健康というものを考えるにあたり、もちろん「健康とは何か」が問題となる。しかし言葉というものは時代や文化において相対的なものであり、極端な立場においてはまったく恣意的なものとなりうる。それらすべての健康に共通なものを見出すようなことは望むべくもない。しかし異なる時代状況における健康観の中にも、私たちが問題としているような健康を見出すことができるのもまた事実である。そこでそのような私たちの共通了解をコミュニケーションのために言語化したものを「定義」と呼ぶことにしよう。
健康とはなにか
健康の定義
WHO憲章*1によれば、『健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。』とされている。この意義は、健康というものが単に肉体的なものであるに留まらず、精神的および社会的なものであることを示している点にあると考えられる。
健康というものについての理論が容認されるには、その理論が少なくとも次の事項を説明するようなものでなければならないだろう。
- 〈健康概念〉(健康、活力、病、損傷、欠損、能力欠如、障害などなど)相互の論理的な関係
- 健康概念とその他の主要な人間性に関わる概念との論理的関係
- 人類の健康と他の生物の健康との関係
- 心の健康と身体の健康との関係
- 健康と環境との関係
- 健康概念が科学のなかで占める位置
私たちとしては、WHOにおける健康という概念が単に肉体的でないものと示したことを引き継ぐ。そしてほとんど幸福と一致しかけているそれを、幸福と区別するためにも、健康を「当人の最重要目標を成就する能力」を意味するものとして提起することにしたい。
イデオロギーとしての健康:健康主義
健康というものを諸個人の価値ではなく、しかじかの状態だと外的に決定することを認めると、なにが正しい行動なのかを決定づけるイデオロギーとなる。
健康主義healthismとは、健康の追求が国家のイデオロギーの一部となることである。これは政治家にとっても、いろいろの市場にとっても、大変都合がよい。というのも、この健康主義を理論的に下支えしている生活習慣主義lifestylism「不健康は、その病人自身の無責任な生活習慣によって、自ら招いた」とする考え方が、なにが正しい行動なのかを定義づける権威者を求め、その正しい行動をみんなの義務に置き換えるべきだと人々に信じさせるからである。
イヴァン・イリッチは専門的自由業としての医療と、支配的専門性としての医学をはっきり区別していた。専門的自由業としての医療は、ただ隣人の困りごとを軽くしてやるために使われる。一方、支配的医学は健康な人々を監督したがる。文明社会においてはタバコ・アルコール・悪い食事が病因なので、「わるい個人」がやりかたを治せないならそいつのために専門家がチームを組んで導いてやらないといけないと考えている。しかし実のところ、健康不良の主な原因は貧困だという主張もあるのだが。しかも、第三世界において死亡率を下げたのは医学の発展ではなく、環境の改善だった。
病気は昔からあった。だからそれに寄りそうものとして医者もいた。とはいえ、彼らの身分はあまり高くはなかった。彼等を賛美する文章よりも、非難する文章の方が多い。彼等によって施された治療は大抵の場合、悪い結果につながった。だというのに、たまたま患者が良くなると、プラセボによるものにも関わらず自分たちの手柄を喜んでいた。そして時代は下り、15,6世紀になると、医学は金銭的利益と政治的意図に支配され始めた。
だれもが必要としている健康は売りやすい。そして健康を追うことは企業の利益にもつながる。ジョギングする人は、たとえば夜間走るために反射するベストを購入する潜在的消費者であり、その他さまざまな市場に関係する。健康に関心のない人に聞かせるセールストークは健康であることとそう感じることの違いを言い立てることであり、そこでセールスマンはちょっとした科学的根拠を添えることができる。
一見、予防することは治療に勝るように思える。しかしやろうと思うと検査の対象は限りなく広がり、人々を安心させることはない。まさに《我々が正常なのは、何かが異常だという結果が出るまで徹底的に検査をしていないからにすぎない》のだ。しかし検査結果は時に間違い、さらに必要のない検査を要求したり、時には必要のない手術がとりおこなわれたりする。ところでマンモグラフィによって利益を受けた女性は年間65000人のうち1人だった。健康に不安を感じている人の割合は年々増え続けており、健康はビッグビジネスとなっている。
さらに今、健康はその権力を拡大させている。つまり健康は「単に病気でないこと」以上のものとなっているのである。健やかであることだけでは足りない。WHOという国際機関でさえ、健康を幅広く再定義した。
人はたいてい病死する。病気は生活習慣からきている。つまり人は自分の過ちによって死ぬ。「早すぎる死」というのはいつも「予防できた死」を意味するので、社会的に受け入れられる死というのはいつも死に物狂いの治療を受けたときである。このおかげで、多くのがん患者が死に至るまで死と戦わされる。
健康主義者は死をタブーとする。健康主義者は死が生活習慣によって免除されると信じ切っている。しかし残念ながら人は死ぬ。モンテーニュにとって転落死も溺死も病死も老衰も同じく、すべてが自然な死だった。
多くの人が死を死ぬほど恐れて生きている。
死を恐れて生きるとは生きることを恐れることだ。
バーナード・ショーは自身の健康哲学をこうまとめている。
いつまでも生きようとするな。失敗にするに決まっている。
諸君の健康を擦り切れてしまうまで使い果たせ。それが健康の意義なのだ。持っている者を死ぬまでに使い切ってしまえ。そして生き残るな。
五体満足に生まれて健やかに育つことに最大の注意を払え。
生きづらい「健康で、清潔で、不道徳の少ない世界」
健康で、清潔で、不道徳の少ない秩序を実現させてきたというのに、私たちは「あの頃」よりも幸福になれたようには思えない。なぜだろう。
歩行者は右側と書いてあれば、例外もいるがたいていの人は右側を歩こうとする。逆に言えば、そうした秩序があるところではその「当たり前」からはみ出して生きるのは難しい。清潔さや美しさについても同じことである。こうした秩序・清潔さ・美しさはそれに適応した人々には快適さしかもたらさない。だが世の中には無理してこれに合わせようとする人がおり、そうできなかったときに罪悪感や劣等感を感じる。
そういえばいまどきの子どもたちは行儀が良い。統計的にも未成年者の逮捕・補導件数は減っている。また彼らは身ぎれいな格好をしており、危険な場所で危険な遊びになど出かけない。ところがその一方で、私たちはいじめや発達障害、虐待などはその定義さえ変わるなど、たいへんな注目を浴びている。
街が安全で清潔で快適になっていくのと並行して、また、街で見かける子どもが秩序に適合していくにつれて、そのような子どもを育てるプロセスに医療や福祉のメスが入れられるようになり、と同時に、子どもの心理発達にまつわる諸問題が多くピックアップされるようになり、医療や福祉によるサポートの対象とみなされるようになったのである。
当然のことだが、虐待やネグレクトなどが察知されサポートが行き届くようになったのは良いことである。しかしそのぶん、親の資質が厳しく問われるようになった。子育ては街の「快適さ」に適合するハードルを超えなければならず、私たち自身もよその親に対してそれを求めている。はみ出した子どもは軌道修正されなければならない存在となり、医療・福祉、ときには司法までもが出てくる。
さて、子ども、子育てがこうなら社会人もそうである。サービスの質のあたりまえが上がるにつれ、要求はどんどん上がっていく。従業員は特別に高い給与をもらっているわけでもないのに、テキパキ動き、笑顔を絶やさない。たいへん礼儀正しく、若い人は権威をかさに威張り散らしたりしないし、コミュニケーション能力が高い。ところが本当はコミュ力が高いひとばかりではないのは周知の事実である。彼等はどんどん活動の場は制限され、目につきづらい場所へ追いやられているのだ。昔はもっと非効率的で、コミュ力も不ぞろいだった。就活でなによりもまずコミュ力を重視される現代よりも、ずっと優しい社会だったように思える。
さて、社会が快適になるにつれ期待される能力もまたハイクオリティ化していく。そして要求水準に満たない人はどんどん隅に追いやられ、活躍の場を失う。だがわたしたちには救済があるのではないか。たとえば医療や福祉が社会復帰や就労を手助けしてくれる。
- ところが当然のように、医療や福祉が「さあ、行って」と指さすのは、要求水準の高いあの社会である。彼等が為しているサポートはたいへんに重要なものだが、彼らの仕事はこの快適な社会のなかへの再配置である。
- そしてもうひとつ。医療や福祉の救済対象は「弱者」「マイノリティ」と認識されているものである。それ以外のものは助けてはくれない。たとえば境界知能(IQ70~84)の人々は援助の対象となっていない。統計的にいうと、全人口の一割以上が該当する。全員対象にしたらサポートする側が潰れてしまう。それに、境界知能の人々は高学歴や高収入にアクセスしにくく、リボ払い・廃課金など消費においても食い物にされやすい。そして食い物になったのは「お前がちゃんとしてないからだ」と言われる。
彼等の存在は目立ちにくい。生きづらさをディスカッションや運動を通じて自己主張できないからだ。そして自己主張がないとサポートの対象にはならず、「生きづらさはない」とされてしまう。
医療や福祉が救済をとりなしているのだから「健康」に対しては徹底している。人々は医療の啓発運動によって健康リスクに気を払うようになった。私たちの社会の寿命はどんどん延びている。しかし、こうも言えないだろうか。
私たちはかつてないほど健康で長寿になったと同時に、健康で長寿にならなければならなくなったのではないか。
いま、健康リスクにいい加減な態度をとることは医師の指導の対象である。健康に気遣うことは義務であり、長寿は望ましいものである。『どうしても生きなければならない目的があって健康長寿を目指すのはではなく、健康長寿を当然とみなし老後資金を蓄えるために身を粉にして働く現代人の生きざまは、過去の人々には不可解なものと映るだろう』(健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて)
carrot-lanthanum0812.hatenablog.com
健康管理技術
これまでにんじんブログに投稿してきたものをまとめたものです。
風邪の予防
体調管理の最も基本となるのが、風邪の予防である。
風邪とは、呼吸器感染症のうち急性上気道感染症のひとつ。さまざまなウイルスを原因として鼻汁や鼻閉などの上気道炎症状をきたし、自然軽快する症候群のことである。
上気道とは喉から鼻までのことで、ここがウイルスによって炎症を起こし喉の痛みや鼻水や鼻づまりなどを起こすのが上気道炎症状。これらは3~7日の間に自然に消えてしまうことが普通である。風邪でも発熱が見られるが、38℃以上は超えないし、3日以上続くことはほとんどない。しかし上気道の炎症が気管支まで広がると「気管支炎」に。そのまま肺まで達すると「肺炎」になって、ひどい病気を引き起こすこともあるので注意を要する。
実は風邪というのは軽いものも含めて、2~4回発症することで知られている。風邪とは自覚していないちょっとした体調不良も含めればこれより多くなるのだとすると、実に二、三か月のうちに一度は風邪をひいていることになる。上記のように風邪は短期間に自然軽快するが、原因となる細菌やウイルスが上気道よりも奥に炎症を広げると、ひどい病気に発展しかねない。
〈風邪の予防〉
風邪の原因はウイルス(9割程度)と細菌(残り1割)である。これらは①接触感染=ウイルスのついた手で口や鼻を触る、②飛沫感染=感染者のウイルスがくしゃみなどで排出され、それを吸い込むによって人体に影響を及ぼす。空気感染もあるが、よほど感染力の強いウイルスでなければ起こらない。
【手洗いの効能】
- 手の汚れをとり、接触感染をふせぐためです。
- 気持ちを切り替える意味で、メンタルにも影響があります。
カレーの看板を見た後はカレーを注文しやすい、などといった「前の情報が後に影響を与える」ことをプライミング効果といいますが、手洗いはこのプライミング効果をストンとシャットアウトできるのです。前の影響を受けづらくなる――つまり、「気持ちを切り替えられる」というわけです。
手洗い行為は目下の対象をいったん心理的に分離させる機能があることが指摘されることになった。つまりそれまで専心していたものを手を洗うことで客観的に見ることができるようになるのだ。
(引用元リンク切れ)
【うがいの効能】
- 口腔内の乾燥を防ぐ(ガラガラうがい)
- 口腔内にあるウイルスや細菌を流しとる(ガラガラうがい)
- 歯周病予防になる(グチュグチュうがい)
【マスクの効能】
風邪を予防するためにはマスクの活用がよい。
マスクの機能は
- 飛沫防止
- 喉の乾燥防止
- 顔を触れなくする
マスクがない場合など不意にくしゃみや咳をするときは手で抑えずに服の袖などで抑えると接触感染の予防になる。また手洗いや手を拭くのにペーパータオルなどの使用もよい。石鹸はウイルスを洗い流すが、アルコール消毒剤は手のウイルスを殺すことを目的としている。
【その他事実】
- 「風邪の予防に最も効果があるのはうがい薬ではなく、水うがい」
- 「湯冷めしないようにすれば入浴してもいい」
- 「風邪をひいたら軽い運動をしたほうが治りが早い」
- 「抗生物質は細菌用なのでウイルスには意味がない」
ところがどれだけ予防を徹底しても100%風邪をひかないことは不可能である。風邪の予防は風邪をひかないためではなく、回数を減らすことにある。
健康的な生活習慣について
【朝起きてから】
- 排尿
- 歯を磨く
歯に汚れが溜まるのは唾液の分泌が少なくなる夜のあいだであるから、たとえ何も食べていない朝食前であっても、歯を磨くのが大事。
口の中をきれいにする方法には今のところ三つあります。
- うがい
- ブラッシング(歯みがき)
- デンタルフロス(糸)
にんじんとしては「うがい」が基本かなと思っております。何故かというと、水以外の道具がいらず、かつ全体にわたって掃除できるからです。思いっきり口の中で水をかき回して吐いてみると、たまになんか出ます。
そしてやはり代表的な歯のお掃除道具としては歯ブラシです。そして忘れてはいけないのがフロス。歯の間にはたくさんの歯垢が詰まっております。
ブラッシングしたり、フロスを使ったりするのはプラーク(歯垢)を取り除くためですが、歯垢は寝ている間に溜まります。それというのも、寝ている間は日中よりも唾液の分泌が少なく、適度に乾いて雑菌が繁殖しやすくなっているからだそうです。
そうだとするとブラッシングするべき時間帯というのは自ずから「朝」「夜」ということになります。「朝」は溜まった汚れを掃除するため、「夜」は汚れ生成の材料を取り除くため。ブラッシングは歯を少しずつ削っている。強くやりすぎると歯肉が傷つく。適切なタイミングで適切にやる必要があります。朝は特に熱心にやりましょう。また食後すぐの歯みがきは歯が削れやすくなっているらしいです。爪も風呂入った後はちょっとナヨナヨしてますが、あれと同じことだそうで。
簡単な清掃として「うがい」「フロス」があります。フロスは歯の間のものを取り出し、うがいで吐き出すのです。口の中にものが残っていると単純に「臭い」原因にもなります。昼間は歯みがきはほどほどにして、うがいとフロスをやりましょう。
- 「朝」 起きたら歯みがき。うがい。食べたらフロス、うがい。
- 「昼」 食べたらフロス、うがい。
- 「夜」 食べたらフロス、うがい。寝る前に歯みがき。
ということになりそうです。
- まず水を飲む
寝ているあいだになくなったコップ一杯分の水分を補給する。 そのコップ一杯分の水分のおかげで、朝は一日のなかで最も血液の濃度が高いため、脳梗塞などは起床して数時間以内に起こりやすい。
また、起床後すぐの水は「胃結腸反射」を誘発する。これは胃腸が動き、排便を誘発するもので、腸の掃除にもなる。腸は栄養を血液に取り込むための器官であり、ここの状態が血液の、ひいては全身の体調を左右する。
- 健康セルフチェック
調べる項目はいくつかある。「体重」「体温」「血圧」「脈拍」
余裕がある場合は「血中酸素濃度」もチェックする。
平熱を知る:
「身体の部位」「測定時間帯」「年齢」によって変化するので、このそれぞれをできる限り固定して継続することで良いデータを得ることができます。時間を決めて測定しましょう。体調がよいと感じるときの体温の平均値のことを平熱と呼びます。ヒトの平熱は外気温に関係なく保たれるようになっています(恒温動物)。幼児は熱発散がうまくできず発熱しがちで、高齢者は衰えて低くなりがちです。
体調不良チェック:
平熱よりプラスマイナス0.5℃の差がある場合は要注意。プラスマイナス1℃の差がある場合は体調不良の可能性がありますし、実際に感じているかもしれません。
体重を知る:
BMIという数値が算出できます。身長1.〇mを二乗して体重を割ってやります。この値が18.5~25のあいだに収まっているなら適正体重とされており、これを下回ったり上回ったりすると問題があります。いずれにしても生活習慣病のリスクが増大します。この値は年齢において若干変動があり、50~69歳ならBMIは20~25・それ以上の年齢ならBMIは21.5~25が適正となります。
体調不良チェック:
「前日の体重」との比較。2%以上の変化があれば要注意、5%で脱水症状が出ています。水分を補給しましょう。
脈拍を知る:
脈拍も時間ごとに測って平均値を探します。
健康な成人の場合、一分間に70回。おおよそ50~100回の間に収まります。脈の種類は28ほどあるそうで、研究が必要です。
体調不良チェック:
平均から5拍の変化で要注意、10拍で体調不良の可能性があります。疲労がたまっていますのでその日の運動は避けたほうがいいでしょう。
血圧を知る:
「血中酸素濃度」を知る:
体の隅々まで酸素が行き渡っているかどうかです。パルスオキシメーターという器具を使います。過呼吸になったり過換気になったり、スポーツをしたことがなくても「ヒューッヒューッな方」は何度も目にしたことがあるかもしれません。
年齢とともに下がっていきますが95%以上で正常、それ以下なら健康的に問題があります。普段の状態を見つつ判断しましょう。たとえばお年寄りになると95%ぐらいが標準になったりします。
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- ハンドグリップ法を実践し、血圧を下げる
高血圧は年齢とともに進行する。「最大握力の30%の力で2分握り1分休む」を左右2回ずつ行う。握りしめたときに血管が圧迫され血流が低下し、2分後、離したときに一酸化窒素が放出され血管がリラックスし血圧が下がる。あまりにも血圧が高い場合(180-110以上)は医師に相談が必要。
- あいうべ体操
あいうべ体操とは、口呼吸を鼻呼吸に改善していく簡単な口の体操です。いつでもどこでも誰でもできる「あいうべ体操」は食後に10回、一日30回を目安に地道に続けると、舌力がついて自然を口を閉じることができるようになります。口呼吸の改善は、あらゆる病気の原因治療につながります。あいうべ体操をしっかり継続している人は、自然に鼻で呼吸ができるようになり、アレルギー性疾患等の症状が改善していくことがあります。
あいうべ体操のやり方は、次の4つの動作を順にくり返します。声は出しても出さなくてもかまいません。
(1)「あー」と口を大きく開く
(2)「いー」と口を大きく横に広げる
(3)「うー」と口を強く前に突き出す
(4)「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす
(1)~(4)を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けます
- 朝食前に、ラジオ体操を行う
https://www.youtube.com/watch?v=feSVtC1BSeQ(ラジオ体操第一)
https://www.youtube.com/watch?v=dzQIMo-Xvyg(ラジオ体操第二)
- 朝ごはん
- 環境調整(身の回りの片づけ、一日の予定等。三十分程度)
- 筋力トレーニング
加齢によって失われる筋肉を鍛える。以下がその筋肉と対応する筋トレだが、「スクワット」「腕立て伏せ」「プランク」「レッグレイズ(足を挙げたり下げたり。腹筋みたいなもの)」のよく知られた四つを行うとわかりやすい。
無理しない程度に、少しずつ回数を増やして行けばよい。
加齢で失われる筋肉
【やらないこと】
- 起床後、朝食前の運動はNG。朝は一日の中で最も血糖値が低く、運動によって糖が細胞の中に取り込まれることでさらに血糖値が下がってしまう。その結果、低血糖となり、これを一日のはじまりにしてしまうと、一日中低い水準が続き、低血糖の症状に悩まされるハメになる。
生活習慣病とは
成人病と呼ばれていた病気群が「生活習慣病」と呼び直された背景には、生活習慣に根差す病気が急速に増え始めてきたことがある(生活習慣に根差さない病気があるのかという疑問はあるが)。短期間に遺伝子が変化したことは考えられないため、環境要因による変化が病気の増加を助けてきたと思われる。たとえば食生活の変化、運動不足、ストレス。逆に、予防において重要なのは「食事」「運動」「睡眠」という生活習慣の構成要素である。
生活習慣病とは、《体質を決める遺伝的素因に加えて、運動不足や塩分・糖分・脂肪過多などの食生活、喫煙・飲酒など、ライフスタイル(生活様式)による環境要因が発病の原因と病気の進行に重要である》ような病気の総称である。
生活習慣病は初期においてはほとんど自覚症状がないことから「サイレントキラー」と呼ばれ、定期的な検診がすすめられるのはそのためである。生活習慣の改善により発病頻度を抑えることができる。
病気には稀少疾患rare desease(患者が1~5万人以下)と、誰でもかかる可能性のある病気common disease(患者が100万人単位)があるが、生活習慣病に属する多くの病気はcommon diseaseにあたる。たとえば高血圧は老年人口の1/3、糖尿病は全人口の10%以上の罹患率を持つ。また、日本の三大死因の二つ、心臓病と脳卒中は生活習慣病の末路である。
食事について
健康に良い食事として有名なのが「地中海食」(イタリア料理、スペイン料理、ギリシャ料理などの地中海沿岸諸国の料理の総称)である。魚介類・野菜・豆類・果物・シリアルが多く、肉や乳製品は少なめ、オリーブオイルを多く摂取できる。
- 和食は世界的にも評価されている料理でありユネスコ無形文開催にも登録されたものであるが、栄養学的妥当性ではなく自然や四季と調和した独自性ある食文化という面が評価されている。
生活習慣病の対策で推奨される食事パターン「適度の相対的高脂質高タンパク質低糖質食」Moderate Diet(MD食)というものがある。総摂取カロリーに対して脂質30~45%、糖質30~45%、たんぱく質15~25%を摂取するものである。総摂取カロリーを定めるのは極めて難しいことだが、厚生労働省が5年ごとに出しているエネルギー必要量をもとにすれば、身体活動レベルと性別と年齢に応じて必要量が把握できる。身体活動レベルが普通の30~49歳の男性は2650kcalである。
MD食は一見、キロカロリーなど言われて実現が面倒そうだが、①魚介類と野菜、②肉類少ない、③オリーブオイルや種実を豊富に、すればよい。ただし野菜とはいってもジャガイモやトウモロコシは糖質が多く、注意が必要となって来る。
- ところで日本においては主食が米であるという認識があるが、そもそも米が十分に栽培され、十分に食べられるようになったのは戦後であり、古来から米が食されてきたわけではない。ふつう、雑穀を混ぜ、米は少量だった。
- 栄養的な観点から、ヴィーガンやベジタリアンとなるとやや行き過ぎだが、肉類や乳製品を避ける傾向はMD食の上記三つの条件にとっては非常に良い。
- 人類にとって糖質は必須栄養素ではない。実は糖を摂取しなくても脂肪やたんぱく質を使って肝臓が糖を生成できることがわかっている。絶食しても思考力や記憶力に障害が起こらないようになっているわけだ。
では次は具体的にレシピを見ていこう。
【朝食の例】
- ココナッツオイルコーヒー(コーヒーにココナッツオイルを大匙1~2杯、バターを入れて泡立てる)。これだけでも実は十分なのだが、ゆで卵や野菜サラダ、前夜の味噌汁やスープを温めて飲めればなおよい。味噌汁にココナッツオイルを少々混ぜると豚汁のような味わいになる。焼き魚がくわわればたんぱく質も確保できる。
【昼食の例】
- エッグサラダorチキンサラダorサーモンサラダ
- 焼き魚、ゆで卵か卵焼き、野菜スープ
- コーヒー+ココナッツオイル大匙2杯
【夕食の例】
- 魚の一品
- 肉野菜炒め(オリーブオイルorココナッツオイル)
- 温野菜、豆腐
- ご飯3口
- 果物
【どうしてもお腹がすいたときのため】
納豆にココナッツオイルを1杯入れる*2
<にんじんメモ>
気にすべき栄養は「たんぱく質」「脂質」「糖質」であり、計算をしながら料理を設計すればもっと多様なメニューができそう。
運動について
有酸素運動=持久運動をする習慣は次の医学的効果をもたらす。
これによって次の疾患の予防になる。
われわれはアスリートではない。このため、運動は無理なく、誰の指導も必要とせず、いつでも行えるようなものがよい。そのため「ウォーキング」がもっとも推奨される。ただし、適切に行わなければ運動に伴う障害に悩まされる。
健康増進のための運動は息を切らせたり、顔をしかめ面にしてやるような強度のものではない。一日30分~1時間で、分割してもよいが一回につき10分以上運動することは求められる。時間帯に決まりはないが、起床後すぐは血糖値が低く、運動することによって低血糖の状態になる場合があるため、食後三十分から一時間ほどしてから出かけるのがよい。
ストレスについて
医学的にストレスとは「なんらかの刺激が加えられた結果、身体が示すゆがみや変調」と定義される。なんらかの刺激、つまり原因となるものはストレスではなく、ストレッサーと呼ばれ次の四つに分類される。
- 物理的(温度、騒音、放射線など)
- 化学的(酸素欠乏、過剰、薬害など)
- 生物的(ウイルスなど)
- 情動的
ストレッサーは自律神経系に影響を及ぼす。とはいえ、ストレス自体は活動の刺激にもなる。問題となるのは短期に過ぎ去っていくストレスではなく、慢性的なストレスである。
慢性的になりやすい情動的ストレッサーに対応するため、以下の書籍がおすすめ。この記事を書くために参考にしているQ&A生活習慣病の科学Neo (京都大学健康市民講座)は自己分析するようにすすめているが、にんじんが思うに、たぶん意味がない。困った性格は「変えたくない」「変えずにいたい」ような効能をもっている可能性がある。いかにうまくテキトーでいるかが、ストレスに対抗するための鍵となる。
その他
【姿勢をよくする】
- 椅子に深く腰掛ける
- 背筋を伸ばす
- やや体を後ろに傾ける
【首の痛み】
あべこべ体操がもっともよく効きます。
【更年期障害と老化】
「老化」とは、生殖器を区切りとして、その後の後生殖器を老年期と定義し、この時期に起こるさまざまな衰退現象、です。老化には男女でどのような差があるのでしょうか。
女性の場合、生殖期にはエストロゲンに助けられますが、老年期に入るとエストロゲン欠落症に悩まされるようになり、男性の場合、生殖期にはテストステロンに駆られながら働きますが、その間に生活習慣病を発症し、老年期にそのつけを支払うかのように早死にします。エストロゲンやテストステロンといった「性ステロイドホルモン」は人間の一生で重要な役割を果たすのです。女性にしか認められてこなかった更年期障害はエストロゲンの欠乏によって起こるものですが、実は男性にも50歳頃から性ホルモンの欠乏による男性更年期障害が起こることが知られています。
- 更年期障害は卵巣の機能停止により始まりますが、卵巣の機能停止の主たる原因は原始卵胞の急激な現象です。原始卵胞とは、卵子になる予定の卵母細胞を包んで守る体細胞の集まりです。なぜ原始卵胞が急激に減少するかというと、「減少」については原始卵胞が新しくは作られないこと、「急激」については遺伝的にプログラムされていることが原因です。
- 男性更年期障害がわかりづらいのは、生殖機能の終わりを示すわかりやすい現象がないからです。しかし実のところ、精巣の容積の縮小が見られます。これにより精子をつくる能力も落ちていくのです。機能低下の原因として挙げられているのがテストステロンの減少です。
更年期障害は老年期のはじまりを告げる合図です。更年期症状は「今は我慢」すればいいということではありません。老年期に起こるさまざまな変化は性ホルモンの欠乏にも起因するのです。
*1:世界保健機関憲章(◆昭和26年06月26日条約第1号)
*2:どんだけココナッツオイル好きやねん、というメニューなのがやや気になる