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にんじんと学ぶ微積分学「関数」

関数

 ある車のレースにおける最高速度を年ごとに記録することを考える。私たちは速度計と人手を借りることさえできれば、容易にそれを表にまとめることができるだろう。x軸y軸でおなじみの座標系を描けば、そこにぽつぽつと点を描くことができる。これを散布図という。レースは毎秒ごとに開催されるわけではないのだから、この散布図は私たちがよく知るような、きれいな曲線では描かれていない。しかし各点を強調するならば、視覚的によりわかりやすくするために、折れ線グラフにしたり、棒グラフにすることが許されるだろう。これによって

  •  どこが速度のうちで最低で、あるいは最高なのか、
  •  どの年から急激に増え、あるいは減ったか、

 といった情報が一目瞭然となる。グラフの端に鉛筆ででも、レースに関連ある主だった出来事などを書き込めば、変化の要因を仮説立てることもできる。

 私たちが扱う「関数」というものは、ある年に対してある速度がただひとつ定まるような規則のことである。レースにおける最高速度は明らかにひとつであるが、これがもし各車両ごとの最高速度なら散布図はもっと見づらいものとなるだろう。また、たとえばある町内会の体重リストを作ったとしても、まさか年齢ー体重の関数にはならない。もしこれを関数と呼ぶならば、同年齢の人はすべて同じ体重でなければならない。だからある意味関数というのは、いろいろなデータのなかでいちばん単純なかたちをしている。

 私たちは関数というものを連想するとき、どうしてもグラフを思い描くが、

  •  エクセルで作ったような表も、(数値的)
  •  グラフも、(幾何的)
  •  数式も、(代数的)
  •  それから言葉も、(言語的)

 それぞれ関数の表現方法であり、必要に応じて切り替えるのが便利である。別の表現から別の表現に改める方法は、たとえば数値的⇒代数的なものにおいては『曲線のあてはめ』と呼ばれるように、これもひとつの技術であるから、別途探求が必要である。

 

 関数というものを利用することは一体なんの役に立つのだろうか。

 たとえば次のような問題を考えてみる。(微積分学講義〈上〉

 上図のオレンジ色は海岸線、白い部分は海を示している。海の中にある赤い点は油田であり、右にある大きな丸い円に原油を送りたい。それならまっすぐいけばよさそうなものだが、残念なことに、水中にパイプを引くのは100万ドル/kmかかる。陸上ならば半分で済むというのに! 私たちはどういう風にパイプを引けば、もっとも安く済ませられるのだろうか?

 油田から海岸線にもっとも近い場所をA、目的地である大きな円をBとしよう。二つは8km離れている。問題なのは水中パイプの工事費用だから、いったいどこで上陸して陸上パイプに切り替えるかが問題となってくる。そこでAB間の任意の点をxとして、費用cを計算しよう。もしx=0ならばAまで水中パイプ、x=8ならばBまで直接パイプを繋げるということになる。

 ピタゴラスの定理を用いれば油田からxまでの水中パイプの長さは√(x^2+25)であり、陸上パイプの長さは8-xとなる。そこで、

c=1×√(x^2+25)+0.5(8-x)

 という関数の最小値となるような点を調べれば、それがずばり最も経済的なパイプラインということになるわけだ。

 

 私たちが平面のなかに好き勝手書いた曲線はすべて関数になるわけではない。それは関数というものが入力に対してただひとつの値しかとらないからである。ゆえに関数の幾何的表現であるグラフについて、次のことがいえる。

【垂直線テスト】

xy平面内の曲線がある関数fのグラフになることは、この曲線と2点以上で交わる垂直線が存在しないことと同値である。

 要するに縦線を引っ張って曲線と二回ぶつかったらそれはもう関数ではない。より正確にいえば、グラフがその曲線となるような関数fは存在しない。たとえば紙に丸を書いてみよう。これを表現するような関数fは存在しないのである。もちろん垂直線が交わらないように半円ごとの二つにわければ、こうした関数たちは見つけ出すことができる。

 関数において重要なのは「ただひとつ」であることもそうなのだが、入力をどこまで認めるかということもそうである。なぜなら入力に対してただひとつ値が定まらないといけないからである。油田の例にしても、x=500000などという値は(別にあってもいいが)考える必要がないし、そもそも海岸線がそこまで長く続いていることはありえないので、応用上、入力は制限されているのがふつうである。

 

 ある関数f、gがあれば、それを組み合わせたものも関数になる(入力に注意)。たとえばy=(x+2)^2は、「x^2」に「x+2」を合成したものと考えられる。このように考えるといくらでも関数を創り出すことができる。

f(x)=√xとする。ここで新たにg(x)=f(x+2)を考えることもできる。

このような関数のグラフは材料であるfから推定することができる。つまり√xのグラフがx軸方向にマイナス2ずれたものがgのグラフである。

 好き勝手作り出した関数には、現実世界にはとても応用例が見いだせないものも多い。そうしたものの性質を調べ、グラフを描き、分類していくのが数学である。

 極限にせよ、微分にせよ、これからやっていくことの多くは幾何的な意味でグラフの「形」を書き上げることに貢献する。たとえば今の時点では「平行移動」と「対称反転」と関数の形に関する漠然とした知識しか、グラフというものを描くことができない。しかしただこれだけの知識でも、たとえば『平方完成』などによって、その形を決定することができている。ここに微分を加えることで、よりグラフ化の可能性が広がるのである。

 そもそも関数を幾何的に表示するのは視覚的にわかりやすいからだが、どのぐらいわかりやすいかというと、次のような情報が一目で把握できるほどである。

  •  対称性
  •  周期性
  •  極値(最大値、最小値なども含む)
  •  変曲点
  •  増加あるいは減少している区間
  •  凸性
  •  漸近線
  •  +∞、-∞での振る舞い