carrot-lanthanum0812.hatenablog.com
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ある単語を適切に使うためにはいっしょに使われる単語(「共起語」)についての知識が欠かせない。単に身に着けるのでも、上着なのかズボンなのか帽子なのか手袋なのかマフラーなのかで、いろいろの動詞が使われる。動詞の意味は目的語との共起関係で決まる。副詞もそうである。べたべたとさわるとはいっても、べたべたとふれるとは言わない。私たちはこうしたことを当たり前だと思っているが、たとえばpursueとchase(追いかける)の違いはわかるだろうか。pursueはcarrier,goal,degree,educationなどの抽象概念が共起目的語となりやすく、chaseはcat, rabbit, ballなどの物理的に動くものが共起目的語となりやすい。目的語の違いが動詞の違いを生み出している。逆に言えば、動詞の意味を理解しているというのはこのような共起関係を理解していることも含まれる。形容詞においても「固い意志」とはいうが「hard will」などとは言わない。strong、強い意志とは言う。
他にも単語のもつ頻度がフォーマルさを決めている。友達と学食に行って「メニューを選定しろよ」とは言わない。「選べよ」と言う。しかし学術論文で「メニューを選定させた」というのは当たり前なかんじがする。また、文脈としても適当だろう。そして「さす」といっても多くの意味があり、ヘビが「歩かない」のは「這う」からだと知っている。
以上のように、水面下にある知識は大変に多く、少なくとも語彙力が高いというためには次の知識が必要であることがわかる。
- その単語が使われる構文
- 単語と共起する単語
- 頻度
- 文脈
- 多義の構造、意味の広がり
- 単語の属する概念の意味ネットワークの広がり
語彙力があるというのは「頻度の低い、人の知らない単語をたくさん知っている」ということはではない。特に初学者は上の要素をまったく持っていない。母国語の場合は構文と名詞に注目し文脈から意味を考えるのに、外国語となると「cat → 猫」で終わる。私たちが目指すところは『ある文脈で言いたいことを表現するのにもっとも適切なことばが選べる』というところでもあるのだから、薄っぺらい板のような知識を、大きな氷山に変えていかなければならない。
というわけで、私たちは英語話者のスキーマを身に着けていく必要に迫られているわけだが、そのとき邪魔をするのはもともと持っている母国語である。aやtheの例もそうだが、そんなことは日本人は気にしてはいなかった。そして言われなければ気づくこともないのである。つまり、私たちが英語話者のスキーマを身に着けていくためには、絶えずそれを意識し、ズレを見つけ出さなければならない! ポイントは「意識」と「比較」である。
- 日本語スキーマを無意識に使っていることを自覚!
- 単語の意味を文脈から考え、コーパスで意味範囲を調べ、日本語でも確認!
- 日本語と英語を比較し、食い違いを見つけ、英語のスキーマを探す。
- ズレを意識しながらアウトプット
- これを続ける
英語スキーマを身に着けるためにおすすめされるのは、「単語の探究」である。
たとえばembarrassedと調べる。ググると「恥ずかしい」と書いてある。なるほど、はい終わり、で済ますのはよくない。さっきの六つの要素をひとつひとつ検討していくのが大切だ。特に①~③は重要である。
Cambridge Dictionary | English Dictionary, Translations & Thesaurusにアクセスして、embrrassedについて検索すると、feeling ashamed or shyという語義が出てくる。代表的な構文も、I was too embarrassed to admit that I was scared.と表示されている。
Embarrassed
feeling ashamed or shy
- She felt embarrassed about undressing in front of the doctor.
- She seemed faintly embarrassed to see us there.
- You have no idea how embarrassed I was.
- He was so embarrassed - his face went brick-red .
- She looked a bit embarrassed by all the praise.
- I was too embarrassed to admit that I'd forgotten.
ここではまず I was embarrassedといったように、be embrrassedやto,by,aboutなどに注目する。 be embrrassed+前置詞という構文だ。こちらも参考になる。
※ ここは実際、本を見ていただくのが一番と思います。