危険物に関する法令
消防法上の危険物、指定数量
- 危険物 = 別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの (消防法)
危険物は第1類~第6類にわかれ、今後学んでいくのは第4類「引火性液体」ということになる。ところで危険物には1気圧、20℃で固体・液体のものであり、気体は危険物ではないのでやや注意。
- 特殊引火物 ジエチルエーテル・二硫化炭素その他1気圧において発火点が100℃以下のもの又は引火点が-20℃以下で沸点が40℃以下のもの【指定数量:50L】
- 第1石油類 アセトン・ガソリンその他1気圧において引火点が21℃未満のもの【非水溶性:200L、水溶性:400L】
- アルコール類 1分子を構成する炭素の原子の数が1~3個までの飽和1価アルコール。ただし含有量が60%未満の水溶液を除く【400L】
- 第2石油類 灯油・軽油その他1気圧において引火点が21℃以上70℃未満のもの【非水溶性:1000L、水溶性:2000L】
- 第3石油類 重油・クレオソート油その他1気圧において引火点が70℃以上200℃未満のもの【非水溶性:2000L、水溶性:4000L】
- 第4石油類 ギヤー油・シリンダー油その他1気圧において引火点が200℃以上250未満のもの【6000L】
- 動植物油類 動物の脂肉等または植物の種子もしくは果肉から抽出したものであって、1気圧において引火点が250℃未満のもの【10000L】
第4種危険物は上記のように区分されており、それぞれに指定数量が定められている。その指定数量以上の危険物は危険物施設でしか取り扱うことはできない。指定数量未満のものは市町村条例によって規制されている。
運搬については指定数量関係なく、消防法等で規制されているので注意。
第〇石油類は水溶性と非水溶性があり、基本的に非水溶性のほうが危険である。上記の区分は危険性のランキングにもなっており、特殊引火物は50Lが指定数量だが、動植物油類は10000Lが指定数量であり、相当な差がある。
さて、危険物を複数貯蔵または取り扱う場合、指定数量にも変化がある。
たとえば特殊引火物1種類を5000L貯蔵している場合、これは明らかに指定数量50Lを超えているため消防法等の規制を受ける。これは5000を50で割った時に1を超えているという言い方もできる。
これと同様に、危険物が2種類の場合は危険物ごとに割り算をして、それを足し合わせる。これが1以上となる場合は消防法等の規制を受けるわけである。
製造所等の区分、各種申請・届出の手続
指定数量以上の危険物の貯蔵・取り扱いは「危険物施設」で行わなければならない。これは製造所・貯蔵所・取扱所であり、製造所等とも呼ばれる。
貯蔵所は「容器」「固定タンク」「移動タンク」の三種類がある。
- 容器 - 屋内・屋外。屋外の場合は制限有。[ドラム缶など]
- 固定タンク - 屋内・屋外・地下+簡易タンク。屋内タンクは指定数量の40倍以下。簡易タンクは600L以下。
- 移動タンク - 30000L以下。[タンクローリーなど]
取扱所は「給油取扱所」「販売ー」「移送ー」「一般ー」の四種類ある。
- 給油取扱所 - ガソリンスタンドなど
- 販売取扱所 - 塗料店など。第1種と2種にわかれ、第一種は指定数量の15倍以下、第2種は15を超え40以下を取り扱う。
- 移送取扱所 - 配管・ポンプ・パイプラインなど。
- 一般取扱所 - 上記以外。
<申請>
製造所の設置・位置や構造の変更の場合は市町村長等に許可申請を行わなければならない。工事が完了すれば市町村長等の検査を受けなければならない。ただし、液体危険物タンクを有する場合には市町村長問うの完成検査前検査を行わなければならない。
使用中の製造所等で一部変更の工事を行う場合は市町村長に承認申請をしなければならない。また、指定数量以上の貯蔵・取り扱いが必ずしもできないわけではなく、消防長か消防署長に承認申請をすれば10日以内に限り製造所等以外の場所で貯蔵・取り扱いができる。
<届出>
危険物の品名や数量変更・指定数量の倍数変更がある場合は、10日前までに市町村長等に届け出なければならない。また製造所等の譲渡引き渡し・廃止・危険物保安投下う管理者・危険物保安監督者の選任・解任にあたっては遅滞なく市町村長等に届け出なければならない。
危険物取扱者制度、保安講習
危険物取扱者の区分については甲乙丙とあり、甲種がすべての類、乙がひとつの類、丙が第4類のうちの指定された危険物を扱うことができる。危険物取扱者が立ち会えばそれ以外のものも貯蔵や取り扱いができるが、丙種の立ち合いには効果がない。
免状の交付は試験合格者に対して都道府県知事が行う。合格を証明する書類を添えて知事に申請する。免状には写真が必要だが、10年経過したときは書き換えのためふたたび申請が必要である(その他内容の書き換えも含む)。なくした場合も同様だが、見つかった場合は10日以内に免状を提出する。もし危険物取扱者が消防法等に基づく命令の規定に違反した場合は、知事は返納を命じることができる。また、返納を命じられて1年あるいは命令違反での罰金以上の刑に処されたものは2年、知事は免状を交付しないことができる。
製造所等で働かない場合は問題ないが、もし働く場合は知事が行う保安講習を受講しなければならないことにいなっており、期限内に受講しないと返納を命じられることがある。交付日、あるいは受講した日の次の4/1から3年以内が期限である。ただし新たに働きはじめるばあいは従事する日から1年以内に受講しなければならない。
危険物施設の保安体制、予防規定
危険物施設については災害発生防止のための体制が制度化されている。まず事業所全体の保安業務を担当する「危険物保安統括管理者」、そして各製造所には「危険物保安監督者」、その補助として「危険物施設保安員」がいる。そのもとで働くのが「危険物取扱者」である。
危険物保安監督者について。これになるためには、実務危険6か月と危険物取扱者甲種または乙種の資格を必要とする。丙種の資格では駄目。選任を必要とする施設は「製造所」「屋外タンク貯蔵所」「給油取扱所」「移送取扱所」の4つ、一方移動タンク貯蔵所では選任しなくて良い。
危険物施設保安員について。これは監督者のもとで保安のための業務を行う。「製造所」「一般取扱所」については指定数量の倍数が100以上、「移送取扱所」においてはすべてが選任の対象となる。
危険物保安統括管理者について。「製造所」「一般取扱所」については指定数量の倍数が3000以上、「移送取扱所」にちては指定数量以上の施設で選任の対象となる。
これらの役職においては技術上の基準を守らせることはもちろん、予防規定を守らせなければならない。予防規定とは、火災予防のために製造所等の所有者がさだめる決まりである。予防規定を定めたり変更するときは市町村長等に認可を受けなければならない。市町村長等は予防規定が適切ではないときは認可してはならないし、予防のために必要があるときは変更を命じることができる。
「給油取扱所」「移送取扱所」ではすべて予防規定を定めなければならず、危険物が一定数量あると予防規定を定めなければならないのは「製造所(倍数10)」「屋内貯蔵所(150)」「屋外貯蔵所(100)」「屋外タンク貯蔵所(200)」「一般取扱所(10)」