晴れて行政書士資格試験に合格した人。
これから費用が異常に高い行政書士会に登録し、行政書士として活動を始めるわけだが、そのためにはいろいろ準備が必要である。そのひとつが「行政書士法」の勉強であり、他の士業の独占業務を侵犯することは罰則付きで禁止されている。たとえば法務局に提出する登記書類は、内容が複雑でなければ比較的容易な仕事だが、それは司法書士の業務であり、やったら罰せられる。
そもそも行政書士とは、行政書士試験に合格しただけでなく、行政書士会の名簿に登録され、会員となった者のことである(もちろん欠格事由に該当しない)。或る行政書士事務所の使用人として働くこともありうるし、たぶんそれが普通のコースなのだが、ここでは独立を目指す「個人行政書士」に話を制限することにしよう。
行政書士法は行政書士の制度や業務を定めている。業務としては、
- 官公署に提出する書類
- その他権利義務又は事実証明に関する書類
の作成が法定されている。ただし、行政書士も憲法上、自由を保障されているので法定外業務を行うことには問題がない。たとえば別に犬の散歩を委託されてもいいのだが、他の士業の独占業務をやってはいけない。
官公署というのは国又は地方公共団体の諸機関とされているが、より厳密には「公権力の行使の主体としての性格を強く持つもの」であり、公団・公庫・独立行政法人などはこれに当たらない。そして当てはまったとしても他の士業の独占業務なら当然できない。ではいったい何が行政書士の独占業務なのかといえば、
- 利益的行政処分である許可・免許・登録・認可・承認・確認・認定・指定・検査・免除または補助金交付・貸付など給付決定の申請書あるいは不服申し立て書・審査申出書
- 届出書・報告書・同意書
- 上記に伴う添付書類
- そのほか、警察機関あて告訴・告発状、あるいは全般的に請願書・陳情書・上申書など
といったことである。2番目の権利義務関係の書類は、
- 売買・貸借・抵当権設定・請負、雇用・身元保証・示談などの契約書
- 契約申込書、内容証明郵便による請求書、または約款
- 遺産分割協議書や建築工事紛争予防協議書などの協議書
- 法人・団体の議事録および会議資料
- 会社・法人設立の必要書類
である。