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にんじんと読む「生の肯定」 序章

序章

 本書の狙いは、ニーチェの哲学的プロジェクトについての一つの体系的解釈を明確に提示することである。

 ニーチェ哲学は、ばらばらのテーマを扱い中心がないとする人々もあり、逆に中心的な学説を特定し他のすべてをそれをもとに説明しようとする人々もある。しかしこうした体系的な説明を試みる人々はすべて、「生の肯定」をニーチェが自らの業績であると考えていたかについて十分に説明できていない。

 ニーチェはそもそも体系というものを反対していた。だが彼が拒絶している体系は、「ごくわずかな基礎的で自明な諸命題からいかにして認識の全体が導出されうるかを示すことによって、哲学的認識をよく基礎づけられ一切を包括するものたらしめようとする」ものだった。ここで提示しようとしている体系はそうではなく、「組織化され論理的に秩序付けられている」という意味で体系的である。つまり体系性には二つの区別がある。まず、何らかの哲学的学説をその原理とするものである。だがこうすることによってニーチェ思想の一部しか汲みだせないことになってしまっている。パースペクティズムを中心とすると力への意志は汲みだせず、力への意志を中心とすると永遠回帰を完全に無視することになる。ここで提示したいのは哲学的学説ではなく、「ニヒリズムという危機」に応答する必要によって決定された体系である。ニーチェの哲学は、ニヒリズムを克服する術があるのかないのか決定するところに眼目があるのである。