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にんじんと学ぶ「ニュートン力学」 ニュートンの運動法則

 本日のテーマはニュートン力学です。

 

 相対性理論によって「古典力学」という位置づけにはなったが、ニュートン力学は依然として中心的役割を果たしている。日常的な物理現象はすべてこの力学のもとに理解されるし、そう日常的ともいえない惑星ほどの巨大な対象であっても変わらない。この理論の不全さが露呈するのは銀河ほどのサイズに至ってからだと思ってよい。

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ニュートンの運動法則

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 第一の法則は、慣性の法則とも言われる。

 地球が自転しているならば手から落とした物体の位置はズレるはずである。しかし実際はそうはなっていない。だから地球は自転などしていない―――と主張されることがあった。しかし慣性の法則はこれを否定する。物体は地球と同じように回っていて、たとえ手から離したとしてもそのまま動き続けるのである。

 

 第二の法則は、運動方程式などと呼ばれたりする。

 ある物体にF1ニュートンという力を作用させる。このとき物体の速度は変化するが、この変化を加速度といい、α1と表そう。今度はF2ニュートン、それに応じてα2、……一般にFnニューンの力に対してαnの加速度を得たとしよう。

 この時、どのnに対してもFnをαnで割ったときの値が一定に、しかもそれぞれ等しくなるのである。これが第二の法則である。この一定の値は物体によって異なるが、力や加速度とは関係なく定まる。

 

 しかし、いったいこの値は物体の何によって定まるのだろうか? 手で押したからか、近くに何かがあったからか、素材が問題なのか、……様々なことが考えられるが、驚くべきことにたった一つの要因に依存することがわかった。それが質量である。

 そして質量が大きければ大きいほど、同じ力でも生じる加速度は小さくなる。このことを以て、その定数の値を、質量mに対して、1/mとおけば実験とうまく適合することが理解されたのである。すなわち、

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 が成り立つ。

 

 第三の法則は、作用・反作用の法則とも呼ばれる。

 これはすなわち、机の上に乗った辞書は机に対して力をかけているが、逆に机のほうも辞書に対して同じだけの力をかけている、という法則である。しかしながら、実は電磁的な力になると、この法則が成り立たなくなることが分かっている。

 この法則は、その例外にわれわれが達するまではこのままの形で通用するが、電磁的な力を含めた法則のさらなる一般化の機会を待っているのである。

 

『第一の法則』不要説

 運動方程式を見てみよう。物体に力が作用しないとき、加速度は当然ゼロになる。つまり物体の速度は0のままか、等速度運動を続けるのである。すなわち、これは第一の法則(慣性の法則)を表現している。つまり第一の法則は第二の法則に含まれ、必要ないように見えるのだ。

 しかし、第一の法則は必要である。そしてそれは、単に第二の法則をF=0、F≠0で分割したという意味ではなく、必要なのである。

 

 慣性の法則は『粒子に力が作用していないとき、粒子が静止又は等速度運動』と簡単に書いている。しかし実のところその点が問題となる。

 たとえば観測者であるあなたが、車に乗って離れていく誰かを見つめているとする。車が動くのは力を加えているからだ、というのは当然のことで、アクセルを吹かすのをやめれば加速をやめ等速度運動を始めるでしょう(摩擦を抜きにして)。

 一方、運転手はどうだろう。運転手から見ると、あなたは車とは逆向きに運動していいる。しかもそれは何の力も加えられていないにも関わらず。運転手から見れば、車の外の世界は慣性の法則が成り立っていないのです。

 

 即ち、もしも運転手を原点としてあなたの位置の変化を記述すれば、あなたは力を加えられてもいないのに加速する物体になっている。逆にあなたを原点に車の運転を記述すれば、そこでは確かに慣性の法則も運動法則も成り立っている。

 ニュートンの運動法則が成り立つような座標系を慣性系と呼び、そうでない座標系を非慣性系と呼ぶ。慣性の法則は、慣性系の存在を保証し、その保証された慣性系上において運動方程式が記述されるのだ。

 

 上述の話を要約すれば、『慣性系の存在を保証する』というのは何から見ても動いていない観測者の存在を保証するのと同じことである。実際のところ、地球上にいる我々は厳密を言えば慣性系にはいない。地球は自転しているから、地球外から見下ろせば我々は車に乗っているのと変わりがないのだ。

 

 厳密には我々は非慣性系で運動を見ており、慣性の法則運動方程式が常に成り立つとは限らない世界に立っている。非慣性系で運動を記述する場合、慣性の法則が成り立つように『見かけの力』を導入する。これを慣性力と呼ぶ。

 幸い、地球の自転に乗った我々の立ち位置は近似的に慣性系とみなすことができる。しかし地球の自転によるコリオリの力など、少し大きな視点で見ると慣性系が崩れることもある。

 

その他の注意点

  •  古来、石が地面に落ちるのは石自身の性質によるものだと考えられていた。ここではそれが明確に否定され、物体以外の力Fによって運動状態が変化することが運動方程式からわかる。
  •  また、運動法則を述べるにあたって、『そこで用いられている言葉を正確に定義する必要があるのではないか?』という意味のことを言ったのは物理学者のマッハであった。しかし、無暗に言葉を定義するとその適用範囲が狭められてしまう恐れがあることから、こうしたことは行われていない。例えば、石が下向きに落ちていく運動に対して運動方程式が成立するが、もしここで厳密に公理化してしまえば、たとえば石を投げた時の運動や惑星の公転運動などその他の多くの適用事例をこぼしてしまう恐れがある。
  •  質量という概念は、第二法則によって出現する。つまり質量とは元来「動かしづらさ」であった。これは力という概念が手でものを押した時の感覚を源にするのと同様である。注意が必要なのは、第二法則によって質量が生まれながら、質量を説明するには第二法則がなければならない、ということである。マッハはこの循環を嫌ったが、今では質量は動かしづらさに限らず、適用範囲を広げている。
  •  異なる二つの物体に同じ力Fを加える。それぞれの質量をm0、m1とし、生じる加速度をα0、α1とすれば、F=m0α0=m1α1が成立する。右の等号からm1について整理すれば、m0を単位としてm1の値が定まるだろう。これを慣性質量と呼ぶ。
  •  よく言われるように、質量は重さとは異なる。それは質量が動かしづらさの度合いであるのに対して、重さとは手にのしかかる『力』であるからだ。
  •  運動方程式において等号(=)がでてきた。大まかにわけて等式には「恒等式」「方程式」「定義式」の三種がある。恒等式は(A+B)^2=A^2+2AB+B^2のように、代数的な操作によって論理必然的に成立する。定義式はふつう、左辺の項を右辺の項を以って新たに与える。そして方程式は、「自然現象が勝手きままに起こるものではなく、ある特定の制限条件によって規定されている」ことを示す。運動方程式はこの典型的な例である。数学の立場からすれば運動方程式など2階微分方程式の一例でしかないが、物理学においては斯様に特別な意味を付与されていることを鑑みても、物理学と数学の差異は判然としている。*1

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 一次元運動

一次元的な運動、つまり一本の直線状で起こる運動である。適当なところに原点Oをとり右が正の方向であるとしよう。時刻tにおける点の位置をx(t)とし、この点の質量をm、右向きにかかる力をFとすれば、ニュートンの第二法則(運動方程式)より、以下の式が成り立つ。

 ところで、加速度は位置を二階微分したものであり、速度は位置を一回微分したものであることが知られている。

なぜ位置を微分すると速度になるんですか? - 位置をx = f(t)[時間 t の関数]... - Yahoo!知恵袋

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※ところで、ニュートン力学において力Fを決定する一般的な法則は存在しない。

 フックの法則や万有引力の法則はニュートン力学の体系の外から持ち込まれたものである(しかし、ニュートン力学は「力」一般に成立するので、もちろん適用できる)。

 

 この運動方程式によって点がどのように動いていくのかが判明する。つまりこれをx(t)に関する微分方程式であると見て、これを解けばよいのである。その解き方は微分方程式論によるが、ともかくたったこれだけで点の運動が未来永劫定まる

 

 もっとも簡単な場合。所詮mとFは定数なのだから、二階微分してF/mになるx(t)を探せばよい。積分を使えば恐ろしく簡単な問題で、拍子抜けしてしまう。つまりある定数c1,c2が存在して、x(t)=c1+c2t+(F/m)t^2である。

 しかしもちろん、これだけで話が済むはずはない。多くの場合、力Fは点の位置によって異なる値をとる。つまりFがx(t)を変数にした関数であった場合、微分方程式は容易に解けなくなり、近似をするなどなんらかの手法をとらなければならない。Fがxに依存したとしても容易に解ける例も存在するので、個別に見ていくしかない。

 

 

 

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エネルギーとは、運動している物体が他に影響を与える能力をいう。ダンプカーと赤ん坊の両方が壁に突っ込んできたとき、壁が砕け散るのはダンプカーのほうである。この差をどのように言い表すかが問題となる。

 仕事

 そのためにはまずは「仕事」という概念に取り掛からなければならない。

 仕事は力が物体に与えた影響の度合いである。もし物体Fに力Fを加えて、力の方向にsだけ動いたとすると、仕事はFsと定義される。力の方向と動いた方向が異なる場合は下図のように力を分解して仕事を計算する。

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 さらに一般的にするなら、力Fをばねで引っ張るなどして時刻によって値が変化する関数にしてしまうことが考えられる。sまで動くまでの時間をt0→t1として、その区間を微小区間に分割していくのである。その微小区間は力が同じだと見なせるぐらい細かくとるので、上述の力一定の場合の仕事の定義が使える。物体の位置の変化をx(t)とすれば微小区間Δtにおける移動距離はx'(t)Δtと書ける。

 微小区間ごとの仕事をt0からt1まで足し合わせると、下図になる。Θiは時刻ごとのF(t)の力の方向を、物体が動いた向きに直したものである。

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 ここまで来ると、さらに一般化したくなる。つまり重たい物体を引くロープをぶんぶん振り回しながら色々な方向へ色々な力を掛けるものだ。しかしここまで来るとさすがに鬱陶しいから、やめておく。

 動いたほうの力と、動いた距離を掛けるという方針自体は変わらない。一般的な曲線Cを考えてその曲線の値に応じて力Fが定まるとして積分すればよい。

 

 

※物理学においては仕事を定義せよと言われてどれを述べてもよいことになっているらしい。一番最初のもっとも簡単な場合を基礎に徐々に適用範囲を広げている。数学なら最も一般的な定義から始まるだろう。最初の例などは曲線Cが直線で、しかも力は常に一定で、力の方向と動く方向が合っている極めて特殊な例という扱いがなされる。

※要するに一番最初の例が仕事の「コア」だということである。

 

運動エネルギー

 質量mの物体に力Fをかけたとしよう。

 物体の位置をx(t)で表し速度をv(t)と書けば、運動方程式より、

  mv'(t)=F

 が成り立つ。両辺にv(t)を掛ければ、

  mv'(t)v(t)=Fv(t)

 となる。左辺は1/2m[v(t)]^2を微分したものと同じであるから、下図のようになる。

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 T(t)として左辺の微分の中身をとろう。距離sだけ動かすのに時刻t1→t2とすると、

 T(t2)-T(t1)=F(x(t2)-x(t1))=Fsということになる。

 つまり、 Fs = T(t2) - T(t1) だということがわかる。

 

 仕事とは、力が物体に与えた影響の度合いであり、

 エネルギーとは、物体が他に与える能力のことである。

 上式は、T(t2)がT(t1)だけ減少することによってFsという量の仕事を与えたことを示す。これをもって、運動エネルギーを次のように定義する。

 

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物理入門〈上〉力学・電磁気・熱 (1981年)

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*1:まぁ神の意志にかなった唯一つの微分方程式がどうだのとかいう本の記述は、にんじんにはよくわからないが……