にんじんブログ

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メモ:ファッションのこと

ファッションとはなにか

 「衣服を着るとはどのような意味をもった実践なのか?」という問いから始めるのがわかりやすいと思う。実践はいつもわれわれのなんらかの了解を表現している。たとえば寒い日は長袖にするだろうし、コートも着るだろう。かといって、上も下も、真っ赤統一する人は少ない。男はふつうスカートを履かないが、それは典型的な男らしさや女らしさに対する了解を反映しているのかもしれない。 その意味では、たとえばピアスや、入れ墨、整形、あるいは表情なども同じことがいえるだろう。わたしたちはこの種の「了解されていること」をファッションと呼んでいるような気がする。だから全裸でいることも、ファッションの問題として立ち上がってくる。どれほどトレンドに興味のない人間でも、ファッションの渦の中にいる。

 注意しなければならない。この「了解」というものは、非常に茫漠としている。たとえば「男らしい人間はスカートを履かない」などとはっきり認識されている場合は、きわめて少ない。もしそのように認識したとしても、それは了解を自己解釈したに過ぎない。わたしたちは文化のなかにあり、そこで過ごし、世界観を得る。成人する者はこの崖から飛び降りねばならぬという文化で生きている人々は、そのことを当たり前だと思い、それをこなさなければだめだと刻み込まれているのである。だからこそ、このように言われるのだと思う。『ファッションとは、衣服のことではない。それは、ひとつの考え方のことだ。あるいは、私たちの時代特有のユニークな世界観と言い換えてもいい。ファッションとはものの見方、あるいは、世界の捉え方なのだ』(ファッションの哲学)。だが完全に文化に隷属しているわけではない。自覚し、反対することもできる。ファッションは主体的なものであるが、完全にそうというわけではない。

 

 

ファッションの哲学

ファッションの哲学

  • 作者:井上雅人
  • 発売日: 2020/01/14
  • メディア: 単行本