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にんじんと読む「「食べる」が変わる 「食べる」を変える」🥕 第一章

第一章 食の変貌――栄養転換と均質化

 現代の食文化に嫌気がさしても、飢餓を恐れる時代に戻りたい人は恐らくいない。「一体この二つをどうやって調停すればいいのか?」――この問いに答えるためには、どこでバランスが崩れたのかを知る必要がある。

 私たちは食に対する神話を無数に持っている。

  •  「完璧に健康的な食生活」 日本人が魚と醤油(塩分)を好むように、世界中どこを見回してもいわゆる健康に良いものと健康に悪いものが混ざっており、栄養学者がすすめるような食生活など誰も送っていない。ガイドラインに近いような食事をしているのは、むしろ「豊かな国」ではなくアフリカ大陸の諸国である。
  •  「豊かな国でなければ健康的な食事ができない」 調査の結果、世界で最も良質な食生活を送っている国はアフリカ大陸に集中しており、しかも大半が発展度の低い国々だった。もちろん、アフリカには飢餓問題があるし、栄養も欠乏している。だが量こそ少ないものの、質ははるかに先進国を上回っている。

 ところが、アフリカにも「食物革命」の波は押し寄せてきており、どんどんとその質が悪くなってきている。まるで台本を忠実になぞるように。

 

ステージ1(人類の黎明期)

 多くが狩猟採集民で、野生の動植物・果実などの低脂肪食だった。食料の半分近くは植物であり、火はあったが鍋はまだない。感染症や事故死で平均寿命は非常に短い。成人まで生きられた者はたいてい、健康状態がよく、栄養欠乏はほとんどない。

ステージ2(農耕時代)

 主食が穀物に。土器や石臼を手に入れる。人口は増えたが、農業によって初めて食べ物に余剰が生まれた。この余剰が都市を生み、政治を生み、文明を生んだ。

 しかし農業によって口にする食べ物が以前より少なくなった。また、穀物に強く影響されることで飢饉が発生した。人類の体格は悪くなり、多くの欠乏症に苦しんだ。

ステージ3(飢饉の後退)

 農業技術の発展で、穀物への依存が減る。多くの料理が考案され、野菜や動物性たんぱく質を摂取できた。料理の幅の広がり、乾燥や保存、漬け物などでも新たな方法が生まれた。この結果として、死亡率もゆっくりと低下し、昔ながらの欠乏症は徐々に少なくなっていった。

ステージ4(現代)

 食の変化、加速。経済の土台は肉体労働から機械労働へ、田舎から都会へ。ひとりあたりの消費カロリーが減少した。食品加工と販売に革命が起こり、脂肪、肉、砂糖の量が増え、食物繊維が少なくなった。平均寿命は飛躍的に伸びたが、かつては存在しなかった食事関連の慢性病が速度を増しながら広がる。

 ステージ4はやがて、その問題を一気に解決するステージ5に突入するだろうか。多角的な農業政策、よりよい食育、不健康な食品や飲料へのきびしい規制などによって。これも少しずつ実現の兆しが見え始めているものの、今はまだよくわからない。私たち自身は、どういう風に食と向き合えばいいのだろう。