第一章 老化の概念
老化とは、成熟期以降、加齢とともに個体を形成する各臓器の機能あるいは各臓器をネットワークとして統合する機能が低下し、個体の恒常性を維持することが不可能となり、ついには死に至る過程を指す。
加齢とは生後から時間経過とともに個体に起こる、良いことも悪いことも含めたすべての過程を指す。
健康寿命とは、ある健康状態で生活することが期待できる期間を意味し、一般に「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指す。
老化は「不利」が関係するが、加齢には関係ない。
老化には、生理的老化と病的老化があり、後者は《老化の過程が著しく加速され、病的状態を引き起こすもの》をいう。たとえば骨量が低下していくのは生理的老化であるが、その速度には個人差がある。閉経や遺伝的・環境要因が関与して老化が加速した結果、骨粗鬆症(病的老化)になると考えることができる。また、脳の高次機能の低下は生理的老化だが、アルツハイマー病がそれに拍車をかける。二つの概念は境界があいまいな例も多い。
老化を評価する「老化度」の指標は、暦年齢を参照した、同年代の平均的数値との比較によって求められる。だが老化度を測定するたったひとつの指標などはなく、様々な側面から総合判定するのが一般的である。