物体の動きに関心を持つのが物理学のうちでも「運動学」と呼ばれるものだろう。
ものが動くのは人間が動かしたり投げたりするからだが、人間に命じられるがままに動くわけではない。人間がものを落としたり投げたりする瞬間までは手の上に乗っているがどこまでもは飛んでいかない。一体なぜなのか。物体の位置をc(t)としてみよう。なるほど、物体は孤を描いて落ちる。しかも、いつもそうなる。いま、私たちの手許にはそれを説明するための材料がmとc(t)しかない。
落下運動を考えよう。物体は徐々にスピードを上げていく。スピードとはここではc(t)をtで微分したものだ(速度)。それがだんだん上がるのだからc(t)の二階微分がプラスだといえる(加速度)。だが逆に上へ放り投げるとスピードは徐々に落ち、遂には落下してくるのだ。各時点の物体の情報を得るために、
p(t) = m(t)c'(t)
と定める。ほとんどの場合、質量は一定であろうから、m(t)を定数関数としてもよい。質量がどれだけ大きかろうが小さかろうが動いていなければ一括してゼロであり、速度が速ければ速いほどp(t)は増える。だがそこには物体それぞれの個性(つまりは質量)も考慮に入れている。プラスすることは質量と速度をそれぞれ独立に見ることであり、速度を掛けるのは物体の変化に興味があるためだからp(t)の定義は理にかなっていると思われる。
p'(t) = mc''(t)
が成立する。もしp'(t)=0ならば、c''(t)=0である。つまり加速度がゼロであり、速度は時間に対して変化しないことを示すため静止しているか、等速直線運動をしている。ここで「等速運動」ではなく「等速直線運動」と書いたことに注意が必要である。なぜなら速度は時間に対して変化しないからだ。つまり、向きさえ変えることがない。
私たちはp(t)というとても単純な物体の情報から、古典的なニュートン力学の第一・第二法則までを導くことができた。