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労働安全衛生法まとめ【社会保険労務士】令和元年度

 過去問のチェックポイントまとめです。

 

 安衛法は通達とか最判例がどうとかよりも、法律に書いてあることが素直に出てくる傾向にあります。

令和1年まとめ

(1)安全衛生管理体制 - 特定元方事業者

 素直な問題。

(2)譲渡等の制限・具体例

 数十項目も覚えられるわけがないので雰囲気で答える。

 自分の中で「意外」なものだけ覚えておく。

(3)健康診断

 

問題

 

総合問題(8問目)

甲社:本件建設工事の発注者
乙社:本件建設工事を甲社から請け負って当該建設工事現場で仕事をしている事業者。常時10人の労働者が現場作業に従事している。
丙社:乙社から工事の一部を請け負って当該建設工事現場で仕事をしているいわゆる一次下請事業者。常時30人の労働者が現場作業に従事している。
丁社:丙社から工事の一部を請け負って当該建設工事現場で仕事をしているいわゆる二次下請事業者。常時20人の労働者が現場作業に従事している

  1.  乙社は、特定元方事業者として統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせなければならない。
  2.  丙社及び丁社は、それぞれ安全衛生責任者を選任しなければならない。
  3.  丁社の労働者が、当該仕事に関し、労働安全衛生法に違反していると認めるときに、その是正のために元方事業者として必要な指示を行う義務は、丙社に課せられている。
  4.  乙社は、自社の労働者、丙社及び丁社の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、協議組織を設置しなければならないが、この協議組織には、乙社が直接契約を交わした丙社のみならず、丙社が契約を交わしている丁社も参加させなければならず、丙社及び丁社はこれに参加しなければならない。
  5.  乙社が足場を設置し、自社の労働者のほか丙社及び丁社の労働者にも使用させている場合において、例えば、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所に労働安全衛生規則で定める足場用墜落防止設備が設けられていなかった。この場合、乙社、丙社及び丁社は、それぞれ事業者として自社の労働者の労働災害を防止するための措置義務を負うほか、乙社は、丙社及び丁社の労働者の労働災害を防止するため、注文者としての措置義務も負う。

 

 見るのも鬱陶しいぐらい長いですが、問題自体は素直なものが出ています。

 

① ⇒ 〇

乙社は、特定元方事業者として統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせなければならない。

 

 まず特定元方事業者の確認です。

 にんじん株式会社がりんご会社に「ちょっと人手がいるんや~」と頼んだとき、にんじん株式会社は元方事業者と呼ばれます。にん(株)が建設業or造船業だったときは特定事業を行うものということで、特定元方事業者と呼ばれるわけですね。

 問題ではお野菜(株)がにんじん(株)に依頼したことになっています。そもそも元方事業者の安全衛生管理体制というのは、一つの現場に色んな組織のやつらがいるときに指揮系統をどうしますかという話なのです。現場が大事。問題でいうところの乙社=にん(株)はたしかに特定元方事業者です。

 

 次に乙社による統括安全衛生責任者の選任義務です。上記のように、そもそも現場がわちゃわちゃしないように定められている制度ですから、基本的にすべて選任義務があります。ただし、人数が少ない場合は免除されています。ここが(試験を受ける側としてはきわめて)面倒くさい。原則としては50人より少ないなら免除です! ただし、(1)ずい道建設、(2)橋梁建設、(3)圧気工法による、ときは30人になります。

 49人もいたら現場は十分わちゃわちゃすると思うのですが、法律上はそうなってます。そして今現場には60人いますので、当然選任義務があります。

 責任者ですので、当然元方安全衛生管理者の指揮もします。

 

 最後に元方安全衛生管理者です。

 これは建設業のみの取り決めです。そして統括安全衛生責任者のいるところにはこいつもいます。学業が資格要件になってます。

 

② ⇒ 〇

丙社及び丁社は、それぞれ安全衛生責任者を選任しなければならない。

 

 上との連絡係として人間を出しておく必要があります(それが、安全衛生責任者)。

 

③ ⇒ ✖

 丁社の労働者が、当該仕事に関し、労働安全衛生法に違反していると認めるときに、その是正のために元方事業者として必要な指示を行う義務は、丙社に課せられている。

 

 これがちょっとオッとなるところなのですが、

 にん(株)⇒クジラ(株)⇒リンゴ(株)⇒パン粉(株)

 と回って来た仕事なのに、パン粉(株)が悪さをしたら叱るのはにん(株)の役目です。今の場合、乙社ですね。まさに統括安全衛生責任者という感じがします。

 

④ ⇒ 〇

乙社は、自社の労働者、丙社及び丁社の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、協議組織を設置しなければならないが、この協議組織には、乙社が直接契約を交わした丙社のみならず、丙社が契約を交わしている丁社も参加させなければならず、丙社及び丁社はこれに参加しなければならない。

 

 ここは過去問ランドさんの解説が最高にわかりやすいです。

(1) 乙社は、建設業であるので、特定元方事業者に該当する(法15条1項)。
(2) 特定元方事業者の講ずべき措置に「協議組織の設置及び運営を行うこと」は含まれる(法30条1項)。
(3) 当該協議組織については、特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置しなければならない(則635条1項)。
(4) 関係請負人は、当該協議組織に参加しなければならない(則635条2項)。

令和1年 労働基準法/安衛法 問8 肢A - 特定元方事業者等の講ずべき措置(協議組織)

 

⑤ ⇒ 〇

乙社が足場を設置し、自社の労働者のほか丙社及び丁社の労働者にも使用させている場合において、例えば、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所に労働安全衛生規則で定める足場用墜落防止設備が設けられていなかった。この場合、乙社、丙社及び丁社は、それぞれ事業者として自社の労働者の労働災害を防止するための措置義務を負うほか、乙社は、丙社及び丁社の労働者の労働災害を防止するため、注文者としての措置義務も負う

 

  1.  事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。(21-2) ⇒ 赤字
  2.  特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物等を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者に使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。(31条) ⇒ 青字

 

譲渡等の制限

第42条 特定機械等以外の機械等で、別表第2に掲げるものその他危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。

 

 要するに別表第2とやらに書かれているかが大事な問題が次の第9問でした。16項目挙げられています。当たり前ですが、16項目も覚えていたらいくら時間があっても足りませんので、『厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない』とまで言われるほど重大なものを探します。

  1.  プレス機械又はシャーの安全装置
  2.  木材加工用丸のこ盤及びその反発予防装置又は歯の接触予防装置
  3.  保護帽
  4.  墜落制止用器具
  5.  天板の高さが1メートル以上の脚立

1と2は文句なく危険です。これには当然規格が必要でしょう。保護帽も墜落制止用器具も重要です。このうちでもっとも違和感があるのは5です。なのでこいつだけが例外ということになります。1メートルの高さから落下するのと、保護帽で頭がしっかり守られているのだったら後者のほうが大事ですね。16項目も覚えられるはずはないので大体こんな感じでいいです

 

 

健康診断

  1.  事業者は、常時使用する労働者に対し、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならないとされているが、その費用については、事業者が全額負担すべきことまでは求められていない。
  2.  事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、受診したすべての労働者の健康診断の結果を記録しておかなければならないが、健康診断の受診結果の通知は、何らかの異常所見が認められた労働者に対してのみ行えば足りる。
  3.  期間の定めのない労働契約により使用される短時間労働者に対する一般健康診断の実施義務は、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上の場合に課せられているが、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても実施することが望ましいとされている。
  4.  事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならないが、医師による健康診断を受けた後、6か月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目については、この限りでない。
  5.  産業医が選任されている事業場で法定の健康診断を行う場合は、産業医が自ら行うか、又は産業医が実施の管理者となって健診機関に委託しなければならない。

 

 法律系の資格試験って、まず問題文を読むのが鬱陶しいのですが、やっぱりひとつひとつ丁寧に潰していくしかありません。

 

① ⇒ ✖

事業者は、常時使用する労働者に対し、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならないとされているが、その費用については、事業者が全額負担すべきことまでは求められていない。

 

66条

1.事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行なわなければならない

2.事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。

 とされておりますが、カネについては書いてません。

 しかし通達では、「法66条の第1項から第4項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものである」としています。

 

② ⇒ ✖

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、受診したすべての労働者の健康診断の結果を記録しておかなければならないが、健康診断の受診結果の通知は、何らかの異常所見が認められた労働者に対してのみ行えば足りる。

 

法66条の3
 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第66条第1項から第4項まで及び第5項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない

法66条の6
 事業者は、第66条第1項から第4項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない

 

 異常所見を受けたものだけとはどこにも書いていない。

 

③ ⇒ 〇

期間の定めのない労働契約により使用される短時間労働者に対する一般健康診断の実施義務は、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上の場合に課せられているが、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても実施することが望ましいとされている。

 

 さて、66条1項に基づけば、事業者は「労働者に対して健康診断を行う義務」があります。しかも通達によれば66条診断は費用まで負担しなければならないのです。これを本当にすべての労働者に認めていたらちょっと事業者もキツいですよね。

 そこでこちらの通達。

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/var/rev0/0146/3601/2015520101629.pdf

 

 66条1項

 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行なわなければならない。

 施行規則43条

 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。……

 上記通達(概要)

 常時使用する労働者は次の①②を満たすもの!

 ① 契約期間ありにしてもなしにしても、更新などを含めて1年以上使用したり使用する予定であるもの

 ②  1 週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数の 4 分の 3 以上であること。ただし、3/4未満でも①にあてはまるなら1/2以上あれば、やってあげて

 

  というわけで問題を見直すと、太字部分はOKです。問題は後半部分、「おおむね2分の1以上である者に対しても実施することが望ましいとされている」かどうかですね。望ましいかどうかなんか知るかよ、と言いたいですが、実は通達にははっきりと「望ましい」と書かれています

 なんにでも根拠はあるもんだァ~。

 というか、根拠が示せない試験問題なんか出してはいけないのでバッチリ書いてます。

 

④ ⇒ ✖

事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならないが、医師による健康診断を受けた後、6か月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目については、この限りでない。

 

 これもさっきの「全労働者にやるんか?」という話の別パターンです。施行規則43条を見ましょう。

 

安衛法施行規則43条

 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。……

 

 というわけで、答えはバツになります。半年じゃなくて1/4年ですね。けっこう近めに健康診断受けてたらその部分については受けなくてもいいわけです。

 

⑤ ⇒ ✖

産業医が選任されている事業場で法定の健康診断を行う場合は、産業医が自ら行うか、又は産業医が実施の管理者となって健診機関に委託しなければならない。

 

 66条1項で健康診断をやらんかいと言われているわけですが、一体誰がやるんでしょうか。何度も見ている施行規則43条においては「医師」がやれと書いていましたね。そして産業医になるには「医師」でなければなりません。

 つまり問題なのは、産業医が実施の管理者となって健診機関に委託しなければならない」かどうかです。

 答えは、「そんな規定はない」です。規定がないことが根拠なのでたちが悪いですが、5問のなかにこれだけがこのタイプなので、正答は難しくないわけです。

 

 

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