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記述統計
記述統計という分野においては「データ」以外のものは存在しない。
記述統計とは、データを我々に理解できるような形で記述し、要約するための技術である。直接観測されない、データにない、そんなものは相手にしないという実証主義的な態度を持つ人々の方法論こそ、記述統計といえる。カール・ピアソンはたとえば因果性という概念は無用の長物だとみなし、それはデータから計算される『相関係数』によって定義し直される。
一方、この態度によって我々は帰納的推論のすべてを失う。
「昼時、学食は混むだろう」などという他愛のない推論さえ、受け入れるわけにはいかない。未来のことは未観測であり、データさえ存在せず、記述統計の立場からは何も言うことができない。たとえば回帰直線を求めた場合、観測していない他のデータもその直線付近に分布しているはずだと考えるのが自然だが、そのような想定さえ、記述統計の精神が拒絶する。「昼時、学食は混むだろう」というのはふつうの発想だが、それは科学的なものでは一切なく、お守り以上の価値を持たない。
そしてこのことは、科学的方法論としては役立たずであることを意味する。記述統計の目的は即ち整理することであり、予測も説明も一切しない。もし整理以上のことがしたいならば、より強力な方法論を要請しなければならない。
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