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「志向性の哲学」 第一章

第一章

 志向性について考えるうえで、対象は必ずその作用とセットで考えられる。つまり『これは対象ですか』と問うことに意味はなく、『これはあなたが欲しいと思っているビールですか』という仕方で作用との関係を問われる。

 さて、志向性を成立させているものはなんだろうか。たとえば『実母と実子の関係』は出産という出来事があるだろう。同じように「この作用の対象はこれだ」という関係は、何にもとづいているのだろうか。たとえば<視線を向ける>という行為は案としてうまくいかない。志向性の<向ける>というイメージは単なる比喩にすぎない。では<イメージ>ならどうか。だがそもそもそのイメージが対象のイメージになっているというのはなぜなのか。では<因果的影響>はどうだろう。知覚は光が網膜に達して云々といった経路で私たちにものを見せる。だが現実は非常に複雑な因果関係に満ちておりどれ対象を特定するその因果であるのかは説明を要する。また、まったく実在しない対象やいまだ実現したことがないものについては因果的影響では説明できないだろう。それに「丸い四角」はまったく矛盾した概念でイメージすらできないが、意味不明であるわけではない。