にんじんブログ

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にんじんと読む「おしゃべりな腸(ジュリアエンダース)」🥕 ①

第一章 あなたの知らない腸の魅力

 人体は三本のチューブでできています。神経・血管・消化管。

 口から入って管をまっすぐ進むと、肺と枝分かれ。少し下ではまた枝分かれがあって肝臓へ。食道に胃を通り、遂に「腸」へ達します。神経が通ずる「脳」には注目が集まるのに、「腸」にはあまり関心が示されません。

 

 しかしながら、脳の機能に負けず劣らず、人間の「排便」は完璧に洗練された仕組みです。たとえば出口を見てみましょう。お尻の穴は動かすことができますが、これは「外肛門括約筋」によるものです。実はその奥にひとつ「内肛門括約筋」があることは知られていません。内側のものは自分の意志で動かすことができません。要するにあなたがオナラをしたいとき、そこが教室であることなど関係なく、内側の肛門括約筋が活躍しているわけです。一応話も聞いてくれますが(ガマンできるので)、内側の括約筋は頑固なので、なにがなんでも出そうとします。ガスかブツのどちらかはそのあいだ待合室で出番待ちです――――じゃあ、いつまでもガマンし続けたらどうなるのか? 内側の彼はやる気をなくします。便秘です。つまり便秘っていうのは、内と外の二人がケンカしているから起きるわけです。

 さて、腸で生成されたガスやブツを来たるべきときまでせき止めているのが「内肛門括約筋」でした。でも、来たるべきときがくるまで、彼だけで(つまり筋肉だけで)ブツやガスをせきとめているのでしょうか。いや、実はもう少し奥に進んでもらうと、別の筋肉があるのです。腸の終わり部分をギュッとしめつける筋肉です。コイツは立っているときと座っているときに締まるので、そのあいだは内側の括約筋は楽ができます。

 立つときと座るときって、それ以外になにかあるのか!

 といえば、「しゃがんでいる」ときです。そう、なんと和式トイレは太古から受け継がれてきた最も自然な排便方法なのです。現在の便座の登場は18世紀を待たなければでてきません。痔や便秘などは座りトイレの人たち以外にはめったにみられません。で、ブツが出ないからと言ってンーーーーと力んでいると、静脈瘤や脳卒中発作のリスクが高まります。んじゃあ洋式トイレをいますぐ和式にすればいいのかって、そんなことはありません。まずは便座に座り、足をなにかの台にのせ、上半身を前に倒してください。これがしゃがみ姿勢になっています。

 

 では次は「口」です。これは腸の入り口みたいなものです。口は唾液で濡れています。唾液にはカルシウム成分が含まれ、歯石ができるのもこのためなのですが、なんでわざわざカルシウムなど含ませたのでしょうか。それは唾液というのが血液をろ過してきたものだからです。赤血球が入ってない血液みたいなもので、人によって唾液の成分は異なります。ろ過してきたものに、唾液腺のところで鎮痛剤が加えられます。オピオルフィンといいます。口には神経がたくさん集まっているので、たとえば小さな傷でも口の中だとクソ痛かったりします。もしオピオルフィンが出ていなければそれがもっと激痛になっているわけです。

 唾液腺でいろいろ付与されるのですが、ムチンという成分も大事です。これは悪い細菌を叩きのめす成分です。口の中に唾液をためて、プーッとふくらませることが誰にでもできると思いますが、これはムチンのおかげです。ある程度の粘り気があるからこそ、ああいう芸当ができるのです。オピオルフィンもそうですが、こちらのムチンも少量だけです。すべての細菌を撃滅されては困るからです。

 さて、寝ているあいだはこの唾液がほとんど出ません。朝起きるとクサいのはこのためです。唾液が休んでいるということはムチンくんの警備が手薄なので、細菌が喜びます。だから寝る前と起きた直後に歯磨きをするのがいいのです! 寝る前に細菌の野郎を殺し、起きた直後に増えたやつを殺すのです――――同僚の口が日中でもクサい? それは細菌をうまく除去できていないからです。細菌がムチンの手を逃れているせいなのでガムでも噛んで唾液を出しまくればいいでしょう。それでも治らないときは、別に原因があるのかも。

 舌には根っこがあります。舌根といいます。そこには免疫組織がたむろしているブツブツがあります。その左右には扁桃腺が、そして上にも免疫組織があります。つまり入口の警護をしています。ところがこの扁桃腺というのがマヌケ野郎なので、舌のようにブツブツをつくったりせずにヒダヒダをつくっているので、そのあいだに異物が入り込んで炎症を起こすことがあるのです。口が臭い奴はこれが原因の可能性があります。だから歯磨きしようが何しようが関係ありません。もしかしたらあるときスッととれて一発でクサ野郎は卒業できるかもしれませんが、耳鼻咽喉科にいってもいいでしょう。YouTubeでも見ながら扁桃腺に綿棒でふれてみて臭いかどうかみてみましょう!

 

 さて、口が済んだので次は「食道」です。食道は胃の上部からちょっと右にずれていますが、これはげっぷをしまくらないためです。歩いただけで人の腹部には圧力がかかるのですが、ちょっとずれているおかげで、全圧力が食道にかからなくて済みます。空気の側からしてもまさか横に出口があるとは思わないのでしょう。

 「胃」は左乳首の下、右肋骨弓の下で終わります。案外上にあるわけですね。だからここより下の痛みは少なくとも胃ではありません。医者が見逃しやすい病気としてロエムヘルド症候群があります。これは胃にガスがたまって内臓の神経を圧迫するものです。気分が悪い、めまいがする、不安な気持ち、呼吸困難、などになりますが医者は気づきません。げっぷやオナラすれば状況が改善します。症状が慢性化しているときはガスの出にくい食事、アルコールなしなどが必要になります。アルコールは町内の細菌を千倍に増やします。

 胃というのは奇妙な形をしていますね。食道が右についていることはさっき話しましたが、左側がぷくっと膨らんでいます。なぜでしょうか。食道に水を流し込んでみましょう。水は胃の右側からはいって、右の壁をつたって、直接小腸にいってしまいました。次は固形物を流しましょう。右側から、ポンッと飛び出してきて、ドボンです。つまり、胃にいるべきやつをそこにいさせるために、あんな変な形をしているのです。

 

 

おしゃべりな腸

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