にんじんブログ

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「ミンスキー博士の脳の探検」

 どうして喜びや悲しみ、楽しみ、悲嘆などについての知識は、原子・海・惑星についての知識ほどには解明されてこなかったのか。それは私たちが日常的な社会生活にうまく適合するがゆえに信じている「おとぎ話」を生きているからである。このおとぎ話によれば、

私たちの心の中には、影響力のある生き物がいて、感情や考えをコントロールし、私たちのために重要な決定をしている。それは、《自己》または《アイデンティティ》と呼ばれている。そして、自分自身がどのように変わっても、《自己》も《アイデンティティ》も変わらないと信じられている。

あなたの”自己”は、あなたの感覚器官を使ってこの世界を認識している。そして、あなたの記憶の中に、学んだことを蓄積している。”自己”はあなたの”知性”を開発しながら、あなたのすべての欲求と目標を生み出す源となり、あなたのためにすべての問題を解決するのである。

ミンスキー博士の脳の探検 ―常識・感情・自己とは―

 このおとぎ話は《単一自己》と呼ばれる。この考え方は便利なモデルではあるが、自分自身を理解させない。そこが行き止まりである。:「次何をするかどう決めるのか?」「自己が決めます」。もっといえば、たとえばある心的状態を”喜ぶ”という単一のパッケージに詰めて満足することそのものが、行き止まりなのである。要するに、『心の状態の一つひとつが、多数の小さなプロセスを土台としている』と主張する。たとえば動物学者ニコラス・ティンバーゲンは、単純なIF(状況)→DO(行動)ルールの組み合わせによって驚くべき範囲にわたる動物のさまざまな行動が説明できると述べている。ここで作ろうとしている理論は、いろいろな心の状態がどのようにして私たちの脳の中にあるマシンから現れてくるかを示すものになるだろう。私たちは小さなスイッチを《思考素》と呼び、いろいろな心的状態をそれらスイッチのON・OFFの組み合わせによって生じるのだと説明するだろう。

 特定の思考素は決して切られることがない。呼吸・平衡感覚・姿勢維持などである。だがすべての思考素が同じ階層にいるわけではない。ここには社長や重役などというような、人間社会と同じような構造が見られるだろう。