労働者災害補償保険法とは?
労働者災害補償保険法とは、
業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛星の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的
とする法律です。労災法って言われます。労働者が怪我したり病気にかかったり死んだときに色々世話してくれます。労災法の管理運用は政府がやってます。なんとありがたいことに、適用事業で働いてさえいればすべての労働者が労災に入れます。
適用事業
適用事業は「労働者を使用する事業」です。
これだけで済めばいいですが、いろいろ例外があります。
①適用除外
- 国及び地方公共団体の機関
- 行政執行法人の職員
要するにお役人は駄目です。お役人にはお役人の保険があるから心配ありません。ただここでいうお役人は正規だけで、非常勤の人は労災保険適用になりますので注意です。
②暫定任意適用事業
一部の事業については労災保険加入が保留されます。大まかに要件をいえば「農林水産」「個人経営」です。ここにプラスして労働者数要件がありますが、大まかに五人だと思っておいてよいでしょう。雇用保険にも同じ名前の適用事業がありますので比較してみてください。
また、被保険者については「労働者」のことだと考えてください。労働基準法上の労働者であって、適用事業に使用される者は被保険者になります。
業務災害と通勤災害
- 業務災害 … 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡
- 通勤災害 … 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡
言葉の通りです。試験では、何が業務上で、何が通勤なのか、という細かい点で問題になります。煩雑になるため、詳述するのは避けておきます。
労働者が業務に起因して負傷又は疾病を生じた場合に該当すると認められるためには、業務と負傷又は疾病との間に相当因果関係があることが必要である。
答えはマル。
業務災害
【業務上疾病】
負傷した場合は業務に関係していることが明白である場合が多いのですが、病気である場合は業務に関係があるかどうかはっきりしません。
業務上疾病がなんであるかは「厚生労働省令(労基法施行規則別表第1の2)」に列挙されています。ここに書いてあるもののみが業務上疾病です。しかしもちろん、その項目には「その他業務に起因することが明らかな疾病」が含まれ、様々な疾病を包括的に扱えるようになっています。
【認定基準のこと】
名前は覚えなくていいので、過去問を解いて出題パターンを知りましょう。
業務災害と通勤災害については525問の労災過去問のなかで94問出ています。択一式では平成25年からは毎年なかなかの分量が出ていますのできちんと押さえておきましょう。
原因から発病までは「ストレスー脆弱性理論」に基づき、認定されます。
認定基準においては、次のいずれの要件も満たす場合に、業務上の疾病として取り扱うこととしている。
①対象疾病を発病していること。
②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。
最近話題となっている「過労死」は長時間労働が原因で起きますが、たとえば次のような問題が出題されます。
認定基準においては、例えば対象疾病の発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行っていたときには、手待時間が多いなど労働密度が特に低い場合を除き、心理的負荷の総合評価を「強」と判断するとしている。
考え方としてはこうです。「3週間で120時間以上ということは1週間あたり40時間以上。だから、答えはマル」。
労基法では普通の労働時間の限度は週当たり40時間でしたね。その限度一杯を、時間外労働だけで超えてしまっているのだから、とんでもない労働量です。しかし40という数字にこだわりすぎるのも危険で、
認定基準においては、うつ病エピソードの発病直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった場合、心理的負荷の総合評価は「強」と判断される。
こういう問題も出ます。週当たり30時間なのですが、心理的負荷は強になりますので注意してください。
平成30年 労災保険法 問1 肢D
認定基準においては、「極度の長時間労働は、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となることから、発病日から起算した直前の1か月間におおむね120時間を超える時間外労働を行った場合等には、当該極度の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を「強」とする。」とされている。
これはバツ。一か月に120ということは週当たり30時間なのですが……。上の場合はうつ病エピソードだとか、連続して、があったのでキツめに設定されていたのでしょうか?
通勤災害
通勤とは、「労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務を性質を有するものを除く」ものです。
それが通勤であるかどうか判定するためには赤字部分が重要になってきます。また、通勤との因果関係も重要です。たとえば通勤途中の自殺は、通勤災害にはなりません。ポイントが多いので、教科書的な内容はさらっと読んでおいて過去問に挑むほうがよいでしょう。
- 就業に関しなければならないことは当然です。仕事とまったく関係がなく、通勤ルートを通っていたというだけでは通勤災害にはなりません。
- 合理的な経路及び方法とは、「当該移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等をいうもの」で、ごく一般的な出社方法のことです。ではどういう場合に当てはまらないのかというと、無用な遠回り、通行禁止区域の通行などです。
- 業務の性質を有するものは業務災害になりますので除かれます。
「労働者が、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の移動は、通勤に該当しない」
という規定があります。通勤の逸脱と中断があった場合は、原則としてその後は通勤に当たりません。たとえば仕事終わりに飲みにいったあとの帰りは通勤には該当しません。
この例外は、
- 日用品の購入その他これに準ずる行為
- 職業訓練・教育訓練
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為
- 診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
- 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、配偶者の父母の介護。
- その他ささいな行為(コンビニでの雑誌購入等)
で、これをしたあとでも通勤に該当します。
給付基礎日額
どれぐらいお金が支払われるかの基準となる「給付基礎日額」を見ていきましょう。
給付基礎日額は、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額。
平均賃金は、3カ月間に受け取った賃金の平均。
平均賃金については計算方法について細かく規定がありますが、上の原則はおさえておきましょう。例外がこちら。:
- 私傷病休業者等の特例
- じん肺患者等の特例
- 船員の特例
- 自動変更対象額の特例
計算方法がちょっと違うんですね。
①の場合は、その3カ月に休業中も含めると給付基礎日額が小さくなりすぎるのでそこは除外しますよというやつです。
②の場合は、病気にかかると配置が換わって賃金も低くなるケースが多いので、作業転換前の賃金で算定しますよということです。
③の場合は、船員はあんま賃金が安定しないので3カ月じゃなくて1年でやりますということです。
④は、給付基礎日額の最低保証です。3920円!
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次の項目は、まだ給付をやってないのでピンとこないと思います。最初は読み飛ばしていいかもしれません。
【給付基礎日額のスライド】
基準となるお金について、法律は定期的な見直しを用意しています。
①休業給付基礎日額のスライド
ケガしてお休みしたら労災保険から働いてないあいだの金が出ます。これを休業給付といい、その算定の基礎として用いる給付基礎日額を「休業給付基礎日額」といいます。
事故発生💣 → おやすむ
となった場合、平均賃金を弾き出して「はい、毎月これだけね」とお金をもらうのです。
その後、法律は四半期ごとにチェックを入れます。次の三か月の平均賃金が、元々弾き出した平均賃金に対してプラスマイナス10%の変動があったとき、スライドが起こります。スライド率というパーセントを掛けて、その数字が、次の、次の四半期の最初の日から適用されることになるのです。
ず~っとお休みして一年六か月経つと、休業給付基礎日額の年齢階層別最低・最高限度額が適用されます。あんまり低すぎたり、高すぎたりするのを抑制するわけですね。一番お安いので、20歳未満4741円~13264円になってます。先ほど見た④の特例よりも高くなってますね。
②年金給付基礎日額
保険給付のやり方にはいろいろあって、年金給付というのもあります。さっきの休業給付とは区別しておきましょう。あとで保険給付の種類についてみるので、今は飛ばしておいてあとで戻ってきてもいいかもしれません。
年金給付基礎日額については毎年改定です。最初に算定した年金給付基礎日額に対して、 前年度の平均給与額/算定事由発生日の属する年度の平均給与額 を掛けて出して行きます。年金ではなく、一時金で支払われる場合も同様のスライドがなされます。
休業給付基礎日額とは違い、こちらは最初から年齢感想別最低・最高限度額が適用されます。ただし、それは年金だけの話。一時金には最低・最高限度額はありません。
平成19年 労災保険法 問2 肢C
年金たる保険給付の額の算定に用いられる給付基礎日額には、原則として、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額が用いられるが、毎月勤労統計における労働者1人当たりの平均給与額が給付基礎日額の算定事由発生日の属する年度(4月から翌年3月まで)における平均給与額の100分の110を超え、又は100分の90を下るに至った場合は、その上下した比率を基準として厚生労働大臣が定める率を労働基準法第12条の平均賃金に相当する額に乗じてスライドさせた額が、算定事由発生日の属する年度の翌々年度の8月以降の給付基礎日額として用いられる。
答えはバツ。変動比率でやるかやらないかを決めるわけではなくて、毎年やっていきます。
保険給付
さて、これまでに見てきたことは、①どこでもだいたい労災②だいたい災害③基本は平均賃金 といったようなことでした。ここからは具体的にどういう給付が実際に行われるのか見ていきましょう。
- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 傷病(補償)年金
- 障害(補償)給付
- 介護(補償)給付
- 遺族(補償)給付
- 葬祭料 or 葬祭給付
- 二次健康診断等給付 or なし
これだけあります。かっこの中アリで読むのは業務災害のケース。かっこなしで読むのは通勤災害のケースです。たとえば業務災害の場合は「療養補償給付」、通勤災害の場合は「療養給付」となります。また、業務災害の場合は「葬祭料」、通勤災害の場合は「葬祭給付」となります。
なんでこんなややこしい名前やねん、というところですが。
通勤災害はそもそも労働基準法で定められている事由ではないため、使用者に補償責任がないんですね。だから補償という文字が切られている、というわけです。でも大体同じです。じゃあもういいから統一しろよ、と言いたいですが、法律の勉強やってると文句だけで終わりそうになるのであまり構っていられません。
※労災保険法は労働基準法にある災害補償制度をきっちり実現するために制定された保険です。災害補償をひとつの会社に任せるんじゃなくて、みんなでお金を出し合って事故に備えましょうねということですね。
ですが、労災保険法は労基法以上の補償をしてくれています。たとえば「傷病保障年金」「介護保障給付」「二次健康診断等給付」は労基法には書いてありません。
平成20年 労災保険法 問1 肢C
労災保険の保険給付は、いずれも、その事由が生じた場合に、当該保険給付を受けることができる者からの請求に基づいて行われる。
社労士を受ける人で資格試験に慣れていないという人はなかなかいないと思いますが、「いずれも」という言葉は試験ではほぼ間違いです。まったくわけがわからなくても全部がそうだよとか言われたらとりあえずバツしといて損はないでしょう。
答えはバツ。傷病については、請求ではなくておっさんが職権で決めます。
療養補償給付
ケガしちまったら病院行きますが、支払ったお金をバックしてもらえます。これが療養補償給付です(現物給付)。
- 現物給付
- 現金支給
一方で、2の現金支給がされる場合もあります。でもこれには相当の理由がなければなりません。ほぼ全部が現物給付です。相当な理由とはたとえば、住んでいる付近に指定病院がない場合などです。
給付が治療の必要がなくなるまで行われます。治療の必要がなくなるというのは状態が固定するまでのことで、たとえば障害が残って完治してないとしても、療養の給付は終わります。
平成21年 労災保険法 問3 肢C 改
療養の給付の範囲は、①診察、②薬剤又は治療材料の支給、③処置、手術その他の治療、④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護、⑤病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護、⑥移送のうち、政府が療養上相当と認めるものに限られる。
答えはマルです。この6つに対して金払ってくれます。また、政府が認めるものに限られます。
死体のアルコールによる払拭のような本来葬儀屋が行うべき処置であっても、医師が代行した場合は療養補償給付の範囲に属する。
答えはバツ。亡くなった人をふきふきしてもらっても、療養補償給付からは出ません。葬祭料ですね。
また、よく出ているようなので一応フォローしておきます。
療養の給付は、社会復帰促進事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者において行われる。
答えはマル。指定された病院で療養の給付を行います。そしてよく出題されるというのは太字の部分。ここが厚生労働大臣になってたりするひっかけがでます。
休業補償給付
休業(補償)給付は、
労働者が業務上(又は通勤による)負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給するものとし、その額は1日につき給付基礎日額の100分の60に相当する額とする。
- 療養のための休業じゃなきゃ駄目。
- 平均賃金の60%未満しか賃金を受けない日であること
ケガしても他の作業ができるケースがあります。そういうときは、給付基礎日額からその作業によってもらった給料を引いて、その60%が休業補償給付として支払われます。
もらえる期間は休業しているあいだずっとです。以前書いた休業補償給付のスライドについて忘れている場合はもう一度見直してみてください。
ただし、いくら休業とはいえ、刑事施設に収容されていたり、少年院にいたりするやつに払う金はない、ということで休業補償給付は払われません。
療養補償給付は、休業補償給付と併給される場合がある。
答えはマル。休業と療養は併給されます。
でも「傷病補償」と「休業」とは併給されません。まだ傷病については説明していませんが、傷病はちょっと色々特別なので、名前だけでも覚えておくとよいでしょう。
平成16年 労災保険法 問4 肢A
業務上の事由又は通勤による傷病の療養のため所定労働時間の一部について労働することができないために、平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の60%未満の金額しか支払われていない日は、当該傷病の療養のため労働することができないために賃金を受けない日に該当する。
答えはマル。
傷病(補償)年金
休業をしながら療養をはじめて一年六か月が過ぎたとします。
- 当該負傷又は疾病が治っていないこと。
- 当該負傷又は疾病による障害の程度が傷病等級3級以上。
この二つを満たすとき、労働基準監督署長は職権で傷病補償年金の給付を決定します。このとき、休業給付はストップしますので注意してください。
給付額は次の通り。
- 傷病等級 1級 : 給付基礎日額の313日分 /年
- 2級 : 277日分 /年
- 3級 : 245日分 /年
しかし、傷病等級3級以上って、相当重いことは知っておくべきです。
平成21年 労災保険法 問5 肢B
業務上の傷病が療養の開始後1年6か月を経過しても治らず、かつ、その傷病により例えば次のいずれかの障害がある者は、厚生労働省令で定める傷病等級に該当する障害があり、傷病補償年金の受給者になり得る。
① 両手の手指の全部の用を廃したもの
② 両耳の聴力を全く失ったもの
③ 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
④ 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
①~④のどの障害が3級以上かな、というような問題です。両手の指とか、両耳とか、完璧に失ってるのでこれはさぞかしヤバイだろうと思いきや、全部4級以下の障害です。答えはバツ!
【打ち切り補償との関係】
注意点があります。労働基準法でやったかと思いますが、けがをしているあいだは解雇制限がかかるので使用者から「おまえクビな」と言われる心配はありません。でも、
怪我をして3年経った時に傷病補償年金を受けていると、打切補償を支払ったものとみなされ解雇制限が解除されます。(ただし、通勤災害は別らしい。……なんで?)
平成17年 労災保険法 問4 肢B
業務上の傷病に係る療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなった場合には、労働基準法第19条第1項の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該3年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなった日において、同法により打切補償を支払ったものとみなされる。
答えはもちろんマル。解雇制限がなくなったので会社からクビを切られるかもしれません。
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障害補償給付
ケガが固定した状態となり治療の必要がなくなったあとも、体に障害が残る場合があります。このときに障害の程度の応じて支払われるのが「障害(補償)給付」です。
第14級から一時金として支払われ、第7級以上になると年金として支払われます。それぞれ障害(補償)一時金、障害(補償)年金といいます。第14級の障害の場合は給付基礎日額の56日分、第1級の場合は給付基礎日額313日分を一年につきもらえます。給付基礎日額をもとにお金が決定されてますね。
平成18年 労災保険法 問3 肢B
障害補償年金は、業務上の傷病が治った場合において、当該労働者の身体に障害が残り、その障害の程度が障害等級第7級以上に該当するときに、支給される。
これ最早ひっかけだと思うんですけど、答えはマルです。障害補償年金についての問題であることに注意。
さて、以上が障害補償給付の基本です。
併合
ところで「障害が残る」といっても1つとは限りません。恐ろしいけがをして全身至る所に障害が残る場合がありますね。こういう時に障害等級がいくつになるのかという問題があります。等級は障害ごとに決まっているので、それがいくつか組み合わさるとどうなるんだというルールを定めておかなければなりません。
原則としては「重たいほう」を採用します。
ただし、級数が大きくなると「併合繰上げ」というものが起きるようになりますので注意が必要です。
- 13級以上が2つ以上! → 重いほうを1つ繰上げ
- 8級以上 → 重いほうを2つ繰上げ
- 5級以上 → 重いほうを3つ繰上げ
加重
また、もともと障害を持っていて、さらに怪我をして付け加わる場合もありますよね。もともとの障害でお金をもらっているはずなのですが、さらに付け加わるとどうなってしまうのでしょうか。
もともと100万もらってたとします。あたらしく付け加わった障害で200万もらうことになったとすると、200万全部はもらえません。200-100で100万円になります。差額支給です。(前後の障害がともに、一時金又は年金の場合)
次は前が一時金、後が年金とします。このときは上とは計算方法が違って、年金から一時金をそのまま引くのではなく、一時金の25分の1を引きます。
平成21年 労災保険法 問6 肢B
既に業務災害による障害の障害等級に応じて障害補償年金を受ける者が新たな業務災害により障害の程度を加重された場合には、その加重された障害の該当する障害等級に応ずる新たな障害補償年金が支給され、その後は、既存の障害に係る従前の障害補償年金は支給されない。
答えはバツ。それまでのお金は支払われ続けます。
変更
障害等級が高ければ年金、低ければ一時金が支払われるのでしたが、日々を過ごしているうちに障害が重くなったり、軽くなったりすることがあるでしょう。こういうときには「変更」が行われます。一言でいえば、グレードダウンはありますが、グレードアップはありません。
年金が一時金に変わっても、一時金は年金にはなりません。
平成21年 労災保険法 問6 肢E
障害補償年金を受ける者の障害の程度について自然的経過により変更があった場合には、新たに該当することとなった障害等級に応ずる障害補償給付が支給され、その後は、従前の障害補償年金は支給されない。
答えはマル。年金を受けてた人の障害等級が変わるとそれに応じた給付になります。
平成30年 労災保険法 問6 肢B
障害補償一時金を受けた者については、障害の程度が自然的経過により増進しても、障害補償給付の変更が問題となることはない。
答えはマル。一時金の人はなにも変わりません。
介護(補償)給付
障害年金、傷病年金の給付を受けている人が介護を要する状態であり、実際に介護を受けているとき、請求によってお金が支払われます。これを介護(補償)給付といいます。
障害年金、傷病年金を受けているということは重ための障害等級を持っていることになりますが、介護給付を受けるためにはさらに条件がきつくなっています。
平成17年 労災保険法 問5 肢B
介護補償給付又は介護給付は、障害等級第2級以上又は傷病等級第2級以上に相当する重度の障害を有する労働者であれば、現に常時又は随時介護を受けている限り支給される。
答えはバツ。2級以上だったらOK、といったような基準ではなくて、さらに満たさなければならないものが取り決められています。要介護障害程度区分表(則別表第3)
介護給付は、実費支給です。かかった分だけお金をくれるわけですね。
しかし上限がありますのでその点は注意が必要です。
平成17年 労災保険法 問5 肢A
介護補償給付又は介護給付は、障害補償年金若しくは障害年金又は傷病補償年金若しくは傷病年金を受ける権利を有する者が当該年金の支給事由である障害により常時又は随時介護を要する状態にある場合に支給される。
答えはバツです。どうしてって、介護を受けてないからです。
介護を受ける状態 だけではなく 実際に介護を受けている 必要があります。介護給付は実費支給でしたので、介護を受けてないと費用が発生しません。
遺族(補償)給付
労働者が死んでしまった場合です。療養云々ではありません。
誰に支払われるのか?
それは ハイ・シ・フ・ソン・ソ・ケイ の順に一番早い人です(生計維持されている人)。それぞれ何が当てはまるかわかるでしょうか。
- ハイ … 配偶者。嫁は無条件でお金がもらえますが、夫の場合は60歳以上か障害の状態である必要があります。なんでかは謎です。ちなみに事実婚でも大丈夫です。
- シ … 子。18歳に達した年度末までの子です。高校卒業まで、という感じですね。中卒の場合があるので一概にはいえませんが。
- フ … 父母。60歳以上又は障害の状態。
- ソン … 孫。18歳年度末まで又は障害の状態。
- ソ … 祖父母。60歳以上又は障害の状態。
- ケイ … 兄弟姉妹。18歳の年度末まで又は60歳以上又は障害の状態
受給資格者(たとえば妻)と、その受給資格者と生計と同じくしている受給資格者(息子)の二種の合計人数によって遺族補償年金が支払われます。人数が変動したら翌月からそれに応じた金額に改定されます。
※人数以外では、妻の年齢も改定要件です。55歳に達したら金額が上がります。
遺族(補償)一時金
- 受給資格者がいない場合
- (1)受給資格者の権利が消滅、(2)ほかに受給資格者がいない、(3)これまで支給された遺族給付の合計額が給付基礎日額の1000日に満たないとき
この二つの場合は遺族(補償)一時金が支給されます。支給額は1番の場合は1000日分。2番の場合は1000日から今までもらったお金の分を引きます。たとえば100日分をこれまでに貰っていた場合は900日分が一時金として支給されます。
遺族(補償)一時金の受給資格者は
- 配偶者
- 生計維持していた子、父母、孫、祖父母
- 生計維持していなかった子、父母、孫、祖父母
- 兄弟姉妹
となっており、生計維持が要求されていません。