この本を手に取ったのは株式を学ぶためだから、「債権」に関する2,3章は割愛して第四章に向かうことにする。
第四章 株式入門
①
株式会社のいいところは、集めた金以上の責任を負わなくてもいいところである。これを逆に言うと、株主は出した金以上の損失を負わない(有限責任)。言い換えると、資本金というのは「返さなくてもいいカネ」なのである。
会社を立ち上げようと思えば、まず資本金を決める。会社法が改正されることによって、1円でも設立できるようになった。もちろん登録免許税など色々あるので1円で設立することなど不可能なので、これは「資本金が1円」という意味である。ところが先の段落の話を思い出すと、これはまぁほとんどありえない。株式会社の財布には「返さなくていいカネ」と「返すカネ」しかない。前者を純資産、後者を負債という。つまり借金である。ところが、口座を作ったり借り入れをしたりするのも、銀行などで最低額を設定されていることがあるため、マジで1円から始めるのは難しい。
というわけで一般的には、3か月ぐらい会社を回せるだけの資本金を用意するのがふつうである。資本金を決めたあなたは、次に1株の値段を決める(発行価額)。発行価額もいくらでも構わないが、出資の最低単位なので高すぎると人が来づらいし、かといって安すぎると発行する株が多くなって管理が大変になる。株式を有する人には次の三つの権利がある。
- 利益配当請求権(配当)
- 残余財産分配請求権(解散したときの残余財産の受取。一株当たりの純資産BPSという指標が参考になる)
- 議決権(議案への投票権。ただし一株からではなく、一単元という一まとまりから)。
株主の目的は金儲けであり、配当狙い(インカムゲイン)と差益狙い(キャピタルゲイン)がいる。やはり「配当」が基本になるが、この配当は会社の利益によって上下するので””なんか良さそう””な株を欲しがる人が出てくる。逆に””だめそう””な株は売られる。買うときは普通、1円でも高くないと譲ってくれないし、売るときは普通、1円でも安くないと譲ってくれないので、この””なんかよさそう””””だめそう””という曖昧な感じが、株の値段を変動させる。
株式は金融商品取引所においてやりとりされる。取引所の会員である証券会社の顧客であるあなたは次のようなプロセスを踏んで「売買注文」することになる。
- あなたが証券会社に注文を伝える
- 証券会社が取引所にその注文を伝える
- 取引所は条件に合う注文とマッチングさせる(約定)。厳密にいうと、あなたと相手を直接結びつけているのではなく、「日本証券クリアリング機構」を媒介して手を結んでいる。これは発注者がカネを払えないというリスクをお互いにカバーするための仕組みである(カウンターパーティリスク)。
- 約定日を含めて3営業日後、株式と代金の引き渡しが行われる。
もし、9月末の配当に間に合わせたければ少し急がなければならない。株主としての権利は株主名簿に名前がないと駄目だからだ。
たとえばエディオンの「権利確定日」は9月30日にある。つまりこれよりも2営業日前に約定が済んでいないと、金はもらえない。このため、9月28日を「権利付き最終日」、その翌日を「権利落ち日」と呼ぶ。
さて、約定させるためには取引所が開いていなければ話にならない。9時~11時半までを前場(ゼンバ)、12時半から15時までを後場(ゴバ)という。注文方法には「成行注文」=「いくらでもいいから早く買わせろ」と、「指値注文」=「この値段じゃなきゃヤダ」の二種類がある。前者は約定が早いが値段までは保証されない、後者はその値段でやりとりしてくれるが時間がかかる場合がある。