にんじんブログ

にんじんの生活・勉強の記録です。

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にんじんの書棚「すばらしい新世界」

 胎児の段階からさまざまな条件付けが施され、人々は激しい感情を抱くようなこともなく、自らの立場をすすんで受け入れる。彼らはまったく自分の思うように生きているのであって、楽しいと感じることや意義のあると感じる仕事に打ち込み、嫌なことがあればソーマという薬物で癒す。特別な関係の相手などおらず、異性を気に入ったならすぐにベッドに連れ込むし、そうすることが健全だとされている。彼らは死を単なる生理学的な変化だと考えており、死んで灰になってそれが撒かれ、肥やしになることを喜ぶ。若さはある時期から一定に保たれ、死を迎える施設では若い顔が並んでいる。そうして彼らは安楽に死ぬ。彼らの人生は幸福に満ち、不幸が入り込む余地がないように最初から設計されている。

 そんな世界で野人は言う。「僕は不幸になる権利を要求する」

 この世界にはたしかにほころびがあって、システムの枠から離れている人々や離れてしまう人々が存在する。だがそれはごく小さなエラーであり、大した問題ではない。問題なのは、私たちはこのユートピアを拒否できるだろうか、ということだ。