にんじんブログ

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Life, Vitalityの違いは?

 英単語で「Life」(生命)、「Vitality」(生命力)というものがあります。これらはどのように違うのでしょうか?

 『印欧語根を用いた英単語学習辞書』によれば、ふたつの語源は異なっています。

  • Lifeは、””leip-”(居座ること、くっつくこと;脂肪)
  • Vitalityは、"gᵂei-"(生存すること、生活すること、生気のあること、命)。また、「住む」という意味もあります(gweyh- 意味と語源 – 語源英和辞典

 ちなみに自動詞「live」(住む)はleip-を語源とし、他動詞inhabit(住む)は"en"(中)+"grabh-"(与える、受け取る)を語源としています。たとえば「わたしはニューヨークに住んでいます」の場合はliveですが、「イルカの集団が太平洋に住んでいます」の場合はinhabitを使います。生息しているという感じですね。

 じゃあ"gᵂei-”の「住む」はどこに行ったんだという話です。派生語を見る限り、わたしたちが「住む」という言葉であらわす内容とは異なり、どちらかといえば学問的な、からっとしたイメージのものがおおいです。顕生代とかなんとか。

 

 Lifeが「居座ること」だと言われるとなんか仮住まいみたいで申し訳ない感じがしますね。alive(生きている)はa-liveで、a:「…の上に」「…に対して」「…に関係して」「上へ」の意であり、exist(存在する、生きる)はeghs- stāで「外にー立つこと」の意です。わかったようなわからんような。

 住むほうはlive, inhabit,dwell,resideがありますが、liveとinhabitに上述のような違いがあるほかには、フォーマルさに違いがあるようです。堅苦しいわけですね。

 

 

 生命と生命力。このふたつの違いは「ちから」にあるかと思います。力とはなんでしょうか。力とはパワーですが、

    1.  人や動物にもともと備わっている、自ら動き、または他の物を動かす働き。体力。「筋肉の力」「あらん限りの力を出して戦う」

    1.  物事をするときに助けとなるもの。助力。「先輩を杖とも力とも頼む」「金の力で政界に進出する」

    1.  ききめ。効果。効力。「彼の発言には大いに力がある」「薬の力でせきが止まる」

    1.  学問・技芸などの能力。力量。実力。「国語の力が不足だ」「まだ翻訳の力が足りない」「力のある選手」

    1.  影響力。権力。「親の力で就職する」「力の政治」

    1.  腕力。暴力。「力で事を解決する」「力に訴える」

    1.  気力。迫力。「力のある文章」「力なげに答える」「力が抜ける」

    1.  努力。骨折り。「力を尽くして平和に貢献する」「医師の力で全治した」「力を惜しむ」

    1.  資力。財力。「娘を大学にやる力がない」

    1. 10 物体の静止あるいは運動している状態に変化を起こさせたり、物体に変形を生じさせたりする作用。大きさはベクトル量で表され、単位はニュートン。力の働きかたの違いによって、弾性力摩擦力などに区別される。重力電気力磁気力などは場の力とよばれ、原子核の内部の粒子が及ぼし合う核力も場の力の一つ。

    2. 力(ちから)の意味 - goo国語辞書

      つまりは「生命」と「生命という、生命のはたらき」ということになります。

  1.  現象学における「意識」を説明する際に、それが単なる気づいている状態、いわゆる意識的な状態に限られないことを強調するために「実存」や「生」という言葉が用いられることがあると、レスター・エンブリーが書いています。
  2. もう一つの言葉である「生」は、とりわけ生物学的な意味内容を避けられるのなら(これは形容詞をつけることによって可能になるかもしれない)、またそれと同じ語源をもつ形容詞があるなら、より自然な表現である。しかし、生物学的な意味合いは強力なものであるし、「生きた(vital)」という形容詞は生(life)と同じ語源を持ってはいない。
  3. 使える現象学 (ちくま学芸文庫)
  4.   しかし以降の事情は、上述の通り。同じ語源を持っていません。彼が避けようとしている生物学的な意味内容というのは、生物というものを学的な対象物として見る、そういうひとつの見方だと思われます。そうとはいえ、この記述の意味は不明瞭であり、結局なんなのかよくわからない。

  5.  彼が現象学における「意識」について述べる注意は、(1)気づいていること、体験していることだけではなく、信じること、評価することなどが含まれる、(2)それは実践的なものであるということ。意識は一つの行うことである。(3)問題なのは自分が気づいていない、非反省的な過程である。気づくことは二次的なものに過ぎない。のみっつである。
  6.  ハイデガーでいうところの根源的な「世界内存在」に近いように思われる。

 

 

いろいろな問題圏

 生活上の主な困難は金銭によって表示されることが多いようです。

 たとえば食事に気を付けるというのも、お金というものをいくらそこにあてるか、という観点で為される。栄養がたくさんほしいならたくさんお金を払わなければならないからです、一般には。それを「いや、これでもいけるよ」とするのが節約です。しかしまぁ、節約というのも生活を金銭で表示しようとする点ではそう違いはありません。生活上の必要だとか、仕事との兼ね合いだとか、将来の計画といったところから見れば、数値で表されるのは大変便利です。来月は〇万円かかるからまぁ黒字だなとなんとなく平穏に暮らせる目処がたちます。蔵に食事を貯めこんで来月は大丈夫だろうと思うのとは随分な違いです。

 そうとはいえ、表示しきれない問題もあります。朝ランニングをするとか、習慣ですね。時間の配分です。「時間の配分」という観点からすれば、仕事もそのひとつなわけで、どの程度を出稼ぎに充てるか、だとみれば、生活上の問題の対応はすべて習慣を決めることだといってしまってかまわないことになります。目標額を手短に楽に稼げる仕事が「割りのいい仕事」とみなされます。

 

 まず第一に、目標値を定めることがあって、

 それから第二に、どのように割り振るかということになります。第一の問題のほうが根源的であって、第二の問題はまさに二次的ということになります。というのも、ドラクエでいえば「ステータス値」の配分が第二のものであって、そもそもステータス値として何を定めるかという開発者側の気持ちが第一のものにあたるわけですから。その人の価値観によっては攻撃力なんかさっぱり頭にないようなこともある。

 

 ではどんなステータス値を設定すべきなのか、と問わなければならなくなります。それこそその人の生き方に関わる問題ですから、別に周りがとやかくいうほどのことでもありません。食費とか家賃とかそういうのはいるだろうし、ある程度健康的な習慣もほしいところです。体調というのは「感じ」ですから測定は難しいですが、点数制とかにすればなんとかなるでしょう。

 私たちは何を気にすべきなのでしょうか。にんじんは以前、目指すべき場所は「心地よく住まうこと」だといいました。ここは安全であるとそう感じられるようなものです。ここは自分の居場所だ、ここは絶対に安全である、心地よい、そんな場所を作るために、日々の環境に対応しながら住まいを建てたり壊したりしていきます。これこそが絶対完璧な家だという家はありません。

 体調不良になった、つらい、だから健康的な習慣を組み入れる。

 お腹が空いた、こまった、だからもう少し食費を増やす。

 お腹が空くなんて考えなくてよかった頃は誰も食費について云々しなかったでしょう。「あなたにとって今なにが大切ですか?」と絶えず訊かれている感じです。一定の答えは出せそうにありません。大まかにいって「娯楽(教養)」「健康」「人間関係」のみっつでしょうか。何を重視するにしてもこれの下位概念になることでしょう。

 にんじんはいま健康について色々考えています。

 

 

生きられた〈私〉をもとめて: 身体・意識・他者 (心の科学のための哲学入門 4)

生きられた〈私〉をもとめて: 身体・意識・他者 (心の科学のための哲学入門 4)

 

 

人間関係

 人間関係というものは非常に複雑です。濃い対人関係は、お互いを気遣い合うもので、「自分の代わりに自分を気遣ってくれる」というあたりがわたしたちの「安全であるという感じ」に寄与してくれます。

 しかし一方で、その人間関係において傷ついたり、行き過ぎる場合は殺したり殺されたりします。人間関係の構築と維持、そして崩壊した場合の対処など、ともかくいろいろ面倒なのがこの項目です。『家族』というものが安全地帯として与えられている人も、そうでない人もいますが、やはりそれが安全地帯であるというのは大きなアドバンテージでしょう。なにしろ、生まれてからギャンギャン泣いてるあいだに色々なことが構築されてくるのですから努力がいりません。まぁ下手こいたら崩壊しますが、よほど下手こかないと大丈夫でしょう。

 人間関係は安全と危険が同居しているようです。同居というか、最終的には良い関係に至って心地よいのですが、それに至る道のりたるや尋常な面倒くささではありません。しかも人によっては、どうしても合わない人がいます。せっかく大冒険を繰り広げたのに、たどりついたら壁でしたという骨折り損もあります。すべての人間に対して親密になる道は必ずあると主張してもいいのですが、困難すぎて「割に合わない」ケースも多いでしょう。そういうことも含めて、人を見る目、言い換えれば、人を見限る技術も必要になってくるでしょう。「オタクって気持ち悪いよね~」と話されてたらオタクであるわたしたちは「そんなことないお(^ω^)」と言いたくなるかもしれませんが、彼ら彼女らはそうやってバッサリ切っていくことで無駄な時間を割かないようにしているのだと考えれば合点がいくでしょう。みんなわかっているのです、そう悪くない人もいるということは。でもそうはならないのです。

 たとえば宗教勧誘のおばさんと仲良くなろうと思わないでしょう。「あいつら全員危険だ」といったら暴言になりますけれど、実際のところは、多くの人が避けるところです。というか家に来ないでほしい。そりゃ一般的にみんな危険だとはいいませんけど、なるべくなら安全な人と関わりたいじゃないですか。

  •  人をバッサリ切らない人、
  •  人をバッサリ切っていく人
  •  バッサリ切っていいものか悪いものかくよくよしてしまう人。

 おおまかに三種類いるかと思いますが、精神的な安定からすればバッサリ切っていくのは楽です。「あいつは煙草を吸っていたからカス」と真顔で言う人もいます。切り方がまな板に包丁を突き立てるほど豪快なので刃が折れそうなほどです。

 ただ、この中でもっとも心配なのは「くよくよしてしまう人」です。一般的にはそう言えないよね、という「正しさ」がありつつ、でも「普通はそうだよな~」というどっちつかず。大変気持ちが分かります。

 で、バッサリ切らない人。これは警戒心が足りないとバッサリ言い切ってしまえるかもしれません。

 

 それで次は「どんな人切りますか?」という話になる。切る人に対しては切る人なりの対応も必要ですが、それよりもまずは対象をぼんやりと把握しておかないといけません。どんなひと、切りますか? あなたの友達はどんな人を切っているでしょうか。案外話し合うとお互いに「わかる」となるかもしれません。なにしろ、あなたは切られなかったわけですからね。そして、そんな話ができる友達は大切にしたいところです。

 

幸福について (光文社古典新訳文庫)

幸福について (光文社古典新訳文庫)

 

 

 人間関係についてもうひとつ指摘できる点といえばコレです。:「自分は気遣われたいが、人は気遣いたくない」 これはみなさん、同意してくれることだと思います。濃い人間関係というのは持ちつもたれつなのですが、これをしたくないと考えてしまう。無論、そんな人と誰も関わりたいと思わないのである程度はやるわけですが、得か得じゃないかとか言っていると人間関係ほどハイコストなものはないわけです。

 ちょっと迎えに来て~ と言われて、ハイハイしょうがないな、と思えるでしょうか? 人による? まさにその通り、人によるでしょう。その人がいけ好かないやつなら死んでも迎えに行きたくないもんです。「金くれるなら行くけどね」

 

 人間関係がハイコストなのは、別にしてやっても、し返してくれるとは限らない点です。お互いに気遣うことが大事なのですが、向こうがどうするかなんてわかりません。そこで、し返してくれる人を見抜こうとする。さきほど人を見る目という話をしましたが、結局のところこれが一番大事な要素なのではないかと思えます。

 こういうと、返礼が欲しいからしてあげるなんて、と非難されるかもしれません。にんじんとしても、向こうがそんなつもりで何かしてきたら嫌です。でも一切リアクションがなかったら? 別にモノをねだっているわけではなくて、リアクションが大事なのです。もちろんなんにでも限界はあるわけで、そいつのために地球の裏側までとんでもないミッションをこなしに行ってやったのに「ども~w」だけだったら殴りたくなるでしょう。そういう境目を相手が理解してくれているか、そういう垣根がわかってるやつか、というところも見抜かないといけません。あぁ難しい。

 持ちつ持たれつのシーソーをしっかりやってくれるか?

 これは非常に大事な要素だろうと思います。

 

 

 

 

理由、目的、意味について

 わたしたちは「理由」と「目的」と「意味」がそれぞれ異なることに対してどれぐらい敏感でしょうか。にんじんはこれらの違いをあまり深くは考えたことがなかったのですが、『目的にかなうように行為することは、理由にかなうよう行為することである』(『意味の探究』)を読んで、あれ、もしかして違うことなのかと思い至りました。

 たとえばこうです。「生きる理由」「生きる目的」「生きる意味」これらみっつは同じ事柄でしょうか、それとも違うでしょうか。もしもこれが違う意味であるなら、この三種を区別しないことは、問いのうちに複数の問いを抱えることになります。

 

  • 理由 物事がそのようになった、わけ。筋道。また、それをそう判断した、よりどころになる、またはする事柄
  • 目的 得ようとしてねらう対象。到達したい状態として意図し、行動を方向づけるもの。めあて。
  • 意味 行為・表現・物事の、それが行われ、また、存在するにふさわしい、価値。

 

 辞書を引くとこのようになっております。

 わたしたちは理由と目的において、ある種の系列を見いだすことができるのでしょうか。つまりこうです。われわれは生き続けるという目的のために、水を飲む。水を飲むという目的のために蛇口をひねる。蛇口をひねるという目的のために手を伸ばす。蛇口をひねる理由は水を飲むという理由のためであり、水を飲むというのは生き続けるという理由によるものであるからです。わたしたちはここに一種の「方向」を感じていますが、生き続けることと手を伸ばすことはどのような点で真逆であるのでしょう?

 それは時制において説明されることが多いようです。

  •  「これから」生きていくために、水を飲む。水を飲むという行為に対して生きていくことは後になります。これが目的である、という。
  •  水を飲んだために生きていくことができる。生きていくということに対して、水を飲むことは前にある。これが理由である、という。

 

 なぜわたしは生きているのか、と問うとき、わたしたちは「何故」という言葉を用います。故とは、白川静『字訓』(初版)によれば、

ことの由来するところについて、本質的な理由のあること。事物のうちに、その結果を招くべき要因として存するものをいう。原因・理由。

字訓

  とあります。そうとはいえ「なぜサッカーをしているんですか?」と質問して、本当に理由を説明されたら面食らうでしょう。ふつうは「健康のため」とか目的を答えるのが普通です。

 

 αという目的を伴うAという行為が意味(価値)あるものかどうかはわかりません。本人がαという目的を持つ以上、本人にとっては価値があるのが当然ですが、客観的に「正しさ」が認められるかという点が問題です。「その行為をするべきか?」

 

 以上まとめると、たとえば「なぜ生きているんですか?」という言葉は、

  •  生きてきた理由はなに?
  •  生きていく目的はなに?
  •  生きているべき?

 という少なくとも三つの内容をもつことになるでしょうか。

 

 

意味と構造 (講談社学術文庫)

意味と構造 (講談社学術文庫)

 

 

大人と子供について

 大人とはなにか、あるいは、子供とはなにか。

 それは法律などにおける規定に関する問いではなく、むしろ、そのように規定させしむる根源に関する問いであろうと思われます。わたしたちがそれを問うのはなぜでしょうか。自分が「大人」の側でありたいから、あるいは「子供」の側でありたいからでしょうか。なんにせよ、むしろそのような願望のなかにも「大人」や「子供」があります。それをことばで再確認するか、あるいはその概念、カテゴリーを問い直し、明示化しようとしているのです。

 「明日は子どもが家に来るんですよ」と言われて、かの人に息子・娘がいない場合、わたしたちはその人の家に来る子供が白髪に、白いあごひげに、でっぷりとした、サンタみたいなやつだとは考えないでしょう。一方で、もし彼が戸籍を見せてくれて、年齢が14歳であることが明らかとなったとしても、わたしたちはなお、彼のことを子どもと呼ぶつもりにはならないでしょう。しかし、もしも彼がプレゼントを受け取った時、高い声で「わあ~」とはしゃいでいたら、子供だなあと思うかもしれません。

 子供というものの範例的なイメージがあり、それとどれぐらいかけ離れているかが子供か否かを決めるのでしょうか。まるで「赤色」の色見本を見ながら、朱色を見て「う~ん、これはだいたい赤色だな」というように? わたしたちの頭のなかにはこのような「見本」がたくさんあって、それらをすべて収納しているのでしょうか――—まぁそうだとしても、なぜその「見本」を「見本」として選んだのか、結局のところもとの問いに戻ってしまうのですが。

 

 わたしたちは子どもというもののなかにある一種の「幼さ」を認めているように思われます。身長が低い、能力が低いなど、発達し来たるものの低さです。そもそも「幼い」という言葉は「をさ(長)」が「ない」、つまりまだあまり発達していないというような語源を持ちます。子どもと幼さが切り離せない関係なのか、という問題はありますが。

 子供というものをだんだんと発達していく、その途上にあるものとみなすなら、当然人生、生きていくことの時期区分というものが認められていなければなりません。ある意味で、大人と対置されると同時に、老年と対置され、親とも対置され、さまざまな極が子どもです。フィリップ・アリエス〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活において、子供という言葉が生まれてきたのは中世以後のことで、かなり新しいという話をしています。いや、そもそも「年齢を数える」ということ自体がほとんど行われておらず、親でさえも「えっ、いくつだったっけうちの子……」と言うし、そのことを示すように、そもそも生年月日すらよくわからないという始末です。

 生年月日、年齢を知らないのは、そもそもそんなもん知る必要がないからで、アリエスは現代の書類を見ても、古くに起源をもつものはたいてい年齢を必要としていないことを指摘しています。新しくできたものは大抵生年月日を要求してきますが。しかしだんだんそのような数字が個人を特徴づける数字になり、果てはナンバーによって個人が表されるだろうなという話もしていますが、「あっ、マイナンバー」という感じがしないでもありません。通知カードをマジのカードにしてるやつっているのか? というマイナンバーですが、みなさんお使いになられていますか?

 

 何らかの人生におけるスケジュール、「数える」ということ、年齢に応じた社会制度の創設、そういうことが子どもというものを作って来たということです。まぁ要するにそこまで「当たり前」の区別ではないということです。

 よく言われることではありますが、「こども」というのは「こ」と「ども」の組み合わせであり、「ども」とは複数を表す接尾語です。別に供えてるわけじゃないです。複数のものが単数に使われるようになるというのはよくある話で、たとえば「兵隊」というのは一個の組織のことを表すのに、いつのまにか「兵隊さん」とか言ったりしている。そう思うと、最初は子どもも「わらわらしてる未熟者ども」を指さして「はぁ~アイツらはよぉ~」と言われていたのかもしれません。

 はい、で、中国の漢字になりますと、「子」という字は「了」から来ております。別に「はい終わり」というわけではなく、「了」という字に両腕をつけたのが「子」です。「了」の上の部分が丸っこく書かれていたので、頭部が大きく、ふにゃっとした感じのやつを「子」と表示したわけですね。象形文字です。

 赤ん坊は一人だと死にますので、そういう意味で、間違いなく守るべき対象としてほかとは区別された存在だったことでしょう。始源においてはマジの「ベイビー」が「子」だったのかもしれません。そうすると子どもが先で、大人があとなのでしょうか。

 

 

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活
 

 

労働関係一般知識・過去問まとめ【社会保険労務士】令和元年度

労働契約法

労働契約法第4条第1項は、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにする」ことを規定しているが、これは労働契約の締結の場面及び変更する場面のことをいうものであり、労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明等をする場面は含まれない。⇒✖

 

 第4条1項では「労働者に提示する」となっているため、「まだ未契約のやつは労働者じゃないんだから契約内容の理解を深めなくていいな?」 というほぼ難癖のやつです。通達で、

法第4条第1項は、労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明等をする場面や、労働契約が締結又は変更されて継続している間の各場面が広く含まれるものである

  と書いています。

 

就業規則に定められている事項であっても、例えば、就業規則の制定趣旨や根本精神を宣言した規定、労使協議の手続に関する規定等労働条件でないものについては、労働契約法第7条本文によっても労働契約の内容とはならない。⇒〇

 

 就業規則はその職場における労働基準法みたいなもんで、基本的には労働契約をした時点で従うことになります。しかし、「根本精神」「制定趣旨」なんかはどういう扱いになるのでしょうか。これも通達が出ていて、労働契約の内容にはなりません。精神はどうしようもないからでしょうか。

就業規則に定められている事項であっても、例えば、就業規則の制定趣旨や根本精神を宣言した規定、労使協議の手続に関する規定等労働条件でないものについては、法第7条本文によっても労働契約の内容とはならない

 

労働契約法第10条の「就業規則の変更」には、就業規則の中に現に存在する条項を改廃することのほか、条項を新設することも含まれる。⇒〇

 

 まずは10条を見ましょう。

労働契約法10条
 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

 規則の変更は労働契約の変更でもありますから大変重要です。「変更した」と言われて新しい項目が追加されているとはふつうは思わないのですが、変更とはつまり「とにかく中身が変わること」であって、条項の新設も含まれるようです。ちなみにこれも通達です。

 

労働契約法第15条の「懲戒」とは、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同義であり、同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられている。⇒〇

 

 懲戒と制裁は同義であり、制裁と同様に懲戒もルールを決めておかないといけません。これも通達です。

 

有期労働契約の契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合、当該事由に該当することをもって労働契約法第17条第1項の「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断される。⇒〇

 

 17条1項なんて知らねえよという話なので、まずそれを見ましょう。

法17条
1 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 つまり有期労働契約したなら「やむを得ない事由」じゃない限り解雇すんなよと書いています。問題では、

  1. 『一定の事由で解雇するよ~』
  2.  一定の事由発生
  3.  解雇しました。仕方ないよね……。

 というようなケースを扱っており、「これはやむを得ないよね?」と訊いているのです。しかしこれを認めてしまうと「〇〇⇒解雇」さえ定めればお好きに解雇できてしまい17条を定めた意味もあまりなさそうです。

 実際、通達においては次の通り。

実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断される

 

 職業安定法

第一条(改) この法律は、雇用対策法と相まつて、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑みその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もつて職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。

職業安定法にいう職業紹介におけるあっせんには、「求人者と求職者との間に雇用関係を成立させるために両者を引き合わせる行為のみならず、求人者に紹介するために求職者を探索し、求人者に就職するよう求職者に勧奨するいわゆるスカウト行為(以下「スカウト行為」という。)も含まれるものと解するのが相当である。」とするのが、最高裁判所判例である。⇒〇

 

 東京エグゼクティブ・サーチ事件です。東京エグゼクティブ・サーチ株式会社は職業安定法に定める有料職業紹介事業者でした。

第四条1 この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう

 会社「人を探してる?」

 医院「たのみます」

 ⇩

 会社「見つけてきたで」

 医院「どうもありがとう。報酬払うで」

 ⇩

 医院「あっ、でもこれは職業紹介だよね。その報酬には上限が定められてるからこれ以上は払えないよ」

 会社「( `ᾥ´ )」

 

 という経緯で裁判になりました。それで最高裁判決でこれはたしかに「あっせん」することであり、「職業紹介」に違いないとされました。

あつ旋には、求人者と求職者との間に雇用関係を成立させるために両者を引き合わせる行為のみならず、求人者に紹介するために求職者を探索し、求人者に就職するよう求職者に勧奨するいわゆるスカウト行為(以下「スカウト行為」という。)も含まれるものと解するのが相当である

  Aさん、Bさんがいて、ふたりを引き合わせるだけでなく、

 人探ししてるBさんを見つけて「ここで働かんか?」とスカウトする行為もあっせんだとされたわけです。

 

公共職業安定所は、労働争議に対する中立の立場を維持するため、同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所に、求職者を紹介してはならない。⇒〇

 

 第20条で、争ってるところに介入しないと決められています。

 

高年齢者雇用安定法

 65歳未満の定年の定めをしている事業主が、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、新たに継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。)を導入する場合、事業主は、継続雇用を希望する労働者について労使協定に定める基準に基づき、継続雇用をしないことができる。⇒✖

 

H25年の法改正で、継続雇用制度を定める場合は「希望者全員を雇用する」ものしか認められなくなりました。

 

障害者雇用促進法

事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときを除いて、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。⇒〇

 

 「過重な負担を及ぼすこととなるときを除いて」

 配慮はしないといけませんが、いつ何時どんな場合でもというわけではありません。

 

 

最低賃金

労働者派遣法第44条第1項に規定する「派遣中の労働者」に対しては、賃金を支払うのは派遣元であるが、当該労働者の地域別最低賃金については、派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額が適用される。⇒〇

 

 派遣労働者最低賃金は 派遣元基準 なのか 派遣先基準 なのかということです。最低賃金は地域によって変わりますのでこれによってはもらえるお金が変わってきてしまいます。

 答えは派遣先。派遣先が京都だったら京都の最低賃金になるということです。

 

 社会保険労務士法

社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人に代わって出頭し、陳述をすることができる。⇒✖

 

 代われません。「ともに」出頭できます。

法2条の2
1 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。
2 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。

 

すべての社会保険労務士は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会における同法第5条第1項のあっせんの手続について相談に応じること、当該あっせんの手続の開始から終了に至るまでの間に和解の交渉を行うこと、当該あっせんの手続により成立した和解における合意を内容とする契約を締結することができる。⇒✖

 

 紛争の解決は「特定社会保険労務士」にしかできません。

 

③何人も、社会保険労務士について、社会保険労務士法第25条の2や第25条の3に規定する行為又は事実があると認めたときは、厚生労働大臣に対し、当該社会保険労務士の氏名及びその行為又は事実を通知し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。⇒✖

 

 「あいつやべえんじゃねえか」というのは誰でも通報できます。

 

社会保険労務士法人は、いかなる場合であれ、労働者派遣法第2条第3号に規定する労働者派遣事業を行うことができない。⇒✖

 

 資格試験の原則として、そもそも、「いかなる場合であれ」と書いてあったらまぁ間違いです(わからなければとりあえずバツでいい)。

 派遣先が社会保険労務士事務所や法人なら別にやってもかまわないことになってます。要するに「基本ダメ」で、同業だけ例外として認められてる感じですね。

 

社会保険労務士会は、所属の社会保険労務士又は社会保険労務士法人社会保険労務士法若しくは同法に基づく命令又は労働社会保険諸法令に違反するおそれがあると認めるときは、会則の定めるところにより、当該社会保険労務士又は社会保険労務士法人に対して、社会保険労務士法第25条に規定する懲戒処分をすることができる。⇒✖

 

 できません。懲戒処分ができるのは厚生労働大臣のみで、労務士会は「注意・勧告」ができます。通報⇒注意・勧告⇒懲戒という感じでしょうか。

 

 

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徴収法過去問まとめ【社会保険労務士】令和元年度

 今度は徴収法です。

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(1)総則

第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合等に関し必要な事項を定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において「労働保険」とは、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号。以下「労災保険法」という。)による労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)及び雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)による雇用保険(以下「雇用保険」という。)を総称する。
2 この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。
3 賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。
4 この法律において「保険年度」とは、四月一日から翌年三月三十一日までをいう。

労働保険徴収法第2条第2項の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、労働保険徴収法施行規則第3条により「食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる」とされている。⇒〇

 

 賃金の定義は第2条第2項に定められており、

この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。

 とされています。金で払われた場合は全部賃金ですが、金以外のもので払われた場合はちょっと一言つきます。それが施行規則第3条です。

則3条
法第2条第2項の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる。

(2)保険関係の成立及び消滅

一元適用事業であって労働保険事務組合に事務処理を委託しないもののうち雇用保険に係る保険関係のみが成立する事業は、保険関係成立届を所轄公共職業安定所長に提出することとなっている。⇒〇

 

 ここから具体的な中身に入っていきます。労災保険雇用保険の分野では基本的に給付など国からカネを送ることだけをやって、逆に労働者から国に金を出す徴収のほうはやりませんでした。

 徴収法第二章では国との関係のはじまりについて書いています。

第三条 労災保険法第三条第一項の適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき労災保険に係る労働保険の保険関係(以下「保険関係」という。)が成立する。
第四条 雇用保険法第五条第一項の適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき雇用保険に係る保険関係が成立する。

 適用事業と国が繋がるのは事業の開始日です。届出を出す出さないよりも前に決まってしまうんですね。でも届出をしなくていいわけではありません。

法4条の2 第1項
 前2条の規定により保険関係が成立した事業の事業主は、その成立した日から10日以内に、その成立した日、事業主の氏名又は名称及び住所、事業の種類、事業の行われる場所その他厚生労働省令で定める事項を政府に届け出なければならない。

 届出も義務付けられています。で、改めて設問を見ると「ナンタラな事業は、保険関係成立届を所轄公共職業安定所長に提出することとなっている」とありますね。それじゃあナンタラの中身がどうであれ答えは〇なんでしょうか………というと、実はそうではありません。第4条の2をもう一度見てもらうと、「政府に」届けるとなっています。ハロワに出すとは書いていません。

 

則1条(改)
1 徴収法の規定による労働保険関係事務は、第36条の規定により官署支出官が行う法第19条第6項及び第20条第3項の規定による還付金の還付に関する事務を除き、次の区分に従い、都道府県労働局長並びに労働基準監督署長及び公共職業安定所長が行う

 はい、事務手続きは労働局長と労基監督とハロワの三通りがあります。上の設問はこれについて訊いております。で、仕事はすべて、まず労働局長に投げられます。

一 労働保険関係事務(次項及び第3項に規定する事務を除く。) 所轄都道府県労働局長

 

 でも労働局長はお仕事なんてしません。次でどんどん他の二人に投げていきます。

 

二 前号の事務であつて、第3項第1号の事業に係るもの及び労災保険に係る保険関係のみに係るもののうち、この省令の規定による事務 →→→ 所轄労働基準監督署

三 第1号の事務であつて、第3項第2号の事業に係るもの及び雇用保険に係る保険関係のみに係るもののうち、この省令の規定による事務 所轄公共職業安定所

 

 労災保険は労基監督に投げられ、雇用保険はハロワに投げられます。これがわかっていれば大体大丈夫です。まず事業主が入る保険は「労災・雇用」「労災のみ」「雇用のみ」の三パターンですが、両方のときは労基監督、労災は労基、雇用はハロワになります。

 注意が必要なのは、「事務組合に事務を委託する事業」の奴です。委託されると「労災のみ」なのにハロワに仕事が回ってきます。これだけが例外。

 

 では改めて問題を見ましょう。

<一元適用事業であって労働保険事務組合に事務処理を委託しないもののうち雇用保険に係る保険関係のみが成立する事業は、保険関係成立届を所轄公共職業安定所長に提出することとなっている。>

 まず今回の事業は一元適用、つまり「労災のみ」か「雇用のみ」のやつです。今回の場合は「雇用のみ」ですね。この時点でハロワルートが確定してしまい、事務処理を委託するとかはどうでもいいことになります。

 もしここで「労災のみ」で来られると事務処理を委託するかしないかで労基ルートの目も出てくることになります。(委託するとハロワ、委託しないと原則通り労基)

 

労働保険の保険関係が成立した事業の事業主は、その成立した日から10日以内に、法令で定める事項を政府に届け出ることとなっているが、有期事業にあっては、事業の予定される期間も届出の事項に含まれる。⇒〇

 

 届出はいつ出せばいいのでしょうか。

法4条の2 第1項
 前2条の規定により保険関係が成立した事業の事業主は、その成立した日から10日以内に、その成立した日、事業主の氏名又は名称及び住所、事業の種類、事業の行われる場所その他厚生労働省令で定める事項を政府に届け出なければならない。

 10日以内でしたね。だからこの部分はOKなのですが、後段が届出の中身まで聞いてきていて鬱陶しいです。届出の内容はこちら。

則4条(改)
1 法第4条の2第1項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 事業の名称
二 事業の概要
三 事業主の所在地
四 事業に係る労働者数
五 有期事業にあつては、事業の予定される期間
六 建設の事業にあつては、当該事業に係る請負金額(消費税等相当額を除く。以下同じ。)並びに発注者の氏名又は名称及び住所又は所在地
七 立木の伐採の事業にあつては、素材の見込生産量
八 事業主が法人番号を有する場合には、当該事業主の法人番号

  基本は四つですが、場合によって書くことが増えます。今回は有期事業です。

 

建設の事業に係る事業主は、労災保険に係る保険関係が成立するに至ったときは労災保険関係成立票を見やすい場所に掲げなければならないが、当該事業を一時的に休止するときは、当該労災保険関係成立票を見やすい場所から外さなければならない。⇒✖

 

 なぜか建設の事業だけは「労災入ってます!」と掲げないといけません。さっきの届出の中身でも建設が出て来たり、安衛法の分野でも建設は色々言われたりするのでよっぽど気を遣わないといけないですね。

則77条
 労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち建設の事業に係る事業主は、労災保険関係成立票(様式第4号)を見やすい場所に掲げなければならない。

 しかし「外せ」という法律はありません。

 

労災保険暫定任意適用事業の事業主が、その事業に使用される労働者の同意を得ずに労災保険に任意加入の申請をした場合、当該申請は有効である。⇒〇

 

 さて、労災保険というのは大抵の事業が入らないといけないのですが、入るか入らんか選べるやつらがいました。それが暫定任意適用事業の奴らです。まぁ、農林水産を五人以下の少人数パーティでやってるやつらだと思っておけばいい(厳密には違います。林業あたりがちょっと面倒)です。雇用保険にもそんなのありましたね。

 んで、そういう人たちは内部で話し合って過半数が希望すれば入ることになるのでした。でも今回のケースでは同意も得ずに勝手に入りやがったのでこの場合どうなるんだという話です。

 

 答えはマルになります。雇用保険の場合はダメです。

 なぜかというと労災は労働者がカネを負担しないからで、雇用保険はカネを負担するからです。カネを出さないといけない以上、同意なく勝手に入れてはいけないのです。

 

 

 

< 労災保険に係る保険関係が成立している労災保険暫定任意適用事業の事業主が、労災保険に係る保険関係の消滅を申請する場合、保険関係消滅申請書に労働者の同意を得たことを証明することができる書類を添付する必要はない。>⇒✖

 

 今度は逆に労災保険をとりやめる場合ですね。入るときは別に同意がなくても保険関係が認められてしまうのですが、出るときはそうはいきません。過半数の同意をしっかり集めて消滅させましょう。

 

(3)労働保険料の納付の手続等

労働保険徴収法第10条において政府が徴収する労働保険料として定められているものは、一般保険料、第1種特別加入保険料、第2種特別加入保険料、第3種特別加入保険料及び印紙保険料の計5種類である。⇒✖

法10条
1 政府は、労働保険の事業に要する費用にあてるため保険料を徴収する。
2 前項の規定により徴収する保険料(以下「労働保険料」という。)は、次のとおりとする。
一 一般保険料
二 第1種特別加入保険料
三 第2種特別加入保険料
三の二 第3種特別加入保険料
四 印紙保険料
五 特例納付保険料

 ②

一般保険料の額は、原則として、賃金総額に一般保険料率を乗じて算出されるが、労災保険及び雇用保険に係る保険関係が成立している事業にあっては、労災保険率、雇用保険率及び事務経費率を加えた率がこの一般保険料率になる。⇒✖

 

 さあ、ついに保険料の額の話ですね。

第十一条第一項 一般保険料の額は、賃金総額に第十二条の規定による一般保険料に係る保険料率を乗じて得た額とする

第十二条 一般保険料に係る保険料率は、次のとおりとする。
一 労災保険及び雇用保険に係る保険関係が成立している事業にあつては、労災保険率と雇用保険率とを加えた率
二 労災保険に係る保険関係のみが成立している事業にあつては、労災保険
三 雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業にあつては、雇用保険

  事務経費率がないですね。シンプルな定義をしてます。

 

賃金総額の特例が認められている請負による建設の事業においては、請負金額に労務費率を乗じて得た額が賃金総額となるが、ここにいう請負金額とは、いわゆる請負代金の額そのものをいい、注文者等から支給又は貸与を受けた工事用物の価額等は含まれない。

 

 これを見てください。

第十一条 
3 前項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定める事業については、厚生労働省令で定めるところにより算定した額を当該事業に係る賃金総額とする。

 賃金総額は言葉通り「賃金総額」なのですが、事業によっては計算方法を変えることになっています。それがこちら。

則12条
 法第11条第3項の厚生労働省令で定める事業は、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち次の各号に掲げる事業であつて、同条第1項の賃金総額を正確に算定することが困難なものとする。
一 請負による建設の事業
二 立木の伐採の事業
三 造林の事業、木炭又は薪を生産する事業その他の林業の事業(立木の伐採の事業を除く。)
四 水産動植物の採捕又は養殖の事業

 ざっと覚えておきましょう。で、こいつらの場合はどう計算するのか。

則13条(改)
1 前条第1号の事業については、その事業の種類に従い、請負金額に別表第2に掲げる率を乗じて得た額を賃金総額とする
2 次の各号に該当する場合には、前項の請負金額は、当該各号に定めるところにより計算した額とする。
一 事業主が注文者その他の者からその事業に使用する物の支給を受け、又は機械器具等の貸与を受けた場合には、支給された物の価額に相当する額(消費税等相当額を除く。)又は機械器具等の損料に相当する額(消費税等相当額を除く。)を請負代金の額(消費税等相当額を除く。)に加算する。ただし、厚生労働大臣が定める事業の種類に該当する事業の事業主が注文者その他の者からその事業に使用する物で厚生労働大臣がその事業の種類ごとに定めるものの支給を受けた場合には、この限りでない。
二 前号ただし書の規定により厚生労働大臣が定める事業の種類に該当する事業についての請負代金の額にその事業に使用する物で同号ただし書の規定により厚生労働大臣がその事業の種類ごとに定めるものの価額が含まれている場合には、その物の価額に相当する額(消費税等相当額を除く。)をその請負代金の額(消費税等相当額を除く。)から控除する。

 

 ここでもう一度問題を見ましょう。

賃金総額の特例が認められている請負による建設の事業においては、請負金額に労務費率を乗じて得た額が賃金総額となるが、ここにいう請負金額とは、いわゆる請負代金の額そのものをいい、注文者等から支給又は貸与を受けた工事用物の価額等は含まれない。>⇒✖

「~となるが」まではOKだと思います。それから先がついさっき見た則13条で、工事に使った物の値段は加算されるのでした。

 

一般保険料における雇用保険率について、建設の事業、清酒製造の事業及び園芸サービスの事業は、それらの事業以外の一般の事業に適用する料率とは別に料率が定められている。⇒✖

 

 雇用保険料率はどれくらいなのか?

法12条(改)
4

・一般の事業 → 1.55%
農林水産業等・清酒製造業 → 1.75%
・ 建設の事業 → 1.85%

  問題は園芸サービスがどれにあたるかです。これは「農」ではなく「一般」なので、問題の答えは✖になります。

 

事業主は、被保険者が負担すべき労働保険料相当額を被保険者に支払う賃金から控除できるが、日雇労働被保険者の賃金から控除できるのは、当該日雇労働被保険者が負担すべき一般保険料の額に限られており、印紙保険料に係る額については部分的にも控除してはならない。

 

 わたしたちが払う分の労働保険料は給料から差っ引かれます。

32条
1 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、前条第1項又は第2項の規定による被保険者の負担すべき額に相当する額を当該被保険者に支払う賃金から控除することができる。この場合において、事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を当該被保険者に知らせなければならない。

 今回問題になっているのは「日雇労働被保険者の給料」です。

則60条
1 事業主は、被保険者に賃金を支払う都度、当該賃金に応ずる法第31条第3項の規定によつて計算された被保険者の負担すべき一般保険料の額に相当する額(日雇労働被保険者にあつては、当該額及び法第22条第1項の印紙保険料の額の2分の1の額に相当する額)を当該賃金から控除することができる。

  このように、日雇だろうが例外なく差っ引けます。ただし、印紙保険料が半分になるという違いはあるようです。

 

継続事業で特別加入者がいない場合の概算保険料は、その保険年度に使用するすべての労働者(保険年度の中途に保険関係が成立したものについては、当該保険関係が成立した日からその保険年度の末日までに使用するすべての労働者)に係る賃金総額(その額に1,000円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。以下本肢において同じ。)の見込額が、直前の保険年度の賃金総額の100分の50以上100分の200以下である場合は、直前の保険年度に使用したすべての労働者に係る賃金総額に当該事業についての一般保険料に係る保険料率を乗じて算定する。⇒〇

 

 保険料は年度の初めに計算して、年度終わりに「確定保険料」として増減分を支払います。

 ただし賃金総額が前年の50%~200%であれば、前年と同じ額だけ払います。

 

政府は、厚生労働省令で定めるところにより、事業主の申請に基づき、その者が労働保険徴収法第15条の規定により納付すべき概算保険料を延納させることができるが、有期事業以外の事業にあっては、当該保険年度において9月1日以降に保険関係が成立した事業はその対象から除かれる。⇒✖

 

法18条
 政府は、厚生労働省令で定めるところにより、事業主の申請に基づき、その者が第15条から前条までの規定により納付すべき労働保険料を延納させることができる。

 延納というのは「支払い待ってください」というものです。年度はじめには額が決まってしまう、でも労働者の分の保険料は賃金から差っ引くのでまだ集められてない、だから今は払えない……ということだと思いますが、

 10月1日以降にはじめた事業は延納が使えません。

 

継続事業(一括有期事業を含む。)の事業主は、保険年度の中途に労災保険法第34条第1項の承認が取り消された事業に係る第1種特別加入保険料に関して、当該承認が取り消された日から50日以内に確定保険料申告書を提出しなければならない。⇒〇

 

 普通は年度はじめに概算保険料がハッキリし、終わりに確定するわけです。

 しかし、年度途中で事業が潰れた(保険関係がなくなった)場合はその時点で確定保険料が計算できますよね。

法19条
1 事業主は、保険年度ごとに、次に掲げる労働保険料の額その他厚生労働省令で定める事項を記載した申告書を、次の保険年度の6月1日から40日以内(保険年度の中途に保険関係が消滅したものについては、当該保険関係が消滅した日(保険年度の中途に労災保険法第34条第1項の承認が取り消された事業に係る第1種特別加入保険料及び保険年度の中途に労災保険法第36条第1項の承認が取り消された事業に係る第3種特別加入保険料に関しては、それぞれ当該承認が取り消された日。第3項において同じ。)から50日以内)に提出しなければならない。

 

事業主が提出した確定保険料申告書の記載に誤りがあり、労働保険料の額が不足していた場合、所轄都道府県労働局歳入徴収官は労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知する。このとき事業主は、通知を受けた日の翌日から起算して30日以内にその不足額を納付しなければならない。⇒✖

 

 確定保険料を申告しなくても、所轄都道府県労働局歳入徴収官とかいう長い名前の人が通知してくれます。このとき事業主は15日以内に納付しなければなりません。

 

事業主は、既に納付した概算保険料の額のうち確定保険料の額を超える額(超過額)の還付を請求できるが、その際、労働保険料還付請求書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならない。⇒✖

 

 概算保険料として払った額が確定保険料より高かった場合、金を返してもらわないといけません。しかし、誰に返せというかが問題です。

法19条
6 事業主が納付した労働保険料の額が、第1項又は第2項の労働保険料の額(第4項の規定により政府が労働保険料の額を決定した場合には、その決定した額。以下「確定保険料の額」という。)をこえる場合には、政府は、厚生労働省令で定めるところにより、そのこえる額を次の保険年度の労働保険料若しくは未納の労働保険料その他この法律の規定による徴収金に充当し、又は還付する。

  規則によれば、労働保険料還付請求書を官署支出官又は所轄都道府県労働局資金前渡官吏に提出しなければならないことになってます。新しい登場人物が出て来て、受験生的には本当にやめていただきたいですね。

 

<事業主は、既に納付した概算保険料の額と確定保険料の額が同一であり過不足がないときは、確定保険料申告書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出するに当たって、日本銀行(本店、支店、代理店及び歳入代理店をいう。)、年金事務所日本年金機構法第29条の年金事務所をいう。)又は労働基準監督署を経由して提出できる。>⇒✖

 

 確定保険料申告書の提出は日本銀行年金事務所労働基準監督署を経由して所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出することができます。

 ただし、概算保険料=確定保険料で過不足がないときは日本銀行は使えません。

 

(令和2年法改正)
特定法人について、次の申告書の提出は、原則として、電子情報処理組織を使用して行うものとされた(電子申請の義務化)。
【継続事業(一括有期事業を含む)を行う事業主が提出する以下の申告書※】
・概算保険料申告書※※
・増加概算保険料申告書
・確定保険料申告書
・一般拠出⾦申告書

※労働保険事務組合に処理が委託されている事業に係るものを除く
※※保険年度の中途に保険関係が成立したものについて成立から50日以内に行う申告書の提出を除く

 (4)労働保険事務組合

 

労働保険事務組合は、定款に記載された事項に変更を生じた場合には、その変更があった日の翌日から起算して14日以内に、その旨を記載した届書を厚生労働大臣に提出しなければならない。⇒✖

 

 組合は事業主の集まりですが、単に固まっているだけではいけませんでした。相互に決まりを作って「団体性」を明確にしていなければなりません。それが定款です。

 この定款に変更があった場合については次のように定められています。 

則65条
 労働保険事務組合は、第63条第1項の申請書又は同条第2項第1号若しくは第2号に掲げる書類に記載された事項に変更を生じた場合には、その変更があつた日の翌日から起算して14日以内に、その旨を記載した届書をその主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出しなければならない。

 「14日以内に管轄都道府県労働局長に提出しなければならない」です。

 

労働保険事務組合は、労災保険に係る保険関係が成立している二元適用事業の事業主から労働保険事務の処理に係る委託があったときは、労働保険徴収法施行規則第64条に掲げられている事項を記載した届書を、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長を経由して都道府県労働局長に提出しなければならない。⇒✖

 

 組合の仕事は組合員(原則として)の保険事務処理です。うまく処理すれば政府からカネがもらえる制度があるのでみんな頑張ります。で、カネが関わるのできっちり誰に委託されているか政府としても把握しておきたいところです。

 そこで委託されたら届出をすることになっています。「労働保険事務等処理委託届」

則64条
1 労働保険事務組合は、労働保険事務の処理の委託があつたときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した届書を、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出しなければならない。

  普通はハロワを経由して提出するのですが、設問の「二元適用事業」については管轄の問題で労基署を経由しなければなりません。

 

金融業を主たる事業とする事業主であり、常時使用する労働者が50人を超える場合、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託することはできない。⇒〇

 

  はい、そうです。普通は300人まで大丈夫なのですがちょっと闇が深そうな「金融・保険・不動産」などは50人以下となっています。

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④ 労働保険事務組合は、団体の構成員又は連合団体を構成する団体の構成員である事業主その他厚生労働省令で定める事業主(厚生労働省令で定める数を超える数の労働者を使用する事業主を除く。)の委託を受けて、労災保険の保険給付に関する請求の事務を行うことができる。

 

 組合が委託を受けるのは原則として組合員だけなのですが、「その他厚生労働省令で定める事業主」だけは外部でありながら委託を受けることができます。

 さて、問題はそのあとです。組合が行うことができるのは印紙保険料を除く納付事務だけです。給付の請求についてはやってくれません。この点は、組合というのが納付を円滑に実施することで報奨金を得ようとする団体だと考えればよくわかります(実際そうなのかはどうでもよくて、試験に受かるためにこう覚えればスムーズです。報奨金については別記事にて)。

 

労働保険事務組合が、委託を受けている事業主から交付された追徴金を督促状の指定期限までに納付しなかったために発生した延滞金について、政府は当該労働保険事務組合と当該事業主の両者に対して同時に当該延滞金に関する処分を行うこととなっている。⇒✖

 

そもそも追徴金に延滞金など発生しないのですがそれはいいとして、押さえておくべきポイントは「組合のミスは組合が負う」という当たり前のことです。事業主はしっかり納付事務を委託して金を手渡してるのに組合がサボってたせいで政府に目をつけられたんですから、それは組合の責任です。両者の責任ではありません。

 

 

 

 

 

  • 行政庁は、厚生労働省令で定めるところにより、労働保険の保険関係が成立している事業主又は労働保険事務組合に対して、労働保険徴収法の施行に関して出頭を命ずることができるが、過去に労働保険事務組合であった団体に対しては命ずることができない。⇒✖

 そんな特別扱いはありません。

 法42条
 行政庁は、厚生労働省令で定めるところにより、保険関係が成立し、若しくは成立していた事業の事業主又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であつた団体に対して、この法律の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができる。

 

(5)督促・滞納

労働保険徴収法第27条第2項により政府が発する督促状で指定すべき期限は、「督促状を発する日から起算して10日以上経過した日でなければならない。」とされているが、督促状に記載した指定期限経過後に督促状が交付され、又は公示送達されたとしても、その督促は無効であり、これに基づいて行った滞納処分は違法となる。⇒〇

 

法27条
1 労働保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しない者があるときは、政府は、期限を指定して督促しなければならない
2 前項の規定によつて督促するときは、政府は、納付義務者に対して督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して10日以上経過した日でなければならない
3 第1項の規定による督促を受けた者が、その指定の期限までに、労働保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、政府は、国税滞納処分の例によつて、これを処分する

 という風に、保険料を支払わない野郎のところには政府から紙が来ます。でも一応決まりがあって「明日までに払え」とかは無理で、一応10日は空けないといけないことになっています。

 問題になっているのは、督促状に4月1日と書いておいて、4月2日に送られてきた場合です。「払えねえだろ!」という話なのですが、政府はこれをもとに事業主を処分することができるのでしょうか。

 それまで払ってなかった事業主にも落ち度はあるし~、………ということにはなりません。処分などできません。

 

労働保険徴収法第27条第1項は、「労働保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しない者があるときは、政府は、期限を指定して督促しなければならない。」と定めているが、この納付しない場合の具体的な例には、保険年度の6月1日を起算日として40日以内又は保険関係成立の日の翌日を起算日として50日以内に(延納する場合には各々定められた納期限までに)納付すべき概算保険料の完納がない場合がある。⇒〇

 

 概算保険料の支払期限日について確認しておきましょう。

 法15条(改)
1 事業主は、保険年度ごとに、次に掲げる労働保険料を、その労働保険料の額その他厚生労働省令で定める事項を記載した申告書に添えて、その保険年度の6月1日から40日以内(保険年度の中途に保険関係が成立したものについては、当該保険関係が成立した日(保険年度の中途に労災保険法第34条第1項の承認があつた事業に係る第1種特別加入保険料及び保険年度の中途に労災保険法第36条第1項の承認があつた事業に係る第3種特別加入保険料に関しては、それぞれ当該承認があつた日)から50日以内)に納付しなければならない。

  つまり6/1までに事業を始めてたら6/1から40日、それ以降からはじめてたら50日以内ということですね。

 

労働保険徴収法第27条第3項に定める「労働保険料その他この法律の規定による徴収金」には、法定納期限までに納付すべき概算保険料、法定納期限までに納付すべき確定保険料及びその確定不足額等のほか、追徴金や認定決定に係る確定保険料及び確定不足額も含まれる。⇒〇

 

政府は、労働保険料の督促をしたときは、労働保険料の額につき年14.6%の割合で、督促状で指定した期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの期間の日数により計算した延滞金を徴収する。⇒✖

 

 滞納すると延滞金を支払わされます。

法28条
1 政府は、前条第1項の規定により労働保険料の納付を督促したときは、労働保険料の額に、納期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの期間の日数に応じ、年14.6パーセント(当該納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年7.3パーセント)の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する。ただし、労働保険料の額が1,000円未満であるときは、延滞金を徴収しない。

 設問が間違っているのは「督促状で指定した期限日の翌日から」というところです。

 

延滞金は、労働保険料の額が1,000円未満であるとき又は延滞金の額が100円未満であるときは、徴収されない。⇒〇

 

 そもそも徴収する保険料が1000円未満、そして延滞金を計算して100円未満になったら徴収されません。

 

 

みんなが欲しかった! 社労士の教科書 2020年度 (みんなが欲しかった! シリーズ)

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: TAC出版
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
みんなが欲しかった! 社労士の問題集 2020年度 (みんなが欲しかった! シリーズ)

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