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「歴史哲学への招待」第二章:歴史と偶然

第二章 歴史と偶然

 わたしたちは、二つ以上の事象が因果性という必然的関係なしに出会うことを「偶然」と呼んでいる。ひとつの出来事を起こす複数の因果系列同士は必ずしも因果的に結びついてはいない。すなわち、どちらの因果系列からも片方から片方を予測することができない。出来事へ向かうドミノの列は突然に倒れ始める。この「偶然性」が歴史を形作っていく。第一次世界大戦はまさに皇太子夫妻とセルビア民族主義学生が鉢合わせたことにより起こった。ほんの少しなにかが変わっていれば、大戦はなかったかもしれない。そして一方、ほんの少し何かを変えてもやはり起こったかもしれない。

 歴史には多くの分岐点がある。分岐するまで、分岐することさえもわからない。決定論が主張するようには、歴史は単純でも理屈に合ったものでもない。歴史はマルクスの言うように「奴隷制」「封建制」「資本制」「共産制」と進むわけでもなく、トインビーの言うように「発生」「成長」「挫折」「解体」「消滅」と進むわけでもない。自然の猛威、外敵の侵入、支配者の権力欲、英雄の野望、民衆の熱狂……といった法則化できないものによって、偶然によって進むのだ。