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自分はどんな人間か? カルチャーマップから見る私たち。

 今回のテーマは「カルチャーマップ」です。

 

 独立した個人。個人の集まりとしての集団。集団が作る文化……。

 といったような或る意味で伝統的な思考様式と異なり、むしろ個人というものは環境・文化によって形成されていくことが明らかになりつつあります。また、哲学的にも全体論は現代の大きな思潮のひとつであり、我々の生活を含む文化こそが科学的な知見、広くは認識などを支えているとも言われるところです。

 我々の世界観に強く影響を与える「文化」を、8つの指標を用いて特徴づけようとした試みが、今回紹介する「カルチャーマップ」だと言えるでしょう。例示されるのは日本やアメリカ、ロシア、ドイツなどの国を単位としていますが、それは国民性というような一種の決めつけ・レッテル貼りではありません。個人の性格によっても異なるのは当然のことです。

 たとえば同じ日本であっても、組織における立ち位置に依って変位するものであることは言うに及びません。国を単位とするのはあくまでトータルカルチャーとしてであって、その人の属すサブカルチャー・その人自身の性格等々により変化します。

 しかしそうであるとしても、やはりトータルカルチャーは何らかの影響を及ぼさずにはいられません。その意味で、これはある種の『幅』を与えるものであり、その人がそのような性質を持つかどうかはあくまで相対的なものに過ぎないと要約することもできるでしょう。

 この点を注意したうえで、下図の八点について順に紹介していきます。

 

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異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

 

 コミュニケーション

  •  ローコンテクスト 良いコミュニケーションとは厳密で、シンプルで、明確なものである。メッセージは額面通りに伝え、額面通りに受け取る。コミュニケーションを明確にするためならば繰り返しも歓迎される。
  •  ハイコンテクスト 良いコミュニケーションとは繊細で、含みがあり、多層的なものである。メッセージは行間で伝え、行間で受け取る。ほのめかして伝えられることが多く、はっきりと口にすることは少ない。

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

 

 最も極端なハイコンテクスト文化として「日本」が、その反対の極には「アメリカ」が例示される。ハイコンテクスト文化は各成員が共有しているものが多く、反対にアメリカは人種のサラダボウルと評されるように多種多様な民族や価値観を持った人々がいるという特徴がある。

 文化をロー/ハイと最初に区分したのはアメリカの人類学者エドワード・ホール。長く連れ添った夫婦は互いに共有しているものが多く、ちょっとした仕草等を見ることで相手の意図を理解することができるが、新婚の場合はお互いの意志を繰り返し確認する必要がある――という例を用いて、ローとハイのコミュニケーションの違いを説明した。

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 アメリカがローコンテクストの極だというのは、奇異に映る。

 イギリスとアメリカを比較した際、ふたつともローコンテクスト文化である。しかしアメリカのほうがよりその傾向が強い。アメリカ人がジョークを言う時、彼らははっきりとした言葉や動作で「これはジョークです」と示すことが多く、イギリス人は逆にまったくの無表情で、辛辣で皮肉の効いたジョークを言うことを好む。その意味で、アメリカは自分の意図をはっきりと相手に伝えている。

 ひとつ興味深い傾向がある。ハイコンテクストの文化圏では、学があり教養があればあるほど、話す際も聞く際も裏に秘められたメッセージを読み取る能力が高くなる。そして反対に、ローコンテクストの文化圏では、学があり教養のあるビジネスパーソンであればあるほど、明快で曖昧さのないコミュニケーションを取るのである。(略)

 この点において、教育はその国の文化が持つ傾向を極端にまで体現した個人を生み出そうとするものだと言える。

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

 

 ハイコンテクスト文化におけるコミュニケーションは難解に映る。彼らが「はい」と言っても、それは言外に「いいえ」と言っている可能性がある。「善処します」「検討します」「難しいですが」といったような言葉の裏にある意味を読み取る――いわば『空気を読む』ことが必要とされる。

 

 空気なんて読まなくてもよいと豪語する人でも、たとえば研修などで同じことを何度も説明されると「そんなことはわかってる」と思うなど、繰り返しを厭う傾向を持っていることがある。「さっき説明したんだから、『普通は』わかるだろ」と主張しているわけだが、これも空気を読むという能力の一形態である。

 

 評価

  •  直接的なネガティブ・フィードバック 同僚へのネガティブ・フィードバックは率直に、単刀直入に、正直に伝えられる。ネガティブなメッセージをそのまま伝え、ポジティブなメッセージで和らげることはしない。顕著な例では、批判する際に「間違いなく不適切だ」や「まったくもってプロフェッショナルとは言えない」といった言葉が使われる。批判はグループの前で個人に向けて行われもする。
  •  間接的なネガティブ・フィードバック 同僚へのネガティブ・フィードバックは柔らかく、さりげなく、やんわりと伝えられる。ポジティブなメッセージでネガティブなメッセージを包み込む。顕著な例では、「やや不適切だ」や「少しプロフェッショナルじゃない」といった言葉が使われる。批判は1対1でのみ行われる。

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

 

 一見、この指標は先ほどのロー/ハイコンテクスト文化とちょうど対応するようにも思われる。例えば日本がハイコンテクストで、間接的であるように。しかし実際にはハイコンテクストでも直接的なネガティブ・フィードバックを行う文化もあるし、ローコンテクストでも間接的なネガティブ・フィードバックを行う文化もある。

 

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 (ロー,直接的)の文化は、その他のすべての文化から「率直」だと思われている。彼らの言葉は言葉通りに受け取ればよく、率直なのはあなたを攻撃しようとしているからではない。

 (ハイ,直接的)の文化はたとえばロシアが挙げられる。行間に意味を込めるハイコンテクストな一面と同時に、悪いところは悪いとキッパリしている複雑な文化である。『もしあなたがジャケットを着ずに道路を歩いていると、小柄なロシア人老女があなたを引き止めて誤った判断を厳しく非難するだろう……ロシアではネガティブな批判を面と向かって伝えることをいとわないのである。たとえば、もしお店やレストランのサービスに満足していなかったら、店員やウエイターへ、彼らや、彼らの親戚や、彼らの義理の両親や、彼らの習慣や、彼らの性的志向について思うことを何でも言っていい。』

 (ロー,間接的)の文化はたとえばアメリカが挙げられる。アメリカ人は日本からすれば桁外れに率直で遠慮がないように見えるが、実はネガティブな批判をポジティブな言葉を使って和らげる。「朝から皆さんとご一緒できて本当にうれしいです」といったアメリカ人を見て、オランダ人はそう言った人がちっともうれしそうではないことを感じている。『アメリカ人の同僚たちはいつも「素晴らしい」点や「優れた」点からコミュニケーションを始めますが、それは誇張され過ぎていて自分が貶められているように感じます。私たちは大人で、しっかりと仕事をしに来ているのです。同僚にチアリーダーは必要ありません』。

 教育においてもその特徴は表れる。『ミス八つ。スキル習得ならず。もう少し頑張りましょう!』

 (ハイ,間接的)の文化は、日本がそれに当てはまる。ネガティブ・フィードバックはソフトで控えめに、ほのめかして行われる。また、グループの前で一人を公然と批判することは珍しい。メッセージをぼかし、他のことに気を取られていると相手が何を伝えようとしていたかわからないぐらいである。

 

 

 日本人から見れば西洋人の率直さは、もはや無礼である。上の図を見てもらうとわかるように、隣の中国でさえ日本よりも直接的にものを言う。だから日本からすればほとんどすべての国が率直に過ぎる。

 しかし率直にものを言うことは、彼らの「礼節」である。

 

 説得

  •  原理優先 各人は最初に理論や複雑な概念を検討してから事実や、発言や、意見を提示するように訓練されている。理論的な議論をもとに報告を行ってから結論へと移るのが好ましいとされている。各状況の奥に潜む概念的原理に価値が置かれる。
  •  応用優先 各人は事実や、発言や、意見を提示した後で、それを裏付けたり結論に説得力を持たせる概念を加えるように訓練されている。まとめたり箇条書きにしてメッセージや報告を伝えるのが好ましいとされている。議論は実践的で具体的に行われる。理論や哲学的な議論はビジネス環境では避けられている。

 

 この対立は欧米諸国のもので、アジア圏ではこれとは異なる。上記二つを「特定的」と呼ぶとすれば、その反対側に位置するのは「包括的」である。包括的な思考は相互のつながりや関わり合いに重きを置いている。日本は包括的思考をする。

 

 中国人はマクロからミクロへと考えるが、西洋人はミクロからマクロへと考える。たとえば、住所を書くときも、中国人は省、市、区、地名、番地と書く。西洋人は正反対に書く――家の番地から始めて、それから市や州へと続けていくんだ。同じように、中国人は名字を先に書くが、西洋人は名前から書く。中国人は年、月、日と書くが、これも西洋人は反対に書く。

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

 

 他にも次のような例がある。西洋人に人物の写真を撮影せよと指示すると、西洋人は顔付近をクローズアップして撮る。しかしアジア人に同じことを頼むと、部屋など背景を含めてその人の全身を撮ろうとする。

 

リード

  •  平等主義的 上司と部下の理想の距離は近いものである。理想の上司とは平等な人々のなかのまとめ役である。組織はフラット。しばしば序列を飛び越えてコミュニケーションが行われる。
  •  階層主義的 上司と部下の理想の距離は遠いものである。理想の上司とは最前線で導く旗振り役である。肩書きが重要。組織は多層的で固定的。序列に沿ってコミュニケーションが行われる。

 

 日本、韓国、ナイジェリア等の国は階層主義的色合いが濃い。反対にデンマークやオランダ、スウェーデンでは平等主義の一つの極をなしている。同じヨーロッパでもこの点については位置づけが分かれていて、たとえばイギリスやフランスなどは比較的階層主義に傾いている。

 

決断

  •  合意志向 決断は全員の合意の上グループでなされる。
  •  トップダウン 決断は個人でなされる(たいていは上司がする)。

 この違いは、先ほどの「リード」と関連があるように思える。しかし実は日本は階層主義的でありながら、合意志向であるという複雑な文化を持っている。上の階層が先頭で旗を振っているにも関わらず、決断はグループでなされるのだ。一般的には平等主義→合意志向、階層主義→トップダウン式となるのであるが、アメリカとドイツ、そして殊に日本はその例外である。

 日本には稟議と呼ばれる意思決定システムがある。

 稟議とは、役職が下のマネジャーたちが彼らのなかで新しいアイデアについて検討し合意に至ってから、ひとつ上のマネジャーたちへ意見を渡していくシステムのことである。

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

  ある議題に対し、私たちは「稟議書」と呼ばれる提案書を回覧します。たいていは中間管理層から回覧し始めます。提案書がそれぞれのところへ回ってくると、彼らはそれを読み、ときには変更や改善を行ってから、承認のハンコを押します。ある役職の人々が全員承認したら、ひとつ上の役職へと回します。

 ひとつ上のマネジャーたちも提案を吟味して合意に至ります。合意したら、承認してまたひとつ上へと回します。このプロセスが一番上の役職に届くまで繰り返され、実行するかしないかが決まります。おわかりの通り、稟議システムは階層的でもあり、ボトムアップ式でもあり、合意志向でもあるのです。

 稟議書が回り全員のハンコが押される過程で、関係者全員が意見を言う機会を得てから合意に至るのです。

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

  この稟議システムで頻繁に用いられる手法は「根回し」と呼ばれる。非公式に提案し、事前に意見を述べ、事前に合意を得ておき、そののちに提案書という形で公式に合意を取り付けるのである。

 

信頼

  •  タスクベース 信頼はビジネスに関連した活動によって築かれる。仕事の関係は実際の状況に合わせてくっついたり離れたりが簡単にできる。あなたが常にいい仕事をしていれば、あなたは頼りがいがあるということになり、私もあなたとの仕事に満足し、あなたを信頼する。
  •  関係ベース 信頼は食事をしたり、お酒を飲んだり、コーヒーを一緒に飲むことによって築かれる。仕事の関係はゆっくりと長い期間をかけて築かれる。あなたの深いところまで見てきて、個人的な時間も共有し、あなたのことを信頼している人たちのことも知っているから、私はあなたを信頼する。

 

 タスクベースの極端な例はアメリカである。日本は関係ベース志向ではあるが、サウジアラビア、インド、中国などに比べるとタスクベースの傾向がある。

 日本には、(もはや死語の感があるが)飲みニケーションというものがある。要するに、相手との信頼を築くために酒を飲むのだ。タスクベース文化の人には全く理解できない。なぜなら、良い印象を与えたい人間の前で「酔う」なんていうリスクを犯す意味がわからないからである。

 

見解の相違

  •  対立型 見解の相違や議論はチームや組織にとってポジティブなものだと考えている。表立って対立するのは問題ないことであり、関係にネガティブな影響は与えない。
  •  対立回避型 見解の相違や議論はチームや組織にとってネガティブなものだと考えている。表立って対立するのは問題で、グループの調和が乱れたり、関係にネガティブな影響を与える。

 

 言うまでもなく、日本は対立回避型の文化に属する。逆にあるのがイスラエルで、アメリカはちょうど中間付近にいる。フランス、ドイツ、ロシアも対立型に属する。

 誰かに強く意見を否定された時、自分が否定されたと思うのが対立回避型文化であり、アイディアを否定されたのだと思うのが対立型である。そうしてみると、「間違いを恐れないで」というアドバイスはやや的を外していることになるかもしれない。自分自身を否定されることを恐れない人間はおらず、しかも間違いを指摘されると自分が否定されたように感じてしまうのだから。対立回避型文化にあっては、どうしても間違いを恐れてしまいがちなのかもしれない。

 

スケジューリング

  •  直線的な時間 プロジェクトは連続的なものとして捉えられ、ひとつの作業が終わったら次の作業へと進む。一度にひとつずつ。邪魔は入らない。重要なのは締め切りで、スケジュール通りに進むこと。柔軟性ではなく組織性や迅速さに価値が置かれる。
  •  柔軟な時間 プロジェクトは流動的なものとして捉えられ、場当たり的に作業を進める。様々なことが同時に進行し邪魔が入っても受け入れられる。大切なのは順応性であり、組織性よりも柔軟性に価値が置かれる。

 もちろん、日本は「直線的な時間」に属する。反対に中国は「柔軟な時間」文化である。アメリカも直線的だが、日本ほどではない。

 

 

 

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