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【社会保険労務士】徴収法・労働保険事務組合とは

労働保険事務組合とは?

  •  労働保険事務組合とは、事業主の団体又は連合団体であって・一定以下の規模の事業からの委託を受けて・印紙保険料を除く労働保険事務を処理することのできるものです(徴収法33条)。

※基本的には組合に属している事業主からの委託にしか応えませんが、委託が必要であると認められる場合は委託することができます(施行規則62条)。

 

<委託できる事業>

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*1

 

 組合の成立

 事業主の団体は、原則として管轄公共職業安定所長を経由して管轄都道府県労働局長に提出し、厚生労働大臣の認可を得なければなりません。

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※通達によって認可基準が示されている。

 

 組合の運営が違法・不当である場合は厚生労働大臣は認可を取り消すことができます(33条4項)。

 

組合の効果

  •  政府は委託事業主に対してすべき通知を組合に対してすることができます。
  •  委託事業主が組合に支払った徴収金の金額を限度に、組合は納付の責任があります。
  •  追徴金又は延滞金の徴収においては組合の責めに帰すべき理由がある場合は、その限度で組合に納付の責任があります。
  •  政府は組合が納付すべき徴収金を、組合に滞納処分をしてもまだ残余がある場合に限り、その残余を委託事業主に払わせることができます。
  •  政府は組合の虚偽の届出、報告又は証明により不正受給があったときは当該給付を受けたものが連帯して全部または一部を返還するよう命ずることができます。それが失業等給付であった場合は不正受給額の2倍以下の額の納付を命ずることができます。

 

  •  政府は組合が納付すべき保険料を完納し、その納付の状況が著しく良好と認められるときはその組合に対して報奨金を交付することができます。

 7月10日時点で、常時15人以下事業の保険料合計95%以上が納付されているとき。

 → 前年度納付額2%に厚生労働省令で定められた額を加えた額(上限1000万円)

 

 

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*1:施行規則第62条第2項「法第三十三条第一項の厚生労働省令で定める数を超える数の労働者を使用する事業主は、常時三百人(金融業若しくは保険業、不動産業又は小売業を主たる事業とする事業主については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については百人)を超える数の労働者を使用する事業主とする」

雇用保険法まとめ【社会保険労務士】令和元年度

内容

(1)事務の管轄:施行規則

雇用保険法第38条第1項に規定する短期雇用特例被保険者に該当するかどうかの確認は、厚生労働大臣の委任を受けたその者の住所又は居所を管轄する都道府県知事が行う。 ⇒ ✖

 

 まずはこちら。

第八十一条 この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
2 前項の規定により都道府県労働局長に委任された権限は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所長に委任することができる。

 雇用保険は政府、つまり厚生労働大臣が管掌します。しかしお仕事いっぱいになってアップアップするので、81条を使って、よそに投げてます。

則1条
1 雇用保険法(昭和49年法律第116号。以下「法」という。)第81条第1項の規定により、法第7条(被保険者に関する届出)、第9条第1項(確認)及び第38条第2項(短期雇用特例被保険者)の規定による厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長に委任する

2 前項の規定により都道府県労働局長に委任された権限は、法第81条第2項の規定により、公共職業安定所長に委任する

5 雇用保険に関する事務のうち、公共職業安定所長が行う事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、適用事業の事業所の所在地を管轄する公共職業安定所厚生労働省組織規則(平成13年厚生労働省令第1号)第793条の規定により当該事務を取り扱わない公共職業安定所を除く。以下同じ。)の長(次の各号に掲げる事務にあつては、当該各号に定める公共職業安定所長)が行う。・・・

 

 「被保険者の届出・確認」が全部ハロワに投げられていますね。どこのハロワかというと、その事業所を管轄するハロワです(5項)。

 

雇用保険に関する事務(労働保険徴収法施行規則第1条第1項に規定する労働保険関係事務を除く。)のうち都道府県知事が行う事務は、雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業の事業所の所在地を管轄する都道府県知事が行う。⇒✖

 

 注意。今度は①と違って被保険者の届出とか確認じゃないです。

 

則1条

3 雇用保険に関する事務(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号)第1条第1項に規定する労働保険関係事務を除く。以下同じ。)のうち、都道府県知事が行う事務は、法第5条第1項に規定する適用事業(以下「適用事業」という。)の事業所の所在地を管轄する都道府県知事が行う。

 

 雇用保険の事務の基本がこちら。

第二条 雇用保険は、政府が管掌する。
2 雇用保険の事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。

 お仕事担当は厚生労働大臣都道府県知事です。

 厚生労働大臣は81条を使って都道府県労働局に投げることができますし、労働局は公共職業安定所に投げることができます。基本的にはこの四者が色々やるわけです。①で問題になった「被保険者の届出・確認」については大臣→労働局→所轄ハロワに巡ってきました。

 ②については都道府県知事がやる仕事です。都道府県知事といっても都道府県の数だけいるので誰がやるんだという話ですね。

 

 

介護休業給付関係手続については、介護休業給付金の支給を受けようとする被保険者を雇用する事業主の事業所の所在地を管轄する公共職業安定所において行う。⇒〇

 

 まず介護休業給付というのは雇用継続給付のひとつで、一般被保険者と高年齢被保険者が対象になる給付です。その事務を誰がするかというと、設問の通りハロワです。

則1条(色々消したり書き直したりしてます)
5 雇用保険に関する事務のうち、公共職業安定所長が行う事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、適用事業の事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長が行う。
一 受給資格者高年齢受給資格者及び高年齢求職者給付金受給者特例受給資格者及び特例一時金受給者並びに「給付制限の人」について行う失業等給付(法第10条第6項に規定する雇用継続給付を除く。第5号において同じ。)に関する事務

 

 ちなみに、

第十条 失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付とする。

教育訓練給付金に関する事務は、教育訓練給付対象者の住所又は居所を管轄する公共職業安定所長が行う。⇒〇

 

前と同じ。

 

未支給の失業等給付の請求を行う者についての当該未支給の失業等給付に関する事務は、受給資格者等の死亡の当時の住所又は居所を管轄する公共職業安定所長が行う。⇒〇

 

はいそうです。これは規則1条5項5号に書いてます。

まぁ要するに給付事務はハロワでやるってことです

 

(2)被保険者期間

 そもそも「被保険者期間」なるものが問題となるのは13条に、

十三条1項 基本手当は、被保険者が失業した場合において、離職の日以前二年間(当該期間に疾病、負傷その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上賃金の支払を受けることができなかつた被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかつた日数を二年に加算した期間(その期間が四年を超えるときは、四年間)。第十七条第一項において「算定対象期間」という。)に、次条の規定による被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、この款の定めるところにより、支給する。

 という規定があるためです。基本手当とは失業等給付のひとつですが、失業した時にもらえるお金ということで、雇用保険の中核を成しています。

 

 

 ①

一般被保険者である日給者が離職の日以前1か月のうち10日間は報酬を受けて労働し、7日間は労働基準法第26条の規定による休業手当を受けて現実に労働していないときは、当該離職の日以前1か月は被保険者期間として算入しない。⇒✖

 

 まずは雇用保険法第14条を見ましょう。

第十四条1 被保険者期間は、被保険者であつた期間のうち、当該被保険者でなくなつた日又は各月においてその日に応当し、かつ、当該被保険者であつた期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日。以下この項において「喪失応当日」という。)の各前日から各前月の喪失応当日までさかのぼつた各期間(賃金の支払の基礎となつた日数が十一日以上であるものに限る。)を一箇月として計算し、その他の期間は、被保険者期間に算入しない。ただし、当該被保険者となつた日からその日後における最初の喪失応当日の前日までの期間の日数が十五日以上であり、かつ、当該期間内における賃金の支払の基礎となつた日数が十一日以上であるときは、当該期間を二分の一箇月の被保険者期間として計算する。

  被保険者期間=被保険者であった期間なのですが、誰もがキリよく辞めてくれるわけでもないので、どう数えるかが法定されています。たとえばあなたが4/1に晴れて就職し、不本意ながら社会人としてスタートを切ったとしましょう。しかしちょうど一年経ってすぐ、5月10日に何もかもが嫌になり退職したとします。

 5/10:離職日ですので、資格喪失は5/11になります。

 その一か月前は4/11。3/11。2/11……と一か月ごとに区切り、

 

 4/1:就職⇒4/11⇒5/11⇒……⇒4/11⇒5/10:退職

 

 とバラバラにできます。最初の4/1⇒4/11の区切りに「賃金の支払の基礎となった日数」が11日以上あれば「一か月」とカウントできます。

 

 さて、問題となったのは10日間働いて、7日間は休業手当をもらいながら実際には働いていなかったパターンです。行政手引50504という行政の取り扱いマニュアルによると、

「賃金支払の基礎となった日数」には、現実に労働した日でなくても、例えば、休業手当支払の対象となった日、有給休暇日等が含まれる

 とされています。基本手当は被保険者期間が過去二年で十二カ月あればいいことになってますが、それは単に一年働けばいいというわけではないんですね。ややこしい制度ですね

 

労働した日により算定された本給が11日分未満しか支給されないときでも、家族手当、住宅手当の支給が1月分あれば、その月は被保険者期間に算入する。⇒✖

 

 今度は「「賃金支払基礎日数」が11日未満だけど、お金だけは一か月分もらってるで」というパターンです。働いてないけど給料だけは手当でいつも通りもらってるしカウントしてくれや、という要求ですが、まあ普通に考えてカウントしないでしょう。

 しかしながらそんなパターンは法律には書いていないので、行政のマニュアルで定まってます。

家族手当、住宅手当等の支給が1月分ある場合でも、本給が11日分未満しか支給されないときは、その月は被保険者期間に算入しない

 

二重に被保険者資格を取得していた被保険者が一の事業主の適用事業から離職した後に他の事業主の適用事業から離職した場合、被保険者期間として計算する月は、前の方の離職の日に係る算定対象期間について算定する。⇒✖

 

 そもそもですね、雇用保険では2つの事業所で被保険者になっちゃいけません。二重に資格を持つこと自体駄目なのですが、駄目だといっても「できちゃった」パターンがあるのが現実です。そういう場合算定はどうするかというと、行政マニュアルでは、「後の方の離職日でやるで」ということになってます。

 

最後に被保険者となった日前に、当該被保険者が特例受給資格を取得したことがある場合においては、当該特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であった期間は、被保険者期間に含まれる。⇒✖

 

第14条2項には被保険者期間には含めない例が示されています。

2 前項の規定により被保険者期間を計算する場合において、次に掲げる期間は、同項に規定する被保険者であつた期間に含めない。
一 最後に被保険者となつた日前に、当該被保険者が受給資格(前条第1項(同条第2項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定により基本手当の支給を受けることができる資格をいう。次節から第4節までを除き、以下同じ。)、第37条の3第2項に規定する高年齢受給資格又は第39条第2項に規定する特例受給資格を取得したことがある場合には、当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であつた期間

 色々お仕事を転々とされてると、「以前基本手当にお世話になりました」とかいう場合が出てきます。第13条を見てもらうとわかるように、離職日以前の2年間を計算の視野に入れますので、新しい仕事をすぐに辞めると、前の仕事の被保険者期間まで算定しなくちゃいけなくなってしまうんですね。

 そこで前に受給資格を満たしたことがあるお仕事があるなら、その部分は除いてしまおうというのが14条2項です。多分、そうしないとちょっと働いてすぐ辞めて金もらおうとする自称・法律のプロが現れるからだと思いますが……。

 

雇用保険法第9条の規定による被保険者となったことの確認があった日の2年前の日前における被保険者であった期間は被保険者期間の計算には含めないが、当該2年前の日より前に、被保険者の負担すべき額に相当する額がその者に支払われた賃金から控除されていたことが明らかである時期がある場合は、その時期のうち最も古い時期として厚生労働省令で定める日以後の被保険者であった期間は、被保険者期間の計算に含める。⇒〇

 

 計算の視野に入れてるのは13条の通り2年間なのですが、世の中には悪い奴がいるもので、会社側が雇用保険の手続きをしておらず、雇用保険の代金だけとっていたようなパターンがあります。そういうときは、「天引き」が確認できる日付まで2年間という壁を突破していくことができるのです!

 まぁ、当たり前ですが、雇用保険の届出がされていない事実を知っていた被保険者は保護する理由がないのでこの特例は認められませんが。

 

(3)失業の認定

第十五条 基本手当は、受給資格を有する者(次節から第四節までを除き、以下「受給資格者」という。)が失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限る。以下この款において同じ。)について支給する。

 わかりづらいのですが、「離職日」と「失業日」を区別してください。離職日は退職した日であり、失業日は失業しているという認定を受けた日のことです。離職日はひとつですが、失業は職がない以上は失業なので何日もあります。

 そしてこの失業日が、お手当てをもらえる日なのです。

 

 

公共職業安定所長の指示した公共職業訓練を受ける受給資格者に係る失業の認定は、当該受給資格者が離職後最初に出頭した日から起算して4週間に1回ずつ直前の28日の各日について行う。⇒✖

 

 ハロワのお仕事のひとつが「失業の認定」です。まずは基本から確認しましょう。

15条2(改) 失業の認定を受けようとする受給資格者は、離職後、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならない

 「別に来なくてもいいけど認定せんからな」と読んでください。

15条3(改) 失業の認定は、求職の申込みを受けた公共職業安定所において、受給資格者が離職後最初に出頭した日から起算して四週間に一回ずつ直前の二十八日の各日について行うものとするただし厚生労働大臣は、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練を受ける受給資格者その他厚生労働省令で定める受給資格者に係る失業の認定について別段の定めをすることができる。

 まず原則として、失業の認定は「出頭日から起算して四週間に一回ずつ直前の二十八日の各日について」行います。まず日本語がわからん

  •  11/1に出頭したと致しますと、四週間後の11/29がハロワのお仕事dayになります。1~28日までをまとめて「失業」「失業」「失業」……とハンコを押して行ってくれるわけですね。
  •  次のお仕事dayは12/27で、以後同じです。

則24条
1 公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者に係る失業の認定は、1月に1回、直前の月に属する各日(既に失業の認定の対象となつた日を除く。)について行うものとする。

 ただし、公共職業訓練等を受ける人は一月に一度でOKになります! いったい何が変わるのか理解できませんが、とにかく大体こういう風になってます。

 

職業に就くためその他やむを得ない理由のため失業の認定日に管轄公共職業安定所に出頭することができない者は、管轄公共職業安定所長に対し、失業の認定日の変更を申し出ることができる。⇒〇

 

 さて、先ほど話に出た失業の認定日、ハロワのお仕事dayですが、この日は失業者たるわれわれも出向かなければなりません。しかし、仕方ない事情で行けないパターンありますよね。

 その「仕方ねえなリスト」がこちら。

15条4 受給資格者は、次の各号のいずれかに該当するときは、前2項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭することができなかつた理由を記載した証明書を提出することによつて、失業の認定を受けることができる
一 疾病又は負傷のために公共職業安定所に出頭することができなかつた場合において、その期間が継続して15日未満であるとき。
二 公共職業安定所の紹介に応じて求人者に面接するために公共職業安定所に出頭することができなかつたとき。
三 公共職業安定所長の指示した公共職業訓練を受けるために公共職業安定所に出頭することができなかつたとき。
四 天災その他やむを得ない理由のために公共職業安定所に出頭することができなかつたとき。

 で、そうなった場合は次の通り、申し出ましょう。

則23条
1 法第15条第3項の厚生労働省令で定める受給資格者は、次のとおりとする。
一 職業に就くためその他やむを得ない理由のため失業の認定日に管轄公共職業安定所に出頭することができない者であつて、その旨を管轄公共職業安定所の長に申し出たもの
二 管轄公共職業安定所の長が、行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)第1条第1項に規定する行政機関の休日、労働市場の状況その他の事情を勘案して、失業の認定日を変更することが適当であると認める者
2 管轄公共職業安定所の長は、必要があると認めるときは、前項第1号の申出をしようとする者に対し、職業に就くためその他やむを得ない理由を証明することができる書類の提出を命ずることができる。

 ③

受給資格者が天災その他やむを得ない理由により公共職業安定所に出頭することができなかったときは、その理由がなくなった最初の失業の認定日に出頭することができなかった理由を記載した証明書を提出した場合、当該証明書に記載された期間内に存在した認定日において認定すべき期間をも含めて、失業の認定を行うことができる。

 

 さっきやったやつが早速来ました。天災ですね!(喜)

 証明書を提出するとどんな扱いを受けるのでしょうか。

則28条
1 法第15条第4項第4号に該当する受給資格者が証明書を提出することによつて失業の認定を受けようとするときは、その理由がやんだ後における最初の失業の認定日に管轄公共職業安定所に出頭し、次の各号に掲げる事項を記載した官公署の証明書又は管轄公共職業安定所の長が適当と認める者の証明書を受給資格者証に添えて提出しなければならない。

 証明書に書かれた理由がやんだあとの失業認定日に出頭すればいいわけですね。でも、それだと行けなかった期間の失業認定はどうなるのでしょうか。15条にはあくまで「認定日前の二十八日」について認定するとしか書いてませんのでこれは使えません。

 というわけで、

 法律に書いてないことは通達です。行政手引というマニュアルにはしっかり

「証明書に記載された期間内に存在した認定日において認定すべき期間をも含めて、失業の認定を行うことができる」

  と書いています。

 

管轄公共職業安定所長は、基本手当の受給資格者の申出によって必要があると認めるときは、他の公共職業安定所長に対し、その者について行う基本手当に関する事務を委嘱することができる。⇒〇

 

 まず、ハロワというのは日本全国いろんな場所にあることはご存知かと思います。地域によって管轄が決まっていて、住所によってわたしたちの行くハロワが変わるわけですね。原則として、管轄のハロワに通うことになります。

 しかしそれだと不便だというので、申し出れば他の場所でもやってもらえることがあります。

則54条
1 管轄公共職業安定所の長は、受給資格者の申出によつて必要があると認めるときは、その者について行う基本手当に関する事務を他の公共職業安定所長に委嘱することができる。
2 前項の規定による委嘱が行われた場合は、当該委嘱に係る受給資格者について行う基本手当の支給に関する事務は、第1条第5項第1号の規定にかかわらず、当該委嘱を受けた公共職業安定所長が行う。

  ただし、「支給に関する事務」だけで、実際の給付や、最初の出頭は管轄まで行かなければならないことになっています。

 

公共職業安定所長によって労働の意思又は能力がないものとして受給資格が否認されたことについて不服がある者は、当該処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月を経過するまでに、雇用保険審査官に対して審査請求をすることができる。⇒〇

 

 行政のやったことに文句がある場合は「審査請求」「行政訴訟」「国家賠償」がありますが、これは審査請求。雇用保険審査官とかいう新たなる登場人物(だれ?)に審査請求するところがチェックポイント。いきなり出てくるので社労士の勉強をしている人は「誰だよおめえは」となる(と思う)。

 

(4)基本手当・日額

受給資格に係る離職の日において60歳以上65歳未満である受給資格者に対する基本手当の日額は、賃金日額に100分の80から100分の45までの範囲の率を乗じて得た金額である。⇒〇

 

 基本手当は失業日につきもらえるお金です。

法16条
1 基本手当の日額は、賃金日額に100分の50(2,460円以上4,920円未満の賃金日額(その額が第18条の規定により変更されたときは、その変更された額)については100分の80、4,920円以上12,090円以下の賃金日額(その額が同条の規定により変更されたときは、その変更された額)については100分の80から100分の50までの範囲で、賃金日額の逓増に応じ、逓減するように厚生労働省令で定める率)を乗じて得た金額とする。

  その額は原則として「賃金日額」の半分です。ただしカッコ書きでごちゃごちゃ書いてある通り、低すぎたり高すぎたりした場合は調整が入ります。調整については厚生労働省令で定められ、高くなればなるほど調整されます。

2 受給資格に係る離職の日において60歳以上65歳未満である受給資格者に対する前項の規定の適用については、同項中「100分の50」とあるのは「100分の45」と、「4,920円以上12,090円以下」とあるのは「4,920円以上10,880円以下」とする。

  1項の規定は2項において60~65歳の人に対して修正されます。いずれにせよ4920円が境になってるわけですね。

 

基本手当の日額の算定に用いる賃金日額の計算に当たり算入される賃金は、原則として、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の3か月間に支払われたものに限られる。⇒✖

 

 で、その「賃金日額」ですが、その算定の基礎として用いるのは、

法17条
1 賃金日額は、算定対象期間において第14条(第1項ただし書を除く。)の規定により被保険者期間として計算された最後の6箇月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。次項及び第6節において同じ。)の総額を180で除して得た額とする。

 です。

 

育児休業に伴う勤務時間短縮措置により賃金が低下している期間中に事業所の倒産により離職し受給資格を取得し一定の要件を満たした場合において、離職時に算定される賃金日額が勤務時間短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額に比べて低いとき、勤務時間短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額により基本手当の日額を算定する。⇒〇

 

 先ほど書いた通り、賃金日額は最後の6か月において行われます。しかし、なにせ失業に向かっていく半年間のことですから、なにがあるやらわかりません。

2 前項の規定による額が次の各号に掲げる額に満たないときは、賃金日額は、同項の規定にかかわらず、当該各号に掲げる額とする。
一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められている場合には、前項に規定する最後の6箇月間に支払われた賃金の総額を当該最後の6箇月間に労働した日数で除して得た額の100分の70に相当する額
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められている場合には、その部分の総額をその期間の総日数(賃金の一部が月によつて定められている場合には、1箇月を30日として計算する。)で除して得た額と前号に掲げる額との合算額
3 前2項の規定により賃金日額を算定することが困難であるとき、又はこれらの規定により算定した額を賃金日額とすることが適当でないと認められるときは、厚生労働大臣が定めるところにより算定した額を賃金日額とする。

  今回の育児休業に伴って勤務時間がギュッとされたときのことはなにも書いてません。その取扱いについては行政手引によって定められています。

育児休業、介護休業又は育児・介護に伴う勤務時間短縮措置により賃金が喪失、低下している期間中又はその直後に倒産・解雇等の理由等により離職し、受給資格を取得し一定の要件を満たした場合については、離職時に算定される賃金日額が、短縮措置等開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額に比べて低い場合は、短縮措置等開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額により基本手当の日額を算定することとする

 ④

厚生労働大臣は、4月1日からの年度の平均給与額が平成27年4月1日から始まる年度(自動変更対象額が変更されたときは、直近の当該変更がされた年度の前年度)の平均給与額を超え、又は下るに至った場合においては、その上昇し、又は低下した比率に応じて、その翌年度の8月1日以後の自動変更対象額を変更しなければならない。⇒〇

 

 そんなややこしいこと知るか、と言いたくなる問題。

法18条
1 厚生労働大臣は、年度(4月1日から翌年の3月31日までをいう。以下同じ。)の平均給与額厚生労働省において作成する毎月勤労統計における労働者の平均定期給与額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者1人当たりの給与の平均額をいう。以下同じ。)平成27年4月1日から始まる年度(この条の規定により自動変更対象額が変更されたときは、直近の当該変更がされた年度の前年度)の平均給与額を超え、又は下るに至つた場合においては、その上昇し、又は低下した比率に応じて、その翌年度の8月1日以後の自動変更対象額を変更しなければならない。

  でもしっかり条文に書いてたりする。平成27年=2015年。平均給与額は平成27年度のものと比べられて、反映されていくわけですね。どういう風に反映されるかというと、「賃金日額」です。細かい「〇円から〇円」とかありましたね。あそこです。

 

失業の認定に係る期間中に得た収入によって基本手当が減額される自己の労働は、原則として1日の労働時間が4時間未満のもの(被保険者となる場合を除く。)をいう。⇒〇

 

基本手当が減額されるのは次に規定されています。

法19条
1 受給資格者が、失業の認定に係る期間中に自己の労働によつて収入を得た場合には、その収入の基礎となつた日数(以下この項において「基礎日数」という。)分の基本手当の支給については、次に定めるところによる。
一 その収入の1日分に相当する額(収入の総額を基礎日数で除して得た額をいう。)から1,282円(その額が次項の規定により変更されたときは、その変更された額。同項において「控除額」という。)を控除した額と基本手当の日額との合計額(次号において「合計額」という。)が賃金日額の100分の80に相当する額を超えないとき。基本手当の日額に基礎日数を乗じて得た額を支給する。
二 合計額が賃金日額の100分の80に相当する額を超えるとき(次号に該当する場合を除く。)。当該超える額(次号において「超過額」という。)を基本手当の日額から控除した残りの額に基礎日数を乗じて得た額を支給する。
三 超過額が基本手当の日額以上であるとき。基礎日数分の基本手当を支給しない。

(5)就職促進給付

厚生労働省令で定める安定した職業に就いた者であって、当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が当該受給資格に基づく所定給付日数の3分の1以上あるものは、就業手当を受給することができる。⇒✖

 

 まず雇用保険の給付(失業等給付)には「求職者等給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の四種類があります。

  • 求職者等給付というのは、被保険者が離職し、失業状態にある場合に、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にすることを目的として支給するいわゆる失業補償機能をもった給付
  • 就職促進給付というのは、失業者が再就職するのを援助、促進することを主目的とする給付
  • 教育訓練給付というのは、働く人の主体的な能力開発の取組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を目的とする給付
  • 雇用継続給付というのは、働く人の職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的とする給付

https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/var/rev0/0119/0671/13syou.pdf

 

 最初のふたつは「失業して働こうとしている人」、あとのふたつは「働いている人」を対象にした給付であることがわかります。今回は就職した人の話ですので、前者になります。そのうちでも特に就職促進給付と呼ばれるものですね。

 求職者等給付で主なものは基本手当でしたが、

 就職促進給付で主なものは就業促進手当です。就業促進手当は再就職に成功した時に払われるお金のことで、場合場合によって名前が変わりますが、今回の就業手当もそのうちのひとつです。順番に見ていきましょう。

  1.  就業手当   1年以下の契約(安定していない職)
  2.  再就職手当  1年を超えての契約(安定した職)
  3.  就業促進定着手当  再就職手当を受けた人が半年働いたときにもらえる
  4.  常用就職支度手当  身体障害など、就職困難者が1年以上契約を得たとき

 細かい条件はありますが、とりあえずこんな感じです。

 

 さて、問題ですが「安定した職業についたもの」とあります。1年以下は安定していません。なので「就業手当」はもらえず、「再就職手当」をもらえるかどうかを検討しなければなりません。答えはバツ

 

身体障害者その他就職が困難な者として厚生労働省令で定めるものが基本手当の支給残日数の3分の1未満を残して厚生労働大臣の定める安定した職業に就いたときは、当該受給資格者は再就職手当を受けることができる。⇒✖

 

 違います。さっきの分類でやった通り、就職困難者の場合に受けられる就職促進手当は「常用就職支度手当」です。

 

早期再就職者に係る再就職手当の額は、支給残日数に相当する日数に10分の6を乗じて得た数に基本手当日額を乗じて得た額である。⇒✖

 

 再就職手当の話ですね。ということはこのオッサン(オバサン?)は安定した職業についたことになります。……ってことを確認しつつ。

 

 実は再就職手当というのは、早く就職をキメればキメるほどおったかくもらえます。計算基準は「基本手当」で、再就職手当はその6割なのですが、早期再就職者(所定給付日数の2/3以上を残して就職)は7割にしてもらえます。

 

移転費は、受給資格者等が公共職業安定所職業安定法第4条第8項に規定する特定地方公共団体若しくは同法第18条の2に規定する職業紹介事業者の紹介した職業に就くため、又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるため、その住所又は居所を変更する場合において、公共職業安定所長が厚生労働大臣の定める基準に従って必要があると認めたときに、支給される。⇒〇

 

 新しい言葉が出てきてしまいました。就職促進給付は就業促進手当以外にも、移転費というものがあります。主な就職促進給付はあくまで「就業促進手当」なのですが、一応ついでにこちらも覚えておきましょう。

 

法58条
1 移転費は、受給資格者等が公共職業安定所職業安定法第4条第8項に規定する特定地方公共団体若しくは同法第18条の2に規定する職業紹介事業者の紹介した職業に就くため、又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるため、その住所又は居所を変更する場合において、公共職業安定所長が厚生労働大臣の定める基準に従つて必要があると認めたときに、支給する。
2 移転費の額は、受給資格者等及びその者により生計を維持されている同居の親族の移転に通常要する費用を考慮して、厚生労働省令で定める。

  移転費というのは、失業者にさっさと安定した職業についてもらうため、「遠いからここは無理~」という話をなくしてやろうというお金です。安定した仕事についてくれるならお金出しまっせということですね(職業訓練でもOK)。

 

短期訓練受講費の額は、教育訓練の受講のために支払った費用に100分の40を乗じて得た額(その額が10万円を超えるときは、10万円)である。⇒✖

 

 また新しいのが出てきてしまいました。

 就職促進給付は次の三つから成ります。「就業促進手当」「移転費」「求職活動支援費」。求職活動支援費というのは名前の通り、職探しにかかる費用を出してやるからさっさと就職しろというお金ですね。

 活動の内容によって名前が変わりますが、順番に見ましょう。

  1.  広域求職活動費  ハロワの紹介でいろんな場所に行く
  2.  短期訓練受講費  ハロワに言われて訓練する
  3.  求職活動関係役務利用費  求職に行くために子どもを預けたりする費用

 大体こういう感じです。んで、問題になっているのは二番目。随分具体的に来られているので面倒です。ハロワは4割も払ってくれません。2割です。2割って……ないよしマシですが。

 

(6)雇用継続給付

60歳に達した日に算定基礎期間に相当する期間が5年に満たない者が、その後継続雇用され算定基礎期間に相当する期間が5年に達した場合、他の要件を満たす限り算定基礎期間に相当する期間が5年に達する日の属する月から65歳に達する日の属する月まで高年齢雇用継続基本給付金が支給される。⇒〇

 

 さて、今度は「雇用継続給付」です。雇用保険の給付には「求職者等給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の四つがあるんでしたね。

 雇用継続給付は一般被保険者と高年齢被保険者の雇用継続が難しくなってきたときに給付するお金のことで、三種類用意されています。

  1.  高年齢雇用継続給付
  2.  育児休業給付金
  3.  介護休業給付金

 今回問題になっている高年齢雇用継続基本給付金というのは、一番にあたります。一番は「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」から成ります。

  1.  高年齢雇用継続基本給付金:働きながら60歳に到達。65歳までの間にたまに支給。
  2.  高年齢再就職給付金:60歳以後安定した再就職

 だいたいこうです。要件はもっと細かいですが、まず二つの違いを把握しましょう。

 

 設問にあるように、実は給付を受けるには5年間被保険者でなければなりません(再就職の場合は、「5年間被保険者だったこと」になります)。60歳になったとき5年も被保険者じゃなかった人が働いているうちに5年に達した時はどういう扱いになるんでしょうね、という問題です。

 答えは〇。当然、60歳だけが唯一のチャンスというわけではありません。

 

支給対象月に支払われた賃金の額が、みなし賃金日額に30を乗じて得た額の100分の60に相当する場合、高年齢雇用継続基本給付金の額は、当該賃金の額に100分の15を乗じて得た額(ただし、その額に当該賃金の額を加えて得た額が支給限度額を超えるときは、支給限度額から当該賃金の額を減じて得た額)となる。⇒〇

 

 さぁ、今度は支給額です。支給対象月にはいくらぐらいもらえるんでしょうか。まず確認しておかないといけないのは、雇用継続給付は別に「こんな年をとっても働いてくれてるから国からボーナスをあげるね」というようなものではありません。年を食ってくると賃金が下がることが多いのでそれをいくらか補填してやろうと言っているのです。「支給対象月」にあたるかどうかはそういうことで決まるわけですね。

 

 で、「まぁもらえるだろう」という月給(みなし賃金日額×30)の6割以下しか実際にもらっていなかった場合が設問に出ています。この場合、実際にもらった額の15%ぐらいが給付されることになっています。実際にもらった額が10万円だったら1万5000円ぐらいくれるということですね。

 ただ10万円もらってみなし賃金の6割以下ということですから、みなし賃金は少なくとも16万円だったはずで、まぁまぁ、ないよりはましかなという額です。

 

高年齢再就職給付金の支給を受けることができる者が、同一の就職につき雇用保険法第56条の3第1項第1号ロに定める就業促進手当の支給を受けることができる場合において、その者が就業促進手当の支給を受けたときは高年齢再就職給付金を支給しない。⇒〇

 

 さて、高年齢再就職給付金というのは再就職したらもらえるカネでした。しかしそういえば、再就職したら「就職促進給付」のほうでもカネがもらえるはずでしたね。両方もらえるんでしょうか。それとも片方だけなんでしょうか。

 で、答えは片方だけになります。

 

再就職の日が月の途中である場合、その月の高年齢再就職給付金は支給しない。⇒〇

 

 支給対象月となるためには、一か月まるっと被保険者でないといけません。

 

⑤(一部問題を改訂してます:みなし賃金日額→みなし賃金額)

受給資格者が冠婚葬祭等の私事により欠勤したことで賃金の減額が行われた場合のみなし賃金額は、実際に支払われた賃金の額により算定された額となる。⇒✖

 

 高年齢になると体が衰えて休むことも増えます。それで補填してやろうというのが雇用継続給付でした。しかし、私事で欠勤した場合はどうなんでしょうか。 

 答えは、その場合でもみなし賃金額は減らしません、になります。

 

(7)雇用安定事業

 雇用保険がやってくれるのは給付だけではありません。

第三条 雇用保険は、第一条の目的を達成するため、失業等給付を行うほか、雇用安定事業及び能力開発事業を行うことができる。

 このように、雇用安定事業というものを行うことができます。

第六十二条 政府は、被保険者、被保険者であつた者及び被保険者になろうとする者(以下この章において「被保険者等」という。)に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業として、次の事業を行うことができる。

短時間休業により雇用調整助成金を受給しようとする事業主は、休業等の期間、休業等の対象となる労働者の範囲、手当又は賃金の支払の基準その他休業等の実施に関する事項について、あらかじめ事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者。)との間に書面による協定をしなければならない。⇒〇

 

 一番問題となるのはやっぱりカネの問題ですね。雇用安定事業というのには色々ありますが、やはり一番チェックしなければならないのは国が雇用を安定させるためにどんなカネ(助成金)を出してくれているかということです。

  1.  景気の変動などの経済上の事情で活動縮小する事業主 → 雇用調整助成金など
  2.  再就職を促進しようとする事業主 → 労働移動支援助成金など
  3.  高齢者の雇用安定化しようとする事業主 → 65歳超雇用推進助成金など
  4.  改善する必要アリの地域で、安定させようとしてくれてる事業主 → 地域雇用開発助成金など

 雇用安定化に協力してくれる事業主には助成金を出して、その流れを活発化させようというわけです。設問に出ているのは一番のケースですね。規則102条の3・第1項2号を見てもらえればいいのですが、長すぎて多分読むには向きません。

 一番は活動が危なくなっている事業主です。休業のことなどについて従業員とちゃんと話がついている人に助成金を出しますという話ですね。

 

一般トライアルコース助成金は、雇い入れた労働者が雇用保険法の一般被保険者となって3か月を経過したものについて、当該労働者を雇い入れた事業主が適正な雇用管理を行っていると認められるときに支給する。⇒✖

 

 上の例にないじゃねえかという話でイラつかれるかと思うのですが、助成金の数はめちゃくちゃ多いためやむをえません。

事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省

 

 助成金が出るトライアル雇用はお試し雇用のことで、3カ月以内の期間でお試し雇用させてみることですね。答えはバツ

 

キャリアアップ助成金は、特定地方独立行政法人に対しては、支給しない。⇒〇

 

 助成金は国等については支給しません。

 

雇用調整助成金は、労働保険料の納付の状況が著しく不適切である事業主に対しては、支給しない。⇒〇

 

 はいそうです。多分これは直観的にわかるかと思います。

則120条の2
1 雇用関係助成金関係規定にかかわらず、雇用関係助成金は、労働保険料納付の状況が著しく不適切である、又は過去5年以内に偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金その他の法第4章の規定により支給される給付金の支給を受け、若しくは受けようとした事業主又は事業主団体に対しては、支給しないものとする。
2 雇用関係助成金関係規定にかかわらず、雇用関係助成金は、過去5年以内に偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金その他の法第4章の規定により支給される給付金の支給を受け、又は受けようとした事業主又は事業主団体若しくはその連合団体の役員等(偽りその他不正の行為に関与した者に限る。)が、事業主又は事業主団体の役員等である場合は、当該事業主又は事業主団体に対しては、支給しないものとする。
3 雇用関係助成金関係規定にかかわらず、過去5年以内に雇用調整助成金その他の法第4章の規定により支給される給付金の支給に関する手続を代理して行う者(以下「代理人等」という。)又は訓練を行つた機関(以下「訓練機関」という。)が偽りの届出、報告、証明等を行い事業主又は事業主団体若しくはその連合団体が当該給付金の支給を受け、又は受けようとしたことがあり、当該代理人等又は訓練機関が雇用関係助成金に関与している場合は、当該雇用関係助成金は、事業主又は事業主団体に対しては、支給しないものとする。

 (8)国庫負担

国庫は、毎年度、予算の範囲内において、就職支援法事業に要する費用(雇用保険法第66条第1項第4号に規定する費用を除く。)及び雇用保険事業の事務の執行に要する経費を負担する。⇒〇

 

 雇用保険は保険料だけで成り立つものではなく、いくらか国庫からも投入されます。事務費用もやってくれます。

 

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第九章:就業規則

(1)作成及び届出の義務

労働基準法第89条に定める就業規則とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称である。⇒〇

 

第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

 

 問題は「この答えがなぜマルなのか」ですが……よくわかりません。厚労省の資料でも教科書でもどこでも同じ文言を使ってます。判例でこういうのがありましたが、これが大元なのでしょうか……?

労働基準判例検索-全情報

 

 

常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成する義務を負うが、週の所定労働時間が20時間未満のパートタイム労働者は、この労働者数の算定には含まれない。⇒✖

労働基準法第89条に定める就業規則の作成義務等の要件である「常時10人以上の労働者を使用する」とは、10人以上の労働者を雇用する期間が一年のうち一定期間あるという意味であり、通常は8人であっても、繁忙期においてさらに2、3人雇い入れるという場合も、これに含まれる。⇒✖

労働基準法第89条に定める「常時10人以上の労働者」の算定において、1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者は0.5人として換算するものとされている。⇒✖

 

 89条には「常時10人以上の労働者を使用する使用者は」と書いています。問題は「常時」ですね。このことが問題となっています。答えは上の通りなのですが、いまいち根拠となる条文や通達、判例が見つかりません。何を根拠に出題しているのかよくわからない問題です。

 

使用者は、労働基準法第89条に規定する事項について就業規則を作成しなければならず、また、常時10人以上の労働者を使用する場合には、それを作成し、又は変更したときは、行政官庁に届け出なければならない。⇒✖ (作成義務:10人以上! 89条)

 1人でも労働者を使用する事業場においては、使用者は就業規則を作成しなければならない。⇒✖ (作成義務:10人以上! 89条)

 労働基準法第89条所定の事項を個々の労働契約書に網羅して記載すれば、使用者は、別途に就業規則を作成していなくても、本条に規定する就業規則作成義務を果たしたものとなる。⇒✖(「そんな規定はない」なので、試験中は判断基準がなくチョイ難。ただしH28年度の他の就業規則の問題は簡単なため、最後にこれが間違いだと判定できる。グレー問題)

 

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し又はその内容を変更した場合においては、所轄労働基準監督署長にこれを提出し、その許可を受けなければならない。⇒✖

 

 89条には許可をもらえとは書いていません。「届出」は単に提出するだけ、「許可」は行政からイイヨと言われないといけないので相当な差です。ちなみに提出先は労基監督署長です。

 

派遣労働者に関して、労働基準法第89条により就業規則の作成義務を負うのは、派遣中の労働者とそれ以外の労働者とを合わせて常時10人以上の労働者を使用している派遣元の使用者である。⇒〇

 

 これもまた頻出ですが「派遣労働者」です。彼らは「雇うで」「働くで」という普通からはちょっとずれた存在であるため、法律的に扱いが難しいのです。そこで行政は通達を出し「上の通り取り扱うように」としています。

 ところで、派遣労働者は派遣先の就業規則にしたがう必要はありません。あくまで原則は派遣元の社員なんですね。

 

<まとめ>

  •  10人以上! で作成義務やで。
  •  10人ってのは「いつも使ってる子ら」やで。
  •  届出やから単に出せばええだけやで。
  •  労働基準監督署長に出してや。

 ⇒ 常態として使用している労働者が10人以上なら、労働基準監督署長に届出!

 

(2)法的性質

新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであるとするのが最高裁判例である。⇒〇

 

 来ました。最高裁判例です。法律には書いてませんので知らなきゃ正解できません。秋北バス事件」ですね。

 あらすじ:その会社では主任以上のポストには定年がありませんでした。しかし、就業規則の変更で事態が大きく変わります。「定年つけるで」と会社が言い出し、社員が辞めなければならなくなったのです。社員は当然そんな気はなかったのでブチ切れて戦争勃発。同意してない変更なんか認められるか、と裁判を起こしたわけです。

 判決: 労働者の負け。読むのはだるいですが、読みましょう。めんどくさかったら太字のところだけ読んでください。

元来、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」(労働基準法2条1項)が、多数の労働者を使用する近代企業においては、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っている(民法92条参照)ものということができる

 

そして、労働基準法、右のような実態を前提として、後見的・監督的立場に立って、就業規則に関する規制と監督に関する定めをしているのである。すなわち、同法は、一定数の労働者を使用する使用者に対して、就業規則の作成を義務づける(89条)とともに、就業規則の作成・変更に当たり、労働者側の意見を聴き、その意見書を添付して所轄行政庁に就業規則を届け出で(90条参照)、かつ、労働者に周知させる方法を講ずる(106条1項、なお、15条参照)義務を課し、制裁規定の内容についても一定の制限を設け(91条参照)、しかも、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならず、行政庁は法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる(92条)ものとしているのである。これらの定めは、いずれも、社会的規範たるにとどまらず、法的規範として拘束力を有するに至っている就業規則の実態に鑑み、その内容を合理的なものとするために必要な監督的規制にほかならない

 

右に説示したように、就業規則、当該事業場内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められるに至っているものと解すべきであるから、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである

 

新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであり、これに対する不服は、団体交渉等の正当な手続による改善に待つほかない。停年制は、〈中略〉人事の刷新・経営の改善等、企業の組織及び運営の適正化のために行われるものであって、一般的にいって、不合理な制度ということはできない。また、本件就業規則については、新たに設けられた55歳という停年は、産業界の実情に照らし、かつ、Y会社の一般職種の労働者の停年が50歳と定められていることとの比較権衡からいっても、低きに失するともいえない。しかも、本件就業規則条項は、停年に達したことによって自動的に退職するいわゆる「停年退職」制を定めたものではなく、停年に達したことを理由として解雇するいわゆる「停年解雇」制を定めたものと解すべきであり、同条項に基づく解雇は、労働基準法第20条所定の解雇の制限に服すべきものである。さらに、本件就業規則条項には、必ずしも十分とはいえないにしても、再雇用の特則が設けられ、同条項を一律に適用することによって生ずる過酷な結果を緩和する道が開かれているのである。しかも、原審の確定した事実によれば、現にXらに対しても引き続き嘱託として、採用する旨の再雇用の意思表示がなされており、また、Xら中堅幹部をもって組織する「輪心会」の会員の多くは、本件就業規則条項の制定後、同条項は、後進に譲るためのやむを得ないものであるとして、これを認めている、というのである。以上の事実を総合考慮すれば、本件就業規則条項は、決して不合理なものということはできず、同条項制定後、直ちに同条項の適用によって解雇されることになる労働者に対する関係において、Y会社がかような規定を設けたことをもって、信義則違反ないし権利濫用と認めることもできないから、Xは、本件就業規則条項の適用を拒否することができないものといわなければならない

  要するに:「就業規則は、ちゃんと手続きを踏んでいて、合理的な内容だったら従わなくちゃいけないの!」ということです。

 

就業規則は、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができるとするのが最高裁判例である。⇒〇

 

 さっきやりました。なんという事件で、どんな事件でしたでしょうか。

 

就業規則が労働者に対し、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものであるかぎりにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとするのが最高裁判例である。⇒〇

 

 就業規則は具体的労働契約の内容をなしているのでしょうか。つまり「契約しました」といったら就業規則に従うことも約束したことになるのでしょうか。普通労働契約するときに規則なんか確認しないと思いますが、どうなのでしょう。

 それを示すのが電電公社帯広局事件」です。

 あらすじ:その頃、電話交換の作業ではよく体を傷めていました。それで会社では就業規則に「あんまりなら治療に専念するように」という決まりを作っていました。それでとある従業員がキツそうなので診察してもらえと業務命令を出したら従業員はこれを拒否。職場を抜け出すなど一悶着あったため会社は彼を懲戒解雇にします。しかし従業員はこの無効を裁判所に訴えました。

 判決: 労働者の負け。

一般に業務命令とは、使用者が業務遂行のために労働者に対して行う指示又は命令であり、使用者がその雇用する労働者に対して業務命令をもって指示、命令することができる根拠は、労働者がその労働力の処分を使用者に委ねることを約する労働契約にあると解すべきである。すなわち、労働者は、使用者に対して一定の範囲での労働力の自由な処分を許諾して労働契約を締結するものであるから、その一定の範囲での労働力の処分に関する使用者の指示、命令としての業務命令に従う義務があるというべきであり、したがって、使用者が業務命令をもって指示、命令することのできる事項であるかどうかは、労働者が当該労働契約によってその処分を許諾した範囲内の事項であるかどうかによって定まるものであって、この点は結局のところ当該具体的な労働契約の解釈の問題に帰するものということができる。

 

ところで、労働条件を定型的に定めた就業規則、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、その定めが合理的なものであるかぎり、個別的労働契約における労働条件の決定は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、法的規範としての性質を認められるに至っており、当該事業場の労働者は、就業規則の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるというべきであるから(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決〈秋北バス事件〉)、使用者が当該具体的労働契約上いかなる事項について業務命令を発することができるかという点についても、関連する就業規則の規定内容が合理的なものであるかぎりにおいてそれが当該労働契約の内容となっているということを前提として検討すべきこととなる。換言すれば、就業規則が労働者に対し、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものであるかぎりにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができる

 

公社就業規則及び健康管理規程によれば、公社においては、職員は常に健康の保持増進に努める義務があるとともに、健康管理上必要な事項に関する健康管理従事者の指示を誠実に遵守する義務があるばかりか、要管理者は、健康回復に努める義務があり、その健康回復を目的とする健康管理従事者の指示に従う義務があることとされているのであるが、以上公社就業規則及び健康管理規程の内容は、公社職員が労働契約上その労働力の処分を公社に委ねている趣旨に照らし、いずれも合理的なものというべきであるから、右の職員の健康管理上の義務は、公社と公社職員との間の労働契約の内容となっているものというべきである。

 

もっとも、右の要管理者がその健康回復のために従うべきものとされている健康管理従事者による指示の具体的内容については、特に公社就業規則ないし健康管理規程上の定めは存しないが、要管理者の健康の早期回復という目的に照らし合理性ないし相当性を肯定し得る内容の指示であることを要することはいうまでもない。しかしながら、右の合理性ないし相当性が肯定できる以上、健康管理従事者の指示できる事項を特に限定的に考える必要はなく、例えば、精密検診を行う病院ないし担当医師の指定、その検診実施の時期等についても指示することができるものというべきである。

 

以上の次第によれば、Xに対し頸肩腕症候群総合精密検診の受診方を命ずる本件業務命令については、その効力を肯定することができ、これを拒否したYの行為は公社就業規則59条3号所定の懲戒事由にあたるというべきである

そして、前記の職場離脱が同条18号の懲戒事由にあたることはいうまでもなく、以上の本件における2個の懲戒事由及び前記の事実関係にかんがみると、原審が説示するように公社における戒告処分が翌年の定期昇給における昇給額の4分1減額という効果を伴うものであること(公社就業規則76条4項3号)を考慮に入れても、公社がXに対してした本件戒告処分が、社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え、これを濫用してされた違法なものであるとすることはできないというべきである。

 

(3)記載事項

使用者が就業規則に記載すべき事項には、いかなる場合であっても必ず記載しなければならない事項(いわゆる絶対的必要記載事項)と、その事項について定めをする場合には必ず記載しなければならない事項(いわゆる相対的必要記載事項)とがある。⇒〇

 

 はい、あります。なにか特別の定めをしたときにちゃんと明記しろよというのが相対的な記載事項で、そんな定めがないときは別に書かなくていいのです。絶対的記載事項は、

一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 

<臨時の賃金等を除く賃金の決定、計算及び支払いの方法に関する事項は、労働基準法第89条において、就業規則のいわゆる絶対的必要記載事項となっている。>⇒〇

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、退職に関する事項(解雇の事由を含む。)を、就業規則に必ず記載しなければならない。>⇒〇

労働基準法第89条では、就業規則のいわゆる絶対的必要記載事項として「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」が規定されているが、ここでいう「退職に関する事項」とは、任意退職、解雇、定年制、契約期間の満了による退職等労働者がその身分を失うすべての場合に関する事項をいう。>⇒〇

労働基準法によれば、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、退職手当に関する事項を就業規則に必ず記載しなければならないとされており、また、期間の定めのない労働契約によって雇用される、勤続期間が3年以上の労働者に対して退職手当を支払わなければならない。>⇒✖

 退職に関する事項は絶対的だが、退職手当は定めない場合もあるので絶対的ではない。また、3年以上がどうとかいう規定はない。

 

退職手当制度を設ける場合には、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、退職手当の支払の時期に関する事項について就業規則に規定しておかなければならないが、退職手当について不支給事由又は減額事由を設ける場合に、これらを就業規則に記載しておく必要はない。>⇒✖

 前段は当然正しい。問題は後段である。89条には、

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

 と定められているが、不支給の場合はどうすればいいか書いていない。そこで通達の出番であるが、当然「書く必要あり」である。

 

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則に制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項を必ず記載しなければならず、制裁を定めない場合にはその旨を必ず記載しなければならない。>⇒✖

制裁は相対的であるから、定めなければ書く必要はない。

 

就業規則の記載事項として、労働基準法第89条第1号にあげられている「休暇」には、育児介護休業法による育児休業も含まれるが、育児休業の対象となる労働者の範囲、育児休業取得に必要な手続、休業期間については、育児介護休業法の定めるところにより育児休業を与える旨の定めがあれば記載義務は満たしている。⇒〇

 

 これは通達です。

 「育児休業法においては、育児休業の対象者、申出手続、育児休業期間等が具体的に定められているので、育児休業法の定めるところにより育児休業を与える旨の定めがあれば記載義務は満たしていると解される」

 

労働基準法第41条第3号に定める「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」については、労働基準法の労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されないから、就業規則に始業及び終業の時刻を定める必要はない。⇒〇

 

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

  規定が適用されないのだから就業規則でこれらを明記しろと言われても困る、というわけである。しかし残念ながら通達では「いや書けよ」といっている。89条の絶対的明示事項の例外にはなれないようだ。

 

企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めることができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、制裁として懲戒処分を行うことができるところから、使用者が労働者を懲戒するには、必ずしもあらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するものではないとするのが最高裁判例である。⇒✖

 

 最判例の問題が来ました。これは「国労札幌運転区事件」です。

 あらすじ:「労働組合の関係でビラを貼るやで」「ビラの貼り付けは指定したところだけでやれといっただろ。懲戒処分な」「ふざけんな」

 判決: 労働者の負け

企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができる
労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであることは既に述べたところから明らかであつて、利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない。
労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設であって定立された企業秩序のもとに事業の運営の用に供されているものを使用者の許諾を得ることなく組合活動のために利用することは許されないものというべきであるから、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで叙上のような企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない。
Xらの本件ビラ貼付行為は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、Yの企業秩序を乱すものとして、正当な組合活動であるとすることはできず、これに対しXらの上司が(中略)その中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできない。
Yの総裁のした本件各戒告処分は無効であるとはいえず、Xらの各請求は、いずれも理由がないから、棄却を免れないものであり、これと同旨の第一審判決は相当であって、Xらの控訴は、棄却されるべきものである。

 

 ⑤使用者は、いかなる場合でも就業規則に制裁の種類及び程度に関する事項を必ず記載しなければならない。また、減給の制裁を就業規則に定める場合には、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。⇒〇

 

 法91条
 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

 ⑥常時10人以上の労働者を使用する使用者は、当該事業場の労働者すべてを対象にボランティア休暇制度を定める場合においては、これに関する事項を就業規則に記載しなければならない。⇒〇

 

 労働者のすべてに適用される定めをする場合は、記載しなければなりません。

 

労働基準法第89条の規定により、常時10人以上の労働者を使用するに至った使用者は、同条に規定する事項について就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければならないが、従来の慣習が当該事業場の労働者のすべてに適用されるものである場合、当該事項については就業規則に規定しなければならない。>⇒〇

 

(4)効力

就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとするのが最高裁判例である。⇒〇

 

第89条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。・・・

  とありますが、行政官庁に届け出ることのみでは、法的規範は生まれません。

 

法106条
1 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第18条第2項、第24条第1項ただし書、第32条の2第1項、第32条の3第1項、第32条の4第1項、第32条の5第1項、第34条第2項ただし書、第36条第1項、第37条第3項、第38条の2第2項、第38条の3第1項並びに第39条第4項、第6項及び第9項ただし書に規定する協定並びに第38条の4第1項及び同条第5項(第41条の2第3項において準用する場合を含む。)並びに第41条の2第1項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

 周知するように義務付けており、この義務を果たさない就業規則については最高裁が法的規範の発生を認めていないわけです。「フジ興産事件」といいます。

 

 あらすじ:旧就業規則を新就業規則に変更して行政庁に届け出た。その会社で働くXさんは得意先でトラブったり、上司とトラブったり、トラブってしまうタイプだったため、新就業規則の定めにより懲戒処分が下されることとなった。Xさんはこれを不服として損害賠償請求をした。 なんと旧就業規則は事業所に備え付けられていなかった

 

 判決: 原審無効。差し戻し。

 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する(最高裁昭和49年(オ)第1188号同54年10月30日第三小法廷判決・民集33巻6号647頁参照)。そして、就業規則が法的規範としての性質を有する最高裁昭和40年(オ)第145号同43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁)ものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。
 原審は、株式会社A社が、労働者代表の同意を得て旧就業規則を制定し、これを大阪西労働基準監督署長に届け出た事実を確定したのみで、その内容をセンター勤務の労働者に周知させる手続が採られていることを認定しないまま、旧就業規則に法的規範としての効力を肯定し、本件懲戒解雇が有効であると判断している。原審のこの判断には、審理不尽の結果、法令の適用を誤った違法があり、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。

労働基準法第89条第1号から第3号までの絶対的必要記載事項の一部、又は、同条第3号の2以下の相対的必要記載事項のうち当該事業場が適用を受けるべき事項を記載していない就業規則は、同条違反の責を免れないものであり、労働基準法第13条に基づき、無効となる。⇒✖

 

 記載されるべき事項が記載されていない就業規則はどうなるのでしょうか。違反しているのは違反しているので責は免れないでしょうが、無効となってしまうのでしょうか? 答えは通達に出ています。

 設問のような就業規則も、その効力発生についての他の要件を具備する限り有効である。ただし、設問のような就業規則を作成し届出ても使用者の法89条違反の責は免れない

 

労働基準法就業規則の作成義務のない、常時10人未満の労働者を使用する使用者が作成した就業規則についても、労働基準法にいう「就業規則」として、同法第91条(制裁規定の制限)、第92条(法令及び労働協約との関係)及び第93条(労働契約との関係)の規定は適用があると解されている。⇒〇

 

 では今度は10人未満なのに就業規則作っちゃった場合です。効果ありです。

 

労働基準法第89条が使用者に就業規則への記載を義務づけている事項以外の事項を、使用者が就業規則に自由に記載することは、労働者にその同意なく労働契約上の義務を課すことにつながりかねないため、使用者が任意に就業規則に記載した事項については、就業規則の労働契約に対するいわゆる最低基準効は認められない。⇒✖

 

 今度は89条以外のことを定めちゃった場合です。

 労働契約法7条には、

労働契約法7条
 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

  とあります。合理的な労働条件なら大丈夫なのです。

 

使用者は、パートタイム労働者など当該事業場の労働者の一部について、他の労働者と異なる労働条件を定める場合には、当該一部の労働者にのみ適用される別個の就業規則を作成することもできる。⇒〇

 

 就業規則を分野別に分けちゃうパターンも認められています。通達です。

同一事業場において、法3条に反しない限りにおいて、一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則を作成することは差し支えないが、この場合は、就業規則の本則において当該別個の就業規則の適用の対象となる労働者に係る適用除外又は委任規定を設けることが望ましい

 

<同一事業場において、パートタイム労働者について別個の就業規則を作成する場合、就業規則の本則とパートタイム労働者についての就業規則は、それぞれ単独で労働基準法第89条の就業規則となるため、パートタイム労働者に対して同法第90条の意見聴取を行う場合、パートタイム労働者についての就業規則についてのみ行えば足りる。>⇒✖

 

同一事業場において一部の労働者についてのみ適用される就業規則を別に作成することは差し支えないが、当該一部の労働者に適用される就業規則も当該事業場の就業規則の一部分であるから、その作成又は変更に際しての法第90条の意見の聴取については、当該事業場の全労働者の過半数で組織する労働組合又は全労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことが必要である。
なお、これに加えて、使用者が当該一部の労働者で組織する労働組合等の意見を聴くことが望ましい

(5)作成の手続

労働基準法第90条第1項が、就業規則の作成又は変更について、当該事業場の過半数労働組合、それがない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを使用者に義務づけた趣旨は、使用者が一方的に作成・変更しうる就業規則に労働者の団体的意思を反映させ、就業規則を合理的なものにしようとすることにある。⇒〇

 

 そうです、としかいえません。

 

就業規則を作成又は変更するに当たっては、使用者は、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。>⇒✖

<使用者は、就業規則の作成だけでなく、その変更についても、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。>⇒〇

 

 同意ではなくて、「意見を聴く」のが大事です。

労働基準法第90条に定める就業規則の作成又は変更についての過半数労働組合、それがない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する義務については、文字どおり労働者の団体的意見を求めるということであって、協議をすることまで使用者に要求しているものではない。⇒〇

 

 意見を聴くのが大事なのはわかった、にしてもどれぐらい聞けばいいのでしょうか。一席設けて語らわなければならんのでしょうか、というと、そういうわけでもないようです。向こうから「われわれはこう思います」と言ってもらえればそれでいいそうです。これも通達です。

法第90条の『労働組合の意見を聴かなければならない』というのは労働組合との協議決定を要求するものではなく、当該就業規則についての労働組合の意見を聴けば労働基準法の違反とはならない趣旨である

 

<常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、それがない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を記した書面を添付して、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。>⇒〇

 

 意見を聴きましたよという証拠として意見書を添付します。これでいいならなんでもありな気がしてきます。

 

労働基準法第90条第2項は、就業規則の行政官庁への届出の際に、当該事業場の過半数労働組合、それがない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を記した書面を添付することを使用者に義務づけているが、過半数労働組合もしくは過半数代表者が故意に意見を表明しない場合又は意見書に署名もしくは記名押印をしない場合は、意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、これを受理するよう取り扱うものとされている。>⇒〇

 

 意見を聴くことが義務なので労働者サイドとしては「意見は言わねえ!(どん!)」ということが考えられます。そういうときは「どうでしょうか?」と質問した証拠さえあれば、相手がだんまりでも意見書として提出できるようになってます。

 

 

みんなが欲しかった! 社労士の教科書 2020年度 (みんなが欲しかった! シリーズ)

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  • 出版社/メーカー: TAC出版
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ゼロからスタート! 澤井清治の社労士1冊目の教科書

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ごうかく社労士 基本テキスト〈2020年版〉

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存在問題を身近に感じよう!🥕 + 『存在と時間』の理論批判

 本日のテーマは「存在」です。

 

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

 

 

 ハイデガーが生涯、問題とした「存在の意味への問い」。これをもう少し身近に感じてみようという記事です。

これまで自明視されてきた伝統的な考え方によれば、世界を理解し、その中で巧みに活動することができるのは、私たちが世界についての効果的な内的モデルを持っていて、そのモデルをひとつのコンテクストから別のコンテクストへ円滑に操作できるからである。そこには「理論主義」とでも呼ぶべきもの、つまり何かを理解するとは、その理解される対象について、陰に陽に何らかの理論を持つことであり、人間のあらゆる営みは何らかの形で一種の認識である、という根本的な想定が潜んでいる。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

  仮に、わたしたちの理解を首尾一貫した理論の形で示すことができるなら、それを具体化した装置も作ることができるだろう。それが「人工知能」だというわけだ。しかし、残念ながらそのように完璧に明示的な理論など提示することは出来ない。

 次の文をモデル化することを考えよう。

Because of the strike, she was unable to repair the lock in time to be able to leave for her holiday.

ストライキのせいで、彼女は休暇に出掛けるのに間に合うように錠前を修理することができなかった)

  この文章をどのように理解するだろうか。どこにも明言されていないが、「彼女」は自分自身で錠前を修理することは出来ない。修理することができなかったのは「彼女」にその能力がなかったためではなく、ストライキのせいで休暇に間に合うように錠前屋に依頼できなかったからだ。

 もちろん自分の腕前で修理することはできたがストライキがそれを邪魔したんだという風に解釈することもできる。しかし普通はそうしない。いちいち言わなくても「ストライキ」という言葉がある時点で、ほぼほぼ中身が決まるのだ。

 さらに、当たり前だが「to be able to leave」のableというのは精神的なものだ。別に錠前を直さなくっても休暇には出掛けられるのだが、彼女はその危険を冒そうとはしなかった。つまり、この単純な文章を理解するのでも、恐ろしいほどの背景的知識が必要になる。しかもわざわざ言ってやらないと浮き出てこないし、これ以外にもまだまだある。盗難のことも知らなければならないし、財産というものについてもある程度了解がなければならない。どんどん、どんどんと、自明なことが掘り返され、とめどない。

 

 理論偏重の立場に対して、そこからどのようなことが言えるのか。要するに、その立場は間違っている、ということだ。世界と関わる能力が、世界について自分が内に持つ理論を外に対して応用することであるとは限らない。人間の理解の多くは、漠然として主題化されないままに他の人たちと共有している存在様態に依存しており、休暇がなんであるかを認識するのにも、労働の意味するところを漠然と知っていなくてはならない。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

 

 だからこそ、単に「〇〇が存在する」というだけでも、そこには恐ろしいほどの含意がある。存在はひとつの大きな謎である。

 

存在と時間』の中心的な議論のひとつは、実存するとは、常にすでにひとつの世界と関わっている、ひとつの世界の中にいることを意味するというものだ。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

 

 『存在と時間』凝縮

 「実存するというのは、常にすでにひとつの世界と関わっているということ」である。そうして、そのさまざまな実存するという活動を「世界内存在」と呼ぶ。

人間の自己とは、何か一方の側にある閉ざされた内面領域で、それが他方の側にある外界と向かい合っている、などというのではない。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

  わたしたちと世界が関係する仕方は、観察的な意識だけではまったくない。それどころか、歩いたり、話したり、道具を使ったりしているとき、わたしたちはなにひとつ意識を集中させていないし、それが当たり前である。

 私たちの理解は、常に特定の状況から立ちあがり、また常に何らかの気分による調律を伴っている。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

  なにか物・あるいは出来事といったようなことは、すべてぼんやりと、全体として感じられる。それがハイデガーのいう「気分」である。そのような色合いのなかで、あるものは重要、あるものはどうでもいいものとして現れてくる。壊れた錠前は女性に漠たる恐怖感をもってあらわれ、このまま家を留守にしないほうがいいと心に決める。

 

 

 伝統的にはこうだ。:「なにかを理解しようと思うなら、それをばらばらに分解し、それらの相互作用を記述せよ」心をデータ処理装置と見る知覚の説明モデルはまさにこれである。

 教室に入って来たハイデガーが「教卓」を知覚するとする。

まず中立的な知覚があり、別々の感覚データ(大きさ、色、距離など)がいくつかあり、心は素早く、それらを相互に関連付け、そこに働きかけることで、互いに直角に接している複数の茶色の面を講壇と解したり、色と形の特定の組み合わせを、自分の友人ヘンリーと解釈したりすると考えられている。しかし実際のところ、私たちはそんなふうにはものを知覚しない。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

  じゃあどう知覚するか? わたしたちにまず見えるのは「教卓」なのだ。まず「教卓」がある。もし望むなら、大きさや色など、そういった相互関係へと解きほぐすことができるが、別にそこから教卓が生まれるわけではない。バラバラにして個々の要素から出発しようというのを大雑把に〈還元主義〉と呼ぶとすれば、この還元主義を批判しているのだ。

 

事物全体を包括的に捉える感覚がまず先にあって、それによって初めて特定の部分の重要性やそれが包含する意味合いを把握することが可能になるというわけだ。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

 つまり、私たちは、まず多くの中立的なデータ、純粋に客観的な「外部のもの」に直面し、次いでそこから世界を構築するのではない。同じ理由から、私たちは、何か純然たる無垢の意識という「内部」領域に閉じこもり、遠くを眺めるように、自分を取り巻くものを眺めるなどということはできない。

マルティン・ハイデガー (シリーズ 現代思想ガイドブック)

 

 

【令和2年社労士試験対策】労働基準法対策・択一式

 労働基準法分野は、かなり多彩です。択一式は毎年大問が7つ出ます。

 五章(安全衛生)・七章(技能者の養成)・八章(災害補償)・十章(寄宿舎)の出題は相当にレアケースで、基本的にはそれ以外の章を用いた問題が出ます。章をまたいで出題されることもありますが、多くの場合は同じ章から出題されます。

 

 特に九章:就業規則はH29年度を除いてほぼ毎年出題されていますし、四章内にある年次有給休暇に関しては定期的に出題されるにも関わらず、ここ三年間は出ていないため、令和2年度試験では最重要注意項目といえるのではないでしょうか。

 就業規則年次有給休暇でひとつずつ潰すとなると残り五問ですが、総則問題はほぼ間違いなく大問一個を使って毎年出題されていますし、各章の内容をバランスよく出してくることを考えると、

 

  1.  総則
  2.  就業規則(+減給の制裁)
  3.  年次有給休暇
  4.  2章
  5.  3章
  6.  4章
  7.  組み合わせ(2,3,4関連)

 

 でしょう。結局のところバランスよくやらなければならないことになります。年次有給休暇でなければ割増賃金の事例問題が怪しいところです。

 

 

みんなが欲しかった! 社労士の教科書 2020年度 (みんなが欲しかった! シリーズ)

みんなが欲しかった! 社労士の教科書 2020年度 (みんなが欲しかった! シリーズ)

 

 

労災保険法まとめ【社会保険労務士】令和元年度

 

内容

(1)派遣労働者に係る災害の認定

派遣労働者に係る業務災害の認定に当たっては、派遣労働者が派遣元事業主との間の労働契約に基づき派遣元事業主の支配下にある場合及び派遣元事業と派遣先事業との間の労働者派遣契約に基づき派遣先事業主の支配下にある場合には、一般に業務遂行性があるものとして取り扱うこととされている。 ⇒ 〇

 

 業務災害であることが認められるためには業務遂行性(支配下にある)、業務起因性(その仕事のせい)の二つを満たす必要があります。派遣労働者というのはA会社にやとわれてB会社で働くというちょっと変わった労働形態であるわけですので、なにかあったときにA会社が「支配下にないで~す。めっちゃ遠くで仕事してるし~」とゴネだしたら面倒ですね。

 そこで通達では、「派遣先事業主の支配下にあったら派遣元の支配下にあることにしようぜ」ということにしたわけです。

 

 ちなみに、

 業務遂行性〇で業務起因性✖ ⇒ ex.労働者がとった勝手な行動で事故

 業務遂行性✖で業務起因性〇 ⇒ ???(多分ない?)

 

派遣労働者に係る業務災害の認定に当たっては、派遣元事業場と派遣先事業場との間の往復の行為については、それが派遣元事業主又は派遣先事業主の業務命令によるものであれば一般に業務遂行性が認められるものとして取り扱うこととされている。 ⇒ 〇

 

 派遣元と派遣先の往復はどっちにもいませんので①が使えませんね。そこで「命令されていれば」業務遂行性が認められるとしたわけです。

 

 

派遣労働者に係る通勤災害の認定に当たっては、派遣元事業主又は派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、又は終了する場所が「就業の場所」となるため、派遣労働者の住居と派遣元事業場又は派遣先事業場との間の往復の行為は、一般に「通勤」となるものとして取り扱うこととされている。

 

 今度は「住居」と「派遣元・派遣先」への移動の話です。さっきは「派遣元」↔「派遣先」でしたね。これは原則として、通勤にあたります。通達です。そういう扱いにせよとおかみがいってるわけです。法律には書いてません。

 

 

派遣労働者の保険給付の請求に当たっては、当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の内容等を把握するため、当該派遣労働者に係る「派遣元管理台帳」の写しを保険給付請求書に添付することとされている。 ⇒ 〇

 

 答えは〇。法律には一切書いてませんが、通達でそう決まってます。

派遣労働者については、その就労形態の特異性に鑑み、保険給付の請求に当たり特に次により取り扱うこととするので、請求人ほか関係者の指導に努めること。

イ 保険給付請求書の事業主の証明は派遣元事業主が行うが、当該証明の根拠を明らかにさせるため、死傷病報告書の写等災害の発生年月日、災害の原因及び災害の発生状況に関して派遣先事業主が作成した文書を療養(補償)給付以外の保険給付の最初の請求を行う際に添付させること。

なお、療養(補償)給付のみの請求がなされる場合にあっては、派遣先事業主に、当該請求書の記載事項のうち、事業主が証明する事項の記載内容が事実と相違ない旨、当該請求書の余白又は裏面に記載させること。

ロ 当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の内容等を把握するため、当該派遣労働者に係る「派遣元管理台帳」の写を当該保険給付請求書に添付させること。

 

派遣労働者の保険給付の請求に当たっては、保険給付請求書の事業主の証明は派遣先事業主が行うこととされている。 ⇒ ✖

 

 法律には「事業主」としか定められておらず、派遣先なのか派遣元なのかがはっきりしません。そこで通達でははっきりと「派遣元」と書かれています。

則23条
1 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
2 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。

 

⇩①~③はこの通達の第三によります。④、⑤は第四です。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2521&dataType=1&pageNo=1

 

 

(2)脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について

発症に近接した時期において特に過重な業務(以下「短期間の過重業務」という。)に就労したことによる明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務上の疾病として取り扱うとされている。』

 

 わけですが、発症に近接した時期・短期間の過重業務ってなんやねんという話。

 

<最後にまとめをしてます。>

 

  1.  発症に近接した時期=発症前おおむね1週間
  2.  特に過重な業務とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいうものであり、ここでいう日常業務とは、通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。
  3.  特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚労働者又は同種労働者(以下「同僚等」という。)にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断することとされているが、ここでいう同僚等とは、当該疾病を発症した労働者と同程度の年齢、経験等を有する健康な状態にある者をいい、基礎疾患を有する者は含まない。
  4.  業務の過重性の具体的な評価に当たって十分検討すべき負荷要因の一つとして、拘束時間の長い勤務が挙げられており、拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容、休憩・仮眠時間数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)等の観点から検討し、評価することとされている。
  5.  業務の過重性の具体的な評価に当たって十分検討すべき負荷要因の一つとして、精神的緊張を伴う業務が挙げられており、精神的緊張と脳・心臓疾患の発症との関連性については、医学的に十分な解明がなされていないこと、精神的緊張は業務以外にも多く存在すること等から、精神的緊張の程度が特に著しいと認められるものについて評価することとされている。

 

 労災保険法の問題は通達のオンパレードなので、「知らねえよ」という問題が山ほど出ます。覚えるしかありません。

 

① 発症に近接した時期=発症前おおむね1週間 ⇒ 〇

(平成13年12月12日基発1063号)
短期間の過重業務について
ア 特に過重な業務
特に過重な業務とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいうものであり、日常業務に就労する上で受ける負荷の影響は、血管病変等の自然経過の範囲にとどまるものである。
ここでいう日常業務とは、通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。
イ 評価期間
発症に近接した時期とは、発症前おおむね1週間をいう。

 

特に過重な業務とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいうものであり、ここでいう日常業務とは、通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。 ⇒ 〇

 

 これによって「発症に近接した時期」「特に過重な業務」の答えが出たことになります。

 

特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚労働者又は同種労働者(以下「同僚等」という。)にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断することとされているが、ここでいう同僚等とは、当該疾病を発症した労働者と同程度の年齢、経験等を有する健康な状態にある者をいい、基礎疾患を有する者は含まない。 ⇒ ✖

 

(平成13年12月12日基発1063号)
短期間の過重業務について
ウ 過重負荷の有無の判断
(ア) 特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚労働者又は同種労働者(以下「同僚等」という。)にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。
ここでいう同僚等とは、当該労働者と同程度の年齢、経験等を有する健康な状態にある者のほか、基礎疾患を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる者をいう。

 

 含みます。

 過重な業務は日常業務と比較して、客観的・総合的に判断されます。

 

業務の過重性の具体的な評価に当たって十分検討すべき負荷要因の一つとして、拘束時間の長い勤務が挙げられており、拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容、休憩・仮眠時間数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)等の観点から検討し、評価することとされている。 ⇒ 〇

 

(平成13年12月12日基発1063号)
短期間の過重業務について
ウ 過重負荷の有無の判断
(ウ) 業務の過重性の具体的な評価に当たっては、以下に掲げる負荷要因について十分検討すること。
c 拘束時間の長い勤務
拘束時間の長い勤務については、拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容、休憩・仮眠時間数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)等の観点から検討し、評価すること。

 

 「そうです」以外に言いようがありません。

 拘束時間の長い勤務の話をしているというのは注意するべきかも?

 

業務の過重性の具体的な評価に当たって十分検討すべき負荷要因の一つとして、精神的緊張を伴う業務が挙げられており、精神的緊張と脳・心臓疾患の発症との関連性については、医学的に十分な解明がなされていないこと、精神的緊張は業務以外にも多く存在すること等から、精神的緊張の程度が特に著しいと認められるものについて評価することとされている。 ⇒ 〇

 

 

 

 『脳血管疾患及び虚血性心疾患等』をまとめてみましょう。

 それが業務上の疾病として認められるための基準は三つあります。

  1.  異常な出来事 = 前日
  2.  短期間の過重業務 = 発症前1週間
  3.  長期間の過重業務 = 6か月

 今回特に見てきたのは短期間の過重業務です。

 その判断基準は一言で言えば「発症に近接した時期に、特に過重な業務をしている」ことでした。

 通達によれば、発症に近接した時期とは1週間のことであり、特に過重な業務とは日常業務と比較しての話でした。比較にあたっては同僚等(=基礎疾患を含むものもひろくとらえる)の事情も見つつ客観的・総合的に行われなければなりません。

 その評価にあたっては次の7項目を検討が定められています。(1)労働時間(2)不規則な勤務(3)拘束時間の長い勤務(4)出張の多い業務(5)交替制勤務・深夜勤務(6)作業環境(7)精神的緊張を伴う業務。

 

(3)療養補償給付

 労災保険法の給付のひとつです。

 基本的には「業務災害のケガの治療は金がいらないよ」というものです。

 

① 被災労働者が、災害現場から医師の治療を受けるために医療機関に搬送される途中で死亡したときは、搬送費用が療養補償給付の対象とはなり得ない。⇒✖

 

 法13条には療養補償給付の範囲が書かれています。

法13条2項
2 前項の療養の給付の範囲は、次の各号(政府が必要と認めるものに限る。)による。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
3 政府は、第1項の療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令で定める場合には、療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる。

  要するに救急車でピーポーされる金もかかりませんよということが書いてあるのですが、「途中で死んだらどうするの?」ということは書いていません。労働者を運ぶのと遺体を運ぶのは違うんじゃないのか? そんな疑問に答えるのが通達です。

 通達ではありがたいことに「死んでも大丈夫」と書いています。

 いま第何条が問題になっているのかを意識してください。

 

病院等の付属施設で、医師が直接指導のもとに行う温泉療養については、療養補償給付の対象となることがある。⇒〇

 

 まず基本として「怪我したので温泉療養行きます。タダにしてください」は通りません。なぜなら、

施行規則第十一条 法の規定による療養の給付は、法第二十九条第一項の社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者(居宅を訪問することによる療養上の世話又は必要な診療の補助(以下「訪問看護」という。)の事業を行う者をいう。以下同じ。)において行う

 施行規則に「病院でやれ」と書いているからです。だから温泉療養は基本だめなんだけど、「じゃあそばに医者がいたらどうなる?」に答えるのが通達です。

 通達ではOKと書いてます。

 

療養の給付は、社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者(「指定病院等」という。以下本問において同じ。)において行われ、指定病院等に該当しないときは、厚生労働大臣が健康保険法に基づき指定する病院であっても、療養の給付は行われない。 ⇒ 〇

 

 はい、次は施行規則11条の「指定病院等」の話です。

 施行規則第11条2項には次のように定められています。

 都道府県労働局長は、療養の給付を行う病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者を指定し、又はその指定を取り消すときは、左に掲げる事項を公告しなければならない。……

 厚生労働大臣には指定する権限はありません

 

療養の給付を受ける労働者は、当該療養の給付を受けている指定病院等を変更しようとするときは、所定の事項を記載した届書を、新たに療養の給付を受けようとする指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出するものとされている。 ⇒ 〇

 

 次は指定病院から指定病院へ移るときの話です。

 施行規則第11条3項にはまさにこのことが書かれています。指定病院に届出を出しましょう。

 

療養給付を受ける労働者から一部負担金を徴収する場合には、労働者に支給される休業給付であって最初に支給すべき事由の生じた日に係るものの額から一部負担金の額に相当する額を控除することにより行われる。⇒〇

 

 療養補償給付は「お金が要らない」といいましたが、実はちょろっとお金をいただくことがあります。それが一部負担金です。(1)第三者にやられた(2)死んだ。又は休業給付を受けない者(3)もう払った(4)特別加入者 からは負担金をとりませんが、他はとります。

 とる方法は休業四日目から支給される休業補償給付から差し引くことです。

 だから休業補償給付を受けない、死んだ人とか3日以内で治る奴からはとれません。それが(2)ですね。

 

 (4)社会復帰促進事業

 労災保険法第29条1項は次のように定められています。

法29条
1 政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる。
一 療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他業務災害及び通勤災害を被つた労働者(次号において「被災労働者」という。)の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
二 被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業
三 業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保並びに賃金の支払の確保を図るために必要な事業

  読むのは面倒なので要すると、「赤字3つの事業ができる」ということです。:

 (1)社会復帰(2)被災労働者等援護(3)安全衛生・労働条件

 

 令和元年に出た問題は、

 

 これって社会復帰事業でしょうか?

 

 というもの。順にみていきましょう。

 

①被災労働者の受ける介護の援護 ⇒ 〇 (二番目)

②被災労働者の遺族の就学の援護 ⇒ 〇 (二番目)

③業務災害の防止に関する活動に対する援助 ⇒ 〇 (三番目)

④被災労働者の遺族が必要とする資金の貸付けによる援護 ⇒ 〇(二番目)

⑤被災労働者に係る葬祭料の給付 ⇒ ✖!

 

 葬祭料の給付は社会復帰事業ではありません。「二番目ちゃうんかい」という気がしますが、二番目にはそんなことは書いていません

 ここで法律に戻って読んでみてほしいのですが、実は①~④ははっきりと記載されているのです。試験問題に出るためには法律上の根拠が必要で、「その他」と広めに規定してはいますが、書いていない以上、通達か最判例に頼るしか出題できません

 しかし「実はそんな通達がある」かもしれません。この問題が問題になっているのは、①~④が明確だから、正誤問題としてはどっちかわからないグレーの⑤が✖にならざるを得ないのです。一問一答形式でこれを見ると「知らねえよ!」となりますが、知らなくて良いのです。

 

 逆に言えば①~④は暗記しろという社労士試験作成者からのお達しです。

 

(5)特別支給金

 特別支給金とは、普通の給付に加えて上乗せしてくれるお金のことです。

 

休業特別支給金の支給を受けようとする者は、その支給申請の際に、所轄労働基準監督署長に、特別給与の総額を記載した届書を提出しなければならない。特別給与の総額については、事業主の証明を受けなければならない。 ⇒ 〇

 

特別支給金規則12条
1 休業特別支給金の支給を受けようとする者は、当該休業特別支給金の支給の申請の際に、所轄労働基準監督署長に、特別給与の総額を記載した届書を提出しなければならない。
2 前項の特別給与の総額については、事業主の証明を受けなければならない。

 

既に身体障害のあった者が、業務上の事由又は通勤による負傷又は疾病により同一の部位について障害の程度を加重した場合における当該事由に係る障害特別支給金の額は、現在の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害特別支給金の額である。⇒✖

 

 障害補償給付の特別支給金は障害等級によって金額が変わります。

 「加重後の特別支給金 - もともとの特別支給金」

 が特別支給金の額になることは、特別支給金規則に書いてあります。

 

特別支給金規則4条2 既に身体障害のあつた者が、負傷又は疾病により同一の部位について障害の程度を加重した場合における当該事由に係る障害特別支給金の額は、前項の規定にかかわらず、現在の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害特別支給金の額から、既にあつた身体障害の該当する障害等級に応ずる障害特別支給金の額を差し引いた額による。

 

傷病特別支給金の支給額は、傷病等級に応じて定額であり、傷病等級第1級の場合は、114万円である。⇒〇

 別表第1の2(第5条の2関係)
傷病等級 額
第1級 114万円
第2級 107万円
第3級 100万円

特別加入者にも、傷病特別支給金に加え、特別給与を算定基礎とする傷病特別年金が支給されることがある。⇒✖

 

 ありません。特別支給金は特別加入者には全く関係ありません。

特別支給金規則19条
 第6条から第13条までの規定は、中小事業主等、一人親方等及び海外派遣者については、適用しない。

 

特別支給金は、社会復帰促進等事業の一環として被災労働者等の福祉の増進を図るために行われるものであり、譲渡、差押えは禁止されている。⇒✖

 

 保険金は譲渡差し押さえは禁止ですが、特別支給金については禁止されていません。区別しておきましょう。

 

(6)労災一般・雑則

年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始めるものとされている。⇒ 〇

法9条
1 年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、支給を受ける権利が消滅した月で終わるものとする。

事業主は、その事業についての労災保険に係る保険関係が消滅したときは、その年月日を労働者に周知させなければならない。⇒〇

則49条
1 事業主は、労災保険に関する法令のうち、労働者に関係のある規定の要旨、労災保険に係る保険関係成立の年月日及び労働保険番号を常時事業場の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、労働者に周知させなければならない。
2 事業主は、その事業についての労災保険に係る保険関係が消滅したときは、その年月日を労働者に周知させなければならない。

労災保険に係る保険関係が成立し、若しくは成立していた事業の事業主又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体は、労災保険に関する書類を、その完結の日から5年間保存しなければならない。⇒✖

則51条
 労災保険に係る保険関係が成立し、若しくは成立していた事業の事業主又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であつた団体は、労災保険に関する書類(徴収法又は労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則による書類を除く。)を、その完結の日から3年間保存しなければならない。

労災保険法、労働者災害補償保険法施行規則並びに労働者災害補償保険特別支給金支給規則の規定による申請書、請求書、証明書、報告書及び届書のうち厚生労働大臣が別に指定するもの並びに労働者災害補償保険法施行規則の規定による年金証書の様式は、厚生労働大臣が別に定めて告示するところによらなければならない。⇒〇

則54条
 法、この省令並びに労働者災害補償保険特別支給金支給規則の規定による申請書、請求書、証明書、報告書及び届書のうち厚生労働大臣が別に指定するもの並びにこの省令の規定による年金証書の様式は、厚生労働大臣が別に定めて告示するところによらなければならない。

行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む。)に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。⇒〇

 

法47条の2
 行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む。)に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。

 

(7)保険給付に関する通知、届出等

 

 

 

 

 

みんなが欲しかった! 社労士の教科書 2020年度 (みんなが欲しかった! シリーズ)

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ゼロからスタート! 澤井清治の社労士1冊目の教科書

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