にんじんブログ

にんじんの生活・勉強の記録です。

MENU にんじんコンテンツを一望しよう!「3CS」

にんじんと読む「悪党・ヤクザ・ナショナリスト 近代日本の暴力政治」 イントロダクション

イントロダクション

 「暴力」は近代日本政治における原動力であり、そもそも近代日本の誕生からして暴力的だった。明治新政府の樹立は暴力が猛威を振るった結果である。また、誕生後も暴力がなくなったわけではない。むしろ荒々しい時代が始まった。抗議の声は暴力による活動となり(自由民権運動)、その後も特にロシア革命後の数十年は左翼活動家が国家主義団体や国家と衝突し、暗殺も頻発、そして軍の政治力が増大していく。

 こうした暴力と密接に絡み合ったのは、物理的暴力の使用に心得があり、暴力的であることが主たる存在理由となっている人々―――つまり無頼漢やヤクザである。彼らのことをまとめて「暴力専門家」と呼ぶ。

 本書は、日本の政治史の中心に暴力を置くことで、政治とはしばしば危険なものであり、従来考えられてきたよりはるかに暴力的なものであることを証明しようとするものである。

 本書で扱う一八〇〇年代から一九六〇年代初期までの日本は、「暴力的民主主義」というダニエル・ロスの言葉を使って表現しても差し支えないだろう。

悪党・ヤクザ・ナショナリスト 近代日本の暴力政治 (朝日選書)

 暴力専門家は、物理的な損害を加えることをもっぱらとする人間を指し、兵士・警察・武装した衛兵・犯罪者・ギャング・テロリスト・山賊・準軍事組織などを例とする。しかしここで注目しているのはむしろ、暴力の合法/非合法という枠組みを揺るがすような、暴力によって身を立てた非国家的主体である。