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ABC理論入門(この気持ちはだれの責任?)

 本日のテーマはABC理論です。

 いろいろ入門書に手を出してみて、この理論を一言でまとめるとすると、「Bを忘れるな」ということになるでしょうか。

 

 

 ABC理論のABCとは、Activation events・Beliefs・Consequencesのことです。日本語では「出来事」「ビリーフ」「結果」と訳されています。B:ビリーフがいまいちわかりませんが、一度Bを忘れてみることにしましょう!

 すると、出来事と結果だけが残ります。

 

 具体例を出しましょう。

ある日、クジラちゃんがテストで悪い点をとってしまいました。

クジラちゃんはテストが大嫌い。

テストのたびに憂鬱になります……。

 

 【出来事:テスト、結果:憂鬱】

 このような思考の図式をACモデルといいます。しかし「Bを忘れるな」と言うように、わたしたちはここで何かを忘れてしまっているのです。それがBeliefsです。ごく単純にいえば、「テストで悪い点をとったら最悪だ」というビリーフを持っているクジラがいて、そして実際にテストが来たからこそ、クジラはイヤな気分になったわけです。

 すなわりBeliefとは出来事に対する価値評価的な考え方のことであって、C(結果)はビリーフを根本にもつ悩みのことです。その感情を作り出しているのは、そういうBeliefを持っている自分自身だというわけです。殴られて嫌な気分になるのも、殴ってきたのは処罰されるべきではありますが、嫌な気分を作り出したのはあくまで自分です。

 

 このような観点から私たちの心理を説明していくのがABC理論です。

 

A:出来事

 前回見たように、A:Activating eventsのことです。これはあるビリーフのきっかけとなる状況のことで、幅広く様々なものが出来事に当てはまります。実際の状況、解釈、推論。さらには過去の経験を思い出すこと、将来。イメージ、夢。

 大きく分類すれば出来事は「事実に基づくもの」と「解釈や推論に基づくもの」があります。事実に基づくとは、実際に観察された以上のことを言わないことです。たとえばにんじんが窓のほうへ歩いていき、顔を外に向けているとします。あなたはにんじんの背中を見ながら、

 「にんじんは外を見ている」

 と言うのは解釈に属します。何故なら、実際に外を見ているところをあなたは見ていないからです。目を閉じているかもしれません。一方で、

 「にんじんは窓のほうに顔を向けて立っている」

 と言うのは事実に基づきます。

 

 『解釈とは手許にあるデータを越えてものを言うこと』なのです。

 では推論とは何かといえば、感情体験をともなう解釈のことです。「あいつは私を馬鹿にしてる」というのは推論のひとつです。『推論とは、手許にある事実を越えた、個人的に重要な文章記述』です。

 

B:ビリーフ

 ビリーフは、出来事に対するその人の態度を反映した認知です。

 しかし、ビリーフと出来事の違いはどこにあるのでしょうか?

 

(1) ビリーフは評価的

 善し悪しを判断するのがビリーフです。これにより事実・解釈・推論のうち、事実と解釈は明らかにビリーフと同じ概念ではなくなるでしょう。問題はビリーフと推論の識別ということになるかと思います。

 これについて、識別は難しいけれども「不可能なわけではない」とされています。

 

 たとえば「妻は隣に住む男と浮気するだろう」という出来事(推論)があったとします。そしてそれが「妻が浮気をしたら僕は耐えられない」というビリーフを引き起こしたとしましょう。

 このビリーフが推論ではないのは、「僕」がこれ以外のビリーフを抱くことができたという点です。「浮気をしても、妻が一人で寂しいよりは良い」とも思えたということです。

 要約すると、解釈は手元にある事実を越えるもので、たいてい当人にとって重要なものではない。したがって、非評価的である。推論もまた事実を越えるが、たいてい当人にとって重要な問題を含んでいる。したがって、評価的要素をもっている。しかしながら、ある推論についていくつかの異なるビリーフが考えられることからも、推論は情報不足ゆえビリーフにはなりえないのである。一方、ビリーフは評価を下すのに正確な情報をもっているので、完全に評価的なのである。

論理療法入門―その理論と実際

 

※そうとはいえ、著者の記述に反してあまり区別の役には立っていないようです。たとえば浮気をするだろうという推論が、妻と隣人との仲睦まじい様子を目撃したことによって起こったとすると、「浮気される!」以外に「良い友達になれそうだ」とも思えたはずだからです。これならそもそも出来事に評価的要素を含ませず、推論をビリーフに含めたほうがいいような気もしますが、……。

 

 出来事:事実判断(解釈含む) → ビリーフ:価値判断(出来事⇒感情・価値)

 

 となったほうが三段論法めいていて理論的にはスッキリするのでは?

 

 さて、ビリーフは「ラショナル」と「イラショナル」に分類されます。それぞれ健康な考え方と、不健康な考え方を意味します。

 

<ラショナル・ビリーフの特徴>

「~に越したことはない」」主義/願望志向

  1.  柔軟性がある : 状況の変化に適応しやすい
  2.  論理性がある : 筋が通っており、他のラショナル・ビリーフとも整合的
  3.  現実性 : 現実に合っている。
  4.  有用性 : 人生の目標達成のたしになる。

<イラショナル・ビリーフの特徴>

「ねばならぬ」主義

  1.  頑固
  2.  非論理的
  3.  非現実的
  4.  非有用

 

  •  たとえば願望・欲求ビリーフはラショナル。:「できれば仕事で昇進したい。しかし、昇進しなければならぬ」。しかしちょっとしたことでイラショナルになることには注意が必要。:「できれば仕事で昇進したい。だから、なにがなんでも昇進しないといけない」。
  •   反悲観的なビリーフもラショナル。悪いことがあっても「100%悪い」とは考えません。「1~99%悪い」ぐらいの範囲にあるのです。
  •  欲求不満高耐性ビリーフもラショナルです。これは欲求が実現できない場合の耐性が高いビリーフです。:「苦境に直面した。……でも私は死なないし、これが続いても将来幸せになれないと決まったわけではない」。
  •  受容的ビリーフもラショナルです。人間なのでたまにはミスをしますし、ミスが続くこともあります。他者もそうです。:「会社の決定はよくないと思う。でも悪い会社だと断言はしない」

 

推論

出来事のうちでも特殊なものが「推論」と呼ばれました。これは見えている以上のものについて述べるもので、当人にとって重大な問題を含むもののことでした(「妻は浮気をするだろう」)。感情の大部分は推論によって生じ、その推論が出来事となり既存のビリーフを呼びだし、あるいはそのうち推論自体がビリーフとなります。

 問題となる感情は主に否定的感情です。

 否定的感情は建設的か、非建設的かで2つに分けられます。この分類は誘発されたビリーフがラショナルか、イラショナルの違いです。本に載っている例を見てみましょう。

 

【例1】非建設的=不安

A: 私は運転免許の試験に失敗するかもしれない

B1:私は運転免許の試験にパスせねばならない

B2:もし運転免許の試験に失敗したら、私はアホだという証明になる。

C:不安

論理療法入門―その理論と実際

【例2】建設的=気がかり

A: 私は運転免許の試験に失敗するかもしれない

B1:私は運転免許の試験にパスしたい。しかし、必ずしもパスせねばならぬということではない。

B2:もし私が運転免許の試験にパスしなくても、失敗する人間として自分を受け入れることができるし、アホでもない。

C: 気がかり

論理療法入門―その理論と実際

 

 不安と気がかりには大きな違いがあります。

  • 不安は、「うまく運転するためには何が必要か」よりも、「自分がいかに運転が下手か」に焦点を当てさせ、注意集中を妨げる。
  • 気がかりは、具体的に何をするかに注意が向けられ、結果的に失敗を減らす傾向にある。

 

 もちろん、感情は非常に複雑なもので、いつもひとつだけ起こるとは限りません。だからそのひとつひとつを取り上げて、それをCとして、いくつかのABCを描くことができます(感情の整理)。

 

 

論理療法入門―その理論と実際

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