図書館概論
「図書館」とはなんであるか。
図書館とは、「図書」を収容する「館」のことである。一方、英語でLibraryとは、ラテン語のLiber=樹皮を語源に持ち、それが書写の材料とされたことから書物を意味するようになった。そこに場所を指示する"-ry"がついてLibraryと成った。さらに、ギリシャ人は書物を意味するBiblio(ビブリオ)に場所を指示する"-thek"を合わせてBibliotheck=図書館と成った。
図書館の類似語に「文庫」があるが、これは個人の私的コレクションを指す場合が多く、単に図書館といった場合は収容された図書が社会的な共有資源として扱われるという違いがある。
アメリカ図書館協会(ALA)は図書館を次のように定義している。
サービス対象集団に、物としての、また書誌的および知的なアクセスを提供するために組織化された資料のコレクションで、当該集団の情報ニーズに関するサービスとプログラムを提供するよう訓練されたスタッフをもっているもの。
現在、図書館あるいは図書の概念は「場所」や「物」から離れ始めている。仮想図書館、電子図書館、電子書籍など、場所に囚われない概念が生まれているからである。故に図書館とは上述の定義のようにひとまずは『コレクション』であって、かつ、『情報ニーズに関するサービスとプログラムを提供する』という機能をもつ。
<図書館の要素>
- 図書館の本体=組織化された資料のコレクション
- 図書館の機能=情報ニーズに関するサービスとプログラムの提供
資料! サービス対象集団! 訓練されたスタッフ!
定義に含まれる「訓練されたスタッフ」とは、図書を提供するためだけに存在するものではなく、図書館の機能の一切を果たす。この定義はそうしたスタッフが適正数存在していることが図書館の要件であることを示している。
図書館の分類
現在では主に「設置者」によって分類されている。
図書館ネットワーク
図書館はその機能を十全に果たすため、図書館同士で協力する。図書館ネットワークはつぎのように定義されている。:
複数の図書館が、資料収集、提供、保存、目録作業といった図書館業務において、共通の目的のもとに相互依存関係を持ち結び付いた状態、あるいは結び付いてできた組織。図書館協力の同義語として用いられることも多いが、コンピュータや通信と言った技術的要素が図書館間の結び付きの基盤として存在する。
図書の情報を記録したデータベースを主に、各図書館は連携をとる。こうした協力関係は図書館同士のみならず、類縁機関とも結ぶことがあるのを注意しておこう。
⇩ これに沿ってまとめてます。
レファレンスサービス
レファレンスサービスとは
レファレンスサービスとは、図書館の所蔵資料の中に含まれている知識・情報と、アクセスできるインターネット上の情報源を活用して、利用者の知識・情報要求を満たすサービスである。これは主に次のサービスから成る。
- 利用者の質問・相談に対して、調査し一定の回答を提供する。
- 利用者が自分で調べることができるようにレファレンスブックやインターネット情報源を整備して提供する(参考図書の棚等)。
- 情報要求を想定して特定のテーマに関する資料を整備する。また、それに関する知識・情報の探し方を案内する【パスファインダーという】。
- 申し出を受けて特定のテーマやキーワードに関する新着情報をメール配信する【SDIサービスという】。
- 講座等の開催、図書館ツアー【利用教育】。
サービス提供のために
サービスの提供のためには次の作業が必要である。ただしいきなり厳密な指針やマニュアル等を作成するとサービスの硬直化に繋がりかねないので注意する。
- 条例、規則に基づいてサービス方針、基準を作成する。
- サービスに関する職務内容を明らかにして、それらの分担を決める。
- サービスを実現するためのマニュアルを作成する。
- レファレンスコレクションを整備する。
- サービスを提供する環境を整える。
- 担当者のトレーニングを行う。
資料の調べ方の基礎
- NDC(日本十進分類法):このテーマはこの番号のところ。
- OPAC(オンライン蔵書目録):図書館のオンライン目録。
- 参考資料(百科事典、統計書、世論調査結果報告書等々)
- 検索エンジン(Google, Yahoo等々)
質問の類型
- 所蔵調査(特定の本が所蔵されているか?)→OPACにあれば良し。なければ近場の図書館や、県立図書館、国立国会図書館と広げていく。大学図書館の場合はCiNiiが使いやすい。
- 書誌事項調査(特定の本の著者が知りたい)→OPACに書いてれば良し。なければ国立国会図書館NDL-OPAChttps://ndlonline.ndl.go.jp/#!/。それでも見当たらない場合、ネット検索。古いと見当たらないので古典籍https://base1.nijl.ac.jp/~tkoten/をあたる。
- 文献調査(特定のテーマに関する本を知りたい)→OPACで調べる。NDLで大体の場所はわかるため絞り込んでいく。
- 事実調査(特定の事実を知りたい)→百科事典→専門分野辞典→専門分野の本→インターネット。
carrot-lanthanum0812.hatenablog.com
紙の歴史
甲骨・石板・粘土板・パピルス・羊皮紙(パーチメント)・竹簡、木簡
- 古代殷王朝の時代(紀元前16世紀~紀元前11世紀)、亀の甲羅や獣の骨に火を入れたときにできるひび割れから吉凶を占い、結果を甲骨に刻み込んでいた。その際に使われていたのが現在の漢字の原型である「甲骨文字」である。
- パピルスは古代エジプトで生まれた記録メディア。ナイル川に生育するパピルス草(カミカヤツリ)の茎を刃物で薄く広げ、重ね合わせて作る。紙とは製造法が異なる。記録方法が「刻む」から「書く」に変わった。軽く、扱いやすいため紀元前3500年頃から紀元後1000年頃まで長期間に使用された。エジプト特産品として輸出され、古代ローマ文明の開花を促した。/難点は折り曲げに弱く、傷つきやすいこと。また高価で、供給が不安定、かつ保存に難点があった。
- 羊皮紙は羊や山羊の皮を鞣(なめ)して作る。鞣すというのは、動物の皮というものはほっとくとすぐに腐敗して駄目になってしまうため、脂肪の部分をそいでやったり、いろいろの工夫をしてこの欠陥を取り除く作業である。紀元前2世紀に発明され紀元後15世紀まで使われた代表的な記録メディアである。/パピルスに比べて柔軟で扱いやすく、書きやすかった。また保存にも適し、死海文書は紀元前2世紀から1世紀に書かれたものであるが羊皮紙で書かれたものである。さらに両面しようすることができ、これによって冊子体が生まれた。/しかし残念なことに、羊皮紙の製造はコストが大きかった。手間がかかり、高価になり、また分厚く、重い。持ち運びが容易ではなく、自由に読書するには向かなかった。
- 一方、古代中国においては紀元前1000年頃から木や竹を短冊状に削り糸で綴じて巻物にした。ここにおいて「刻む」から「書く」に変わったのである。持ち運びは不便だが入手もしやすく加工が簡単だったため、紙が高価で清算が少なかった紀元後3,4世紀頃までは紙とともに併用された。
「紙」がいつ頃生まれたかは定かではないが、紀元前150年頃のものが最古である。しかしこの頃の紙は包装材として使われており、書写のための紙としては紀元後105年の蔡倫という人物が発明したとされている。記録メディアとしての利用に耐えられるようなものとしての紙の発明である。
蔡倫が発明した紙の製造方法は現在のものとほとんど変わりがない。①原料を灰汁で煮て、繊維を取り出す、②繊維を水中でたたく、③漉きあげる、④脱水・乾燥。紙はそれ以前の記録メディアよりも優れていた。
- 原材料の入手が容易で、また再生が可能。
- 薄く軽量で携帯性に優れる
- 丈夫で柔軟性があり、扱いやすい
- 折ったり、畳んだりすることができ、加工が容易
欠点は火や水に弱く、耐久性に欠けるところだった。しかしその欠点をはるかにうわまわる利便性があったため、人々はその繊細な記録メディアの保存に注意した。これが図書館の発達を促した要因であるともおもわれる。
紙はパピルスと同様に中国の専売であったが、6世紀頃に至って周辺諸国に製法が伝わった。最初は異教徒の国には伝わらなかったものの、900年頃にエジプトに伝わり、パピルスの文化を終わらせ、1150年にスペイン、1276年イタリア、1348年フランスと徐々にキリスト教の国々にも伝わっていった。その頃がちょうどルネサンス期と重なり、グーテンベルグの発明した印刷技術と合わさって、情報の伝達・知識の普及が大きく促されることとなった。
日本にもたらされた年として確かなのは610年であるが、実際はそれ以前から使われていたと思われる。製造法を基本として改良を加えてできたのが「和紙」であり、これは図書の材料として優れており、現在でもつかわれている。製造の本格化は奈良時代からであり701年には「造紙手」が図書館に置かれている。
和紙は高品質ではありさまざまな用途に使われたが、大量生産が不可能で割高であり、主役の座につくことはなかった。