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にんじんと読む「ラポール 最強の心理術」🥕 

 人とのかかわりは精神・身体の健康を維持するうえで重要な要素だとわかっている。どれだけ一人が好きだろうが、定期的に他人を関わらなければならないわけだ。19世紀のユーモア作家ジョッシュビリングスがいうように「孤独は訪れるにはいいところなのだが、そこにとどまろうとすると悪いところになる」。コミュニケーションは技能であり、やらないと衰える。では具体的にどうすべきなのか?

 ラポールという言葉がある。辞書によると、「お互いの同意、相互理解、および共感によって特徴づけられる調和的関係」であり、二人の人間の心がカチリを結び付くことだと理解されている。このラポールには形成の公式がある。ラポール形成にはさまざまな技術が必要だが、その技術のうちでもっとも大変なのは、自分のことばかりではなく相手のことを理解しようとする技術であるといえる。

 さて、ラポールは次の四つの原則(HEARの原則)から成り立つ。

  1. 正直さ(Honesty) 言いたいことや感情を伝えるときは客観的・直接的に。
  2. 共感性(Empathy) 相手の核となる信念や価値観を認めてあげ、理解してあげなければならない。
  3. 自律性(Autonomy) 相手にも自由意志があり、協力するかどうかは相手に決める権利がある、ということに共感を示さなければならない。
  4. 反射(Reflection) 目標に向かって会話を進めたいのなら、大切なこと、意味のあることを探り出し、それをくり返して相手に伝えなければならない。

 たとえば親に運転をやめてもらうことは、拒否の反応を引き起こすかもしれない。だがHEARの原則に忠実になるなら、私たちははっきりとそのことを伝え、嫌がる気持ちを理解しなければならない。そしてそれを伝えなければならない。最終的にどうするかは本人が決めることであって、事実と自分の気持ちを正直に、繰り返し、伝えなければならない。

 反射というのは「〇〇ということだね」ということだから、オウム返しだと思われている。だがそうではない。もし反射を使わないとどうなるかを見てみよう。

 

「キミのほうは? 先週の休日はどこにいたの?」

バルセロナ

「どんな感じだった?」

「楽しかったわ。とてもクールな場所よ。トレンディーなレストランやクラブがたくさん。素晴らしく芸術的な景観で、とても親しみやすい雰囲気で」

「何日くらいいたの?」

「ちょうど3日間。短いお休みね」

「一人でいったの?」

「ううん、そのとき付き合っていた彼氏と」

「なるほど。そうなんだ」

「でも、そんなに深く付き合ってない」

「そうだ、サグラダファミリアは見た?」

 

 ボールのやりとりはあるが、『相手は退屈で死にそうになっている』。なぜなら、質問を仕掛けている人は相手の話に表面的なレベルでしか関わっていないからだ。そこで重要なのが「反射」だ。相手の話によく耳を傾け会話力を上げる技術をSONARを呼ぶ。

  • 単純反射 言葉通りに繰り返す。重要なことは、正しい部分を選んで反射すること。
  • 両側反射 相手が相反する事実を述べていたら要約して反射する。
  • 非論争 論争になりそうな部分を調べる。「〇〇と言いたいの?」「もっと詳しく話して」
  • 肯定 否定的な発言は無視し、ポジティブな部分を積極的に探し、その部分を反射する。
  • フレーミング 相手の発言を言い換えたり、まとめたりして反射する。

 

 まずは単純反射から。「引越しすることについて話したよね。でも僕は、時期が適切ではないと思ってる。そんなに簡単にはいかないよ」と言われて、どこを反射するだろうか。より説明を求めたいのはどこだろうか。たとえばこういうこともありうる。「簡単にはいかない?」

 次に両側反射。「食事に気を付けて、運動しろっていうのはわかるけど、今はムリ。そんなことをしている時間がまったくないもの」これに対して、時間ならいくらでもあるだろうが、と返すと対決になってしまう。だからたとえばこう返す。「仕事をいっぱい抱えていて疲れ切っている一方で、やっぱり健康的に食事も変えたいし運動もしたいんだね」とりあえず、「健康的になりたいのかなりたくないのかどっちなんだ」などとは言ってはいけない

 次に非論争。これは言ってみれば、「売り言葉に買い言葉」を避ける。「あなたって好き者そうだよね。ちょっと横になってみてよ」とはからかいである。「どうしてそんなことを私に?」「私がお手伝いできるかなと思いまして」「わかりました。正しく理解できたか確認させてね。あなたは私が好き者に見えたので自分が相手をしてあげようかと言ったのですよね。セックスのお手伝いをしますよと。合っていますか?」この反射は本能に反するものである。ふつうはなかったことにして無視するか、「出て行きなさい」と否定するか、極端な場合は火災報知機を鳴らして助けてもらう。だがヒステリックな対応は、その相手に対しても、それを見ている周囲の人間にも、いい影響をもたらさない。ここで行った反射は、ただ相手の言ったことを繰り返しただけであり、うまい中和になっているのである。重要なことは、そうやってまとめて言ったことに、彼らが最終的に同意することはないということである。もちろんだが、相手が挑発をやめるとは限らない。そのとき、相手が望んでいるのは論争である。受け合うか、立ち去るかしかない。

 次に肯定。相手に変化を促したいなら、肯定してあげることだ。たとえばこんな事件の加害者がいる。彼は電話に夢中な女性から受話器をとりあげて、顔に叩きつけたのだ。彼はそばで赤ん坊が泣き続けているのを怒って「なぜ娘を抱き上げてやらないんだ」と起こったが、女は「電話中」とあしらった。そこでこの事件が起こったのである。暴力は問題だが、泣いている子どもを放っておくべきではないというのは肯定できる。「あなたは娘さんが無視されていたのを見て動揺したのね。子どもが泣いているのに放っておくべきではないと思ったのね」

 最も難しいのはリフレーミングである。これは『相手の発言を受け止め、その発言が意味しているところ、あるいは表面の下に沈んだ価値観や信念を推測することである』。たとえばこう言われるとする。「本当に大変。中間試験も悪かったしやる気も出ない。高校ではトップだったのに。今は真ん中より上ならラッキーなぐらい」これに対しては、こう返せるかもしれない。「大学ではうまくやれていないと感じるんですね。一番でなかったら何かをやる意味はない、と感じているのではないでしょうか?」

 反射のレパートリーを広げる訓練をし、ラポールを形成しよう。