2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧
漱石が求めた「個人の自由」は、単なる信念では押し通せない。何が必要かといえば「金」である。が、漱石は「金」が力を持ちすぎる社会にも嫌気がさしていた。漱石の神経を参らせたのは、〈金力の不徳義に対する怒りと、無金力の不如意に対するあせり〉であ…
夏目漱石ほど魅力的な作家はそういない。 彼が魅力的なのは、文学的な芸というものにとどまらない。どれだけ中身がうまくてもそれで繰り返し読む気にはならない。彼には、何度でも読ませるなにかがある。それを言葉にしようと試みているのが林田茂雄氏の書い…
ビッグバンが起きたことはほぼ間違いないと言われているとはいえ、門外漢からすると「へぇ」の域を出ないのもこっちからすると確かなことである。だがともかく何かが原因で始まらねばならぬ、もしこの世界が永遠にこの形であるのでなければ。まぁ永遠にはあ…
人間はひじょうに考えごとをする。考えるのは一見簡単だから、使い方を間違えてしまう。そこから哲学的問題が生じ、あるいは、死の恐怖が生じる。それで宗教をやる、考えなくてラクだから、運命はみんな神様にお任せ。あるいは考えるのをすっかりやめてしま…
動物の幸せ 動物をただ単に生かす方法なら、つまり死なせない方法ならいくらでもあるだろうが、生き残れば幸せだろうと考えるのはどうかしている。このことは人間に当てはめても明らかなことだ。この件に関わって、イギリスの科学者による家畜福祉の諮問委員…
第七章 スピノザの方法 『エチカ』における定義は、発生的定義(=対象の最近原因を含むことでその対象の発生を描き出す)とは異なり、名目上のものとなっている。たとえば『自己原因とは、その本質が存在を含むもの、あるいはその本性が存在するとしか考え…
お釈迦様の話ではどうも我というものには実体がないそうだし、スピノザやプロティウスによると私たちは「神」「一者」と呼ばれるようなものから生物的必要性などに応じて自ずから分節化され来たったものだそうである。小馬鹿にしたような書き方で始めてしま…
第六章 逆説の解決 〈これまでの復習〉 精神は道を進みながら何ごとかを知り、知ったことが次の知ることを手助けする。何ごとかを知っているかどうかを問う必要はなく、ただその道をいかにして見つけいかにして歩めばいいかを問えばよい。だがこのような方法…
第二章 方法の三つの形象Ⅱ 〈前回の復習〉 何ごとかを知っているということの正しさは、まさにその何ごとかを知っているということだけであって、その正しさをチェックする標識は無用である。真理に到達している人は真理に到達していることを知っている。到…
「なぜ人は自分らしさを求めるのか?」 この問いを吟味するうえでまず確認しなければならないことは、「自分らしさ」とはなんであるのかである。そもそもこの点がわからなければ、人がそれを求めているのかどうかさえわからない。 そもそも自分らしさという…
夏目漱石『吾輩は猫である』において、二度、哲学者ニーチェの名前が登場する。 一つは第七章の、猫の銭湯見物の折。猫はふだん服を着ている人間たちが裸体で集合しているのを見て仰天する。人間の歴史は衣服の歴史であり、衣服は人間同士を差別してきた。生…
「気持ちを整理する」という。 部屋の乱れは心の乱れ、と思い、気持ちが落ち着かないときは整理整頓することにしている。この記事『気持ちが落ち着かないとき』では、その整理整頓をテーマに、思いついたことを適当に書き連ねて来た。今回はそろそろ気持ちの…
エピクロスは精神の平静と肉体の無苦(アタラクシア)が幸福であると考えた。にんじんはこれに付け加えて、あるいは補足して言いたい。そこにあるものを愛でること、音楽をきれいだと思ったり、花をきれいだと思ったり、そういったことも、幸福の主要な要素…
第一章 方法の三つの形象Ⅰ ものを考えるにあたりわれわれは暗闇のなかをひとり手探りで進まなければならないのか。それともその暗闇のなかには道案内がいるのか。また道案内は可能か。 スピノザの方法 この問いに関わって、スピノザが「方法」について論じて…
釈迦が「我っていうのは五蘊から成るんだよ」と言ったので、五蘊について熱心に研究し始めたのが、小乗仏教といわれる人たちだった。あんまり専門的になりすぎ、学問的になりすぎてしまい、やがて大乗仏教といわれる人たちに批判を食らう。それが『般若心経…
インダス文明の栄えたのち、アーリア人たちが進出してきた。そこでできたのが『リグ・ヴェーダ』などの「聖典」である。ここに生じた階層制度に現代のカースト制の起源を見ることができるそうだが、仏教の基礎にある「輪廻転生」の考え方もアーリア人との混…
西洋と東洋の思想の違いは「光あれ」で分かたれるという(新編 東洋的な見方 (岩波文庫))。前者は「光あれ」から、後者は光が射す前も射程に置く。理論theoryのもととなったテオリアという言葉は、見るという動詞の名詞形であるが、東洋は真理探究のために…
社会心理学では、「私は〇〇だから、~するためには△△しなければならない」というのをアイデンティティ不随条件という。〇〇にはアイデンティティが入り、~には目的、△△にはなんらかの行為が入る。たとえばアメリカのある地域では、黒人の子供がプールに入…
むなしさについて 日々の生活のなかでむなしいと感じるときがどれほどあるだろう。「人生はむなしい」というのはにんじんのフォロワーの言葉である。この種の発言は、ある特定の人物というよりも、タイムラインでは毎日のように聞かれる。一部には冗談が含ま…
一日をまっさらにはじめたい。これが朝一番にやるべき仕事のような気がする。 そのためにはまずしっかり寝ること。いらないものを忘れ去るのも、睡眠の役目だ。睡眠とは脳の掃除、整理整頓。よく寝れた朝ほどすっきりしていることはない。そこから一日のゴミ…