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にんじんと読む「バカの研究(ジャン=フランソワ・マルミオン)」🥕 はじめに+特徴

 

はじめに

「疑いは人を狂わせ、確信は人をバカにする」。

バカはわたしたちより物知りだ。わたしたちがどう考え、どう感じ、何をすべきか、誰に投票すべきかさえ知っているらしい。わたしたちがどういう人間で、何がわたしたちにとってよいことか、わたしたち以上にわかっているらしい。もしバカの言うことに反論でもしようものなら、相手はこちらをさげすみ、ののしり、直接的または間接的に傷つけるだろう。

「バカ」の研究

  このあたりの記述を読んで、この本がいう「バカ」がなんとなく見えてくる。特にTwitterなどやっているひとからすれば。この記述は実に気持ちよく、次のように続く。曰く、バカをなんとかしようとするのはムダ! なぜかって、バカはこう変わらなくちゃと確信しているわけだから、こっちまでバカになるから。しかもバカは攻撃されると、やはり自分の考えは正しいのだとよけいに思いこむ。

 つまりどういうことかって、バカは増え続ける、っていうことだし、しかもどんどんバカさ加減が増していく。現代はバカがそこかしこに溢れ、群れをなし、ずうずうしい。虚栄心、ナルシシズム、空疎な精神、高飛車な態度がどんどん目立つようになってきている。バカたちが衝突し合う様子は対岸から眺めているのは甘美で味わい深いものだが、その見物がバカにばれたらバカの世界に連れ戻される。『付和雷同し、決して目立たないようにしなくてはならない。単独行動などもってのほかだ。バカたちは無実の者に罪を着せようとするからだ』(「バカ」の研究 p12)

 この本を読む者にとってもっとも大切なのは次の言葉だろうと思う。

もしあなたが本当に自分は賢いと信じ、平均的な人間より優秀だと自負しているとしたら、やがて運命の審判が下されるだろう。あなたはおそらく、自分が気づかないうちに立派なバカになっている。

「バカ」の研究

 

 

バカについての科学研究(バカの特徴)

 心理学では「人間がやってしまうバカな行動」をもちろん扱っている。たとえばエレベーターのボタンを連打するバカは、連打することで速度が変わると思っている。ああいうのを〈コントロール幻想〉というのだが、ともかくこういうふうに「バカな行動」は収集されているわけだ。だいたい、人間というのは複雑になると放り出すので、でかい数字とか平方根とかそういうのに弱い。数千人の兵士が死ぬより、一人の兵士が死んだほうが悲劇だと感じてしまう。前者は「統計」に変わる。

 さて、われわれの多くが共通してもっている信念というものがある。それが〈公正世界信念〉である。「すべての正義は報われ、すべての罪は罰せられる」という考え方のことだ。映画で仲間を裏切ったやつがたいてい死ぬのはそのためかもしれない。わたしたちが善いことを行おうとするのはこの信念に後押しされているところもあろうが、バカを引き起こすタネにもなっている。たとえば強姦された人に対して、「そんなところでそんな服装してたらそりゃ襲われるだろ!」と怒ったりするわけだ。バカにとっては被害者は天罰を受けたことになる。大バカ野郎は貧困さえも本人の悪行によるものと信じ切っており、そのような悪人に嫌悪感すら抱いている。

 バカの力の源は「信じる力」である。あるとき、無人のバイクが道路を走っていると報じられた。バイクの持ち主は振り落とされ、道路に横たわっていた。これをみて多くのバカが幽霊の仕業だと考えた。だが少しでも頭がよければジャイロ効果だとわかる。神秘的なことを信じる力とノーベル賞をとる力とは負の相関関係にあるらしい。

 われわれは自分の周りの状況をコントロールしたいと思っている。占いに頼ってしまうのも未来をつかみとるためだ。そして周りの状況をコントロールできているという幻想を抱き始める。『とりわけ、バカはその傾向が強い』(「バカ」の研究)。バカはサイコロで好きな目で出したいがために、無駄に力をかけてサイを放り投げる。バカは宝くじの番号を自分で選びたがる。もし宝くじが当たったら、バカは自分の数字選びがどのようなものだったかを嬉々として語るだろう。ゆえに、バカは精神的に健康である。心の病を患っている人はこの手の幻想を抱きにくい。

 要するに、バカはなんでもお見通しである。

  1.  「こんなところで一時停止する人なんてだれもいないっつうの!」(偽の合意効果=ほかのひとも自分と同じように考えるハズ!)
  2.  「やっぱりね。そうなるってわかってた」(後知恵バイアス=後になってからそれが予測可能だったとほざきがち)

 自信過剰な大馬鹿野郎から、逆に自信はあまりないけれどもおバカなことをしてしまうかわいい類のものまでバカには幅がある。これらバカたちに、〈自己中心性バイアス〉=自分の知識を基準にして他人の心理を判断することがかかると、次元の違うバカができる。彼は大バカで、自分がバカだとまったく気づけない―――仕事に失敗したのは同僚がカスだからで、バツ3なのは異性運に欠けているからだ、と大真面目に考える。スピード違反で捕まると運が悪かったなどとうそぶく。

 一般的に、能力が低いひとほど自分を過大評価しており、かつ自分の価値観を人に押し付ける。ともかくバカはすべてをお見通しなので、犬の飼い方まで指図してくる。自分は犬を飼ったことがなくても。彼等はなんだってお見通しなので、経済危機から抜け出す方法まで完璧に理解している顔をしている。

 つまりは、バカというのは心理学研究によっていろいろウワサされる〈傾向〉や〈バイアス〉を極端に誇張した人物のことだ。これらリストを揃えれば揃えるほどキング・オブ・バカの称号に近づく。バカの特徴は〈シニシズム的不信〉=人間の性質や行動について否定的信念をもつ。そんなの全部カスだからやめろとか、ジャーナリストはみんなごますり野郎とか、心理学者は全員詐欺師だとか、まぁそういうことを言う。このような傾向が強い「シニカルなバカ」は非協力的で疑り深いため、社会でステップアップする機会をのがし、平均以下の収入で暮らしている。

 

 わたしたちはバカを探知するレーダーを持っている。「良い部分より、悪い部分が目につきやすい」というのももちろんだが、「他人の行動を判断するときその人の性格なるものを重視する」(根本的な帰属の誤り)というのもある。これらふたつがわたしたちにとってのバカを発見し、バカを増やし続けているわけだ。なにがいいたいかというと「世の中バカばかりだな」というのも、思い込みのひとつかもしれないということだろう(自らがバカになることに注意せよ!)。

 

 

コロナとバカ(小学館新書)

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