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「マンキュー入門経済学」②

相互依存と交易からの利益

 ここでは第五原理について詳しくみよう。取引が生活を豊かにするというが、なるほど確かにA,Bしか品物がないとき自分がAを作るのが得意で向こうがBを作るのが得意なら取引したほうがいいだろう。だが原理にくわえるほど「いつでも」成り立つものだろうか。相手が自分よりもAやBを作るのが下手だった場合でも取引したほうがいいのだろうか。自給自足を続けたほうがいいのではないか?

 まずAとBという品物はトレードオフに直面している(第一原理)。つまり片方に手をかければもう片方をそのぶんおろそかにせざるを得ない。最大限全力を尽くしてアルファ氏は8hあたりAを8、Bを32生産でき、ベータ氏はA:24、B:48生産できるとする。全力を尽くしてこれなので、8hという時間をどのぐらいA,Bに振り分けるかによって生産量は変わる。いまはたくさん手にするほうが「得」だとしているから、取引するのとしないのとで取引する方が多ければよいことになる。それが実際によくなるのは、アルファ氏とベータ氏がそれぞれ得意なこと(この例だと時間単位で生産量が多いこと)にそれぞれ着手したときである。それぞれが得意なことをして取引すれば、お互いの取り分が圧倒的に増加する。いくらA、Bのどちらもが得意でも、相手がやってくれる分こちらが別のものに力を振るだけで、全体としての利益は膨らむのである。

 このことは『各人が比較優位を持っている財の生産に特化すれば経済の総生産は増加し、すべての人の生活水準の向上に役立つ』とまとめられる。比較優位とはある財を生産するのに他の財を少ししか放棄しないことである。有名な野球選手は芝刈りをやらせても一級品で誰よりもはやく芝を刈るかもしれないが、CM撮影をすれば稼げていたであろう3万ドルを機会費用として支払うことになる。だから彼が芝を刈るよりも、CMに出演して芝刈りを雇ったほうがずっとよい。するとどちらも得をすることになる。

 このことは相互依存の望ましさについて説明する。ではどのようにすれば相互依存が可能なのだろうか。どのように人々の多様な活動を調整するのだろうか。アルファ氏とベータ氏は二人しかおらず顔を突き合わせていたが、普通の社会はそうではない。これを調整するのが需要と供給という「市場」の力であることを見ていく。