③
だが配当というのは、どうなるかわからない。これに対処するため、将来支払われる配当がさまざまありうることを考慮し、その平均を予想する。この平均を期待値ともいう。たとえば株価1000円で、一年後に20%の収益が予想されるとしよう。つまり一年後の将来価値は1200円ということになるから第一章の計算が応用できるわけだ。
より一般的に、現在株価をP0とし、各時点で受け取る配当の期待値をk、m期後に受け取る配当の期待値をDmとすれば、現在価値P0は
P0 = D1/1+k + D2/(1+k)^2 + …
になるはずだ。一年後の将来価値がD1で、増え幅がkだから、これをずっと先まで引き延ばせばこうなる。「理屈では確かにその通りだが、D1とか、kとか、わからないことばかりだなあ」という意見も出るし、その意見は正しい。私たちにその具体的な値が今からわかるわけがない。
そこでD1,D2……という列が一定の率gで増えて行くと仮定するのが「定率成長モデル」であり、こうするとD2=(1+g)D1、D3=(1+g)^2 * D1と非常に簡単になる。これを用いて上式を書き換えると、
【定率成長モデル】
P0 = D1/1+k * ( 1 + (1+g/1+k) + (1+g/1+k)^2 + … )
= D1/1+k * 1/(1 - 1+g/1+k)
= D1/k-g
という具合になる。3つの数字によって現在価値がわかり、しかもそれが株のそもそもの価値である「配当」に基づいて計算されているため、便利に使われている。