にんじんブログ

にんじんの生活・勉強の記録です。

MENU にんじんコンテンツを一望しよう!「3CS」

アサーティブネス:だれかへの態度・じぶんへの態度 (やや追記)

アサーティブコミュニケーション

 アサーティブコミュニケーションは1950年代にアメリカの心理学者・ジョゼフウォルピが開発した行動療法のひとつである(アサーティブ・コミュニケーション (日経文庫))。その後コミュニケーションの訓練法として広がり、1982年に日本で平木典子氏が日本・精神技術研究所でトレーニングを開始した。

 コミュニケーションは「相手尊重する/しない」「自分尊重する/しない」という2軸で考えることができる。これによって生じる型は4つある。

  1.  攻撃型 相手を責めたり相手を傷つけてしまう。「なんでわかんないの?」「いい加減にしろ!」(自分尊重)
  2.  受身型 我慢する。なにか思っても主張しない。「相手に悪いし」「言うと失礼だし」「冷たい奴だと思われる」(相手尊重)
  3.  操作型 相手にそれとなくわかってもらおうとする。主張を直接は言わない。「無視する」「噂を流す」「嫌味を言う」(自分も相手も尊重しない)
  4.  アサーティブ 問題だと感じている状況について、それを言葉にして伝え、問題解決のために相手と向き合おうとする。(自分と相手を尊重)

 アサーティブは自分が感じていることに誠実であり、率直に表現し、それでいて相手を尊重し対等であろうとし、自分の決めた行動に責任を持つ。私たちは自分に誠実であったり率直でいてよいのだが、自分からそれをふさいでしまう。たとえば介護されている人が負い目を感じやってほしいことを言い出せないケースがある。

 だれであれ攻撃せず、自分の想いを押し殺さず、誰かを操作しようとしない。アサーティブでないすべてのスタイルは、自分の望んでいることを他者に表現しない。それを表現しなかったとき、人はひどいストレスを感じ、落ち込んだりする。アサーティブネスはこうしたことを避けるひとつのツールであるともいえる―――自分はいまどのスタイルだろうか。そのスタイルを変えることはできるのだろうか。容易ではないが、可能である。それは「反応パターン」であり、ここで注目すべきパターンは次の二つであるから。:①他者の感情を適切に認識、②それにふさわしく対応する。

 それよりも難しいのは、アサーティブであろうとする訓練を意欲することである。「注文してからしばらく経つのにいつまでも料理が来ない」こんなときも、私たちはアサーティブでなければならない。そう戸惑うとき、アサーティブな態度はどのように理解されているだろうか。早くしろという気持ちを相手にぶつけせまることだろうか。それとも相手の事情を察して我慢することだろうか。さらに、ほとんどの人は自分の気持ちを率直に表現してはならないと考えている。そこには強い恐れと不安がある。

 単にアサーティブなやり方を知ることだけでなく、その概念をはっきりと理解していくことも必要となってくるのだ。次の定義とチェックリストを参考にしよう。35の質問に、なんと答えるだろうか。どう答えがちだろうか。

アサーティブな自己表現は、率直で、確固として、肯定的な――しかも必要に応じて粘り強い――行動で、人間関係において平等を促す意図を持っています。アサーティブに成ることによって、自らの最善の利益のために行動し、過度の不安を感じずに自分を擁護し、他者の権利を否定することなく自分の権利を行使し、さらに、自分の感情(好意、愛情、友情、失望、困惑、怒り、後悔、悲しみ)を正直に気楽に表現することができるようになります。

自己主張トレーニング 改訂新版: アサーティブネス

  1.  誰かが非常にずるいことをしたとき、それをきちんと指摘しますか
  2.  何かを決断するのは難しいですか。
  3.  他の人の考え、意見、行動などをその人の前で批判しますか
  4.  誰かが行列に割り込んで来た時、抗議しますか
  5.  きまりが悪いために特定の人や状況を避けることがありますか
  6.  自分の判断に自信を持っていますか
  7.  家事を分担するように配偶者、またはルームメイトに求めますか
  8.  かっとなりやすいですか
  9.  販売員が熱心に勧めた場合、欲しくない製品でも「いらない」というのが難しいですか
  10.  自分よりも後に来た客が先にサービスされた場合、どうにかしようと思いますか
  11.  議論で自分の意見をいいだすのを控えるほうですか
  12.  人にお金を貸してなかなか帰ってこないとき、返してくれるように頼みますか
  13.  相手が分かったといっても、なお議論を続けますか
  14.  たいてい、自分の気持ちを表しますか
  15.  仕事中、人から見られていると気になりますか
  16.  映画または講演で、あなたの椅子を蹴り続ける人がいます。やめてくれるよう頼みますか
  17.  人と話すとき、視線を合わせるのが苦手ですか
  18.  高級レストランで料理やサービスに苦情があった場合、店員にその問題を解決してくれるよう頼みますか
  19.  購入した製品に欠陥があった場合、返品して修理・交換などしてもらいますか
  20.  相手をバカ呼ばわりしたり、ののしったりすることで怒りを表しますか
  21.  社交的な場ではできるだけめだたないように努めますか
  22.  大家さんや管理人がやるべき修理や交換などをやるように積極的に要求しますか
  23.  しばしば人にとってかわって、決定しますか
  24.  愛情や好意を表に出せますか
  25.  友達にちょっとなにかを頼んだり、助言を求めたりできますか
  26.  自分の回答はいつも正しいと思いますか
  27.  尊敬する人と意見が違う時、自分の立場を言い出せますか
  28.  友達の厚かましい要求を拒否できますか
  29.  人をほめるのが苦手ですか
  30.  近くの人がたばこを吸っていて迷惑なときに、そのことを相手に伝えますか
  31.  他の人を思い通りに動かすために、怒鳴ったり脅かしたりしますか
  32.  人がいっていることを最後まで聞かずに、途中で相手の話を取って自分でまとめてしまいますか
  33.  特に見知らぬ人と、時々殴り合いのけんかをすることがありますか
  34.  食卓での会話をいつも取りしきりますか
  35.  初対面の時、自分から進んで自己紹介をし、話を切り出しますか

 アサーティブとはスタイルであって、特定の行動のことではない。文化的背景によっては攻撃的となることもある。そうした種々の状況に配慮し、そのつど自分の意志を表現しなければならない(※ 隣の部屋に住んでいるひとがうるさくても、ふつうは直接注意しないだろうし、そうするのが正しいとは思えない。この場合のアサーティブな行動とは管理人にはっきりと対応を要求することだと思われる)。

 アサーティブ行動にはいくつかの重要な構成要素がある。

  1.  視線
  2.  姿勢
  3.  対人距離
  4.  身振り
  5.  表情
  6.  声の調子
  7.  流暢さ
  8.  タイミング
  9.  傾聴
  10.  思考
  11.  粘り強さ
  12.  内容

 私たちはまず自分が何を求め感じているかを反省しなければならず、その表現の仕方を学ばなければならない。伝えることについて着目すれば、

  •  事実 これまでどんなことがあったのか? 現在どんな状況か? 何が問題なのか?
  •  感情 どのように感じて来たのか。どう感じているのか。
  •  提案 どうすればいいと思うか。どう変わってほしいか。

 を整理することが肝要である。逆に相手からなにか批判を受けた際には、

  •  当たっているか? もしそうなら「このままでいいか」「なんとかするか」
  •  当たっていない? もしそうなら「否定するか」「流すか」
  •  わからない? もしそうなら「どうわからないのか」「考えるにはつらすぎるか」

 というように整理する。たとえば「いつもミスするよね」と言われた場合は、まずそれを受け止めて「たしかにそういう面はあると感じる」のか「いつもというほどではない」のかを検討する。たとえば「背が高すぎるよね」と言われた場合は、当たっているとしても自分にはどうしようもない。たとえば「冷たいよね」と言われた場合、それがどういう意味なのかいまいちはっきりしない。あるいは批判を受け止め切れずただちに情緒的反応を示してしまうものは、対処は最小限にしてとにかく流すことが大事な場合もある。どんな場合もいつでもアサーティブにはいられない。

 問題はその中身であり、ぶつけられている感情とは切り分けなければならない。場合によってはその場を一旦去って考える時間をもらうのも必要なときがある。そしてその行動を選んだのなら、責任を負う。「根に持つ」などということがないような決断をしたほうがよい。

【よくある思い込み例】

  1.  人は誰からも好かれ、愛されなければならない
  2.  人を傷つけてはいけない
  3.  ものごとはうまく解決されるべきで、それができないのはよくない
  4.  危険や恐怖に出会うと不安になり、何もできなくなる
  5.  過去の経験は生涯にわたって影響を与え、現在の感情や行動を規制する
  6.  ものごとが思い通りにならないのは耐えられない

アサーションの心 自分も相手も大切にするコミュニケーション (朝日選書)

 

 

 

 

心理的安全性への貢献

 ビジネスの観点でいえば、組織内の心理的安全性を実現するためにアサーティブネスは重要になってくる。心理的安全性とは、組織のなかで自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態のことをいう。これは組織の生産性を上げるために欠かせないものと考えられている。「自分がこんなことを言っていいのだろうか」と不安になる組織においては対話が阻害されてしまうため、それぞれが相手を尊重しながら自分の意見を率直に述べるアサーティブネスが求められているのである。

  •  コミュニケーションによって伝えられる情報だけでなく、「いかに」伝えるかという点がアサーティブネスに関連する。上述したように、大枠には「攻撃型」「受身型」「操作型」というスタイルがあり、自他を尊重するコミュニケーションスタイルとしてアサーティブコミュニケーションがある―――上司に対してへりくだり、後輩に関しては言い負かそうとしていたら組織の心理的安全性が生まれるはずがない。アサーティブネスのためには自分には何ができて何ができないのか理解し、そしてそれを受け止める自己受容がなされていなければならない。というのも、受身型にせよ攻撃型にせよ、受け止めれていないからこそへりくだったり、弱さを隠すために攻撃したりするからである。自分に対する反省がコミュニケーションを改善していくことになる。これができるのが当然であるとか、こうしなければならないといった「思い込み」や「固定観念」がアサーティブネスの障害になっているといえる。