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重要なのは、日常言語の実際の使用のうちで「意味」にかかわる事柄とそうでない事柄を区別することである。そこでグライスが作り上げたのが会話的推移の理論である。グライスが批判する論者たちは共通して『ある表現がある条件下ではふつう使われないということから、そうした条件における適用を排除するような何かが、その表現自身の意味やそれを用いる際の適切性条件に含まれていると結論する』。ややこしいがつまりこういうことだ。
- 表現EはCが成り立っていないときにはふつう用いられない
- 表現Eが適切に使われるためにはCが成り立っていないといけない
- 表現Eの意味やEを含む文の発話の適切性条件の一部に、Cが含まれている
ポイントは使用に関する条件を示し、それを意味やそれに類するものの一部に組み込んでよいという議論である。グライスはマルコムに対してこの同一視に疑義を呈していた。だからグライスとしては意味と使用が混ざり合っている状態から、二つを明確に区別するラインを引くことである。そしてそれが会話的推移の理論である。
会話的推移の理論とは、『真である発話が、それにもかかわらず不適切になる仕組みを説明する理論』であるといえる。偽だったり真でなかったりする発話が不適切だといわれるのはわかるが、真であってもなにか別の理由で不適切だとされる事例がある。つまりそこに使用の問題があり、よい基準となりそうである。