にんじんブログ

にんじんの生活・勉強の記録です。

MENU にんじんコンテンツを一望しよう!「3CS」

にんじんと読む「なぜ心はこんなにも脆いのか?」🥕 ①

「なぜ自然選択は、私たちの体を病気に対して脆弱にするような形質を残したのか?」

 これがこの本の中心的な問いである――――「病気」は、絶対に進化学的に説明できない。なぜなら、その病気になることは進化的な適応の結果ではないからだ。だが、どうしてそれを避けられるような作りにしなかったんだろうという疑問は、提出し得る。

 心は非常に精巧で、設計者がいたならば賛辞が与えられるだろうが、同時に訴訟も起こされるだろう。あまりにも脆すぎるからだ。自閉症だ、依存症だ、統合失調症だ、社会不安障害だ、なんたらと、とにかく問題が起きる。ありがたいことかどうかはともかく、心には設計者などいない。心は自然選択によって作られた。だからその欠陥の理由は、「自然選択の限界」として示される。心だけでなく、体も含めて私たちの体が脆弱である理由を挙げてみよう。:

  1.  ミスマッチ:現代的な環境に対応する準備ができていない。
  2.  感染症:細菌やウイルスの進化のほうが早い。
  3.  制約:自然選択には限界がある。
  4.  トレードオフ:体のあらゆる機能には利点と同時に難点がある。
  5.  繁殖:自然選択は個人よりも繁殖を優先する。
  6.  防御反応:痛みや不安は脅威に対しては有用。

 一点目。誤解してはならないのは、原始時代よりも現代のほうがはるかにマシであるという点だろう。昔はちょっとの傷で死ぬこともあったし、妙な治療が施されることもあった。その前に単純に飢えて死ぬこともある。現代は私たちをこうした不幸から逃れさせてはくれたが、そのために産み出した道具によって慢性疾患が起きるという皮肉なことになっている。病院に行って患者に病気の原因を聞いたら原始人ではありえない理由を語られるのがほとんどだろう。喫煙・アルコール・ドラッグ等々による病気、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、肥満……。最大の恩恵が最大の元凶になったわけだ。精神疾患も例に漏れず、物質依存症や摂食障害注意欠陥多動性障害は近代社会でしか見られない。

 二点目。これは一点目とは違う意味で、自然選択が追い付いていない。

 三点目。自然選択は突然変異にすべて対処できるわけではないし、一度これでいこうと決めたら元に戻す方向へは舵を切れない。既成品を修正するのは容易ではなく、このために脊椎動物の目には「盲点」という無意味な欠陥が存在する。もしこれを治そうとしたら、何千世代ものあいだ、脊椎動物は目が見えなくなるだろう。

 四点目。三点目のため、既製品の欠点はいつまでも残る。

 五点目。自然選択が配慮するのは個人の幸福ではなく繁殖である。

 六点目。私たちを苦しめる病気の諸症状は防御反応である。肺炎になったら咳が出るようになっている。とはいえ、この反応は低コストで実現できるという生命維持方法のひとつであり、咳止めの薬を出されたからと言って即座に死ぬわけではない。むしろ席が止まったほうが私たちにとっては楽な場合がある。

 

 これら六つの要素を複合させたところに、精神疾患に対する脆弱性への答えがある。