自己鏡像認知とは、鏡に映った自分を自分だとわかるというものです。
生きられた〈私〉をもとめて: 身体・意識・他者 (心の科学のための哲学入門 4)では、自己鏡像認知ができるようになるために、次が挙げられています。
- 自己の身体と鏡像とを対応させ、両者の連合を積み重ねる だけでは十分ではない。
- 「見るー見られる」という経験を他者と重ね、「そこ」にいる他者の視点から見て自分がどう見えるかを学習する必要がある。
- 架空の外的視点から思い浮かべた自己の身体イメージを保持している必要がある。
- 身体イメージと鏡像との対応を理解することで、自己鏡像認知ができるようになる。
①について、ふつうはこれだけで自己鏡像認知はできるようになると考えがちです。「手を挙げた、向こうも手を挙げた。あっ、これは私だ」と言う風に。でもそうはならないといいます。
その理由としては、そもそもそんなことをしようと思わないから。「うわ、なにこれキモ……」と思うことはあっても、「よし、いっちょ確かめてやるか!」とはならないんですね。動機づけられさえすればできるようになることは上記の本でも認められていますが、大概の場合、うまくいきません。
鏡に映るものを他者を見るようにして見、他者に見られているようにして鏡に映るものを見るという経験が、自己を生じさせているということです。
それがなくなれば自己が自己でなくなるようなもの。「身体」「意識」「他者」のみっつだと著者は言います。