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「STATUS AND CULTURE」

文化の大いなる謎

どうして人間はある特定の行動もしくは慣習をこぞって取り入れ、何年かするとさしたる理由もないまま別の行動もしくは慣習に一斉に乗り移るのだろうか?

STATUS AND CULTURE ――文化をかたちづくる〈ステイタス〉の力学 感性・慣習・流行はいかに生まれるか? (単行本 --)

ステイタスの基本原則

 文化がシステムとしてどのように機能するのか、どうして文化は時間とともに変化するのかを説明するための軸になる重要な概念は《ステイタス=社会における各個人の重要度を示す非公式な指標》である。ステイタスは人間の根本的な欲求とみなされている。その理由は、社会的に高い地位を得ると長い目で見た幸福感に影響を及ぼし、行動が刺激され、それ自体が目標となることが実証されているからだ。文化の大いなる謎を解き、しかもそれ自体で重要なステイタスについての議論が少ないのは、ステイタスの階層がピラミッド型であり、この階層化は社会悪だと大半の人が見なしていることも大きな要因だといえる(しかし残念ながら、人間社会で真に一人ひとりが平等であるなど一度たりとも実現したことはない)。社会階層について大っぴらに語ることは不愉快かつ無作法な行為で、立身出世主義者が広く嫌われるのはこのためである。だがステイタスこそが文化変化の””見えざる手””なのだ。『ステイタスと文化の背後には普遍の原則が存在する』(p.22)。

 ステイタスというものがもたらす恩恵についてはみんながわかっている―――ステイタスが高いと同じ内容の仕事をしても多くの注目と報酬を得るし、他者から口出しされることも邪魔されることもなくなる。希少な手段や物質を利用し、高いステイタスの人々が集まる社交場へも出入りでき、他者を支配することもできる。もちろん、《ノブレス・オブリージュ(地位ある者の責務)》があり、ゲーテは「好き勝手に生きること、これは平民の生き方だ。すなわち貴族は秩序と法を希求する」と書いている。DVしている最低最悪ミュージシャンでさえ自伝映画では聖人君子のように扱われ巨万の富を得、社会的義務などほとんど果たすことのないセレブリティに感化され、一般の人々もそれを目指そうとするが、ふつうは重い責任が伴うものだ。

 最近まで人々は《生得的地位》から逸脱することができなかった。現代社会の理想形は《獲得的地位》に基づく制度で組織化されたものだとされている。つまり「成果で測れ」というわけで、生得的地位に根差した制度は陰湿なものだとみなされている。

 《成果》は時代や状況において変わってくる。身体的な強さ、器用さ、そして勇気➡戦いの巧妙さ、集会における雄弁術➡芸術的な想像力、産業上の創意、科学における才能……。能力主義が広まった現代においては「教育資本」(いい大学)「職業資本」(医師・弁護士・学者)「経済資本」(所有している金)「社会関係資本」(人脈)である。個人的美徳や身体的魅力も資本構築に役立つだろうが、素敵で魅力的な人間はどの階層にもいるし、億万長者と付き合えても億万長者になれるわけではない。大物になるためには相当量の資本を蓄積し、しかも複数の資本を蓄積しなければならない。それが人間のランキングを安定させる。当たり前の事実だが、金持ちの家に生まれるほうがステイタスは得やすい。だというのに、いつでもステイタスを高めることはできるかのように社会は振る舞うので、人々は自分のステイタスに「責任」を感じている―――もっと身ぎれいにしろ、もっと学べ、もっと人当たりをよくしろ、もっといい仕事につけ、もっと働け、鍛錬しろ。実は最高位にいる人ですらさらに求める。高い教育資本を有するものは経済資本を求め、経済資本を持つものは社会関係資本を求める。そして誰もが、ちゃんとした段階を踏まずに、つまり自分と同じぐらいかそれ以下の資本しか持たないくせに高いステイタスを求めたり得たりするやつを「不当」だとみなす。

 あくまで上記は主流なステイタスであって、私たちは非常に多種多様な《二次的ステイタス集団》に属して生きている。たとえばサッカーがうまいことがステイタスになる集団もあれば、反社会的であることがステイタスになる集団もいる。大半の人間は生まれながらにして属しているステイタス集団にとどまり続けるが、ある程度高いステイタスをもたらしてくれる人間関係のほうに魅力を感じる。二次的ステイタス集団への加入は恵まれない個人がとる巧妙な戦略のようだが、しょせんはローカルなステイタスであるという事実があり、自尊心にとってはステイタスはグローバルなもののほうがよいと実証されている。これに頼るしかない人に比べ、富裕層はどちらも享受できる。

《ステイタスの基本原則》

  1.  わたしたちは高いステイタスを望み、低いステイタスを恐れる。
  2.  わたしたちは才能、後件、財産、正しい行いによって自身のステイタスを変えることができる。
  3.  わたしたちは身の丈の超えるステイタスを求めるべきではない。
  4.  わたしたちは自身をより高く評価してくれる集団に移ることができる

 

(つづく)