にんじんブログ

にんじんの生活・勉強の記録です。

MENU にんじんコンテンツを一望しよう!「3CS」

にんじんの書棚「意識と自然(谷徹)」

「意識と自然」

 「フッサール現象学を学ぼうと思い、いろいろな本を読んできたが、なんかいまいちわかった感じがしないんだよな」という方におすすめの一冊。分厚いが、それだけの内容がある。まず現象学の五つの起源について語り、次に「対象」というものを深堀りしていく、最後に対象のなかでも特殊な「世界」を取り扱う順序になっている。

 現象学というのは、諸学問の基礎学である。そしてこの基礎学は『直接経験』によって基礎づけられる。学問は〈Sはpである〉を基礎に持つわけだが、これを『直接経験』をもって説明する使命が与えられているわけだ。すると現象学とは経験主義の一種なのかと誤解されるが、決してそうではない。経験主義は単なる事実的なことから普遍的なことを説明しようとするが、そんなことはとうてい望めるはずはない。彼らが見落としたものこそ””志向性””であり、””志向性””とは意識作用に本質的に含まれる或る関係なのである。たとえば紙に正方形を書いてテーブルに置いたとして、私たちはその正方形を正方形として実際に見ることはほとんどないだろう。つまりそれは正確にいえば、平行四辺形として見えるはずなのである。正方形が正方形として見えるのは、空を飛んで上から見た時だけに過ぎない。だというのに、私たちは平行四辺形を突破して正方形に至っている。平行四辺形という現出、正方形という現出者、この二項において現出が現出だけで、現出者が現出者だけで生じることはありえず、ここには必然的なつながりがあるのだ。たとえばマッハは見たままの風景を基礎に据えたが、その風景には平行四辺形だけしか見られない。私たちが受け取るのは実は「正方形」も含まれる。これによって、フッサールは単なる心理学主義と袂をわかち、学問のなかに必要な普遍性を直接経験によって持ち込むのである。