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「ナラトロジー入門」①

 物語に「何が書かれているのか」という解釈ではなく、「どのように書かれているのか」という形式を問題にしたものを物語論(ナラトロジー)という。

 物語の背後にある設計図について二十世紀に入って*1最初に分析したのがウラジミール・プロップ『昔話の形態学』だった。昔話はバリエーションがいろいろあるが、共通するものもある。それは「機能」と呼ばれる物語の筋の展開に直接影響を及ぼす人物の行為のことであり、合計31個・飛ばすことはあれど順番通りに起きる―――たとえば機能①「留守」だれかが家を留守にする。機能②「禁止」あれやっちゃダメと言われる。機能③「違反」絶対に破られる。

(メモ)

プロップの視点は人物の行為のみに焦点をあてており、そこに登場するキャラはそれをするためだけに、あるいはそれをし合うためだけに存在している。人物のキャラクター性はあまり問題にならず、心理を重視して描かれることもない。しかし役割を重視するプロップの分析は多くの物語に適用してみせることができるだろう。たとえば週刊少年ジャンプで典型的な物語は①自分より強い奴②援助する者登場③試練④クリア⑤倒すというパターンを繰り返す。

 ロラン・バルト『物語の構造分析序説』においては「機能」にくわえて「指標」が区別される。指標は物語の筋とは関係しないがキャラクター性や雰囲気、その他もろもろの状況を伝える。たとえば登場人物が誰かを殺害するのは物語におけるひとつの機能だが、その際の手ごたえなど物語の筋に一切関係しないが語られることがあるだろう。近現代の小説は昨日よりもむしろ指標を重視しているといえる。物語は機能とそれをまとめたシークエンスと、細かな指標の集合代なのである。

 バルトも登場人物をその行為から分析することを支持しているが、同時に、違う角度での分析も提案している。つまり物語を語っているのだれかという「物語行為」という視点である。

 

 

 

*1:古代ギリシャではアリストテレスが悲劇について分析している