です。
「事業者」は労働基準法の「使用者」と定義が違うので、その点が出題されることもあります。
労働安全衛生法では、「事業者」は、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と定義されている。
答えはバツ。安衛法の事業者は単に「事業を行う者で、労働者を使用するもの」です。ただ労働基準法の場合は「使用者」だったので、同じ言葉が違う意味で使われているわけではなく、わかりやすいといえます。違う言葉なので普通に違う意味だということです。
安全衛生管理体制
総括安全衛生管理者
さて、ここからは労働者の安全を守るために設置された役職を見ていきます。事業規模や事業種によって配置する必要があるかどうかが変わるという部分が、最も鬱陶しい部分です。安衛法は暗記科目だといわれるのももっともです。
で、まず最初に出てくるのがリーダーさんです。総括安全衛生管理者です。事業者から「はい、お前やってね」と選ばれてはじまることになるこの役職ですが、先述したようにすべての事業で用意しなくてはいけないわけではありません。
平成19年 労働安全衛生法 問8 肢E
事業者は、総括安全衛生管理者に、労働安全衛生法第28条の2第1項又は同法第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関することを統括管理させなければならない。
こちらが総括安全衛生管理者のお仕事です。管理ですね。デスクにでっぷり座っている感じをイメージしていただくとよいと思います。彼らには巡視義務はありません。つまり職場を見て回る必要がないということです。
さて、続いては問題の「ワシの事業もそれ必要なん?」のチェックです。
平成19年 労働安全衛生法 問8 肢A
製造業に属する事業者は、総括安全衛生管理者を、常時100人以上の労働者を使用する事業場ごとに選任しなければならない。
安衛法の問題って、一見して「知らねえよ馬鹿ァ(´;ω;`)」というのが多いのですが、まぁ知らないですよね。製造業だったら100人だなぁなんて必然的な結びつきがあるわけでもありませんし、覚えるしかありません。
けど実は、これ覚え方があります。
- 屋外作業→100人
- 屋内作業&商業→300人
- それ以外 →1000人
です。はい、それでは製造業は何人でしょうか → 300人です。というわけで上野問題はバツ。
平成20年 労働安全衛生法 問8 肢A
事業者は、常時150人の労働者を使用する清掃業の事業場においては、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。
これはマル。所詮覚え方なので、自分の中で折り合いをつけながら問題を解いてください。
平成20年 労働安全衛生法 問8 肢C
事業者は、常時250人の労働者を使用する自動車整備業の事業場においては、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。
これはバツ。自動車整備業は300人です。
あと、総括安全衛生管理者になるために免許とかはいりません。事業の実施を統括管理していればよいとされています。
【選任時期】
出題されたことはないようですし、テキストにも目立って載ってませんが(発展扱い)、ワンポイントレッスンです。総括安全衛生管理者をいつお役所こと所轄労働基準監督署長にご報告にあがるかですが、
「遅滞なく」
です。とにかく急げよという意味です。
また事業規模が増えたりして選任しなさ~いとなった時は
「14日以内」
に選任しないといけません。
- 「選任しなさ~い」→14日以内→「報告せんかい」→遅滞なく
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安全管理者
労働者の「安全」にかかわる仕事をすることになっている人です。総括安全衛生管理者よりもアクティブに動きます(巡視義務。但し頻度は規定されていない)。そのため、資格要件も厳しくなってます。
安全第一ということで、安全管理者をおく義務は事業規模50人以上! 細かくいうと事業の種類によって安全管理者おかなくてもいい場合もありますが、まぁ50人以上って覚えるのが先決です。50人いりゃ大抵おきます。
※詳しくいうと、総括安全衛生管理者をおく事業(但し1000人以上のケース)においては安全管理者を置きません。いわゆる「その他の事業」ですね。
平成20年 労働安全衛生法 問8 肢B
事業者は、常時50人の労働者を使用する旅館業の事業場においては、安全管理者を選任する必要はない。
はい、バツ。50人いたらとりあえず用意しましょう。
平成22年 労働安全衛生法 問9 肢A
常時50人以上の労働者を使用する製造業の事業者は、安全管理者を選任しなければならないが、安全管理者は労働安全コンサルタントのほか、第1種安全管理者免許又は安全工学安全管理者免許を有する者の中から選任しなければならない。
太字みたいな話はなかったのでバツ。
で、安全管理者は先述のように労働安全コンサルタントに頼むことができますが、安全管理者が2人以上いる場合は一人を除いて全員に「ここだけで働いて」と頼んでOKしてもらわないといけません。
そんで、あんまり事業規模がでかくなると専任の安全管理者が必要になります。専任っていうのはそこの事業場だけで働き、しかも勤務時間の大部分をその業務に費やしてる人のことです。逆に言えばさっきまでは片手間でもよかったわけですね。
衛生管理者
総括安全衛生管理者、安全管理者の次は衛生管理者です。事業規模は安全管理者と同じく50人以上からです。人数によっては衛生管理者の数も増やさないといけないんですが、とりあえずは「50人以上」!ということを覚えましょう。
お仕事は、もちろん衛生面の管理です。安全面は対策を決めたらあとは「気を付けてやれよ」としかいいようがないですが、衛生面は定期的なチェックが不可欠です。そこで毎週一回、作業場を見回ることになってます。安全管理者のほうは頻度は決められていませんでしたね。
平成16年 労働安全衛生法 問9 肢C
衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
答えはマル。毎週一回、しっかりチェックしましょう。
衛生管理者になるためにはきちんとした資格が必要です。安全管理者になるための資格を覚えているでしょうか。学歴→実務→研修or労働安全コンサルor厚生労働大臣が決める の3つでしたね。でも衛生管理者は違います。
となってます。免許重視、って感じで覚えるといいと思います。1に関してはもうちょっと細かい規定がありますが、そんな細かいことはあとでいいです。
平成22年 労働安全衛生法 問9 肢B
常時50人以上の労働者を使用する労働者派遣業の事業者は、衛生管理者を選任しなければならないが、衛生管理者は労働衛生コンサルタントのほか、大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校(これらと同等と認められた一定の学校等を含む。)において理科系統の正規の学科を修めて卒業し、その後その学歴に応じて定められた一定の年数以上労働衛生の実務に従事した経験を有する者で、衛生に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって、厚生労働大臣が定めるものを修了したものの中から選任しなければならない。
はいバツ。衛生管理者は免許重視!
さて、安全管理者と同様に2人以上のコンサルに衛生管理を頼む場合はほぼ全員を「うちだけで働け」という風にお願いしておきましょう。
また、1000人を超えたり、500人でも有害業務をする人が30人以上いる場合は少なくとも一人を専任(衛生面でガッツリ働かせる)にしないといけません。この場合の有害業務はまぁ「うわぁ有害やな」という雰囲気で決めていいと思いますが、何故かここでは深夜業は有害業務になっていません。ここだけの例外です。
平成17年 労働安全衛生法 問10 肢A
常時500人を超える労働者を使用する事業場で、深夜業に常時30人以上の労働者を従事させるものは、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。
こんな感じ。マルしそうになりますが、深夜業は有害業務ではないのでバツです。
安全衛生推進者
さて、安全管理者も衛生管理者も50人以上からでした。総括安全衛生管理者の設置も一番少なくて100人でしたから、50人以下の場合は一度もやっていないことになります。50人未満だったら一体どうするのでしょう?
10人以上~50人未満のとき、
- 屋内作業&屋外作業&商業 → 安全衛生推進者
- それ以外 → 衛生推進者
を置きます。運送業は安全衛生推進者を置きましょう。屋内屋外については総括安全衛生管理者の記事をご覧ください。まぁ大抵は安全衛生推進者です。
で、この安全衛生推進者は総括安全衛生管理者みたいなもんで、ズテンと椅子に座っているイメージでいいです。巡視義務とかないです。
常時30人の労働者を使用する旅館業の事業場においては安全衛生推進者を選任しなければならないが、安全衛生推進者は少なくとも毎月1回作業場等を巡視しなければならない。
バツ。巡視義務とかないです。
常時30人の労働者を使用する運送業の事業場の事業者は、安全衛生推進者を選任する義務があるが、安全衛生推進者養成講習を修了した当該事業場の労働者であれば、他に資格等を有していない場合であっても、その者を安全衛生推進者に選任し、当該事業場の労働災害を防止するため必要な業務を担当させることができる。
講習受ければまぁ誰でもいいです。マル。
平成20年 労働安全衛生法 問9 肢B
事業者は、安全衛生推進者を選任したときは、その安全衛生推進者の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知しなければならないが、その選任に関する報告書を所轄労働基準監督署長に提出する必要はない。
マル。報告書とかいりません。ただ、周知はしないといけません。
産業医
安全管理者、衛生管理者と来て今度はお医者さんです。こっちも事業規模は50人から。3000人を超えると2人産業医を用意しないといけません。
平成16年 労働安全衛生法 問9 肢D
産業医は、少なくとも毎月1回(産業医が、事業者から、毎月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2月に1回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
答えはマル。同意を得ていないときは毎月1回は作業場を見て回らないといけません。衛生管理者の場合は週に一回でしたね。産業医はこうやって見て回って、衛生管理者の人に「こうこうしたほうがいいぜ」と助言をすることができます。
ただし、安全管理者に助言できるとは規定されていません。引っ掛けとしてたまに出ますので、出たときは一度は引っ掛かっておきましょう。それまでは忘れてしまっていいでしょう。
産業医というぐらいですから、そこらへんにいるただのオッサンがやっていても仕方がありません。
常時50人の労働者を使用する自動車整備業の事業場の事業者は、産業医を選任する義務があるが、厚生労働大臣の指定する者が行う労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修を修了した医師であれば、他に資格等を有していない場合であっても、その者を産業医に選任し、当該事業場の労働者の健康管理等を行わせることができる。
答えはマル。産業医は名前の通り医師でなければなりません。しかも「研修」「労働衛生コンサル」の資格を持っているなど、病院にいる医師とは違い、その職場に合った知識があると認められる医師でないといけません。
平成17年 労働安全衛生法 問10 肢B
深夜業を含む業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場にあっては、その事業場に専属の産業医を選任しなければならない。
答えはマル。原則として専属は1000人からですが、有害業務を行わせている500人以上の事業場も専属を用意しないといけません。
作業主任者
さて、これまでに「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」といったような「総括安全衛生管理者」という大将に指揮される人々をみてまいりました。基本としてはこれで終わりなのですが、ちょっと特殊な事情で(でもよく見かける)設置しなければならない人のことをみていきましょう。それが作業主任者です。
作業主任者は危険で有害な作業を行う作業場に置かれます。この人は安全管理者などとは違い、現場で実際に働いている人です。いわゆるリーダーさんみたいな人ですね。
- 作業主任者になるためには単に「慣れてます」では駄目で、免許か講習が必要です。
- 危険で有害な作業ってたとえばなんやねんという話が当然出ます。大抵は普通にあぶねえなと感じるものなのですが、たまに「なんでそれに作業主任者がいらないわけ?」というのも出るので要注意です。
平成29年 労働安全衛生法 問10 肢D
動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場において行う当該機械による作業
プレス機械! あぶねえなあ。というのでマル。でもなぜか4台だったら作業主任者はいらないそうです。まったく意味がわからないですが、受け入れるしかありません。
平成29年 労働安全衛生法 問10 肢E
屋内において鋼材をアーク溶接する作業
溶接! あぶねえなあ。 でもこれはバツ。ガスじゃなくて電気の力で溶接するので問題ないそうです。何をいってんのかよくわからないですが、受け入れるしかありません。
特定元方事業の場合
これまではすべての事業に適用される基本についてみてきました。事業規模と事業の種類を見ながら「うちは総括安全衛生管理者が必要だな」とか言うわけです。ここからはそれに加えてさらに、安全衛生管理体制を付け加えなければならない事業について見ていきましょう。
元方事業者というのは「一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの」のことで、要するに仕事の全部を内部で処理してるわけではない事業者のことです。
特定元方事業者というのは、元方事業者でしかも「建設業」or「造船業」をやっとる人のことです。建設現場で無関係な組織の人たちがそれぞれの仕事をやってるわけですが、そこで労働災害が起きないようにするためには指揮者が必要だと考えられているわけです。
その指揮者のことを「統括安全衛生責任者」といいます。
- ずい道等の建設
- 橋梁の建設
- 圧気工法による作業
の場合は30人以上の規模、それ以外は50人以上の特定元方事業で設置義務があります。ずい道ってのはトンネルのことです。
平成20年 労働安全衛生法 問10 肢A
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が同一の場所で混在して仕事をすることによって生ずる労働災害を防止するため、労働安全衛生法施行令第7条第2項で定める仕事の区分により、統括安全衛生責任者を選任しなければならないが、この場合、その労働者及び関係請負人の労働者が常時40人のずい道の建設の仕事については、統括安全衛生責任者を選任する必要はない。
答えはバツ!トンネル工事は30人からです。
統括安全衛生責任者は実施を管理する人であれば別に資格はいりません。ただしたまに作業場を見て回る必要があります。
さて、総括安全衛生管理者と似たような名前ですが、特に建設業の場合にはこっちの体制にも「元方安全衛生管理者」というのを用意しなければなりません。資格は学歴→実務です。
下請のほう
ここまでが元方事業者の安全衛生管理体制。でも下請けのほうも人を出さないといけません。それが「安全衛生責任者」です。この人は統括安全衛生責任者と連絡して関係者との調整を行います。
それ以外
さて、先ほどから30人以上とかいっていますが、それ以下の場合はどうするのでしょうか。こういうときは「店社安全衛生管理者」を選任します。
- トンネル
- 橋梁
- 圧気工法
のときは20人以上30人未満です。
委員会
さて、事業者が講ずべき安全体制についてはこれまでに書いてきたとおりです。
次は労働者側で職場の安全を考える「委員会」について見たいと思います。
安全委員会
安全委員会は、①危険防止対策、②再発防止対策、③その他危険防止の重要事項について調査し、意見を述べる役割があります。その対策でええのんかというところを見るわけですね。
委員会の委員に選ばれるのは、
- 総括安全衛生管理者
- 安全管理者
- 安全に関する経験を有するものから事業者が指名した者
です。どれをとっても結局事業主が指名した者というのが印象的です。「これでなにが『労働者側で職場の安全を考える』なんだよ」と言いたくなりますね。しかし1番以外の委員の半数については、労働組合・それがない場合は労働者の過半数に推薦された人を指名しなければならないことになっています。
- 総括安全衛生管理者を指名しなくてもいい事業規模においては、事業の実施を管理している者又はそれに準ずる者。
- 安全管理者がいない場合はありません。というのも安全委員会の設置規模は50人以上からだからです。大まかにいって屋内&屋外作業の事業は50人、それ以外は100人以上といってよいでしょう。
衛生委員会
50人以上の事業場は衛生委員会を設置しなければなりません。安全委員会の場合と同様に、こちらは事業者の衛生対策について調査審議し、意見を述べる役割があります。
委員は、
- 総括安全衛生管理者
- 衛生管理者
- 産業医
- 衛生に関する経験をもったひと
から構成されます。だいたい安全委員会の場合と似てますが産業医もいることにはちょっと注意ですね。
安全衛生委員会
で、まあ見て来たとおりどっちも似たようなもんなので、どっちも作らないといけない場合は一括した「安全衛生委員会」を設置することができます。
事業者が労働安全衛生法第17条の規定により安全委員会を設置しなければならない場合、事業者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときを除き、その委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
推薦に基づき指名でマルだ、と言いたいところですが違います。こういう引っ掛け問題作るんだなあと感じです。厳密にいうと「委員の半数」ではなく「1番の総括安全衛生管理者を除いて、委員の半数」です。
平成16年 労働安全衛生法 問9 肢A
事業者は、安全委員会を毎月1回以上開催するようにしなければならない。
答えはマル。衛生委員会のほうも同様です。
特定機械等
これまでに安衛法による「管理体制」を見てきました。でも安衛法はそれだけではありません。管理体制はいわば実際に作業するうえでの対策でしたが、安衛法には作業する前の段階から規制があります。危険な機械(特定機械等)に関するルールです。
特定機械の種類はこんな感じ。
- ボイラー
- 第一種圧力容器
- 3トン以上を吊り上げるクレーン
- 3トン以上を吊り上げる移動式クレーン
- 2トン以上を吊り上げるデリック
- 1トン以上を持ち上げるエレベーター
- ガイドレールの高さが18メートル以上の建設用リフト
- ゴンドラ
ああ、面倒くさい。安衛法が嫌われるのはこういうところだと思います。覚えづらくてしょうがないですが、要するにボイラー&なんか持ち上げるやつです。
この面倒くさい一派(特定機械等)を製造するには面倒くさい流れがあります。細かいことは省いて大体を見ていきましょう。
まずは「都道府県労働局長の許可」です。作ってもいいかいと聞いて、いいぜと言われないといけません。お許しが出たらガコンガコンと製造し、で、完成。すると「都道府県労働局長等の検査」が入ります。等、となっているのは厚生労働大臣から登録を受けた検査機関が検査することがあるからです。
(1)移動式特定機械の場合。検査終了後は「検査証の交付」があります。で「性能検査」に入ります。
(2)固定式特定機械等の場合。検査終了後は固定場所にドカンと設置して、今度は「労働基準監督署長の検査」が入ります。で「検査証交付」→「性能検査」ですね。
固定式のほうが一段、検査が多いわけですね。これが原則的な流れ。たとえば建設用リフトはなんちゃら~とか、こっちは都道府県労働局長の検査いらない~とか色々ありますが鬱陶しいので過去問で全部覚えましょう。
平成25年 労働安全衛生法 問10 肢A
フォークリフト(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)は、労働安全衛生法第37条第1項の規定に基づき、製造しようとする者が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けなければならない。
答えはバツ。「えっ、持ち上げるやつなのに」と思われたでしょうが、フォークリフトは特定機械等にあたりません。特定機械等はカタカナの名前ばっかですが全部4,5文字なのでフォークリフトみたいな長い名前はありません。フォークリフトを「リフト」と略して書くことはありえないので大丈夫です。
平成25年 労働安全衛生法 問10 肢B
作業床の高さが2メートルの高所作業車(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)は、労働安全衛生法第37条第1項の規定に基づき、製造しようとする者が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けなければならない。
持ち上げるっちゃ持ち上げてますが、特定機械等に漢字のものなどありません。ありますけど、第一種圧力容器とかいうわけわからんやつだけです。答えはバツ。
平成25年 労働安全衛生法 問10 肢E
つり上げ荷重が5トンの移動式クレーン(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)は、労働安全衛生法第37条第1項の規定に基づき、製造しようとする者が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けなければならない。
持ち上げ得意なカタカナ先輩なので特定機械等ですね。覚えるべきなのはクレーンは3トン以上ということです。答えはマル!
【定期自主検査】
お上がやる検査のほかに、事業者は自分で検査をしないといけません。対象は政令で定められており、これにもやはり暗記が必要です。
平成30年 労働安全衛生法 問9 肢A
事業者は、現に使用している動力プレスについては、1年以内ごとに1回、定期に、労働安全衛生規則で定める自主検査を行わなければならないとされているが、加工材料に加える圧力が3トン未満の動力プレスは除かれている。
答えはバツ。動力プレスの定期自主検査は正しいですが、3トン未満がどうとかいう規定はありません。また、フォークリフトも定期自主検査の対象です。もう特定機械等がどうとか関係なく大抵の機械は検査をしないといけない感じですね。
特に危険なものは「特定自主検査」といって、ちゃんとした資格を持った人がきちんとチェックしないといけません。フォークリフトも実はそのひとつです。
就業制限
きちんとした機械であろうが、きちんとした奴が乗らないとヤバイ機械になります。
そこで安衛法では、
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者(登録教習機関)が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他所定の資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない
としています。要するに免許受けるか講習受けろということです。
言ってしまえばこれだけなのですが、過去問では実に多様な「知らねえよ」と呟きたくなる問題が溢れています。
作業床の高さが5メートルの高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務は、高所作業車運転技能講習を修了した者でなければその業務に就くことはできない。
答えはバツ。原則通り考えれば「講習じゃなくても免許があればいいんでしょ」でバツですが、これがバツの理由は5メートルではなくて10メートルだからです。原則通りやれば一応答えにたどり着けるのでありがたいですが、逆パターンで来られたときは恐ろしいですね。
また、「登録教習機関」というのも重要です。
平成21年 労働安全衛生法 問10 肢A
フォークリフト運転技能講習を受講しようとする者は、当該技能講習を実施する所轄労働基準監督署長に技能講習受講申込書を提出しなければならない。
答えはバツ。労基のボスに言うんじゃなくて登録教習機関に言わないといけません。
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安全衛生教育
安全衛生教育には、
- 雇い入れ時・作業内容変更時の教育
- 特別教育
- 職長教育
があります。安全衛生教育は作業手順や機械の取り扱い方などを教えるものです。もちろん、常時使用する人だけではなく全労働者に行います。
【特別教育】
特別教育というのは、危険有害な作業をする人にする教育です。教育したよという記録を3年間保存することが定められています。
職長教育というのは、まあリーダーさんへの教育です。責任者なわけですから、普通の労働者とは受ける教育が違うっていうことで、大体1番と同じです。
平成22年 労働安全衛生法 問10 肢E
運送業の事業者は、新たに職務に就く職長に対して、作業方法の決定及び労働者の配置に関すること、労働者に対する指導又は監督の方法に関すること等について安全衛生教育を行わなければならない。
意味がまったくわからないのですが、運送業の場合は職長教育は不要だそうです。答えはバツ。法律はこういうことがあるので、そういう意味でも過去問はやっておいたほうがいいです。
労働安全衛生法第60条に定める職長等の教育に関する規定には、同法第59条に定める雇入れ時の教育(同条第1項)、作業内容変更時の教育(同条第2項)及び特別の教育(同条第3項)に関する規定と同様に、その違反には罰則が付けられている。
しかも、職長教育は別にやらなくても罰則がありません。何故? 答えはバツ。
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健康診断
さて、「管理体制」「委員会」「機械の準備と、機械を使える人」「教育」と来ました。次は「健康診断」です。
- 一般健康診断
- 特殊健康診断
- その他の健康診断
この三種類です。
一般健康診断
一般健康診断というのは常時使用(週の所定労働時間の3/4)する労働者について雇い入れる時に行うものです。11項目の検査項目がありますが、ごく普通のものばかりです。肝機能検査、血中脂質検査などは少し珍しいでしょうか。他は身長・体重・血圧・尿検査などなど、まあやったことあるやつです。
平成17年 労働安全衛生法 問9 肢D
一般健康診断の検査項目としては、胸部エックス線検査、血圧測定、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査等の検査項目以外に業務歴の調査も含まれている。
答えはマル。どんな業務をしてきた労働者かもチェックします。これも検査項目のうちで特殊なものと思います。普通は業務歴の調査が健康診断に含まれるとは思いませんからね。
- 雇い入れのときにやる一般健康診断を受けたら、次は一年以内ごとに定期的に「定期健康診断」を受けることになります。検査項目は似たようなもんで、一般健康診断とほぼ同じです。
- ある種類の業務については6月ごとに定期健康診断しないといけません。これを「特定業務従事者の健康診断」といいます。
- 半年以上海外に飛ばされる労働者は健康診断を受けないといけません。これを「海外派遣労働者の健康診断」といいます。
- また食堂又は炊事場で働くひとは雇い入れのときに検便による健康診断を行わなければなりません。また、これは定期的にやる必要はありません。これを「給食従業員の健康診断」といいます。
平成17年 労働安全衛生法 問9 肢B
事業者は、強烈な騒音を発する場所における業務に常時従事する労働者に対しては、当該業務への配置替えの際及び6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
ギャンギャンうるさいところで働くのはヤバいので特定業務です。答えはマル。これが特定業務従事者の健康診断にあたります。なんと深夜業も特定業務に当たります。深夜業は体をいわせますのでなるほどという気がします。
事業者は、高さ10メートル以上の高所での作業に従事する労働者については、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、労働安全衛生規則に定める項目について健康診断を実施しなければならない。
高所での作業は特定業務にあたりません。答えはバツ。
特殊健康診断
一定の有害業務については、上記の11項目だけではなく医師による特別コースがあります。有害な業務なので健康診断は6か月ごとです。
有害業務の中でも、歯やその支持組織に影響するような場合は歯科医師による健康診断を受けます。逆に言えばさっきまではずっと歯科医師ではなく、「医師」だったわけですね。
派遣就業のために派遣され就業している労働者に対して行う労働安全衛生法に定める医師による健康診断については、同法第66条第1項に規定されているいわゆる一般定期健康診断のほか、例えば屋内作業場において有機溶剤を取り扱う業務等の有害な業務に従事する労働者に対して実施するものなど同条第2項に規定されている健康診断も含めて、その雇用主である派遣元の事業者にその実施義務が課せられている。
さぁ、長くて面倒くさい、法律の問題らしい問題です。要するに派遣労働者の健康診断は派遣先と派遣元のどっちがやるねんという話です。
答えは、 一般健康診断→派遣元、特殊健康診断→派遣先 です。
派遣元は特殊健康診断の結果をコピーして保存し、労働者に通知をする役目です。
面接指導
健康診断のほかに面接指導というチェックもあります。めちゃめちゃ働いてて疲れ切ってる人にやる「長時間労働者への面接指導」であったり、フツーに働いてる労働者についても「ストレスチェック」があったりします。
長時間労働者というのは、
休憩時間を除き一週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者
のことです。当たり前みたいに言ってますが、こういう人たちが存在してること前提で法律が定められているところに「すごみ」を感じます。
ちなみに80時間はもともと100時間でしたが、平成31年の法改正で80時間になりました。
その他、法改正の一覧がまとまっているのがこちら。
平成30年 労働安全衛生法 問10 肢A
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、ストレスチェックを行わなければならない。
答えはマル。ストレスチェックは年一で行ってください。
安全衛生改善計画
都道府県労働局長は「この作業場やべえなマヂ…」となったら改善計画を作成するように指示することができます。指示されたら事業者はやれやれといいながら(?)計画を作成します。
次の場合には「はい、できましたよ」と教えてあげないといけません。
- 特定機械等などの設置移転変更するとき
- 大規模な建設業
- 建設業or土石採取業
1,2は開始の30日前まで。3は14日前までとちょっと遅くなってます。
大規模建設業は国のトップ・厚生労働大臣おじさんに言わないといけませんが、1と3は労働基準監督署長でいいです。
届出があったら審査をして、場合によっては差し止めや計画変更を命令します。