愛
善によって心が被る変化が、愛である。たとえば喫茶店でふと耳にした音楽に心が強く揺り動かされ、店を出てからもずっと心の中で鳴り続ける。何かが気に入るとそのものが心の中に住み続け、それ以前の自分ではなくなっている。愛は受動的な仕方で生まれる。そして愛が当の善への運動へ変わる。これをなんとかして手に入れたいという「欲望」である。欲望は未来の善を対象とする感情だった。それが手に入ると「喜び」に変わるのだった。
愛はあらゆる感情の根源にある。恐れもまた愛から生ずる。愛は善を前提としている。私たちが能動的に活動できるのはこの世界のなかにある魅力的なものの美点によって心を打たれること、そのような意味での受動性による。「何らかの対象の方から自分へのはたらきかけがないかどうか、目を凝らし耳を澄ませ、心を開いておくことが、愛を引き寄せる」