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「数学的な宇宙」第一章:実在とは何か

第一章 実在とは何か

 「あまりにも直観に反している!」としても不思議ではない。もしも洞窟に住んでいた時代の女性が本気で物質の究極的なすがたをあまりにも真剣に考えていたら彼女は生き残れなかっただろうことからもわかるように、人間が進化によって獲得した直観というものは生き残るのに有益な物理的側面だけを理解できるようにしており、ある一定以上の技術を使うと、その直感は必ず裏切られるようにできているのだから。物理学における発見はミクロ的にもマクロ的にも確実に私たちの基本的な考えに修正を迫ってくる―――私たちの物理的世界は数学によって記述されるだけでなく、数学そのものである

 万物は究極的に何から出来上がっているのだろうか、という問いは多くの思想家たちを魅了してきた。その問いに本書は物理学で挑むが、最終的にその答えを提示して読者に信じ込ませることを目的としてはいない。私たちはまずこの問いが最近の宇宙スケールに及ぶ画期的発見によってどのように変容してきたかを見て、そこから一気に原子よりも小さな微視的な世界へ赴き物質の究極の構成要素がやはりある意味数学的であることをみよう。そして最後に『最も過激かつ異論が多いとみられる考え』———究極の実在は純粋に数学的である――を説明しよう。この考え方のもとでは偶然性や複雑性もっといえば時間変化さえも、本当は存在しない、ということになる。