本日は「社会不安」を整理していきましょう。
社会不安障害については先日記事にしました。しかし、「障害」にはいたらずとも社会不安は誰もが感じているものです。
carrot-lanthanum0812.hatenablog.com
社会不安の4タイプ
社会不安は「人前で」という状況が常にくっつきますが、それをさらに4つに分けることができます。たとえば次のようなシーンを想像してください。あなたはどれに困ることが多いでしょうか?
- 人前で発表したり、演技・演奏・競技をする状況
- よく知らない相手と話をする、異性と会話を交わす
- 他人に何かを要求する、自己主張をする
- 他人に見られながら日常的な行為をする
上の四つを眺めてもらえればなるほど、たしかに社会不安は誰にでもあるんだなということがわかります。とはいえ、感じる社会不安の人口比は1→4にかけて少なくなっていくので「社会不安のピラミッド」なんて呼ばれたりします。
1,2,3,4で感じる不安は他人とのどういう関わりで感じるのでしょうか。
次の図をご覧ください。
社会不安は、〈身体反応〉〈行動〉〈認知〉の三つの次元に影響を及ぼします。
その影響があまりにも大きく生活の障害になっているものを精神疾患と診断するわけですが、それにも「社会不安障害」と「回避性人格障害」の二種があります。病気というほどでもない場合はそれぞれ「あがり症」「内気」と呼ばれます。
- 社会不安障害は、自分ではそうなりたくない、と思っています。パニックに陥いるほどの激しい苦しみを感じます。
- 回避性人格障害は、あまりにも不安が強すぎるので「自分はこういうやつだ」と回避することをむりやり正当化します。
対人関係療法でなおす 社交不安障害:自分の中の「社会恐怖」とどう向き合うか
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遂行不安
他人から低く評価される不安を「遂行不安」と呼びます。ほとんどの人がこの種の不安を感じたことがあるそうです。遂行不安には四つのパターンがあります。
注目すべきなのは「会話」が入っていないことだと思うのですが、どうでしょう。いずれも『自分の能力を相手に示す』ような場面になっています。
他人から見透かされる不安
これは「相手につまらない人間だと思われたくない!」と思うがゆえの不安です。
私たちはみんな、対人関係において、自分が許容できる相手との〈距離〉というものを持っている。そして、その〈距離〉の限界は――その時々の状況によっても異なってくるが――「これ以上相手に近づくと、自分の内面が見透かされてしまう」と感じるところにセットされている。
遂行不安と違って、これは〈距離〉の問題なのです。
このように分けてみると、いろいろわかってきます。
にんじんが以前「評価不安」だと言っていたのは(完璧主義の病根としての「評価不安」 - にんじんブログ)、「他人に見透かされる不安」だったのでしょう。自分が駄目なやつだと思われたくない、というのは誰にでもあるもので、しかも完璧主義者にとっては非常に強いものです。
身体反応
これは実に多様です。もっとも身近なものだと思われるのは、人前に出ると手が震えたりすることです。自分の意志とは関係なく、動きます。
身体反応があまりにも極端に現れると「パニック」になります。どの部分に症状が出るかはひとそれぞれですが、いくつか例をあげてみましょう。
行動
これには3つパターンがあります。
- 他人とのコミュニケーションがぎこちなくなる
- 不安を感じる状況を回避する・逃避する
- 極度に消極的になる・攻撃的になる
(1)が少しわかりづらいから詳しく見ておきましょう。
認知
最後に〈認知〉です。これはものの見方自体が変化してしまうものです。
これはほとんど反射的なもので、パターン化された「思い込み」です。
そうにちがいない、そうにきまっている。
という形式を持っています。分類すれば、次の通り。:
- 自分自身に対する思い込み
- 他人の評価に対する思い込み
- 他人の反応に対する思い込み
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社会不安は誰でも感じるものですが、その症状の程度によっては病気だとされます。
回避性人格障害は「あまりの不安の強さから対人関係を回避する行動が習慣化し、そういう行為をむりやり正当化しようとしてしまう」(他人がこわい―あがり症・内気・社会恐怖の心理学)ものです。
そしてこれは是非シェアしておきたいのですが、「自力で改善するか、治療を受けるか」を選択をするためのアンケートがあります。YESの数を数えてください。
YESが6個以上なら「その〈社会不安〉は自力で改善できると思われる」。6個未満なら「専門家の治療が必要だと思われる」にあたります。
ただのあがり症なのか?
- あがり症の人は「前」に強い不安を感じるのですが、「最中」になるとごくふつうの人たちと同程度の不安になります。「後」には気持ちが楽になり、すぐに普段の状態に戻ることができます。同じような機会が増えるほど不安がやわらいでいきます。
- そうでないの人は「最中」により強い不安を感じます。そのせいで「最中」にパニックに陥ってしまい、「後」には恥ずかしさを感じへとへとに疲れ切ります。同じような機会が増えても決して不安はやわらがず、むしろ高まっていきます。
面接試験などで本番前はものすごく緊張していたのに、実際入ってみると「あれ、意外とそうでもないな……」と思ったことはないでしょうか?
ただの内気なのか?
- 内気は、他人から無視されるのが怖いが、他人に受け入れてもらいたい気持ちがある。他人に親しげに接してもらえると安心する。たくさん人がいるところでは気おくれを感じる。
- そうでない人は他人から攻撃されたりするのが怖く、他人に自分の存在を忘れてもらいたい。他人に親しげに接してもらえると困惑し、不安を感じる(「これは本心なのだろうか?」「いったいどうすればいいんだ?」)。たくさん人がいるところではパニックに陥る。
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